天空更蓝

中国語(2011.04.15-現在)
英語(2015.09.19-現在)
上海话(2016.4.3-現在)

『元年春之祭』 陸秋槎



 
【紹介】
 以前中国語で読んで、今回日本語版を読んだ。大きくは読み間違えていないようなので、ちょっとホッとした。
 
《元年春之祭 巫女主义杀人事件》 陆秋槎
 
【感想】
 中国語で読んだときは筋を追うだけで精一杯だったけれど、日本語で読むと周りの景色まではっきり見えてくる感じがする。日本語で読める幸せ。
 
 この小説には、「少女」という想像上の存在が描かれている。直情的で嘘がなく、固有の美学を胸に秘めてそれに従って生きている、まっすぐで、残酷で、透明感があり硬質で、それでいて脆い。触ってしまうと曇らせてしまいそうな気がするけれど、実際はこちらの手が深く切れるような、そういう「少女」に興味のある人は読んでみるのもいいかもしれない。
 
 犯人当てだけではなく、犯人はなぜ犯行に及んだかという、「なぜ」というところに主眼が置かれている。その犯行動機は、文字通りに読めばこの時代背景でなければあり得ないことなのかもしれないけれど、その真髄は現代にも通じているし、痛く苦しく思い当たる人もいるんじゃないだろうか。
 
 二回の読者への挑戦と作者の語りは、小説の雰囲気にどっぷり浸っているとき、「あなたは小説を読んでいるだけのただの読者だよ」と現実に引き戻してくる。重苦しさから解放されてほうっと息がつける気もするし、自分は第三者であることを思い出し寂しくなる気もする。
 
 瑣末なことだが、177ページの6行目と、276ページの6行目の一つ目の「葵」は「露申」の誤植だと思う。前者はとてもいい場面なので少し残念。
 
 あと、「むしろ」という言葉が出てくると、農家育ちの私には、藁で編んだ、地面に直に引いて農作物を乾かす時などに使う、触るとチクチクと痛い感じのするあのむしろを思い浮かべてしまう。だから、そんなものを家の中に敷かないで、ああ、だめ、そんな綺麗なものを置いたら傷んじゃう、って思ってしまう。
 もちろんそうじゃないむしろもあるはずだから、これは単に私の語感の問題なんだけど。
 
【読書期間】
 2018.9.11 〜 2018.9.13
 
【その他】
 


 
 中国語のレベルがあまり高くないのにこの本の原書が読めたのは、大学時代に勉強した漢文の知識が少し残っていたからだと思う。経験ってどこで役に立つかわからないけど、全くの無駄ではないんだなあと思う。 
 
 
 
にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村
 
 

「敷居が高い」と「门槛高」

 HNKニュースを聞いて日本語を勉強している中国の友人から質問された。
 
……これについて生涯学習の政策を担当する文部科学省は『社会人が学び直す際大学などに通うのは「シキイガタカイ」と受け止められている可能性があり……
 
 この「シキイガタカイ」がどういう意味か、というのだが、これにはちょっと困ってしまった。「敷居が高い」だと思うんだけど……
 
「『ハードルが高い』という意味ですか」
「ここでは、そういう意味で使ってるみたい。でも、誤用だよ」
「じゃあ、こういう意味ですか」
 
4C543DDC-7CE7-4893-B1DA-A0FD2FC4617E
 
「そうそう」
 
99D2F108-8DEB-4BC5-9EE1-AD1104D44676
 
「本当にNHKニュースなの?」
「11時のニュースです。録音聞きます?」
 
 どうしたらいいかと尋ねられたので、結構よくある誤用なので、二つとも覚えておいて、使うときは正解の意味で使えばいいよ、と言っておいた。
 
「敷居」は、中国語で「门槛 men2 kan3」と言うらしい。
 
「NHKの人は中国人なのかな」
「なんで?」
「これ、中国語だったら、誤用じゃなくてバッチリなんだけど」
 
 先のニュースの該当部分を中国語に訳すと、
 
已经工作的人再去大学重新学习的话,会觉得门槛
 
となるらしい。
 
 中国語の「门槛高」は日本語の「ハードルが高い」に近い意味なのか。
 
 と思ったら辞書には、「门槛高:敷居が高い」と書いてあった……何のどこがどう間違っているのかもうわからないや。
 
F088AD7D-2471-4424-ABF3-7118A6DE9396
 
 上の画像にある「门槛精(门砍精) men2 kan3 jing1」という表現も、上海ではよく使われるそうだ。
 彼が言うには、「計算高い、抜け目ない」というずる賢い感じを表す言葉らしい。日本語でも、「あの子は本当に要領のいい子だなあ」が褒め言葉でないことがあるが、そういう感じの言葉なのかもしれない。 
 
 
 
にほんブログ村に参加しています。
にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村 
 
 

『探偵が早すぎる(上)(下)』 井上真偽



 


 
【紹介】
 父の死により5兆円もの遺産を相続した女子高生・一華は、その遺産を狙うおじやおば、従兄弟たちに殺されかける。一華を事故や自殺に見せかけて殺そうとする親戚達から一華の命を守るため、家政婦である橋田は探偵を雇う。その探偵は事件が起こる前にトリックを見破り、犯罪者たちに同じトリックを仕掛ける。
 
【感想】
 この作家のことは以前から気になっていて、最初の一作にドラマ化されたこの作品を選んだ。ドラマ自体は未視聴。
 
 上巻を四分の三くらいまではちょっと我慢して読んだ。その辺でもうやめようかと思った。
 トリックのネタがしょぼい。登場人物の設定が突飛すぎたり外連味が強すぎたりして現実味がない。
 
 ただ、下巻では、しょぼい殺人計画がいくつもいくつもこれでもかと畳み掛けるように仕組まれて、それらが全て見破られてテンポよく無効化されていく段になると、なにか変な面白さを感じるようになった。こうなってくると登場人物たちの現実味のなさすら面白く思えてくるから不思議だ。
 最後二つのトリックにはちょっと意表を突かれたかもしれない。
 
 とにかくネタのショボさと解決のテンポの滑稽さが癖になる感じだった。
 この作者の既刊本、大人買いしてしまうかもしれない。
 
【読書期間】
 2018.8.24〜2018.8.25
  
 
 
にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村
 
 

『後宮の烏』 白川紺子



 
【紹介】
 後宮に住む「烏妃」は、夜伽をせず、不思議な術を使う正体不明の妃。彼女の住む夜明宮に皇帝・高峻が訪ねてくる。彼は翡翠の耳飾りの持ち主を探してほしいという。
 中華幻想譚。
 
【感想】
 中華幻想譚というコピーライトに期待しすぎたんだと思う。中華は風味づけでしかなかった。
 
 ライトノベルとしてはいいと思う。破綻はないし、物語の運びもスムーズで問題がない。ただ、コピーライトに書かれている「禁忌」がそれほど重いものに感じられなかったのが、残念。
 
【読書期間】
 2018.8.24
 
【その他】
 体調不良や病院の待合室のいいところは読書が捗るところ。
 
 
 
にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村
 
 

『dele』 『dele 2』 本多 孝好

 偶然、金曜日深夜にやっているドラマ『dele』を見た。
 
dele
 

 
 面白かったので、その原作というか原案となった本を買ってみた。
 
dele (角川文庫)
本多 孝好
KADOKAWA
2018-05-25


 
dele2 (角川文庫)
本多 孝好
KADOKAWA
2018-06-15


 
【紹介】
「dele.LIFE」は、契約者の死後、契約者が誰にも見られたくないデータをパソコンや携帯、タブレットから遠隔操作で抹消してくれる。
 真柴祐太郎の主な仕事は、足の不自由な所長の坂上圭司に代わり、契約者が実際に死亡しているかどうかを確認することだった。
 
 短編集。『dele』には四つの物語、『dele 2』には三つの物語が収録されれている。
 
【感想】
 読み始めて、ふと気になって確認したら、以前読んだことのある『チェーン・ポイズン』の作者だった。『チェーン・ポイズン』は題名のとおり毒を扱った作品だが、物語自体にも毒があって、その苦い感じがこの『dele』に似ている感じがしたのだ。
 
 ただ、『チェーン・ポイズン』の苦味にはえぐみがあって、それが人に強い印象を残す反面、好き嫌いも分かれてると思う。
 


 
 この『dele』『dele 2』の苦味にはえぐみがない。ほろ苦いと言ってしまえば甘みが含まれてしまうが、甘さはほとんどない。ただ全体に苦い。さっぱりと、苦い。
 
 私にも死後人には見せたくないデータがある。私の自意識の塊のようなものだ。死後人に見られてくないデータとは、本人には消すことのできない執着そのものなのかもしれない。
 だから登場人物たちがそのデータを覗くとき、死者の取り繕いようのない生の顔が見えてくる。
 
『dele 2』の最後の話には、二度驚かされた。推理小説なら騙されないぞと身構えて読むので気づいたかもしれないけど、ぼんやり読んでいたばかりに……、悔しいな(笑)
 
 データから垣間見える人の心の謎に引っ張られるミステリー小説だとも言える。
 
【読書期間】
『dele』 2018.8.16
『dele 2』 2018.8.17
 
 
 
にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村
 
 
最新コメント
Amazonライブリンク
記事検索