└ 学術書

『宇宙が始まる前には何があったのか? 』ローレンス・クラウス(著) 青木薫(翻訳)

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)
ローレンス クラウス
文藝春秋
2017-01-06


 
【感想】
 正直に言う。ちょうど半分くらい読むまで何が書かれているのかさっぱりわからなかった。
 半分くらいのところにきて、ようやく、「宇宙空間は平坦だ」と書かれていることに気づいた。そこからは、そりゃ難しいところはわからないけれど、でもそれなりに書かれていることが理解できるようになった。
 
 何にもない空間というのはむしろ不安定で、何にもないところからものは生まれる。空間のエネルギーはゼロじゃない。何にもないとは空間すらないこと。宇宙で星と星とは今もすごい速さで遠ざかっていて、今は宇宙を観測することで色々考えられるけど、遠い未来には銀河同士なんかも遠ざかりすぎて存在すらも確かめられなくなってしまい、学者たちには観測すらできず「宇宙にはこの銀河一つしかない」と思ってしまう可能性もある。
 
 どれも私の持っていたぼんやりとした宇宙のイメージからはかけ離れていて、私の常識では全く想像もつかない世界なんだと理解するのに半分くらいまで字面を追い続けるしかなかった。
 常識に沿って宇宙があるわけでは当然なく、今知られている物理の法則も、それに沿って宇宙ができたのではなくこの宇宙ではたまたまその法則が成立しているだけかもしれないーーなんて言われると、もう途方もなさすぎて、あっけにとられるばかりだった。
 
 翻訳本だから当然日本語で書かれているんだけど、ちょっと何言ってるのかわからないという経験を久しぶりにした。 
 
【読書期間】
 〜2018.12.9
 
【その他】
 twitterには(もう2年くらい読んでる)と書いたけど、出版は2017年1月6日だった。出版されてすぐ買って読み始めていたとしても、2年かからず1年11カ月で読み終えられたのか。えらいぞ私。
 
 
 
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『テラと7人の賢者』 監修:兼宗進・白井詩沙香 協力:Tim Bell 絵:倉島一幸



 
【紹介】
 簡単なお話とパズルでコンピューターやプログラミングに関する基本的な考え方を学べる絵本。付属のカードを使ったり色を塗ったりなど具体的に手を動かして遊びながら、以下の考え方を学ぶことができる。
 
・論理的思考
・二進法
・数の情報から絵を描く方法
・チェックデジット
・決定木
・アルゴリズム
 
 小学1〜3年生。
  
【感想】
 小学校低学年向けだから難しいことは一つもないのだけれど、巻末についている『冒険の書』まで読めば、コンピューターやプログラムが基盤にしている考え方がどのようなものかがわかる。
 
 DOS画面でコマンドを打ち込んだり手動で数値を打ち込んでモデムでインターネットに繋いたりしていた時代が終わり、一時期テレビや冷蔵庫などの家電のようにパソコンが使えるようになったけれど、今の若い世代はなんでもスマートフォンやタブレットでできるようになってまたパソコンを使わなくなっている。
 小さな子供だけでなく、パソコン離れをしている若者や改めてパソコンを理解したいと思っている大人にとっても、考え方に触れる入門のための入門書として、面白い本だと思う。
 
【読書期間】
 2018.12.7
 
 
 
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『目で見る数学』 ジョニー・ボール 著 / 山崎直美 訳

目で見る数学―美しい数・形の世界
ジョニー ボール
さえら書房
2006-09


 
【紹介】
 表紙は絵本のようだが、中身は大判の図鑑のよう。学校で習った数学はこういう考え方が底にあってそのうえに成り立っているものなのかと驚く。
 
【感想】
 私は高校以降の数学が全くわからないのだけれど、よくわからないから余計に惹かれるというか、数学に関するこの手の本がとても好きだ。
 
 この本は、数に関する感覚や数え方、表記の仕方など、数の歴史から始まっている。
 最初からアラビア数字で算数、数学を習ってきた私は、数字の表記がその計算方法にまで影響を及ぼすなんて想像もしなかった。インドで生まれたアラビア数字や0の概念は、計算を飛躍的に簡単にしたらしい。この本にはエジブト数字やローマ数字での計算方法が書かれているが、特にローマ数字での掛け算など、複雑極まりない。
 
 パスカルの三角形やフィボナッチ数列など、単純に足し算だけでできているだけなのに、それが組み合わせを示していたり自然界の数を表していたり、とても不思議だ。
 
 私のような数学の素養のないものにとっては、眺めているだけで頭の普段使わない部分を使いすぎてクラクラしてしまいそうな世界だった。
 
【読書期間】
 〜2018.11.9
 
【その他】
 この本には「フラクタル」についてのページがあるんだけど、最近どこかでよく似たことを読んだなあと思って探してみたら、今読んでる《天才在左 疯子在右》の中の一編《永不停息的心脏》で、生物学者が「分形几何学」について話していた。簡単に言うと全体と末端は同じ形をしているという。人間は胴体から頭、両腕、両足と5つのパートに分かれている。だから手の指も足の指も通常5本なのだそうだ。
 
 この本は書店という出会い系で出会ったんだけど、レジで「プレセントですか」と尋ねられた。こういう本を買うと孫へのプレゼントかと思われるんだろうな。でも二冊ともバリバリ自分専用だ。
 
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『春秋戦国』 渡邊義浩

春秋戦国 (歴史新書)
渡邉 義浩
洋泉社
2018-09-04


 
【紹介】
 中国の春秋戦国時代って、日本人にも馴染みが深いんじゃないかな。漢文嫌い世界史取ってないという人でも、最近は、戦国時代から秦の中国統一までを描くという『キングダム』という漫画が大ヒットして、実写映画にもなるのでご存知の方も多いと思う。
 私も学生時代に勉強したことを思い出したくて読んだ。
 
【感想】
 実物を確認せずにネットで買ったので、第一印象は「薄っ」だった。全部で191ページ。全三章からなり、その中に細かい項目が立ててある。作りは学術書というよりは入門書といった風情だ。
 
 最初の部分に春秋時代と戦国時代の簡単な地図がある。
 が、これだけでは流石にちょっとわかりづらいので、
 


 
中国歴史地図
朴 漢済
平凡社
2009-01-01


 
《史记地图集》
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 などをその都度めくりながら読んだ。
 
 古代中国がどういう社会かということを知らなかったので、個々のの王や公、政治家は知っていても、彼らの行った改革が当時の社会情勢に対してどういう意味があったのかまでは考えもしなかったことに気づいた。
 また、春秋戦国時代が中国史の中でどういう意味合いを持つ時代なのかも知らなかったので、勉強になった。
 
 ただ、この本はどういう読者層を想定して書かれたのかなとは思った。
 デザインというか項目の立て方は入門書っぽいのだけれど、入門書というには「春秋戦国って面白い」と思わせるだけのインパクトがたりない。また一歩踏み込んで詳しく勉強したいと思う人が読むには掘り下げ方があっさりしすぎている。
 春秋戦国時代の何か一つにテーマを絞って書かれた方が、面白かったんじゃないかと思う。

【読書期間】
 〜2018.10.25
 
【その他】
 全然関係ないけど、私が春秋戦国時代の人で一番好きなのは、秦の宰相だった李斯。
 秦の始皇帝が韓非に心酔しているのを知ると、同門だといって上手に手を回して韓非を秦に来させたのに、やっぱり嫉妬して殺してしまったり、秦の始皇帝の死後いろいろ考えすぎて趙高に抗えなかったり、トップが胡亥なのに上奏しようとしたり、有能なんだけどどこか抜けてる、そんな人間臭い感じがいいなあって思う。
 
 
 
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『中国語 はじめの一歩』 木村英樹



 
【紹介】
「中国語でどう言うか」ではなく、「中国語ではなぜこう言うのか」が書かれている。つまり「中国語とはどういう言語か」がわかりやすく書かれている本。
 
【感想】
 最初は普通に読んでいたんだけど、第5章中国語の語彙くらいから、うわ、そんなこと考えたことない、みたいなことが書かれていて、これ、ほんとに「はじめの一歩」なの? と思うようになった。
 
 前に「有」と「在」の使い分けについて書いたけれど、この本では、「有」は「存現文」、「在」は「所在文」と書かれていて、とてもわかりやすいと思った。ある場所に物が存在したり現れれたりするのを示すのが「有」、物の所在を表すのが「在」ということだ。
 
 今までずっと疑問に思っていたことの一つに、「了」の使い方がある。
 動詞の後ろに「了」を置き、その後に修飾語のない目的語を置くと、そのままだと文が終わらない感じがするので、目的語の後ろにも「了」を置かないといけない。
 例えば、「吃了饭」では後ろに文が続く感じがするらしいので、「吃了饭了」とするか、前の「了」を省略して「吃饭了」としないといけない。
 なのに、「迷了路」という言葉で終わる文は存在する。これでなぜ文が終われるのか、これを私はずっと勝手に「『迷了路』問題」と呼んできた。
 それに対する示唆がこの本には書かれている。動詞の表す意味の性格によるらしい。また完璧に理解したわけじゃないけれど、なぜ「迷了路」が成立するかはなんとなくわかった。「迷了路」のような形で成立する動詞や離合動詞をもう少し収集して、考えてみようと思う。
 
 人は物事を母語で考えるので、中国語には中国人の考え方が色濃く反映されているのは当たり前だ。日本語の言い方日本人の考え方との対比も書かれていて面白い。
 Skypeで初めて授業を取ったのに、「私たちは友達だ」という中国語の先生が結構いる。その都度私は「友達じゃない、先生と生徒だ」と思ったのだけど、この感覚の違いは何か、とか。学生時代の教科書にはどうして「その通りを東に曲がってください」と方角を使った道案内が載っているのか、とか。以前見た中国のテレビドラマで、父親の恋人を「阿姨(おばさん)」と呼ぶように言われたのに娘が頑なに「姐姐(お姉さん)」と呼んで、それを父親が注意していたのか、など。
 
 中国語ではなぜそう言うのかを表層的なテクニックではなく中国人の考え方や中国語の成り立ち方から解説してくれる、難しいけれど興味深い本だった。 
 
【読書期間】
 〜 2018. 7.26
  
 
 
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