奇貨なりといえども

わたしの、小さな哲学。 ときどき、おもいだしたように。

謹賀新年(遅)

1月ももう半分過ぎてしまいましたねぇ。

卒業も就職も決まって肩に荷は載ってませんが、研究っぽいことは続けています。
卒論の加筆修正期間が1月末まであることもあり、先生方からいい内容であると評価いただいていることもあり、それなりの完成度になるまでは論文をこねくりまわす予定です。

あとは何ですかね、真三國無双2猛将伝を買ってみたり、HMMコマンドウルフLC&ACバラッド仕様を買ってみたり、卒業旅行のプランを考えたり、とか。
家探しも。
気に入れば来週頭には決めてしまうかも。

せっかく安くで買ったコマンドですが、誤って接着剤の容器を倒してしまったために部品をだめにしてランナーを注文せざるをえなくなり、お得感がなくなってしまいました。
残念。

電力の未来を考える(上)

0.読む前に
 以下はわたしが所属するゼミとさる大学のさるゼミとのディベート用に作成したレジュメです。したがっていつものブログの記事と違ってハードになっております(笑)


1.はじめに

本稿では既存の原子力発電所を速やかに停止、廃炉を行い、迅速に再生可能エネルギーの普及を行うべきである、との主張を行う。2節ではその根拠として今後日本が目指すべき電力産業の今後について概観し原発を速やかに停止、廃炉すべきであることを述べる。また望ましい日本の電力産業のあり方を実現するために必要な施策として「発送電分離による電力市場の自由化」および「再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度」を提示する。3節では原発維持の論拠とされる「原発を停止させると電力供給が不足する」および「電力料金が上昇する」という主張に対し、原発を全て停止させても既存の発電設備で電力需要を満たすことが可能であること、また日本の電力産業が持つ構造上の問題点が他国に比べて高い電力料金を需要者に強制してきたことを確認する。4節ではその構造上の問題点に対する処方箋たる発送電分離について、5節で固定価格買取制度についてその具体的な内容を論じる。

 

2.電力産業の今後

現代の環境問題のうちとりわけ深刻な地球温暖化と電力を含むエネルギー産業とは密接に結びついている。なぜならば現代社会で用いられているエネルギーの大部分を石油や石炭、天然ガスといった化石燃料が供給しており、その結果として二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出されて地球温暖化を引き起こしているためである。大規模な気候変動を回避し、長期的に気候を安定化させるためには「温室効果ガス濃度を安定化しなければならない。温室効果ガス濃度を一定に保つためには、人為的な排出量と吸収量の差をゼロにすること、すなわち、人為的純排出量をゼロにすることが必要である」(大島[2010])。

電力産業でも温室効果ガスの人為的純排出量を削減する必要性が認識され、対策が講じられてきた。核燃料からとりだしたエネルギーを用いて発電する原子力発電は発電段階で二酸化炭素を排出せず、90年代以降は「クリーンな電力」と謳われ温暖化防止の観点からも開発が進められてきた。しかし2011年の311日の東日本大震災によって発生した福島第一原発事故によってこれまで「安全」であるとされてきた原発の様々なリスクが顕在化し、世論は原発に対して厳しい目をむけている。また温暖化対策とともに原発推進の根拠となってきた「安価な電源」であるという主張も大島[2010]などによって覆された。したがって原子力発電を電力産業における温室効果ガス削減の手段とすることは不可能である。また原発には、様々な制約条件があり莫大な費用が発生する放射性廃棄物の管理を将来世代に押しつけることになるという倫理的な問題も存在する。原子力発電はこのように数多くの問題点があり、それらは原子力発電が導入されてから50年近くが経過した現在でも根本的な解決には至っていない。従来の化石燃料による発電から再生可能エネルギーへ転換する際の過渡的なエネルギーであるという位置づけがヨーロッパやアメリカなどでは一般的である。日本でも原発に反対する世論が高まりをみせ、定期点検によって多くの原発が稼動停止している今こそ原子力中心のエネルギー政策を転換させるチャンスである。後述するとおり原発が全て停止しても既存の設備のみで電力を供給することは可能であり、速やかに全ての原発を停止させ、廃炉を進めるべきであると考える。

代わって電力産業における温室効果ガス削減の手段となるのは再生可能エネルギーである。大規模な気候変動を回避するため再生可能エネルギーの迅速な普及が求められる。温室効果ガスの人為的排出量をゼロにするため、再生可能エネルギーで電力需要の大部分を満たす社会を実現する必要がある。それを実現するために現在とるべき施策が「発送電分離による電力市場の自由化」と「再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度」である。

なお、再生可能エネルギーは温暖化防止を目的として既存の火力発電を代替するものであり、原発の停止によって不足する電力を補うための手段ではない。原発を停止しても電力不足に陥ることがないことは3節で詳述する通りであり、原発を即時停止・廃炉することと再生可能エネルギーの普及促進はそれぞれ異なる観点からの議論であることに注意が必要である。また再生可能エネルギーの普及拡大は温暖化防止の観点からすると最も費用の高い方法であり、より費用効果的な対策から温暖化防止に取り組むべきであるとの主張もあるが、再生可能エネルギーの便益には温暖化防止だけではなくエネルギーの安全保障なども含まれる。資源小国日本において再生可能エネルギーが持つエネルギー安全保障という便益は非常に重要であろう。また国内で再生可能エネルギーの普及を進めることで民間の技術開発を誘発し、国際競争力を維持することも必要である。太陽光発電への支援を打ち切ったために国内での太陽光発電の普及が鈍化し、結果として民間企業の競争力が低下し国際市場でのシェアを失っており、同様の事象を繰り返すべきではない。

 

3.原発と電力供給・電力料金

本節では原発を維持すべきであるとの主張の主な論拠に対して反論を試みる。

まず原発を停止させてしまうと電力需要に対して電力供給が不足し、停電を招くという主張がある。しかし飯田・松原[2011]によれば「稼働中の原発(2011 10 月現在10 )を全停止しても、全ての電力会社で今冬・来夏ともに電力不足は生じない」。また「今夏の東京電力と東北電力は電力制限令などの節電努力で、ピーク・平均とも前年比 20%の節電効果があった」とされており、原発を全て停止させても電力供給が不足することはない。

まず、今冬についてピーク需要電力量・供給能力の推計を示したのが図3.1である。全ての電力会社管内で供給能力がピーク需要電力量を上回っている。またその詳しい内訳が表3.1であり、北陸電力・関西電力・九州電力を除く7社で供給予備率も10%を上回っていること、および中西日本6社での供給予備率が10%を上回っていることから北陸電力・関西電力・九州電力の供給予備率も他社からの融通によってカバーできることが読み取れる。これらは政府推計の「政府が発表している需要予測は2010年夏の17,954kWのままで、企業も家庭も節電をしないことが前提になっていた」「自家発電からの購入は増やすどころか142kW2011年夏より減らす」「需給が逼迫した時に電気の供給を止める代わりに安い電気料金になっている『需給調整契約』も発動しない想定」といった問題点を是正して推計されたものであり、より実情に即したものと考えられる。


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3.1 今年の冬(20121)の電力需給(ISEP推計)(飯田・松原[2011]より)

 

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3.1 20121月の電力需給予測(政府およびISEP推計の比較)

(飯田・松原[2011]より)

 

一方で来夏の電力需給については図3.2および表3.2のようになっている。政府推計には先に挙げた問題点に加えて「長期停止中、あるいは渇水予測での低下などそれなりに説明がつくものを除いて約2000kWがあえて使用しないか出力低下予測となって」いる、「四国電力は2012年夏に67kWの不足と発表されたが、不足量は関西電力などへの融通分であった。隣の中国電力は需給に余裕のあるのに融通は2012年夏に中止され、余裕が小さい四国電力の融通が続くというちぐはぐな想定」がなされているといった問題点もあり、今冬の需給推計同様飯田・松原[2011]の推計は政府推計よりも妥当であると考えられる。


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3.2 来年の夏(20128)の電力需給(ISEP推計)(飯田・松原[2011]より)

 

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3.2 20128月の電力需給予測(政府およびISEP推計の比較)

(飯田・松原[2011]より)

一方で原発を停止させるとそれまで原発によって供給されてきた電力を、火力発電を中心とする既存の電源によってまかなう必要が生じ、石炭やガスといった化石燃料を調達するコストが上昇するため電気料金が上昇するため、原発による発電を継続させるべきであるという主張も原発の即時停止に反対する論拠とされる。しかしそもそも日本における電力料金は税金などを除いて比較すると他国に比べて高い水準にある(高橋[2011])。その理由は実質的な電力市場の自由化が進展してこなかったため公正な競争が行われず、電力料金を総括原価方式で決定する構造が維持されてきたことにある。電力市場の自由化については4節冒頭で詳述する。市場の開放による新規参入の増加とそれによる公正な競争によって「発電事業者は設備投資の効率性や必要性を冷徹に吟味し、少しでも安い燃料を仕入れ、販売管理費なども切り詰める」(高橋[2011])結果電気料金は低減する。また競争下では「需要者の多様なニーズに合わせて、様々な選択肢が提供される」(高橋[2011])。電力自由化によって化石燃料調達コストの増加による電力料金の増分をすべて相殺できるかどうかは不透明だが、電力料金が総括原価方式によって決定されている現状を批判せずしての電力料金が上昇するという主張は問題の本質を見失ったものである。加えて電力需要が逼迫した今夏は計らずも需要家の側にまだまだ節電を行う余地があることを明らかにした。われわれ電力需要者は節電によって電力需要を抑え、支払電力料金を下げることができるのである。

<4節以降は(下)に続く> 

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電力の未来を考える(下)

4.発送電分離による電力市場の自由化

本節では高橋[2011]に従って第3節で触れた発送電分離および電力市場の自由化の理論的根拠を述べ、その実現にあたってとるべき施策を整理する。

現在、日本では一般電気事業者10社が各地域でほぼ独占的に発電・送電・配電・小売を担っている。そのような状況下では総括原価方式による価格決定システムが維持され、電気事業者はコスト削減のインセンティブを持たない。一方で小売市場はこれまでに契約電力50kW以上までが自由化され電力小売市場の63%が解放されているが、50kW未満の小口需要者向けの小売市場の開放は行われておらず、新規参入者もほとんどあらわれなかった結果、サービスの多様化も進んでこなかった。1995年から2003年にかけて行われた規制緩和の後、電気料金は低減しており、それが部分的な自由化によるものとの主張もあるが、部分的な自由化の後に起こった電気料金の低下は「電力会社が着実に設備投資を抑制してきたから」である。また「政治家や規制当局を念頭に置き、自由化を回避するために下げた」との指摘もなされている。

発送電を分離し電力市場を自由化する、とは電気事業者が担ってきた発電・送電・配電・小売という役割のうち発電と小売を分離・自由化することを指す。さらにこれまで地域ごとに分割されていた送電・配電部門については技術的に可能な限り統合し、分断されていた複数の市場を統合して市場を大きくすることも含む。発電部門の自由化は新たな発電事業者の参入を招き、公正な競争による発電コストの低減をもたらす。一方小売部門の自由化は新たな小売事業者の参入を招き、電力需要者に対して様々なサービスや料金メニューが提供されるようになる。また電力市場が大きくなることで需給のバランスをとることが容易になり、電力システム全体の安定化につながる。加えて電力市場の拡大は再生可能エネルギーの普及拡大にあたっても重要な役割を果たす。その根拠は「すでに再エネが多く導入されている地域に対して、あまり導入されていない地域を統合して市場を拡大することにより、不安定な再エネの導入割合が全体として下がり、導入可能量が増える」ことと「多様な発電をたくさん集めれば、その発電量の変動は均される」平準化効果にある。

発電・小売部門では自由化を進めるべきであるのに対し送電・配電部門では独占を維持することが望ましい。なぜならば送配電設備は電力を各需要家に届けるためのインフラであり、いわば水に対する水道設備に等しく、二重投資を避けるべきだからである。送電・配電部門については解放されない代わりに「いずれのプレーヤーにも公正に貸し出され、自由化された発電市場と小売市場とをつなぐ役割を果たさなければならない」。

実際に電力市場を自由化するにあたってはまず小売市場を全面的に自由化し、料金面や手続き面で新規参入者を優遇する非対称規制や、既存の日本卸電力取引所の活性化を進め、市場競争の拡大を推進する。同時に一般電気事業者10社および電源開発が所有する送電網の分離を進める。送電網を所有するのは民間企業であるため私的所有権が認められ、政府の意向で強権的に再編することはできない。したがって電力自由化にあたって最も望ましい、送電網の所有権を既存の電力会社と資本関係のない別会社に譲渡し新たに送電会社を設立する所有権分離は実現せず、共通の持ち株会社が発電を担う会社と送電部門を担う会社を所有する法的分離、電力会社に送電網の所有権を残しつつ運用を独立した主体に委ねる運用分離といった形態で送電網の分離が実現することも考えられる。これらのうち最終的にどのような形態で送電網の分離が実現するかは不透明だが、いずれの形態になっても「いずれのプレーヤーにも公正に貸し出され、自由化された発電市場と小売市場とをつなぐ役割を果たさなければならない」という原則が守られることが不可欠である。

ただし福島第一原発事故を引き起こした東京電力については今後の損害賠償の進展によっては賠償額を負担しきれず、一時国有化する事態も発生しうる。その場合は政府の意思のみで発送電分離を実現することが可能である。ただし破綻によって電力の安定供給に支障をきたさないような配慮が必要である。東京電力の発送電分離によってその営業地域で電力自由化が進み、電力の安定供給が維持されるとともに競争によって市場の健全化が進めば、その他の地域においても発送電分離と電力市場の自由化を進めることが容易になる可能性がある。

電力自由化はすでに世界的に進んでおり、ここではその事例として北欧とドイツで行われた電力自由化について触れる。北欧ではノルウェーでの発送電分離(1991年)電力取引市場の整備(1993年)を皮切りに、2000年にはノルウェー・スウェーデン・フィンランド・デンマークの市場が統合され、現在ではスポット市場に18カ国から350の会員企業が参加し年間3100kWhの電力が取引されている。参加国のうちデンマークでは家庭用電気料金は自由化以降も上昇しており2008年には2.02DKK(約30円)/kWhとなっているが、それは主として電気料金の54%を占める税によるものであり実質的な電気料金は14/kWh程度にすぎない。「地球環境保護やエネルギー安全保障のために、高い電気料金を受け入れている」ということがいえる。またデンマークでは風力発電による発電量が全発電量の20%となっており、自由化が風力発電の拡大に補完的な役割を果たしたことが指摘されている。

一方のドイツでは日本同様電力会社が民間企業であり、私的所有権との関係から政治的意思のみでの発送電分離は不可能であった。しかしEUの「公益事業の自由化についても、域内の競争を促進する」という方針に促されるかたちでドイツ政府も1998年に独禁法における電力の適用除外規定を解除した。そして送電網の分離も進められ、20118月時点では主要な電力会社4社のうち2社の送電網は所有権分離が達成されており、残る2社も法的分離の段階にある。なお託送料は2005年より認可制とされている。ドイツでも高い税率のために電気料金は低減していないが再生可能エネルギーの導入は5節で詳述する固定価格買取制度の実施と電力自由化によって飛躍的に進み、2010年時点で全発電量の13.5%を再生可能エネルギー(水力除く)によって供給するまでになっている。再生可能エネルギーを普及させる上で電力市場の自由化が重要な前提条件となっていることが指摘されており、その理由は「送電会社に再エネの普及を妨げるインセンティブは存在しない」こと、および「市場メカニズムを通して再エネの不安定性を吸収するメリットがある」ことである。またドイツで再生可能エネルギーの大幅な普及が可能となったのは電力自由化によって隣国の原発大国フランスから大量に電力を輸入できるためである、という指摘があるがこれは事実ではない。なぜならば「ドイツはこれまで基本的に電力の純輸出国なのであり、2008年には発電量の9.8%を輸出し、6.3%を輸入して」おり、実際には国内に十分な供給能力を有しながら効率的な需給調整を市場を通して行なっているのである。

 

5.再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度

本節では固定価格買取制度の基本的な枠組みを確認し、その制度設計において留意すべき点を整理する。

固定価格買取制度とは「系統管理者や電力供給事業者に対し、再生可能電力発電事業者が発電した電力をある価格で一定期間買い取るよう法律等によって義務づけるというものである」(大島[2010])。日本でも「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が2011826日に成立し、固定価格買取制度が導入されることが決まっている。

固定価格買取制度の制度設計において留意すべき点はヨーロッパ各国で実行された固定価格買取制度をそれぞれ分析したEEG/Fraunhofer ISI[2010]において以下のように結論づけられている。これらは今までに行われてきた様々な形の固定価格買取制度についてその制度設計と成果を検討して得られた結果であり、本稿でもこれを支持する。

 

・持続的で長期にわたる投資誘発政策

FITには長期的な目標と十分に長い買取保証期間とが必要である。一方で新たに導入される再生可能エネルギーに対する買取保証は定期的に見直すことが不可欠となる。

 

・技術ごとの買取価格設定

異なる再生可能エネルギーの異なる発電コストを反映するため技術ごとに発電コストをカバーするに足る買取価格を設定する事が必要である。買取価格の水準は政策目標を達成できる水準に設定すべきであり、また最も費用効果の高い地点から導入が進むようなインセンティブ構造にするのが望ましい。一方で未発展の技術に対してもその技術が市場に受け入れられて経験値を積み、将来において費用が小さくなるように補助を行うべきである。

 

・再生可能エネルギーを電力網に組み込む仕組みを提供するエネルギー政策

再生可能エネルギー発電事業者が発電した電力を市場で固定価格による買取または市場価格に加えて一定のプレミアムを上乗せした価格での買取が保証されるよう、FITの制度設計は再生可能エネルギー電力の買取を強制する(優先接続)か、それに代わる手段を提供する必要がある。

 

・電力価格に追加的なプレミアムを付加して市場で売電できる仕組み

再生可能エネルギー電力を電力の市場価格に加えて一定のプレミアムを上乗せした価格で現物市場で売電できる制度がpremium tarrif designである。買取義務のないこうした制度はFITと比較すると再生可能エネルギーの市場への適応性を高める。加えて再生可能エネルギー電力を電力需要のピーク時に市場に投入するインセンティブを与える。一方でFITに比べてpremium tarrifによる買取は再生可能エネルギーに対する投資リスクを高めることになる。この欠点はプレミアムを電力価格の関数として制度設計を行うことでおおむね補うことができる。例えばプレミアムを電力の現物市場価格に比例して上下させるなどである。FITの、再生可能エネルギーへの投資を低リスクにして投資を誘発するという利点を鑑みて、premium tarrifはあくまでオプションとして提供されるべきである。

 

・費用削減へのインセンティブをもたらす制度設計

年度ごとに新たな発電プラントからの買取水準を一定の割合で引き下げていくことでコストの低減や技術進歩へのインセンティブが生まれる。

 

FITにおける再生可能エネルギーの量的制御

現時点で高いコストのかかる発電方法に対して将来のコスト低減を見込み、補助すべきであると考える一方で補助にかかる費用が制御できずに膨れ上がり、国民負担が過度に大きくなる危険がある。そのため年ごとに導入される再生可能エネルギーによる発電に対する財政的支援に何らかのキャップを設ける方法が考えられる。しかしキャップをかけることで投資の持続性が失われ、頻繁に投資の増加と停滞が繰り返されるリスクが発生しうる。そのためあらかじめ伸び率の経路を設定しておき、前年度の伸び率に応じて次年度の買取水準を持続的かつ自動的に設定するという制度設計が行われることがある。このオプションは投資の持続性を高めるが補助にかかる財政支出をコントロールするという意味ではキャップと比較すると非効率である。

 

・同じ発電方法のうちで異なる技術には異なる買取価格を設定すること

発電コストはプラントの規模や燃料の種類、プラントの存在する地域特性によって異なる。様々な場所で様々な燃料種について同時に発電事業者の利益を適切な水準に保つため、異なる買取価格を設定することが有用である。しかしそうであっても最も効率的な発電方法で発電を行う事業者の利益が最も高くなるように制度設計するのが望ましい。風力発電を例にとれば、買取水準をひとつだけ設けると風況のよい地点では過剰に利潤が発生し電力消費者の負担が重くなる。そこで風況のよりよい地点対しては異なる買取価格を設定し、FITにかかる費用を抑えながら導入量が増加するよう制度設計を行うのである。

 

加えて和田[2008]では再生可能エネルギーの普及が近年めざましいドイツにおいて地域住民がその導入に対して重要な役割を担っていることが明らかにされている。再生可能エネルギーの導入には様々な便益が存在する一方で、既存の発電方法と比較して高コストとなることが多く、風力発電の景観への影響や騒音被害に代表される外部不経済が存在する場合もある。特に再生可能エネルギーの外部不経済を受けるのは地域住民であるため、ドイツでは彼らが再生可能エネルギー導入による便益を享受できる仕組みをつくり、地域住民自らが再生可能エネルギーを導入するインセンティブを持つような制度設計が行われた。具体的には風車所有者を「風力発電機設定自治体内に居住、勤務、家屋や土地を所有、または隣接自治体に居住する者」とし、3kWh/年以内の能力分だけ所有できるようにしている。その結果、地域住民同士での意見調整に基づく地域住民主体の再生可能エネルギー導入が進み、地域の活性化にもつながっている。固定価格買取制度の導入されているドイツでは飛躍的に再生可能エネルギーの普及が進んでいることは4節で触れたとおりである。またデンマークも固定価格買取制度を導入して再生可能エネルギーの拡大を進めてきている。

日本でも、これまでの原発が「地域格差を前提に、あわせて後進地域の財政的・精神的な中央政府依存を積極的に利用して立地がすすめられてきた」(長谷川[2011])ことを反省し、地域住民を主体とした再生可能エネルギーの導入を目指し、再生可能エネルギーの普及拡大のみならず地域の活性化を指向することが望ましいと考える。

翻って日本の固定価格買取制度は「再生可能エネルギーの種類、設置形態、規模に応じて、毎年、買取価格や買取期間が決められます」としながらも、「具体的には、関係大臣(農水大臣、国交大臣、環境大臣、消費者担当大臣)に協議した上で、中立的な第三者

委員会(委員は国会の同意を得た上で任命)の意見に基づき決定します」(資源エネルギー庁[2011b])とされており、法律そのものに買取価格の具体的な数値は一切記載されていない。また現在提示されている調達価格等算定委員会委員のメンバーについてもその選定プロセスが不透明で、直接の利害関係者やこれまで固定価格買取制度に消極的であった者が含まれているとの批判がある(環境エネルギー政策研究所[2011]、河野太郎[2011])。さらに電力会社が系統安定化に支障をきたすと判断した場合、再生可能エネルギー電力の系統への受け入れを拒否することも可能である。このように日本の固定価格買取制度は最悪の場合再生可能エネルギーの普及拡大に全くつながらない可能性をはらんでおり、特に買取価格の適切な設定や再生可能エネルギーの優先接続を例外なく認めるよう改善が必要である。

 

6.おわりに

本稿では既存の原子力発電所を速やかに停止、廃炉を行い、迅速に再生可能エネルギーの普及を行うべきである、との主張についてその根拠および方法について論じた。

東日本大震災を受けて管前首相は経済産業省・資源エネルギー庁に対しエネルギー基本計画(平成226月閣議決定)を白紙から見直し、新しいエネルギー基本計画の策定に向けた検討を行うよう指示しており、基本問題委員会で議論が行われている。また、新たなエネルギー基本計画の策定にあたって一般からも意見を公募している(資源エネルギー庁[2011a])。政治的な意思決定に対し傍観者として批判を加えるだけでなく、その決定過程に積極的に参加することが必要であると提起して、本稿の締めくくりとする。




<参考文献はこちら>

電力の未来を考える(参考文献)

飯田哲也・松原[2011] ISEPブリーフィングペーパー(20111025) 原発を再稼動しなくても今冬と来夏の電力は足りる』環境エネルギー政策研究所http://www.isep.or.jp/library/1660

大島堅一[2010]『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社

環境エネルギー政策研究所[2011]『再エネ法の調達価格等算定委員会委員に不適正なメンバー案 再生可能エネルギー推進には適正人事への再考が不可避』http://us2.campaign-archive1.com/?u=d091b19b672c0c5a748427770&id=eac7954167

河野太郎[2011]『野田内閣の真意はどこに』http://www.taro.org/2011/11/post-1127.php

資源エネルギー庁[2011a]『新しいエネルギー基本計画の策定に向けた意見募集について』http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ikenbosyu.htm

資源エネルギー庁[2011b]『買取制度資料集 買取制度の解説資料』http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/documents.html

高橋洋[2011]『電力自由化 発送電分離から始まる日本の再生』日本経済新聞出版社

長谷川公一[2011]『脱原子力社会へ―電力をグリーン化する』岩波書店

和田武[2008]『飛躍するドイツの再生可能エネルギー 地球温暖化防止と持続可能社会構築をめざして』世界思想社

 

EEG/Fraunhofer ISI[2010] Evaluation of different feed-in tariff design options – Best practice paper for the International Feed-In Cooperation 3rd editionhttp://www.feed-in-cooperation.org/wDefault_7/content/research/research.php

2011 8.22〜8.31 北海道旅行まとめ

2011 8.22〜8.31 北海道旅行まとめのページです。


8.22 京都〜舞鶴 
8.22のTwilog

8.23 舞鶴〜小樽
8.23のTwilog 

8.24 小樽〜浦臼(鶴沼公園)
8.24のTwilog

8.25 浦臼〜旭川〜美瑛(おかせん里)
8.25のTwilog 

8.26 美瑛〜苫前(風W苫前)
8.26のTwilog

8.27 苫前〜稚内・宗谷岬〜クッチャロ湖
8.27のTwilog 

8.28 クッチャロ湖〜網走〜美幌(びほろ後楽園)
8.28のTwilog 

8.29 美幌〜江別(江別市森林公園キャンプ場)
8.29のTwilog 

8.30 江別〜小樽 & 8.31 小樽〜舞鶴〜京都 
8.30のTwilog
8.31のTwilog  
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