容疑者Xの献身
東野 圭吾
文藝春秋
2005-08-25


 第134回(2005年下半期)直木賞受賞作品。
 本作品はこのほかの賞を取りこの年の5冠作と言われている。
 その賞のうちに本格ミステリに与えられるものもあったが、二階堂黎人が意義を申し立て議論になったと言われている。
 一応収束したらしいが、二階堂にとっては今もその主張を曲げるということはないようだ。
 それはともかく本作品は



 「僕の言っている意味がようやくわかったようですね」
 湯川は言った。
 「そうなんです。石神はあなたを守るためもうひとつ別の殺人を起こしたのです。それが3月10日のことだった。本物の富樫慎二が殺された翌日のことです」
 靖子は目眩を起こしそうだった。
 座っているのでさえ辛くなった。
 手足が冷たくなり全身に鳥肌が立った。

ともう一つの殺人事件を起こすというトリックを使ったものである。
 トリックは面白いが
  

 どういう経緯があったのかはわからないが、石神は花岡靖子の犯行を知りその隠蔽に力を貸すことにしたのだろう。
 彼は死体を処分するだけではダメだと考えた。
 死体の身元が割れば警察は必ず彼女のところへ行く。
 そうなると彼女や彼女の娘がいつまでもシラを切り続けられるかどうかは怪しいからだ。
 そこで立てた計画がもう一つ別の他殺体を用意しそれを富樫慎二だと警察に思い込ませるというものだった。
 警察は被害者がいつどこでどのように殺されたかを次第に明らかにして行くだろう。
 ところが捜査が進めば進むほど花岡靖子への容疑は弱まっていく。
 当然だ。
 その死体は彼女が殺したものではないからだ。
 その事件は富樫慎二殺しではないからだ。
 君達警察は全く別の殺人事件の捜査をしていたというわけさ。

までしなければならなわけがどこにあるのだろうか。
 そもそも第一の殺人は法的に正当防衛が成立するものであり、情状酌量の余地が十分にある。
 その事件を隠すためにどうしてホームレスを一人殺さなければならないというのか。
 第一の被害者富樫慎二という人間性がよくわからないが、そのDVてきな性からして警察沙汰がなかったとは思われない。
 だから指紋が採られている可能性が十分に認められる。 
 さすれば、第二の被害者技師は他の殺人被害者ということが明らかになるのではないのか。
 二階堂黎人はそのへんのことを指摘したのではないか、詳しくはわからないが。
 まあいずれにしろ5冠だからねえ本作は。
 誰がなんと言っても名作なんだろうよ、きっと。