著者: 山村 美紗
ヒロインのひとりごと、一人芝居が長すぎる。
また、狩谷警部が人を疑いすぎる。
その辺が実にうそ臭いから、リアリズムを求める私たちにとっては、本当のことを言うともう読むのをやめたいと言うことになるのである。
それから、密室トリックが解けたからと言って終わりではない。
そのトリックと犯人の結びつきも必要だし、何より立証しなければならないではないか。
この辺が実に強引だ。
それにしても、トリックつまり小説で手品をすると言うことは凄い。それは、認める。
それにストーリー性を絡ませなければならないから、推理小説というものを一本書きあげると言うことは、実に大変なことではあろう。
まして、連続ヒット中の売れっ子作家と言うことであれば、かなりなハードスケジュールだったろうな。それで、早く亡くなったのだとすれば、殉職的な部分もある。
今回は、著者が京都を舞台にする高名な作家であるから、ちょうど、京都中心の旅をすることになり、京都という舞台に浸ろうと思って選んだのだった。
ところで、本作はもう10年以上も前のものであり、少し古くなったという感じは否めない。
推理小説は、まずトリックを考えなければならない。そして、犯人性だ。犯人には、動機と機会と方法がなければならない。更に、私は、リアリズムというものも要求する。
著者は、無理をしていないからいいが、著者の愛人と言われた西村京太郎氏にあっては、逮捕状もないのに逮捕したり、警察官が起訴したりと読むに耐えない記述が続いていた。
そのような本を読んだ読者は、そのとおり覚えてしまうのではなかろうか。
少なくとも日本国の法体系に則ってほしい。それが最低のリアリズムだろう。
しかし、京都を歩いてみて思ったのだが、本当に京都って、ミステリーが似合う。