
ボンジョヴィ / ハヴ・ア・ナイス・デイ(初回限定盤DVD付)
BON JOVIの3年ぶりのニューアルバムである。
実感として、「もう出たの?」という感じがするのは、
アコースティックアレンジのベストアルバムやそのDVD版、
さらに未発表曲BOXセットと立て続けに発表していたからだ。
それが満足のいくものかといえば、やや微妙ではあったが、
熱心なファン向けの代物だったことは間違い無い。
前作「BOUNCE」は、時期的に米テロの惨事から影響を受けていて、
苦境や悲劇から立ち直る勇気や強い意思とういうものが、
全面的に反映されていた作品だった。
歌詞もシリアスで現実的だが、
サウンド的にもストロングな印象で、
フライングVをダウンチューニングして
ヘヴィーなリフを弾くリッチー(G)が象徴的だった。
そのあたりで戸惑うファンも少しはいたようだが、
何よりも楽曲のクオリティーの高さが素晴らしかった。
「CRUSH」の「It's My Life」で掴んだ復活のきっかけを
見事に昇華した。
今作は意外なほど短い期間で完成されていた。
バンドとして調子にのっているから可能だったわけだが、
作品の練り不足、細部のツメに不安はあった。
結局は、様々な理由からアルバムは延期され、
一部の曲は修正、差し替えされた。
結果としてはそれが吉と出るわけだが。
先行シングルの「Have A Nice Day」を初めに聴いたときは、
正直に言って、これはちょっと肩透かしだなぁという気分だった。
なぜかといえば、It's My Life,Livin' On A Prayer,Everydayという
自分たちの曲からの拝借があからさまだったからだ。
狙ったとすればビジネス臭いし、狙ってないとすれば才能の枯渇だろうか。
安直な「赤いスマイルマーク」も本当にジャケットになっていいのだろうかと思った。
そんなことも、もしかしたら余計な心配かもしれないと思ったのは、
発売直前あたりからだ。
実は、スペシャルイベントに当選し彼らに直接会ってきた。
そこで披露された「Have A Nice Day」が実にライブ栄えしたのだ。
(演奏自体はTV収録の関係でカラオケだったのだが。)
ひょっとすると「It's My Life」以上の曲に成長するかもしれない。
これで見方が変わってきた。
そして、アルバムを買いに行った時に、
今回の「アルバムジャケット」の本当の意味と影響力を強く感じた。
街頭やショップにあの「赤いスマイルマーク」がずらっと並んでいるのである。
他のどのアルバムよりも目立っている。
そう、アイコン=象徴、偶像である。
誰でも認識できる単純なライン、もっとも目立つ赤いカラー、
皮肉めいたスマイルのモチーフ。
あのマークひとつで「BON JOVI=Have A Nice Day」が連想される。
好きか嫌いかは別にして、優秀なアイコンの果たす役割や効果は想像を超える。
もちろん、あのPVをみてもそれはなんとなく予感できのだが、
街中に溢れるジャケットを見て思わず鳥肌が立った。
さて肝心のアルバムの内容である。
全体的には前作よりも「CRUSH」に近いナチュラルさで、
前作にあったような必要以上の力みがない。
それでいて派手すぎず地味すぎず、明るく軽快にロックしている。
曲の構成やアレンジも、リッチー(G)が
最近の音楽も良く聴くと言っていたように、
今のアメリカにおける80年代志向を持った
若手ポップロックバンドを連想させる部分もある。
例えば、Jimmy Eat World,All American Rejectsあたり。
まあ、強烈なキラーチューンというのは見当たらないが、
(あえていえば「Have A Nice Day」かな)、
捨て曲らしい捨て曲がなく、どの曲もかなりメロディーが耳に残る。
現在のUSロック代表としての彼ららしさが発揮された充実作である。
日本盤のボーナストラック3曲もいつにない充実ぶりで、
本編に入っていても全然おかしくない。
それが聴き終えた後の満足感のアップにも繋がっている。
おれなんかがここで言わなくても、
じゃんじゃん売れまくっているようだが、
(オリコン総合チャート1位獲得の快挙!!)
HR然としていた80年代の彼らしか認めないオールドファン、
大衆性の高い洋楽にはあえて手を出さない通気取り、
などにもぜひ聴いて欲しい素晴らしい内容だね。
聴かず嫌いは損をするよ・・・。
ちなみに個人的に気に入っているのは、以下ような感じ。
やはり後半が充実しているなぁ。