January 26, 2007

アイリス

病が彼女を変えても、愛おしさは変わらない
IRIS



■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: ジュディ・ディンチ
    ジム・ブロードベント
    ケイト・ウィンスレット
    ヒュー・ボネヴィル
    ペネロープ・ウィルトン
    ジュリエット・オーブリー
    クリス・マーシャル
    サミュエル・ウェスト
監督: リチャード・エアー
原作: ジョン・ベイリー
2001年 UK/アメリカ 91分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■


初見は一昨年なのに、
感想を書きそびれたままになっていて、
再見した時も、何故か書くタイミングを外していた。
昨夜、再度TV放送されたので、
是非に、と夫を誘って一緒に観た。



物語は。

1950年代。英国、オックスフォード大学。

類稀な知性と健康的な美貌に恵まれ、
大胆で奔放な言動のアイリス・マードックに、
一目で恋をしてしまった、ジョン・ベイリー。
彼は講師だったが、全く地味この上ない存在だった。

アイリスを取り巻く「友達」は枚挙に暇がないのに、
何故か彼女はジョンを遠ざけることがない。
彼女自身の本心を測りかねるジョン。
ジョンは、望み薄なことを承知しながらも、
彼女への想いを棄てられなかった。

やがて、ふたりは結婚し、
長い人生を共に歩んできた。
アイリスは
「英国で最も素晴らしい女性」と言われるほどの
尊敬される文筆家となっていた。

だが、ある時、
長年、とりわけ言葉を大事にして、
膨大な量の文章を書いて来たにも関わらず、
小さな子どもでさえ知っているような、
簡単な単語が思い出せなくなってしまう。

医師の診断の結果は、
回復不可能な認知症だった。



出会いから別れまで、
いつもアイリスの傍らにいたジョン・ベイリーの
原作が映画化された、実話がベースの作品。

出会った頃の若き日のアイリスとジョンと、
現在の老齢に達したふたりを、
交互に切り替え、織り交ぜて、
お話は同時進行で綴られていく。
過去と現在が切り替わるシーンは
前後のイメージがいつも巧く繋がり、
時間の経過を感じる一方、
描かれない年月のふたりを想像させるものがある。
雑然とした家の中や、
交わされる言葉や視線だけで、
このふたりがどのように生きてきたのか、
想像できてしまう。

次々に書きたい題材を作品にしてきたのに、
簡単な言葉がわからなくなることで、
認知症が発覚するアイリス。
病状が悪化の一途を辿り、自我が見失われても、
庇うように、大きさで包み込むように、
大事な妻、愛する女を陰に日向に、
懸命に守ろうとするジョン。

40年経った今でも、
アイリスの本心を掴み損ねている不安を抱えつつ、
言葉を、自分を失っていくアイリスを、
献身的に支えながら、回復の希望を棄てない。



普段なら、静かな英国映画は
途中で遠巻きにな気持ちになってしまう夫が、
最後まで真剣に観ていた、その心中には、
たぶん、わたしと似たような思いがあったことだろう。

年齢をさらに重ね、
回復不可能な病に冒されてしまった時。
自分も同じだけ年齢を重ね、
若い頃のようには動けなくなっている時。
それでも、お互いを支えあい、
愛しあい、助け合う…
わたしたちに、それができるだろうか。


今、この年齢で想像することが
実際に起こるかどうか、できるかどうか、
その時が訪れなければわからないけれど、
今、すぐ傍にいる相手が、
自分が最後まで頼り、支える人であることは、
変わりない事実なのである。



◆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とにかく、主演の4人の演技が素晴らしい。
もちろん、この人たちの演技力に、
今更気がついたわけではないが、
やはり書かずにはいられない。

老齢のアイリスのジュディ・ディンチ、
同じく、ジョンのジム・ブロードベント。
若き日のアイリスのケイト・ウィンスレット、
同じく、ジョンのヒュー・ボネヴィル。
いくつもの映画賞で評価されているのが、
当然の表現力だ。

ケイト・ウィンスレットはジュディ・ディンチに変わったが、
ジョンは1人の人が演じているのか、と思うほど、
ヒュー・ボネヴィルとジム・ブロードベントは
本当によく似ている。
1人の人間を時間を隔てて、別の俳優で描いているのに、
それを全く感じさせないのは、
顔や姿かたちの酷似だけではないだろう。


ほかに、
『ハワーズ・エンド』『キャリントン』のサミュエル・ウェスト、
『ラブ・アクチュアリー』『サハラに舞う羽根』の
クリス・マーシャル、
『GO NOW』『ナイロビの蜂』のジュリエット・オーブリーほか
英国作品や、英国が題材の作品で、
お馴染みの顔がそこかしこに登場している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◆



tinkerbell_tomo at 09:37│Comments(8)TrackBack(6) 洋画【あ】 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 人生の最期に愛があれば〜『アイリス』  [ 真紅のthinkingdays ]   January 26, 2007 14:15
 イギリスの女性作家アイリス・マードック。大英帝国勲章を授与され、デイムの 称号を得た偉大な作家であり、哲学者でもあり、「イギリスで最も素晴らしい女性」と 称えられていた彼女は、アルツハイマーに侵されその人生を門??-a
2. アイリス  [ ちょっとお話 ]   January 27, 2007 22:41
お友達がこの作品を観るということで 感想をこちらにもってきました。 テレビ放映・・先日あったのですね。 私はBSは観ることができないけれど、 これはビデオ持っているから・・いいわ・・♪ アイリス     .)
3. アイリス  [ 終日暖気 ]   January 27, 2007 23:00
『IRIS』 2001年イギリス 人間は愛し合う。愛すると慈しむ。 先日BSで放映されたのを録画して、鑑賞しました。 1時間半程度の映画のなかに、胸に響くいろいろなものが凝縮されている真摯な作品でした。(最近、涙腺がヨワヨワで・・。歳か。) 役者もみなよかっ...
4. アイリス  [ 映画を観よう ]   January 30, 2007 01:06
松竹 アイリス IRIS イギリス 2001年 ジュディ・ディンチ、ジム・ブロードベント、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・ボネヴィル、ペネロープ・ウィルトン 監督・脚本:リチャード・アール  音楽:ジェームズ・ホーナー 『ビューティフル・マインド』
5. アイリス  [ あず沙の映画レビュー・ノート ]   July 09, 2009 10:34
2001 イギリス 洋画 ラブロマンス 作品のイメージ:ほのぼの、切ない 出演:ジュディ・デンチ、ジム・ブロードベント、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・ボナヴィル アイルランド出身の英国の哲学者・作家・詩人であるアイリス・マードックの半生を夫のジョン・ベ...
6. アイリス  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   January 26, 2010 21:10
 コチラの「アイリス」は、イギリスを代表する女流作家アイリス・マードック(1919〜99)をイギリスを代表する2人の女優ジュディ・デンチとケイト・ウィンスレットが競演したバイオグラフィー映画です。この2人がかのアイリス・マードック女史の若かりし頃と、アルツハイマ...

この記事へのコメント

1. Posted by 真紅   January 26, 2007 14:23
悠雅さま、こんにちは。TB失礼します。
旦那さまとふたりでご覧になったのですね。いいですね〜。。
この映画、自分(もしくは自分たち)に置き換えて考えてしまう作品ですよね。
人生の最期に、自分がどうなっているのだろう、、とか、その時誰と一緒にいられるのだろう、、とか。
ジュディ・デンチもケイトも、本当に素晴らしい役者さんですよね。
オスカー常連、今年もふたりが揃ってノミネート、納得です。
ではでは、また来ますね。
2. Posted by 悠雅   January 27, 2007 09:20
◆真紅さま
こんにちは。お返事遅くなってごめんなさい。
いつもTBとコメントを先にいただいて申し訳ないです。

偶々、珍しく放送の時間に家に居たので、
これは是非、と誘って一緒に観たのだけれど、
いいとか何とかよりも、お互いに切実なものを感じて、
やがて来る未来を、不安な思いで想像することになりました。
何も認知症に限らず、予防のできない病に、
いつ冒されてもおかしくない年代であり、その時、
お互いを支えあって生きていけるのか、不安を感じてしまいます。
けれどせめて、少しでも若くて元気なうちは、
仲良く暮らしていたいね、という言葉にならない確認をした気もします。

この作品の主役4人、本当にすばらしい演技でした。
作品の完成度は、脚本も撮影も当然だけれど、
やはり俳優の演技に負うところが大きいですね。
3. Posted by みみこ   January 27, 2007 22:53
こんばんは。
ヒュー・ボネヴィルとジム・ブロードベント
は似ていましたよね。
若いときの雰囲気そのままでしたもの。
これは映画館で見たのですが
男性一人という方も結構いましたよ。
ご夫婦でご覧になるというのは理想的な
カタチですよね。うらやましいわ〜〜
うちはまったく別方向で・・・笑
実話というのは、やはり心に響いてきますよね。
新作色々ご覧になっていますね。
また何か観たおりにはお邪魔しますね〜〜
4. Posted by 武田   January 27, 2007 23:20
悠雅さま、こんばんは〜♪
コメントいただき、ありがとうございました。
ご主人さまとご覧になられたのですね!
結婚してから8年くらい、わりとバタバタと色々なことがあって、自分たちの未来に置き換えてシュミレーションする機会ばかりだったので^^;、現実問題(お金や施設や家族の拘束時間など)がやたらと頭に浮かんできちゃったのですけど、映画ではあくまでも美しい愛情に重きを置いた描かれ方がされていたので良かったです。でも、家の中はとりあえずシンプルにしておこう!と思ってしまいました私も(笑)
でも、自分なくなっていくのは怖いですね。
掃除と一緒に、脳のトレーニングが必要かも・・^^;
5. Posted by 悠雅   January 28, 2007 10:13
◆みみこさま
こんにちは。
ヒュー・ボネヴィル、ほかにどんな作品に出てるんだろうと思ったら、
観た作品もいくつもあるんだけど、全く思い出せず…
違うスタイルで登場したら、わからないかもね。

偶々、最近のわが夫婦の傾向で、
何となく夫が観てくれそうな気配だったので、誘って正解。
でも、これはタイミングの問題で、今回はラッキーでした。

新作、いい作品が目白押しで、ついあれこれ足を運んでます。
何かご覧になったら、お待ちしてますね。
シネコンで、ハリー・ポッターのポスターを観て、
あの顔なのに、ニタニタしてしまった悠雅でした。
6. Posted by 悠雅   January 28, 2007 10:20
◆武田さま
こんにちは。
そうか…武田さん、8年なんだ…
わたしは武田さんのちょうど3倍、主婦してます^^;

今まで、決して楽に暮らして来てないけれど、
両方の両親や子どもたち、親戚も、有難いことに
大きな病気や怪我もなく、過ごしてきたので、
ここに来て、予測不可能な健康面に不安が募り始めました。
身体が不自由になることも怖いけれど、自我が失われることを
一番恐れているかもしれません。

そう!
これを観て夫が「脳トレ、するかな」とか言い始めました。
わたしは、それより先に掃除だ!とまだ言うてますが。
7. Posted by miyu   January 26, 2010 21:12
確かにこれは想像するととても考えさせられる映画なのですが、
同時に想像しきれない部分ってのがどうしてもありましたね。
それは考えたくないってのもあると思うのですが、
なんかやっぱり悲しいお話でしたよね〜。
8. Posted by ◆miyuさま   January 26, 2010 21:59
お若い方には、ちょっと想像しきれないものがある作品でしょうね。
わたしもきっと、miyuさんくらいの頃なら、今とは違う感想だったでしょう。
わたしの年代になってようやく、自分にも起こり得るのだと感じはじめたので、
悲しいというよりも、やや切実に捉えて観た作品でした。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔