May 08, 2007

カイロの紫のバラ

だから、映画が好き
THE PURPLE ROSE OF CAIRO



■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: ミア・ファロー
    ジェフ・ダニエルズ
    ダニー・アイエロ
    エド・ハーマン
    ダイアン・ウィースト
    ヴァン・ジョンソン
監督: ウディ・アレン
1985年 アメリカ 82分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■


久々に行ったレンタル・ショップで、
他の作品を探していたのに、これが見つかった。
今まで、同じ店で探しても見つからなかったのに、
何故か、今頃見つかった。
これは、観るべき時なのか、と借りて来た。



物語は。


1930年代、大恐慌時代のアメリカ、ニュージャージー。

シシリアは、地元の小さなダイナーで働いている。
僅かな給料は、失業中の夫が巻き上げ、
酒と遊びに使ってしまい、
挙句は酔って彼女に暴力を振るったりする。
優しくされたことも愛されたこともなく、
辛い現実を寂しく生きるシシリアにとって、
唯一の楽しみは映画を観ることだった。

今、映画館にかかっているのは、
『カイロの紫のバラ』という映画で、
大好きな俳優ギルが冒険家の役で出演している。
この映画がとても気に入ったシシリアは
知らず知らず、5回も映画館に通い、
大好きな彼の表情を夢見る思いで眺めていた。

その時、
冒険家、トム・バクスターが、
スクリーンの中から、シシリアを見つめ、
物語を放棄して、
彼女に語りかけながら、客席に降りて来た。
彼は映画の中から、
自分をずっと見つめているシシリアを見ていたのだった。



映画の中の人物が
どうしてもそこで生きているように思えてならない。
もし、同じ場所に行ったら、
彼の姿を探してしまうんじゃないか・・・
そんな思いをしたことは、1度や2度ではない。
っていうか・・・
いつもそんな幻想を抱いては、
いつまでも妄想が離れないことばっかりだ。

なので、
シシリアの現実のようなことはないけれども、
足繁く映画館へ通い、
スクリーンをあんな表情で観ているシシリアが
自分に重なって仕方ない。
まして、その彼が、
彼の映画を観ていた自分を見ていてくれたばかりか
スクリーンから遁走、自分の手を取って、
映画館から逃げ出すのだ。
もし、そんなことがあったら・・・と
観ている側から、いくつかの顔を思い起こしてしまう。

普通なら、よい子たちのお話になりそうだが、
大人の恋と夢と現実を、
とても良い匙加減で観せる物語なのである。
虚構の中で夢を生きる男の浮世離れ感と、
閉塞感に満ちた日々を生きるシシリアの、
常に現実を忘れない生真面目さ。
その現実は、つらくもほろ苦いのだけれど・・・


たとえ、「端役」であっても
彼がいなければ完結しない映画なのだからと、
映画は演劇の如く、その場で展開を止め、
キャストたちが好き勝手に喋り始める。
観客や興行主や製作者はこの事態に困り果て、
マスコミも動き出す。
やがて冒険家を演じた俳優もやってきて・・・
二重三重に、虚実入り組む混乱は、
胸の詰まるラストに導かれる。
映画好きには、嬉しいような、
気恥ずかしいような思いも残しながら・・・


スクリーンを見つめるシシリアが、
作品全体で何度か登場するのだが、
その場面ごとに、
ミア・ファローの表情が
そこにあるシシリアの感情を雄弁に語る。
シシリアにとっての「映画」とは、何なのか。
物語の最初と最後では、
明らかに違ったものであると、それは語っている。

それでも・・・だからこそ、
彼女はまた、映画館へ行くのだろう。
そして、わたしたちも。



tinkerbell_tomo at 18:09│Comments(6)TrackBack(2) 洋画【か】 

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1. カイロの紫のバラ  [ カイロの紫のバラライカ ]   May 08, 2007 20:32
今回のこじつけBBMは「カイロの紫のバラ」。ご覧になれば分かるとおり、ブログのタイトルはこの映画から拝借しました。どこ
2. カイロの紫のバラ  [ 象のロケット ]   May 14, 2007 23:30
1930年代半ば、不況のニュージャージー。 働かない夫に何の期待もなく、ウェイトレスの仕事で生活を支える妻のシシリア。 彼女にとっては映画を見ることが唯一心の支えで、今夢中なのは『カイロの紫のバラ』。 そのことに気付いた映画の主役トム・バクスターが、何とスク...

この記事へのコメント

1. Posted by coton   May 08, 2007 19:23
わ〜い、姐さん、やっと観らはった〜♪

なぁ、どうよ、こんなことが本当に起ったら。
誰に出てきてもらいたい?とか、どっちを選ぶ?とか
ドキドキバトンネタになりそうな映画やったやろ(笑)
この映画をテレビで観た直後に、たまたま劇場でやってたあの男のいったい何度目だ?な映画を観に行った時は
そら、出〜てこい、出〜てこいと 念をおくったもんですがな。
出てきたら出てきたで、なんせあのキャラ
えらいことになりそうやけど
Pくんなら振り回され甲斐もあるというもの(爆)

それはさておき、アレだけ夢物語が続いてたのに
ラスト、おさまるべくおさまってしまったことに
妙にシビアな現実性を感じてしまい
より切なく感じたものです。。。
2. Posted by かいろ   May 08, 2007 21:07
悠雅さん、お久しぶりです。ご無沙汰してしまって申し訳ありません(読み逃げばっかりしてるんです〜)。こちらからもTBを送らせていただきましたのでよろしくお願いいたします。

飛行機の中でシシリアを思っているギルは、あの後彼女のアドバイスどおりに英雄的な役を演じたのかな。もしそうだったとしたら、やっぱりシシリアはその映画を観たんだろうな。あの笑顔を浮かべながら。うう、思い出すと苦しいです。

ちなみに、上にcotonさんも書かれていますが、わたしも念を何度も送ったもんでございます〜(浮気者なので誰かにひとすじ!というわけではないんですけども)。この映画の場合わたしならトムを選びます。でもギルも好きだけど☆
3. Posted by 悠雅   May 08, 2007 22:45
◆cotonさま
わ〜〜ぃ!姐さんが映画ネタにコメントくれはった!
嬉しいわ〜〜♪

いや…ほんま、ほんま!念を送る気持ち、めっちゃわかる。
「イニスとヒースならどっちがいい?
 Mr.ダーシーとコリン・ファースならどっちがいい?
 待て。Phantomだったら嬉しいより困らない?…」とか
わたし、かなり真面目に考えながら観てしもた…
処置なし。

夢物語が広がる時は、思いっきり夢を見ながら、
やがて来るラストをあれこれ想像していたら、
ほとんど想像通りのラストになって・・・
わかっていても、やっぱりほろ苦い思いがする。
でもね、
出会わないよりも、出会えた彼女は幸せだったんだと思うし、
それでもやっぱり、彼女は映画館へ通い続けるって思うの。
4. Posted by 悠雅   May 08, 2007 22:53
◆かいろさま
こんばんは。読み逃げはお互い様。こちらこそ、ごめんなさいです。
コメントをしたつもりだったのですけど、
消えてしまっていて、重ね重ね申し訳ないです。

あの終わり方は、その後のシシリアやギルを想像させますよね。
彼女は胸に熱い想いと、苦いものを抱きながらも、
スクリーンに登場するギルの姿を待ったのでしょうね。
彼も彼女も、出会えなかったよりも出会えてよかった。
きっとそう思える出会いだったと思うし、
大きな意味では、いつまでも繋がっていられる幸せのように思います。
苦しいけどね…

この次、映画館へ行って、好きな人が出て来たら、
やっぱり「さぁ、出ておいで〜」と念を送りそうです。
5. Posted by aki   May 09, 2007 09:24
悠雅さん、こんにちは♪
私もイニスとヒースどっちがいいかなぁ…なんて
真剣に考えてしまいました(恥)

こんな妄想を随分前からしてた筈なのに、
映画になるとくすぐったいような気分になります。
DVDで観たので、これを映画館で観たらもっと楽しかったかも…なんて思ったり。

現実が厳しい中でもなぜかマイペースな自分を
そのまま突き進んでいく主人公。
好きな事がある幸せが彼女を強くさせているのかも。
映画ってやっぱり素敵だ!と思わせてくれる作品ですね。
それにしてもたまには私の元にも出てきて欲しい^^
6. Posted by 悠雅   May 10, 2007 11:23
◆akiさま
こんにちは。お返事が遅くなってばかりでごめんなさい。

こういう映画を観せられると(勝手に観たんですけど)
重なって見える自分が気恥ずかしい一方で、
共感する部分が多くて、やっぱりこれは映画好きのための映画だ、と
思って安心したりします。
映画館で観たら、きっともっと楽しかったでしょうね。
でも・・・
イニスとヒースだったら・・・って真面目に考えるの、やめなくちゃ(笑)
それとも、強く願えば、思いは叶うかしら…

好きなことがある幸せ、というよりも、
夢を見ることができる幸せ、なのかもしれません。
彼女も、わたしたちも。

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