March 03, 2010
フロスト×ニクソン
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出演: フランク・ランジェラ
マイケル・シーン
ケヴィン・ベーコン
レベッカ・ホール
トビー・ジョーンズ
マシュー・マクファディン
オリヴァー・プラット
サム・ロックウェル
監督: ロン・ハワード
脚本: ピーター・モーガン
2008年 アメリカ 122分
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観たい観たいと言いつつ、近くで上映がない作品は
DVDで観れることが多いのに、
結局WOWOWの放送まで待ってしまうことだらけの昨今。
この作品も是非観たかったのに、
いつもどおり、遅れ馳せながらWOWOWにて。
物語は。
1974年、アメリカ大統領ニクソンは、
ウォーターゲート事件に無関係だとの主張を曲げないまま、
任期途中で辞任した。
オーストラリアのTVで、バラエティ番組などの司会をしていた、
英国人デヴィッド・フロストは、自らのステータスを上げようと、
政界から引退して3年のニクソンにインタビューを申し込む。
ニクソン側が承諾したことで対談は実現するが、
交渉の第一歩から法外な出演料を要求されたばかりではなく、
3大ネットワークはじめ、どのTV局にも
フロスト側の条件が飲まれず、放送の目処が立たなかった。
だが、どうしてもこの仕事をやり遂げたいフロストは
私財を投じ、番組の自主制作に踏み切るのだが・・・
ウォーターゲート事件の引責辞任から3年後、
事件について沈黙を守るニクソン元大統領に
インタビューを申し込んだ、バラエティ番組の司会者、デヴィッド・フロスト。
その発端、お互いの陣営の作戦、それぞれの事情から
放送に漕ぎ着けられるところまでをスリリングに描く物語。
一介の司会者フロストにとって、
大きな標的を捉えたことは素晴らしかったが、
その過程は、簡単なものではなかった。
どの放送局にも放映を断られ、私財を注ぎ込むほかない中、
仲間たちとともに、インタビュー内容やアプローチの仕方を検討するフロスト。
一方、迎え撃つニクソン側も、並大抵の人物ではなく、
ブレーンたちもとても優秀である。
4回にわたって行われるインタビューの撮影だが、
そのたびにフロスト側は思うようなインタビューにはならない。
そんなに簡単に落ちるようならば、
政治家としてまして、大統領などという役職が通用するはずもないのである。
そんな様子を、それぞれの陣営について、
時折、現在の時点での関係者の声も挟みながら描かれる。
ウォーターゲート事件、と聞くと即座に思い浮かぶのは「盗聴」だが、
実は、事件がいったいどんなものであったのかの記憶が酷く曖昧だ。
当時、まだ中学生であったわたしにとって、
毎日のように報道されたその事件と、
その後の大統領辞任など一連のニュースは、
特別興味が持てるものではなく、
見ているようでも詳しいことは何もわからず終いだった。
ニクソンが任期途中で辞任したことも、
言われるまですっかり忘れていたことだった。
そんなわたし(を含め、その後に生まれた世代も)など、
このお話についてゆけるのだろうか、と
冒頭、矢継ぎ早に畳み掛けられる、事実の数々を見ながら、
かなり不安になったりもしたのだが。
確かに、ウォーターゲート事件に絡んではいるものの、
事件の真相を解き明かすことが目的ではなく、
そのインタビューのために作戦を立てて実行する過程を見せる作品なので、
事件について、詳しく知る必要がなかったのが有難い。
事件の経緯や真相はともかく、
引退したとは言えども、一筋縄ではいかない元大統領と、
何とか事件の真相を引き出し、勝ちを収めたいフロスト、
それぞれを支援するブレーンたちの作戦や思いをメインに据え、
真剣勝負の一部始終を追う物語として、
不謹慎かもしれないと思いつつ、息詰まる攻防を面白く見守っていた。
終盤になればなるほど、その攻防は緊迫感を増し、
ひと時たりとも目が離せない展開になってくる。
これまでの主張を変えず、今後の人生を守ろうとする男と、
海千山千の強かな男から、欲しい答えを引き出そうとする男の、
思えば、どちらに分があるか最初からわかっていそうな設定から、
必死に動き回るフロストやブレーンの様子や、
ある意味、驚きの終盤までの展開も、
それぞれの、その時々の表情や態度の変化も本当に見事。
こんなに脚本が巧くて見ごたえのある「サスペンス」は
久しぶりに観たんじゃないかと思う。
それにしても。
昨年度のアカデミー賞で、作品、監督、脚色、編集、主演男優と
5部門でのノミネートとなった作品。
違う顔のはずなのに、途中からニクソンにしか見えなくなる
フランク・ランジェラといい、
(特に、インタビューの最後なんて、どう言ったらいいでしょ)
野心溢れるフロストのマイケル・シーンといい、
それぞれの陣営の、トビー・ジョーンズ、ケヴィン・ベーコン、
マシュー・マクファディン、オリヴァー・プラット、サム・ロックウェル・・・
みんなそれぞれにとっても巧いのよね。当たり前だけど。
元々は、ピーター・モーガンのオリジナル戯曲の舞台作品で、
映画化にあたり、彼自身が脚本を書き、
ニクソンとフロストを演じていた2人が、そのまま起用されているからだろう。
その、板に付いた具合が半端じゃないのね。
ブレーンたちも、みんな巧くて個性的な人ばっかりで、
その顔ぶれだけを見ていても、贅沢してる気にもなるくらい。
『プライドと偏見』を観たとき、個人的な趣味で申し訳ないけど、
「この人、Mr.ダーシーじゃないわ!!」と思ったマシュー・マクファディン、
こういう役なら、とってもいいじゃないの。
『オスカー・ワイルド』のロビーも『クィーン』のブレア首相もよかったけど、
この、デヴィッド・フロストのマイケル・シーンもやっぱりいいよね。
結末がわかったお話ではあるけれど、
これはいろんな意味で、何度観ても面白い作品。
流石、作品賞や脚本賞にノミネートされるだけのことはある、
とっても見ごたえのある一級品、だと思いました。
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この記事へのコメント
政界復帰を画策するニクソン、
私財を賭けてまで勝負するフロスト、
二人の男の心理作戦のバトルは息詰まるものが
ありましたね〜
最後には孤独な老いたニクソンの姿が哀れにさえ
感じたり〜ほんと、似てないのに違和感がない〜
これぞ役者だとフランク・ランジェラに感心した
ものです。
日本での舞台はニクソン(北大路欣也)フロスト(仲村トオル)が演じてましたが、
友達に誘われたけど生憎多忙な時期で
私はパスしたのが今も残念です。
やっぱり今頃、WOWOWでの鑑賞になりました。
でも、やはり噂に違わず、見ごたえ充分の作品でしたね。
今まで観なかったことがもったいなかったです。
息詰まる攻防戦に、筋書きとしての面白さがありましたが、
一方では、ニクソンの強かさと本音に迫る人間ドラマでもあって、
その描き方、演じ方が、作品を更に強固なものにした感がありました。
日本の舞台…少々微妙なキャスティングではありますが、
どうだったのでしょうね。
わたしは、もし台詞がわかるなら、オリジナルの2人で舞台が観たい!と
この作品を観ながら思っていました。
というか、マイケル・シーンって割と好きな役者さん^^
この映画の心理戦、面白いです。
老獪が勝つかどんでん返しなのか。 駆け引きも十分に楽しめました。
インタビューに至る経緯から、実際の攻防戦、
どうやら脚色らしいある出来事の後の駆け引きなど、
強い力で引っ張られてるように、釘付けになりました。
マイケル・シーン、わたしも好きな役者さんの1人。
もちろん面白そうな作品だからだけれど、
彼が出演しているから、余計観たかったかも(笑)
こういうのをハリウッドでもメジャー色の強いロン・ハワードが撮っちゃうのが面白いですね。
日本でロッキード事件を同じようにやろうとしても、まず企画通らないし、アメリカ映画の奥深さを感じます。
そんなことがあったのかと思う一方、
きっと舞台も面白いだろうと思わせる脚本もドラマも面白くて、
役者さんたちが達者なのもとても好印象。
そうなんですよね。この監督作品とは驚きでもありました。
日本でなら、何なら面白い作品になるのか、全く無理なのか…
わたしもあれこれ思い巡らしてみたけれど、何も思い当たりません。
何かできたら面白いでしょうにね。