June 21, 2012

永遠の僕たち

葬式ゲーム。自然観察者。敬意のお辞儀。
Restless








■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: ヘンリー・ホッパー
    ミア・ワシコウスカ
    加瀬  亮
    シュイラー・フィスク
    ジェーン・アダムス
    ルシア・ストラス
    チン・ハン
監督: ガス・ヴァン・サント
2011年 アメリカ 90分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

2011年12月末に公開された作品をDVDで。
ちょっとくらい遅れても、スクリーンで観たかったなぁ、と思うけれど、
(そのくせ、DVDになって暫く経つのに、すっかり忘れてた、って!)
ともかく、観れてよかった。
とても素晴らしい作品。これはかなり好きだ。



物語は。


交通事故で両親を一度に失い、同時に臨死体験もした少年イーノック。
彼はそれを受け止めきれず、生きることへの執着を見失っていた。
自分のために力を貸してくれる伯母に反発すると同時に、
学校へも行かず、見知らぬ人間の葬儀に紛れ込むことを繰り返していた。
そんなある日、葬儀の参列者の少女アナベルに出会い、
言葉を交わすうちに、彼女は余命3ヶ月であることを知る。
それまで、彼の話し相手は、
イーノック以外には誰の目にも映ることがない、
日本人の特攻隊員であったヒロシの亡霊だけだったのだが、
残り僅かな命を、大いに楽しみながら生きているアナベルに次第に惹かれ、
2人で心が通い合う時間を過ごすことを覚えて・・・



死に囚われ、生きる欲求を見失っている少年と、
残り僅かな命を精一杯楽しんでいる少女の3ヶ月のラブストーリー。
ただ2人で語らい、見つめ合うだけで幸福な、
10代の少年少女らしい、初々しく瑞々しい恋の様子と、
その脇でひたひたと、でも確実に忍び寄る別れの時。
「死」が2人を結びつけ、引き裂くことになる。
心を閉ざす少年が唯一素直になれるのは、
誰の目にも映らない、死の世界の住人・・・

そんな風に書くと、とても陳腐なお話のように聞こえるかもしれないが、
常に深刻な「死」を扱っているにも関わらず、このお話から伝わってくるのは、
重さよりも軽やかさ、悲しみよりも爽やかな風合いだ。
それは、美しい風景や、心惹かれる音楽や、
主人公たちが可愛いから、というだけの理由ではない。
静かにして雄弁な佇まいの人物たちが、
過不足のない言葉と、共に心象を語る映像の中に居て、
何気ないエピソードを重ねることで彼らの内心や背景を表現し、
その描き方がとても美しく、詩的なのだ。
お話が流れている間に気付けなくても、
後から、「ああ、あの場面はそんな意味が含まれていたのね」と
気付くことも多いんじゃないだろうか。
たとえば、ところどころに印象的に使われている赤い色が、
現実世界で不安定に揺らいでいる「生」を象徴するようで、
全く、「死」と隣り合っているのに、
強い生命力を感じさせてくれていたのだ、ということのように。


お話は、アメリカの10代の少年少女の恋を中心に描かれるのだが、
ここに、とても重要な役割で登場するのが、
太平洋戦争の特攻隊員として戦死したヒロシという男の亡霊。
憑依されているのではなく、守護霊のようなものか。
臨死体験をしてから見えるようになったのだが、
イーノックと語り合い、海戦ゲームではいつもイーノックを簡単に打ち負かす、
心優しくも、戦いには厳しい日本人である。
生きた年代や環境が違うが、共通する思いを持つ、ちょっと年上の男だ。
ヒロシは、イーノックにとってそうであるように、
この作品にとってもかなり重要な人物である。
そんなヒロシを演じるのが、
この作品の空気や美意識に全く違和感なく溶け込んでいる加瀬亮。
いや、もう、この役を加瀬くんが演じてくれて、
加瀬くんだからこそ、この空気や表情や仕草が生きて、
この軽やかさと優しさが表現できたんじゃないかと思うの。
幼少期をアメリカで暮らした彼にとって、英語は特に難しいわけではないだろうが、
とても日本人に聞き取りやすい英語を話しているな、と思ったら、
何と、「日本人が話すような」英語を話した、って!?
英語耳のないわたしなんかでも、
聞き取りやすい(つまりは、学校で習ったような発音)だったはずだ・・・
何か、そんなことまでできてしまう上に、
日本の要素をたくさん併せ持った佇まいが美しくて、
寡黙なだけに、その時々の表情の変化が雄弁で・・・
役柄の魅力もさることながら、
本当に素敵な俳優さんだわよ、加瀬くん。

主人公を差し置いて、お話が後先になったけれども、
子供だとは言い難い、大人の一歩手前のカップルが、
瑞々しくて繊細で、とても素敵な空気を纏っていて、
彼らの3ヶ月が幸福になるように、全力で守ってやりたくなる2人。
イーノックには、ヘンリー・ホッパー。
後から知ったことだが、あのデニス・ホッパーのご子息だ。
実は、観ている間じゅう、誰かに似てるぞ、とは思っていたものの、
誰であるかに思い至らず。
で、デニス・ホッパーの、と聞いて、そうだったか!と腑に落ちた。
実は、DVDには『サイレントバージョン』も収録されていて、
1つのシーンを撮影した時に、
監督は俳優たちに「無言の演技」を要求したのだそうで、
それをサイレント形式で繋いだ一篇を観ることができる。
本編再生後、続けてそれを観たので、
彼の表情の1つ1つにお父さんの陰が重なってしまったりもしたが、
でも、若さのせいか、繊細さが何より際立っているのも同時に気付く。
彼は、いい作品でいい役柄を与えられていい仕事ができたのでは。
また、
アナベルのミア・ワシコウスカ。
聡明さと強さを感じさせるアナベルにぴったりの容貌だが、
もちろん、それだけではなく、
本当に、その町のその空間に生きているような、嫌味のない自然さがいい。
彼女はこれから先、たくさんの映画に出演して、
ますます実力を発揮してゆくうちの1人だろう。


3か月後に死を迎えるという設定で、
何だか運よく、それがひっくり返っちゃいました、なんていう展開が
待っているわけでもないのに、だからこそ、やっぱり悲しく切ないのに、
心穏やかに微笑みが浮かんでくるラストが本当にお見事。
(くどいようですが、ここでも加瀬くんが素晴らしいし、
最後の最後は、ヘンリーくんがまた素敵です)
レンタルなのに、特典が付いていてラッキーだったDVDでは、
脚本家のインタビューも収録されていたが、
本当は長い台詞で語らせるところ、僅かな静止画で表現する監督に、
「描きすぎないこと」を学んだという若い彼の言うとおり、
(カットされた)未公開映像は、
やはり本編には特に必要なかったと思うのである。
もし、これからDVDでご覧になる方があったら、
そのあたりもご覧になるとよろしいかと。

わたしは、スクリーンでは観ることができなかったけれども、
2012年に映画館で観ることができた映画という括り方をすれば、
「今年観た映画」の中で、個人的にはかなり上位に位置している。
もし、わたし同様に、映画館でご覧になれなかった方には、
是非、DVDでのご鑑賞をオススメしたい。
とても大好きな作品なのでありました。


tinkerbell_tomo at 21:40│Comments(8)TrackBack(22) 洋画【あ】 

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両親の死から立ち直れず、自分も臨死体験をした青年と、脳腫瘍で余命3ヶ月の少女の間の淡く切ない恋愛模様を丁寧に描く。監督は『ミルク』のガス・ヴァン・サント。主演は故デニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパーと『アリス・イン・ワンダーランド』のミワ・ワシコウス
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「死」にまつわるストーリー展開は、基本パスな私。 なのだけれど、監督がガス・ヴァン・サントなので。 他人の葬式に勝手に参加する少年。 これにからむ女性、そして幽霊(なんと特攻隊員!) この関係性が少しずつ動き出す。 最初は嫌々(笑)観ていた。 のだが、...
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18. 「永遠の僕たち」  [ 【映画がはねたら、都バスに乗って】 ]   June 23, 2012 19:49
他人の葬式に潜り込む少年なんて、「ハロルドとモード」だな。 あの映画で待っていたのは、八十歳近いおばあさんだけど、こちらは十代の少女。 葬式で知り合った若い恋人たちの物語。 何気なく振り向いたときの、ミア・ワシコウスカのなんとも言えずチャーミングで瑞々...
19. 永遠の僕たち  [ あーうぃ だにぇっと ]   December 02, 2012 21:08
永遠の僕たち 7月8日(日)@ギンレイホール 思い起こしてみれば・・・このころから腹痛があった。(笑)
20. 『永遠の僕たち』’11・米  [ 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映... ]   December 12, 2012 22:59
あらすじ他人の葬式を覗いて歩くことを日常とするイーノックは、そこでアナベルと出会い・・・。解説原題は『RESTLESS』で、「落ち着かない」という意味が分かる日本人は多くないって...
21. 『永遠の僕たち』’11・米  [ 虎団Jr. 虎ックバック専用機 ]   December 12, 2012 22:59
あらすじ他人の葬式を覗いて歩くことを日常とするイーノックは、そこでアナベルと出会
22. 映画『永遠の僕たち』(12外-3)  [ ほし★とママのめたぼうな日々♪ ]   February 16, 2013 19:35
ノーチェックだったのですが、時間がピッタリだったのと 加瀬くんが出ていることを知って、観て参りました。 『永遠の僕たち』

この記事へのコメント

1. Posted by にゃむばなな   June 21, 2012 21:47
あのヒロシの存在は凄く大きかったですね。
彼の存在から日本の礼節に隠された意味を感じました。
それにしても「日本人が話す英語」を喋れるなんて…、どんだけ凄いねん!ですわ。
2. Posted by ◆にゃむばななさま   June 21, 2012 23:19
本当に、美しい日本人らしさを体現したヒロシの存在感、抜群。
いくつもの感情や役割を担った彼なしでは、全く成り立たない作品でした。
観てから、どうしても加瀬くんの英語が気になって調べたら、
どこかのインタビューで彼がそう語っていて、
何だってぇ??と
ひっくり返りそうになりました。
彼の英語が生きる作品、今後も海外でありますように(祈)
3. Posted by KLY   June 22, 2012 14:44
サイレントバージョンはじゃあ全編サイレントで見られるんですか?それなら別の作品として観て見たいです。全然違うだろうし、普通に観てから日がたっているので、丁度イイ按配に忘れてるだろうし。
ミワってものすごい美女ではないけれど、気持ちを表に出すのが得意な女優さんなのかなって思います。今上映中の「ジェーン・エア」も凄く好きなんです^^
4. Posted by こに   June 22, 2012 19:51
トラバありがとうございました。
読書と映画が好きなオバサン、こにです。^^
これは、どことなく邦画の空気もあって大変好みの映画でした。
これからも宜しくお願いします。
5. Posted by めえめえ   June 22, 2012 22:05
こんばんは。

私は映画をDVDで観ることの方が多いのですが、
特典映像は意外とラッキーですね。
背景や撮影時のエピソードなどを紹介してくれることが結構ありますもの♪
6. Posted by ◆KLYさま   June 22, 2012 22:37
サイレントバージョン、台詞を全部語らない分だけ、幾分尺が短いのですが、
ちゃんと全編が観れるようになってます。
音楽や効果音などは生きていて、より繊細に「感じる」作品であると感じました。
詩的な部分がより強調されたというか、
事柄よりも感情が前面に出た、もうひとつの作品という感じです。

『ジェーン・エア』、近くで上映があったら、
わたしも通っているのではないかと思いつつ、
いろんな理由で県外遠征を断念、
いつかまた次の機会を待つことにしました(/_;)
7. Posted by ◆こにさま   June 22, 2012 22:40
TBだけで失礼してしまいました。
これを機会に、どうぞ仲良くしてくださいませね。

多くを語り過ぎない、静かで繊細な空気が居心地のいい、
とても好きな作品ですね。
こういう作品が、時々無性に観たくなります。
今回は、DVDででも観ることができて、本当によかったです。
8. Posted by ◆めえめえさま   June 22, 2012 22:45
なかなか、観たい作品が自分のタイミングや住む町の事情と合わないことが多いと、
DVDの存在はとても有難く感じますね。

レンタルの場合、予告はやたらと多いのに、特典が寂しいことが多いんですが、
この作品は、メイキングやインタビューという、あって当たり前のものよりも、
DVDでしか観れない、もう一篇が観れることが何よりラッキー。
こんな特典が付いているとは思ってなかったので、
かなり嬉しかったです。

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