December 09, 2012

ローマ法王の休日

就任会見。保育障害。かもめ。
Habemus Papam






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出演: ミシェル:ピッコリ
    イエルジー・スチュエル
    レナート・スカルバ
    ナンニ・モレッティ
    マルゲリータ・ブイ
監督: ナンニ・モレッティ
2011年 イタリア 105分
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この夏公開されたこの作品が、
半年近く遅れてわが町で2週間限定上映中。



物語は。


ローマ法王が逝去。
システィーナ礼拝堂には世界中の枢機卿が集まり、
次期法王を選ぶ選挙、コンクラーベが始まった。
一旦招集されたら、法王が決定するまで選挙が繰り返され、
礼拝堂から一歩たりとも外出できない。
居並ぶ枢機卿たちは、「自分が法王にならないように」と祈っている。
何度かの選挙の末、法王に選ばれたのは、
これまで特に目立ったことのないメルヴィル。
戸惑うメルヴィルをよそに、あっという間に法王の衣裳に着替えが済み、
新法王の挨拶を今か今かと待ちわびる群衆に向かって、
挨拶をするだけ、と手筈が整う。
ところが、
メルヴィルは大観衆の前に登場する前に大声を挙げて逃げ出してしまう。
法王が決まったようなのに、一向に正式発表がないので、
マスコミも町の人々も困惑するばかり。
中途半端なかたちのまま、メルヴィルはセラピーを受けることになるのだが・・・



コンクラーベで新法王となった1人の気弱な男の物語。
まさか、自分が選ばれるなどとは夢にも思わなかった男の、
これは、悲劇といっていいかもしれない。
観る前の予想とかなり違う展開と結末だったが、
それは、
まるで、往年の名作のパロディのような邦題と
ハートウォーミングなコメディを思わせる予告編によるミスリードが
大きな原因だった気がする。
これは、「コメディ」に分類されているが、
笑いの要素はほんの僅か。
その度合いは、「シリアスなのに、ユーモアも忘れない」的なもので、
観終わって受ける印象は、予想以上にシリアスなものだ。

全世界の信者の尊敬を集めるローマ法王就任は、
何よりも名誉で、その地位の近くにいる立場の方なら、
全員が望むことなのか、と思ってしまうのだが、
このお話はさにあらず。
コンクラーベが始まると、皆それぞれに、
「自分が法王になりませんように」と神に(?)祈っている。
そんなことは知る由もなく、
世界中はその結果に注目しており、
もちろん、ブックメーカーでも予想が立っている。
そんな中、ブックメーカーもびっくり、という人物に
票が集まってしまったとご想像あれ。
本人にとっては、ほとんど悲劇同然である。
これが喜劇であるとすれば、何度目かの選挙で、
全く不向きな男に票が集まってしまうまで、だ。
これは、身の丈に合わない役柄を突然背負わされて、
逃げ出すことができずにジタバタするしかない男のお話なのだ。

本命視されていた枢機卿たちに票が集まるも、
1度では決まりきらず、再投票が繰り返される中、
どんな運命のいたずらか、
これまで出てこなかった人物に票が集中し、
あれよあれよという間に新法王に決定してしまう。
一瞬は、この気弱な男も頬が輝いたりもするのだけれど、
実際に、決定的に集まってしまうと、
これは困った、という顔になる。
元々、自分こそは、祈らなくても法王にならないと思っていたに違いない、
全く目立たず、一切の名誉欲のない人物だったのだから。
それで、彼はすっかり心を閉ざしてしまい、セラピストが呼ばれるが、
いくらセラピストが頑張ろうとしても、
状況は新法王の心を救う環境になく、少しも効果がない。
だって、のしかかってくる重さを思うと、
居ても立ってもいられやしないのに、
法王の周囲には、人の目が多過ぎて身も心も拘束されたも同然だ。
そして、新法王メルヴィルは、ついに耐えかね、
彼の素性を知らないセラピストをお忍びで訪ねたまま、
行方をくらましてしまうのである。

そうして、進んでゆく物語は、全く先が読めない。
というか、そんなことは予想もできなかったよ、というシークエンスが
途中で登場してきて、観客は誰しも面食らってしまう。
だって、何がどうだからその選択と展開なのか・・・
ちょっと意図が掴みにくいのだもの。
けれど、それによって、何かが変わってゆく・・・?
そこは、ご覧になっていただくほうがいいか。


新法王が決定し、それを拒否して大聖堂から逃げ出してから数日間の、
新法王と、その側近と、その他の人たちの様子を、
ちょっと斜め方向から描いたようなお話。
途中で登場してくる、チェーホフの『かもめ』が、
おそらく、大きな比喩なのだろうと思いつつ、
わたしなどは全く不勉強で、作り手の真意を受け取れない代わりに、
新法王の胸のうちを思い、
彼の傍でハラハラ見守る気持ちだけは強くなった。
「ほう。。。そういう終わり方になるのか。。。」という幕切れに、
少なからず驚くことになるのだが、
だからこそ、きっと心に残るものになるだろう。
何か、こんな感想、変だけど。


tinkerbell_tomo at 21:00│Comments(2)TrackBack(11) 洋画【ら】 

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(原題:Habemus Papam) ※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。 鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。 ----この映画のタイトルって、 奇をてらいすぎてニャい。 あの有名な映画をパクってる。 「一見、そう見えるよ..
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この記事へのコメント

1. Posted by メグ   December 09, 2012 21:40
悠雅さま こんにちは。
本当におっしゃるとおりです。なんというか・・・“面くらってしまう”映画でしたよね。予告編から受けるイメージと全然違ったというか。私が見たときも、見終わった多くの観客が首をひねって映画館を出ていきました。
でも、「それではこの映画はダメダメ映画なのか」と問えば決してそうともいえなくて、うがった見方かもしれませんが「全世界を見渡しても真のリーダーが不在となってしまった今の時代を皮肉った作品」と言えなくもないですし。
法王の職務はやっぱり相当重責なのでしょうね。皆、心の中で「法王になりたくな〜い」と必死に祈ってる姿が(笑ったらいけないけど)笑えました。
宗教感をまったく無視して「クリスマスだぁ〜」と街のきらびやかなイルミネーションを楽しんでいる自分の気楽さをちょっとだけ反省・・・です。

寒い12月ですが、悠雅さんにとって楽しいクリスマスシーズンでありますように!
2. Posted by ◆メグさま   December 09, 2012 23:44
こんばんは〜。寒いですね〜((((;゚Д゚))))

原題を見ると邦題は信じるまい、とは思ったけれど、
結末はともかく、途中で何だかよくわからなくて、どーしたもんだか…な世界で。
でも、そうなんです。仰る通り、この監督が作ろうとしたこの作品には、
きっといくつもの比喩が込められているのだと思います。
真のリーダー不在への皮肉と言えばそうだと思うし、
誰も宗教上の真のリーダーに向いていないという風にも思うし、
途中の意味のわかりにくいところも、
あのセラピストが狙っていたことが「時間切れ」で終わったことが、
まだまだ、世の中を変えられない、という風にも思えて、
あるいは、今後何度か観ることがあったら、
その時に初めて本当の意味に気づけるのかもしれないともおもいました。

確かに、宗教上の思いが何もないのに、
イルミネーションの美しさを楽しんでいるだけなのは後ろめたい気もしますが、
寒くてしんどい冬を乗り切るために、
せめて美しいものを見たり、楽しい気分になったりできるなら、
それはそれでいいかもしれない、と最近思うようになりました。
羽目を外しすぎたり、人様のご迷惑にならなければ、
少しでも冬が楽しめるほうがいいですもの。
この、のっけから寒すぎる冬を元気に過ごしたいですね。

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