December 29, 2012

孤独な惑星

ものすごく近くて、ありえないほど遠い
孤独な惑星





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出演: 竹厚   綾
    綾野   剛
    三村 恭代
    水橋 研二
    ミッキー・カーチス
監督: 筒井 武文
2011年 日本 94分
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観たくても、近くで上映がなく、
きっと近くではレンタルも置いてないだろうと踏んで、
未見のまま、DVDを買ってしまった作品。
早くに予約したのに、
発売予定日に●mazonが「一時的品切れ」を起こし、、
暮れも押し詰まった頃にやっと届いた1枚。
やるべきことはたくさんあるけど、
何はともあれ、この作品を観なくっちゃあ。

観た感想を結論から言えば、
噂には聞いていたけど、
何とユニークで切なくて、心に馴染む空気感の作品だろう。



物語は。


真里はマンションで1人暮らし。最近恋人と別れたらしい。
隣室の若いカップルは、連日派手な喧嘩を繰り広げている。
真里は、密かに2人のやり取りに聞き耳を立てていたりする。
ある寒い夜、隣の哲男が一晩置いてくれと訪ねて来て、
真里は一晩だけのつもりで彼を泊め、
翌朝、哲男は真里の部屋のベランダで暮らすことを頼み込む。
そして、真里の部屋には一歩も入らないという約束で、
奇妙な共同生活が始まる。
2人は毎日、お互いの存在を感じ合いながら、
窓ガラス越しに僅かに会話をする。
時折、真里から哲男への差し入れもある。
けれど、部屋とベランダを繋ぐ窓は開けられることがない。
一方、哲男に黙って出て行かれた、彼の恋人、アリサは
哲男を探し回っていて・・・



都会の一角、マンションの隣同士に住む男女が、
ふとしたことで「共同生活」をする数日間のお話。

恋人と別れたばかりのOLと、
同居人と喧嘩が絶えない若い男がある時出会い、
お互いに、何かふと惹かれるものを感じ合う。
実際の距離はうんと近く、
それぞれの様子は素通しのガラスで筒抜けなのに、
それ以上の身体の距離を縮めることがない。
真里さえ、部屋の鍵を開けてしまえば、
あるいは、
哲男がもっと他の場所で真里に近づいてしまえば、
もっと状況は変わるかもしれないのに、
2人は最初の約束を違えることなく、
携帯電話を通し、あるいは、窓越しに、
お互いを知り得る会話や心遣いを通して、
精一杯の介入と、痩せ我慢的な抵抗を続けてゆく。

もうそんな時代は過ぎ去って久しいけれど、
この、どちらに転がってもおかしくない状況の心境は、
いつかどこかで感じたことがあるものだ、と思い起こさせる。
だからこそ、状況は特異でも、
お話の流れに沿った主人公の心の動きがよくわかり、
それ故、ラストはとても切なくて仕方なくなる。
こんな状況など、ほんのひとかけらの経験もないのに、
心境は、人生のどこかで出会った何かに似ている気がして、
懐かしくも悲しく、温かくも寂しい思いでいっぱいになる。

登場するのは、
自分の内側で強い感情の動きがあっても、
まるで何事もなさげに見えてしまう真里。
背筋が伸び、タイトなスーツにストレートの髪。
出で立ちも佇まいも、とても感じはいいけれど、
どちらかと言えば、硬質な感じである。
真里を演じる、竹厚綾さんという人をこの作品まで知らなかったが、
長身で感じのいい綺麗な人で、
感情の起伏や変化を表情に出さない感じがよく出ている。
もちろん、いつもそんなわけではないのだが、
だからこそ、感情が溢れ出る時は切なくて仕方ない。
一方、
興味を持ったものに駆け寄る子供のように、
無邪気な自然体の哲男。
身体に柔らかく纏り付くTシャツのスレンダーな身体と、
ウェーブの長い髪の間から覗く顔は、
少年の素直さと、危うい色っぽさを放っている。
このキャラクターを、まだ髪が長かった頃の綾野剛が演じていて、
(だから、このDVDを買ったのだが(^^ゞ)
綾野さんだからこその、色っぽさと可愛さが満載。。。
というか、登場するたびに凄い分量を振りまいている感じ。
綾野ファンは、最初のシーンで登場するだけで、
きっとノックダウンしてしまうよ・・・
膝に顎を乗せて体育座りしている姿、
2枚の毛布を肩から掛けてウロウロしている背中、
眠そうに顰めた顔も、何気ない仕草も、
そして何より、ラストシーンの指先も、
お話を全く別にして、彼だけを観ているだけでも価値あり、と思う。

かと言って、お話がつまらないというのではない。
と言うか、わたしはとても好きだ。
2人の職場、生活パターンなども対照的で、
作品の随所でそれを語らせるアイテムや設定が登場して、
そんな2人の心の距離を描くことで、
現代の寓話になっているところがいい。
出会いも、共に(?)過ごす時間も、離れている時も、
脚本の隅々にまで作者の何らかの意図を感じて、
観終わった後は、あれこれと思い巡らしてしまう。
ネタバレになるので詳細は避けるけれども、
お話の大部分を過ごす、部屋の中とベランダの2人に対しての、
ラストの2人のシーンがきっといつまでも忘れられないだろうなぁ。。。
結局、わたしはそんな作品が好きなんだなぁ、と改めて思う。

派手さはひと欠片もないけれど、
何かこれはハマってしまいそうな気さえする。
綾野剛の個性が、そう感じさせるのかもしれないが。。。


tinkerbell_tomo at 08:43│Comments(2)TrackBack(0) 日本の映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by あけぼん   January 05, 2013 00:20
お久しぶりでございます♪
そして、明けましておめでとうございます。
今年もたくさんお世話になると思いますので、なにとぞ宜しくお願い致します。

2012年をどっさりと総括して下さり、有難うございます。とっても参考になります。

そのお忙しい中、ご覧になったのですね^^
私が観たのは3月で、かなり忘れておりましたが、おかげで思い出しました。

元々学生の為に撮った作品を長編にしたと、監督さんが舞台あいさつでおっしゃってましたが、そうした独特の空気感もあって私も好きでした。
あり得ないシチュエーションですが、よく掘り下げられてて、何より綾野くんの繊細さがよく出てましたわぁ〜

ついでで申し訳ありませんが、長谷川くんの「鈴木先生」、私はリアルタイムで嵌って観ておりました。
すっごく面白いのに、つくづく視聴率って分かりませんね。映画になるほどの評価ですし。

とにかく明日からの「八重の桜」を楽しみましょう〜

2. Posted by ◆あけぼんさま   January 08, 2013 23:34
すっかり遅くなって申し訳ありません。
例年になく、バタバタと忙しく、自分の時間が取れない日々を過ごしており、
今日からやっと元通り。ぼちぼち再開したいと思います。
新年早々、失礼ばかりで申し訳ありません。
今年もよろしくお願いします。

映画館では観れなかったので、DVDを購入しまして、やっと観ることができました。
しかも、DVDは予約したのに入荷が遅れ、年末ギリギリの鑑賞(~_~;)
毎年、年末には大掃除も放り出してブログのまとめをしているのに、
その最中で中断する形になりましたが、
それでも観てよかったです。

状況は有り得ないけど、2人の心の距離感がとてもよくわかる筋書きの、
ちょっと素敵でかなり切ない現代の寓話。
綾野さんの繊細さ、色っぽさ、可愛さも相まって、
これから先、心のどこかにずっと引っかかり続けるだろうと思います。
これ、DVD買って正解でした。

それから、『鈴木先生』は、その前の『モリのアサガオ』は観てたのに、
予告だけ観て、「これ誰だろう」と思ったままスルーしてまして(~_~;)
今頃になって録画して観てるってねぇ。。。
『八重の桜』、楽しく観れる1年でありますように、と祈ります。

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