March 15, 2013

クラウド アトラス

六重奏。革命。永劫回帰。
Cloud Atlas





■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: トム・ハンクス
    ハル・ベリー
    ジム・ブロードベント
    ヒューゴ・ウィーヴィング
    ジム・スタージェス
    ヒュー・グラント
    スーザン・サランドン
    ペ・ドゥナ
    ベン・ウィショー
    ジェームズ・ダーシー
    キース・デヴィッド
    デヴィッド・ジャーシー
監督: ラナ・ウォシャウスキー
    トム・ティクヴァ
    アンディ・ウォシャウスキー
2012年 アメリカ 172分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

6つの時代の6つのお話が同時進行しながら繋がる面白さと、
主要キャストが思いがけない複数の役を演じ分けて描く172分。
映画を観終わって、
エンドクレジットが始まった途端にお帰りになる方は、
今回は、せめて途中まででもご覧になることをオススメします。



物語は。


1849年、南太平洋。
妻の父から奴隷売買を任された青年ユーイングは、
奴隷に対する拷問に反発心を抱く。
故郷サンフランシスコへ帰る船の中で、病気になった彼は・・・

1936年、スコットランド。
恋人と別れ、老作曲家の採譜者となった作曲家志望の青年は、
ユーイングの航海日誌を読んでいたが、落丁のために先が読めない。
彼は、自分の力で最高傑作の音楽を作ろうとしていた・・・

1973年、サンフランシスコ。
ある女性ジャーナリストが知り合った英国の老紳士が、
彼女にある情報を提供しようとしていた。
それは、巨大企業の陰謀を暴くものだったのだが・・・

2012年、イングランド。
これまで、あまり良い思いをしたことがないまま、
長年、出版社の編集者として生きて来た老齢の男が、
ある出来事をきっかけに売れっ子となったのだが・・・

2144年、ネオソウル。
温暖化の影響で、地球の多くが水没した上に作られた町で、
給仕係として働かされているクローンの少女は、
ある時、見知らぬ男性に外界に連れ出され・・・

2321年。文明が崩壊した地球。
弱肉強食の時代となった離島で、羊飼いとして生きて来た男が、
進化した文明を持つ女と出会い、
地球の命運を握る存在となる・・・



19世紀から24世紀まで、
時空を超えて繋がり合う、6つの時代の6つの物語。
描かれるのは、
様々に形を変えた人間の善意と悪意、欺瞞、革命、
そして、わずかな希望。

お話が6つあるならば、
6パターンの登場人物がいて、その分のキャストが必要で、
そうすると多大な出演者数になってもいいところなのだが、
それがそうなっていないのがこの作品の特徴。
ご覧になった方はもちろん、
ご覧になってない方でも既にお聞き及びのことだろうが、
出演者たちは、メインになるそれぞれのパートでの出演は当然ながら、
他のパートでも、役柄の大小、性格、国籍、性別に関わらず、
別の人物として登場している。
どこかで観た顔だけど、パーツの違和感バリバリ、という場合も、
「この人って、知らない役者さんだわ」とスルーしてしまう場合もあるが、
冒頭で言った通り、エンドクレジットでは、
主要キャストは顔写真と役名が明記されるから、
「そうだと思った」、または「これがあの人?」という両方の場合を
そこで確認されるとよろしいかと。
ちなみに、ご本人の顔にペイントしたり老けメイクをしたりする場合は、
ほとんど見間違いはないのだけれど、
「違和感バリバリ」なのは、特に目元をいじっている場合。
「知らない役者さんだわ」と思ったら、変装(?)であることが多いはず。
事によっては、「面白がってる?」と思うくらい、
ご本人の原型を留めない場合もあって、
それだけについて語っても楽しいのだけれど、
それはまた、機会を別にすることにしよう。


さて、ここからが本題。
何度も言うようだが、この作品は、
大きなひとつの流れの中の6つの時代に6つのお話があるのだが、
それが、ほとんどランダム(に感じる)に並立していて、
一斉に少しずつ同時進行してゆく。
ひとつのキーワードで場面が切り変わることもあれば、
何の脈絡もない感じで、ほとんど秒単位でとっとと移っていくこともある。
それは、まだ何もわからない状態の冒頭から、
観客の情報収集能力や記憶力に関係ない提示の仕方で、
煽られている気さえする。
最初はこのお話についていけるか不安になるのだが、
少し観ていると全部がよくわかるように作られているから大丈夫。
こういう性格の作品で、意味不明に作っているわけがないもの。
それぞれの繋ぎ目は滑らかで、とても自然に流れてゆき、
繋がりがあると言っても別々の物語が
とてもわかりやすい形で観ることができる。


最初、何故1人が複数の役を演じ分けるのかと思ったが、
それぞれの時代で「彗星型の痣」を持つ主人公たちや、
そこで深く関わることになる人間たちは、
いつも、姿形や名前や立場を少しずつ変えて存在して、
影響を及ぼしあっているのだということを、
端的に表現したのだろうと、観ているうちに思った。
それは、いい場合もそうでない場合もあり、
悪人が次の時代で善人になっていたり、
主人公に大きい影響を与える時もあれば、端役の時もある。
そうして、
善人が悪人に誑かされたり、虐げられたり、支配されたり、
都合の悪いものは隠され、やがて反骨が生まれる。
絶望と悲劇の中で愛と希望が息づく。
時代がどう変わっても、人間たちは同じような営みを繰り返してゆく。


この作品は、小説の映画化だとは聞いていたが、
なるほど、観ていると長編小説を読んでいるような感覚になる。
それぞれの場面はどのような言葉で表現されているのか。
もし、この作品と同じように、自由に違う時代を繋いで描いているならば、
繋ぎ目はどんな言葉でどう書かれているのか・・・と
想像しても無理なことを考えたりもした。
でも、もし小説がこのように書かれていないのならば、
映画にするに当たって、とても素敵な繋ぎ方がされたものだ。

物語に様々な顔で登場するのは、
まず、トム・ハンクスとハル・ベリー。
ジム・ブロードベント、ヒューゴ・ウィーヴィング、ヒュー・グラントと
今更言うまでもない実力ある人気者たち。
全体にシリアスな空気が満ちているけれど、
ジム・ブロードベントがメインのパートは、
本人たちは大真面目なのに可笑しくて、
つい笑いがこみ上げる場面が1度や2度ではない上に、
オチも愉快なのがいい。
さらに、未来パートに登場するペ・ドゥナ。
空気人形』はまさしく空気が入った人形の役だったけれど、
今回はクローンという、やっぱり少し現実離れした役で、
そんな役柄が似合うのがまた不思議だ。
個人的には、
1936年のスコットランドの作曲家の卵とそのパートナー、
ベン・ウィショーとジェームズ・ダーシーがオススメ。
いろんな作品で観てきたけれど、
最近では『007 スカイフォール』の役柄も印象的なベン、
今回も彼によく似合う役どころだったのが嬉しいし。
久々に観た気がするジェームズ・ダーシー。
ちょっと、ベネディクト・カンバーバッチ似の彼は、
イングランドの上流階級の男たよく似合う端正さで、
ベン・ウィショーのモノローグも良かったの。


映画を観終わった時、
これは感想を書きにくいなぁ、と思ったけれど、案の定(苦笑)。
長いわりに、感想でも何でもないような気もするけれど、
簡単な一言で括ってしまえない壮大な物語であるのは確か。
たくさんの人生を垣間見た思いがする。


tinkerbell_tomo at 22:27│Comments(2)TrackBack(20) 洋画【か】 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

オープニング早々、鑑賞者は混乱に陥る。 時代バラバラの物語が次々とキックオフされ、翻弄される。 原作本が「統合されないバラバラのプロット」的に批判されてた記事を見ていたこともあって、焦った。 果たして、これで最後までついていけるか?(汗) だが各プロ...
2. 劇場鑑賞「クラウドアトラス」  [ 日々“是”精進! ]   March 16, 2013 05:54
「クラウドアトラス」を鑑賞してきましたそれぞれ時代も場所も違う6つのエピソードが入れ子状に関連しながら大きな物語を構成していくデイヴィッド・ミッチェルの同名小説を、「マ...
3. [映画『クラウド アトラス』を観た(寸評)]  [ 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭 ]   March 16, 2013 06:29
☆マトリックスのスタッフが作ったことといい、なんか、「空気人形」のパクりみたいな韓国人アンドロイドみたいのが出てきていたので、あまりそそらなかったのだが、観に行った。  過去から未来への六つの時代を舞台にした(ああ、だから、作中で作曲家が作るのが「六重...
4. 映画「クラウド アトラス」ソンミ451(ペ・ドゥナ)が印象に残る  [ 世事熟視〜コソダチP ]   March 16, 2013 15:52
トム・ハンクス主演の映画「クラウド アトラス」の試写会を観てきました。 (以下ネタバレも含めての感想・・・) 19世紀から文明崩壊後の24世紀にかかる六つの時代と場所を同時並行させて物語が進む「クラウド アトラス」 上映時間「2時間53分」の長きにわたる深
5. 『クラウド アトラス』  [ こねたみっくす ]   March 16, 2013 17:56
真実を知った時、そこに愛と希望が生まれる。 これは冒頭でジム・ブロードベント演じる編集者が述べていたように、6つの物語が時系列を無視するかのように複雑に描かれているも ...
6. クラウド アトラス  [ 風に吹かれて ]   March 17, 2013 14:24
良くも悪くも人は他者とつながっている今の行動が未来を作る公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/cloudatlas原作: クラウド・アトラス (デイヴィッド・ミッチェル
7. クラウド アトラス  [ 風情♪の不安多事な冒険 Part.5 ]   March 17, 2013 14:30
 アメリカ  ドラマ&アドベンチャー&SF  監督:ラナ・ウォシャウスキー&トム・ティクヴァ&アンディ・ウォシャウスキー  出演:トム・ハンクス      ハル・ベリー ...
8. クラウドアトラス 映画見終わった時点では「???」だったが・・・  [ 労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと〜 ]   March 19, 2013 09:24
【=18 うち今年の試写会2】 昨日は台風並、いや台風以上の風が吹きまくっていた、春一番とかがこんな暴風になるなんて自分には記憶が無いのだけど・・・ とにかくここ最近、天候が極端になっているような気がする、ほんま地球がおかしくなってるんかなあ・・・こないだ観たこ...
9. クラウド アトラス ★★★★  [ パピとママ映画のblog ]   March 19, 2013 22:26
この作品は6つの時代を生き続ける人間の時空を超えた魂である。「マトリックス」「スピード・レーサー」などのラナ&アンディウォシャウスキー姉弟と、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァの共同監督による壮大なSF叙事詩である。 ここではまず、1:1849年...
10. 映画「クラウド アトラス」感想  [ タナウツネット雑記ブログ ]   March 20, 2013 20:00
映画「クラウド アトラス」観に行ってきました。アメリカ・ドイツ・シンガポール・香港の4ヵ国共同合作で、トム・ハンクス等の有名俳優が多数出演している作品。今作では、作中に...
11. No.343 クラウド アトラス  [ 気ままな映画生活 ]   March 24, 2013 00:13
「マトリックス」のラナ&アンディ・ウォシャウスキー、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクバの3人の監督がメガホンをとり、デビッド・ミッシェルの同名小説を映画化。悪人とし ...
12. ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ『クラウド アトラス』  [ 映画雑記・COLOR of CINEMA ]   March 24, 2013 22:35
注・内容、台詞に触れています。「マトリックス」シリーズのラナ&アンディ・ウォシャウスキー(以下ウォシャウスキー監督と表記します)と「パフューム ある人殺しの物語」のトム・ティクヴァが共同で監督した『ク
13. クラウドアトラス/ CLOUD ATLAS  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   March 26, 2013 00:19
ランキングクリックしてね ←please click 3時間の大作というので覚悟して観に行ったけど、、、長い うーむ これは好き嫌い分かれるな〜 6つの時代が時系列関係なく出て来て キャストも一人6役なので はじめから何の説明もなく進むので やや...
14. クラウドアトラス/ CLOUD ATLAS  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   March 26, 2013 10:02
ランキングクリックしてね ←please click 3時間の大作というので覚悟して観に行ったけど、、、長い うーむ これは好き嫌い分かれるな〜 6つの時代が時系列関係なく出て来て キャストも一人6役なので はじめから何の説明もなく進むので やや...
15. 「クラウド アトラス」 歯向かう者たち  [ はらやんの映画徒然草 ]   March 30, 2013 22:23
登場人物のひとり、若き作曲家ロバート・フロビシャーが作曲するのが「クラウド アト
16. 繋がる 6つのストーリー  [ 笑う社会人の生活 ]   April 02, 2013 23:25
17日のことですが、映画「クラウド アトラス」を鑑賞しました。 1849年 航海の物語 1936年 高名な作曲家と弟子の物語 1973年 原子力発電所の陰謀 2012年 編集者の奇妙な冒険 2144年 クローン少女の革命 2312年 崩壊後の地球の運命 これほど説明の難しいというか・・...
17. クラウド アトラス を観たゾ  [ ヤジャの奇妙な独り言 ]   April 04, 2013 22:51
徹夜明けで3時間程仮眠を取って 映画館へ向かって クラウド アトラス を観てきました     命
『クラウド・アトラス』 いつのまにか兄弟が姉弟になっていたウォシャウスキー姉弟監督。 兄→姉 な、ややこしい人生を歩んでいるのですが、そんなややこしさが映画にも出てい ...
19. クラウド アトラス  [ いやいやえん ]   July 11, 2013 09:19
SFと「輪廻転生」というテーマを上手くまとめあげた作品だと思います。一見、複雑で脈絡なく進んで行くように見えてしまう物語も6つの時代を巧みに繋ぎ合わせられており、その繋がりがみえてくると、その壮大さに改めて感嘆してしまうような物語。でも、やっぱり約3時
20. クラウド アトラス  [ ★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★ ]   July 24, 2013 12:58
【CLOUD ATLAS】 2013/03/15公開 アメリカ PG12 172分分監督:ラナ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー いま、<人生の謎>が解けようとしている。 [Story]■1849年、南太平洋。青年ユーイングは、妻の父から奴隷売買を託され、船での航海..

この記事へのコメント

1. Posted by にゃむばなな   March 16, 2013 17:56
結局この映画って一番言いたいことが弱いので感想が書きにくいのだと思います。
これだけややこしくなりそうな構成なのにややこしく感じさせない演出は見事だったんですけどね。
2. Posted by ◆にゃむばななさま   March 17, 2013 15:48
感想を書きにくい理由はいろいろあるけれど、
1つはそうなのかもしれませんね。
でも、わたしはこの作品を否定的には観てなくて、
ひとつの長編小説として楽しんでいました。
小説では場面転換がどんな言葉でどう表現されていたのだろう、と想像したりして、
上手い構成や役者たちの演じ分けを楽しんでいました。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔