June 01, 2013

リアル〜完全なる首長竜の日〜

閉ざされた出口。夢の残骸。首長竜の絵。
リアル〜完全なる首長竜の日〜





■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: 佐藤   健   綾瀬はるか
    中谷 美紀   オダギリジョー
    染谷 将太   堀部 圭亮
    松重  豊    小泉今日子
監督: 黒沢  清
2013年 日本 127分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

第9回『このミステリーがすごい』大賞受賞作の、
黒沢清監督による映画化作品が本日公開。



物語は。
    
    
人気漫画家の敦美が謎の自殺未遂を起こして1年、
昏睡状態が続いていた。
幼馴染で恋人の浩市は、敦美の自殺未遂の謎を探るため、
「センシング」と呼ばれる先端医療を受けることになる。
敦美の脳と浩市の脳を特殊な機器で繋ぎ、敦美の意識へ潜入、
そこで会話することで、敦美を昏睡から救いたいと願ってのことだった。
センシングは第1回から成功するが、
浩市には、センシングの副作用と思しき現象が発生する。
浩市は、敦美がセンシングの途中で言った、
「思い出の、首長竜の絵を持ってきてほしい」という言葉に首を傾げる。
浩市には思い当たることがなかったからだ・・・



昏睡状態の恋人を救うため、その意識に潜入するうち、
有り得ないものが見え始め、忘れていたものを思い出す青年と、
その恋人の物語。
センシングという最先端の技術で、恋人の意識へ直接コンタクトし、
実際に起こっていることのように認知する中、
現実世界にも、それが入り込んでくる恐怖、
昏睡の恋人を救いたいという悲痛な願い、
そして、思いがけない結論に至る主人公を描いてゆく。

自殺未遂を起こして昏睡状態にある漫画家敦美に綾瀬はるか。
彼女を救おうと、センシングを受ける藤田浩市に佐藤健。
どこかに少年少女っぽいものを残した、繊細でピュアなイメージの2人が、
黒沢清監督の作り出す世界をふわふわ彷徨い、予想外の結末に辿り着く。
とは言え、前述のように、
これは第9回『このミステリーがすごい』大賞受賞作で、
読まれた方もたくさんいらっしゃることだろう。
残念ながら、わたしは未読なのだが、
映画を観ながら、これはきっと原作小説は面白いだろうと想像できた。
実際に使われた言葉や文体は想像できないけれど、
冒頭から「何かがおかしい」と感じさせるものがあり、
お話が進んでも進んでも、全部の謎が明らかになるわけではなく、
最後、どこへどう着地するのか、目が離せない展開だからだ。
監督によると、70%ほどは脚色されたらしく、
原作者は、骨格となる設定と構造さえ大事にするならば、と
映画化に当たっての大幅な脚色も了解したということで、
どうやら、そもそもは姉弟であった主人公を、
幼馴染の恋人に置き換えているだけでも、
お話の内容はかなり変わることは間違いない。
けれど、
大事な人の意識と繋がり、謎を探り出すという、SFでありミステリーであり、
ちょっとホラーが混じりつつも、基本的にはラブストーリーである本作は、
いろんな味わいを楽しめる1作となったのではないだろうか。
もちろん、わたしも楽しませてもらった1人だ。


繰り返しになるが、
冒頭から、何とは言えない違和感が付き纏うのだが、
お話が進むに従って、いくつもの謎が放り出されたままなのを意識しつつ、
それでも、進んでゆくお話を見守る形になる。
おそらく、その違和感が伏線であり、
このお話自体の謎を解く鍵なのだろうと気づくのだが、
こういうお話は、実はあんまりあれこれ先回りして考えず、
お話の流れに翻弄されて観るほうが、作品を楽しめるよね・・・
と、年齢のせいか、最近強くそう思うようになったので、
あれこれ浮かびそうになる、結末への予感を全部打ち消しつつ観ていた。
あとから思うと、やはりそれはいくつかのところで当たっていて、
若い時は、先回りして到達した結論に満足したりもしたが、
今は、先に想像するか、あとから全部知るかだけの違いで、
どっちがその2時間面白いだろうか・・・と
思ったりするわけである。
もちろん、ここではそんなあれこれを伏せるけれども、
ご覧になった方は、最初から「あれ?」と思うあれこれに、
きっと気づいていらっしゃっただろうと思う。
逆に言えば、結末へのヒントになるものを、
最初からたくさん見え隠れさせていたのだということだ。

この作品の存在を知ったのは、いつだったかもう忘れたが、
公開が楽しみになったのは、NHK BSプレミアムで放送された番組だった。
『輝く女』という番組で、綾瀬はるかちゃんに密着した回があって、
(男優たちの、『裸にしたい男』の女性版の番組ですね)
はるかちゃんの天然キャラぶりを、この作品のロケ地で収録してあったのだ。
さて、どんなシーンだったのか、というと、
あらま・・・あんなに楽しそうにはしゃいでいたけど、
こんなに切ないシーンだったの・・・?ということがわかってかなりビックリ。
佐藤健くんがインタビューされてたところも、
この作品の中の、あの場面だっただろうか、と思ったり。
そうそう。
筋書きから離れたことを言っているついでに言えば、
綾瀬はるかちゃんが着ている、何種類かの衣裳なのだが、
どれもがかなり個性的なデザインで、とっても目を引く。
それには、深〜〜ぁい意味があったかもしれない・・・?が、
そうでなかったとしても、
登場する小物などのデザインも含め、
いろんなところで、意味深長に感じるものがたくさんあって、
タイトルは「リアル」でも、
どこか非現実的であるような、ただならぬ空気感を演出することに
一役も二役も買っていたのではないだろうか。

主演の2人は、とってもこの役柄に合ってるよね。
特に、過去の黒沢監督作品に出演した顔ぶれが、
しっかりと脇を固めてくれている中で、
その持ち味をしっかり生かしてそこに居る、佐藤健くんがとってもいい。
(そういえば、佐藤健くんも『裸にしたい男』に出演してたね)
これは、どっちでもいいことなんだけど、
オダギリジョーが、雑誌編集者で登場してくるので、
チラと『舟を編む』の彼を思い出したり、
そういえば、彼の『アカルイミライ』って良かったよねぇ、と思ったり、
はるかちゃんなど、「流石、貴女は八重だものね」と思うところがあったり
(ちょっと形は違うけど)
かと思えば、
『インセプション』の中で、
ここが現実かどうかを判別するために、「トーテム」が登場するが、
この作品でも、「これが、このお話の中でのトーテム?」と思うものも
ちょっと登場してくるのだが、
倒れそうで倒れないコマではなく・・・ま、観てください。


作品の性格上、
内容について、あれこれ言及することは避けるけれども、
いろんな要素で楽しませてくれるこの作品、
お時間がある方は、是非。


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Mr.Childrenの桜井和寿が、この映画の脚本を何度も読み、
この映画のために書き下ろしたという主題歌『REM』


tinkerbell_tomo at 15:59│Comments(4)TrackBack(20) 日本の映画 

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前半のホラー映画っぽい仕上がりは何のため? ミステリー・ファンタジー・SF・ロマンと色々ごった煮の本作、ただ単に綾瀬はるかと佐藤健のために観た人は「むむ?」となるんじゃないのかなー。ちなみに原作では姉弟のようですが、本作では恋人同士。でも主演二人が恋人

この記事へのコメント

1. Posted by とどくかな   June 02, 2013 00:33
4 ひとつの映画の中で色々なジャンルの作品を味わえることに共感します。
前半の健くんパートでも、日常との些細なちがい(ミラーやドアノブの位置)で恐怖感を出すのがよかったです。
オマージュの程度によるが、ゲームやミスト、サイレントヒルやバイオハザードが連想され、シーン構成もとてもゲームに近かった。
会話で口元を隠したり、視線を合わせないのはカラックス寄りなのか?首長ともコミュとれないままだし。
2. Posted by ◆とどくかなさま   June 02, 2013 20:52
本当に、いろんな要素が盛り込まれていて、少しも飽きさせなかったですね。
何かがおかしい、と匂わせるものが最初からあるんですよね。
でも、謎を追いきれないまま、終盤でやっと解けるというのが
面白く観れた理由なのでしょう。

それから、すみません。ゲームは全くしないのです。
また、挙げられた映画も未見のものばかりで、よくわかりません。
ごめんなさい。
3. Posted by えい   June 06, 2013 22:44
なるほど。
違和感が伏線というのは
言い得て妙ですね。
あのスクリーンプロセスによる
自動車のシーンは
『CURE/キュア』以来、
黒沢清監督ではしばしば見受けられる手法。
「さあ、これから別の世界へ」という
サインのようなものだと思っています。
4. Posted by ◆えいさま   June 07, 2013 19:29
最初に「あれ?」と思うのは、あの自動車のシーンですね。
そこをきっかけに、目はスクリーンを観ながら、
頭は別のことを考え始めるんですよね。
『CURE』、そういえば未見のままでしたが、
なるほど、サインだったのか・・・
思えば、自動車も比喩に使うと面白い素材ですよね。

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