June 08, 2013

奇跡のリンゴ

神の領域。津軽魂。人間固有の性能。
奇跡のリンゴ




■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: 阿部サダヲ   菅野 美穂
    池内 博之   笹野 高史
    伊武 雅刀   畠山   紬
    渡邉 空美   小泉 颯野
    原田美枝子   山崎   努
監督: 中村 義洋
2013年 日本 129分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

中村義洋監督、阿部サダヲ、菅野美穂主演の作品が
本日公開。
まずは一言。とても佳い作品だ。



物語は。


青森県津軽のリンゴ農家に生まれた秋則少年は、
多くの子どもとは違う遊びに熱中する子だった。
物心ついた時から、新しい電化製品を分解してしまう。
それは年齢が上がるに従って、アンプやバイクへと発展、
そのために様々なトラブルも起こしてしまう。

やがて成人した秋則は東京で就職して手腕を発揮するものの、
あるきっかけで帰郷、同じリンゴ農家の一人娘と結婚、婿入りする。
リンゴ栽培に農薬散布は欠かせないが、
妻美栄子が散布のたびに体調を崩すことを心配した秋則は、
無農薬でリンゴを栽培することを考え、実行し始める。
当初こそ、同年代の仲間と研究会なども開いたが、
何年経っても成果が現れず、生活も行き詰まる上、
周囲の人たちも離れて行き、一家は孤立してしまう。
だが、義父や妻の全面的な後押しに支えられ、
秋則は思いつく限りの方法を試みるのだが・・・



リンゴの無農薬栽培を決意した男が、
数々の失敗と貧乏に遭いながら、黙って協力してくれる妻や義父に支えられ、
長年の夢を達成させるまでの物語。
NHKのドキュメンタリー番組『仕事の流儀』で紹介された題材を、
映画化された作品だ。
この番組の存在を知っていても、あまり観たことがなかった。
わたしはまだまだTV番組のチェックが甘いわ。。。
いろんな機会にりんごを食べていて、
それらの多くは青森や長野で作られているとは知っていても、
栽培には多くの農薬を必要としているなどということは、
恥ずかしながらこれまであまり気にしたことがない。
そもそも、野菜や果物の成長課程について、
ほとんど知る機会なく暮らしてきたのだ、と改めて気づいた。
なので、リンゴの無農薬栽培は「神の領域」と言われていることも、
今回やっと知ることになった。


お話は、まずは少年時代の主人公の様子から。
珍しい電化製品が家にやってくると、
中の構造がどうなっているか、分解して確かめなければ気が済まない、
という性格であることが、とてもテンポよくユーモラスに描かれる。
せっかく、高価な新品を導入しても、
片っ端から分解されたのでは、家族は大迷惑。
当然、どやしつけられるのだが、彼は一向に怯む気配がない。
それどころか、年齢が上がるにつれ、挑戦する対象が大きくなってゆく。
そんな少年時代を、もちろん叱り飛ばされはするものの、
少しも否定的には描かない。
むしろ、母親はそんな彼の理解者で、応援さえしてくれる。
わたしたちはまず、その視点で彼の少年時代を微笑ましく見つめ、
そのまま、無謀そのものの取り組みを、応援する気持ちから見始める。

彼の性格や言動を、知らないわけではなかっただろうに、
他人様とは一味もふた味も違う考え方の、所謂「変人」である彼を、
一人娘の見合い相手とした義父は、おっかない表情をしてはいても、
その時既に、彼を気に入っていたのだろう。
家に入った婿というよりは、
実の親子の情で黙って見守り、物心両面で支え、辛抱強く、
周囲からの楯になってくれるのだ。
彼の取り組みが、美栄子のためであることからであるからか、
難問に取り組む男を信じようと思ったからか・・・
いずれにせよ、妻の支えはもちろんだが、
この「オヤジ」の理解があってこそ、秋則さんの今がある。
義父を演じた山崎努さん、とってもとっても当たり前だけど、
この方やっぱり素晴らしい。

当初は周囲に集まってきた仲間たちも1人去り2人去り。
最後の砦であった「もっちゃん」とも絶交状態になるほど、
彼は周囲の意見を一切聞かず、独自の道を行き、
おそらく、バブルの時代とは思えない生活レベルにまで落ち込む。
それでも、彼は絶対に諦めず、挫けず、弱音も吐かず・・・
というほうが、お話っぽいのだけれど、
これが、そんな風ではないのね。
弱音も吐けば絶望もする。
でもその度に誰かが引き戻してくれるのだから、
これは、彼に与えられた天からの使命だったのかもしれない・・・
などとも思う。


そんな、いい意味での変人、秋則を演じるのが阿部サダヲ。
煩いくらいの演技もそれはそれで面白い人だけれど、
ちょっと他人様と方向性が違う面はあるにせよ、
基本的には、真面目で勉強家で家族思いの不器用な男を、
本当にこの人がこの地で生きているのではないかしらと思うくらい、
嫌味なく、とってもリアル。
これまでの出演作を全部観たわけではないけれど、
これまでは、映画『大奥』のこの人がお気に入りだったけど、
今回はそれにも増して、この役柄はどんぴしゃりだと思った。
また、秋則の妻、美栄子の菅野美穂、彼女もまたとっても良かった。
これまで、たくさんの作品で観た気がするものの、
特に興味を持ってなかった(いつものことです。申し訳ない)けど、
今回は、「堺雅人さんと結婚したのよねぇ・・・」なんて思いつつ、
観てしまうことにはなったのだが、まぁ、それも途中まで。
流石、堺雅人が気に入っただけのことはあるよ、
集中力、凄い(だろうと想像した)よ。
この2人の、この木村さん夫婦像、羨ましいくらいの睦まじさです。
で、前述の通り、義父の山崎努さんが素晴らしい・・・
というのは、おそらく、ご覧になってない方でもご想像できるほどだろう。
さらに、秋則の友だち、もっちゃん@池内博之、
秋則と美栄子の3人の娘たち・・・と全てのキャストが同様だ。


そうそう。
これを観ながら、ふと思い出した台詞があったんだった。
「何かをしようとしたら、
  何もしない奴が必ず文句を言う。
  蹴散らして前へ進め」
これは『八重の桜』で、佐久間象山が言った台詞だ。
文句を言う人、反対する人は、たいてい何もしない人。
それを、人生のあちこちで見聞きし体験してきたことがあったなぁ。。。
もちろん、秋則さんの偉業の足元にも及ばない、
些細なことばっかりだったけれど。


TV番組でも取り上げられ、映画にもなるくらいだから、
「こんな風に失敗しました」というオチであるはずないと信じながらも、
では、いったいどんな解決策があったから、
この人は難事業に成功したのか。
感銘を受けるほどその答えに驚きつつ、
クライマックスのシーンも含め、描かれたあれこれを、
とても温かいものとして反芻できる、本当にとても佳い作品。
良い題材、的確な演技、温かい視点・・・
素直な心で観ることができるこんな作品が、
まだまだあってよかった。
ご覧になれる方は是非、スクリーンで。

本作の挿入歌。
久々に聴いたら、現在脳内ヘビーローテーション中。


tinkerbell_tomo at 17:10│Comments(6)TrackBack(11) 日本の映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by RYO   June 08, 2013 20:41
やっぱり、悠雅さんこの映画観られると思いました。
挿入歌『若者たち』ですか、懐かしい〜〜〜
子供の頃、ドラマを観ていた記憶があります
山本圭さんのファンでした。
あ〜もう歌だけで泣けてくるし、映画館から出られない顔になりそうだわ
2. Posted by 裕   June 08, 2013 23:10
 こんばんわ。先日、本屋さんに立ち寄ったら、この映画の漫画本がレジ横に。「いい映画らしいですね。阿部サダ、娘も好きなので、こんど見てみようかな。」と私。すると、本屋の奥さんが、この本の漫画は、隣町の人が描いたの、その方のお父さんが、よろしくと置いていったのよ。」と。興味があったので、購入してみてみると、確かに高松市出身と。
 仕事も一段落。ぜひ、映画も観てみたいです。情報ありがとうございました。
3. Posted by ◆RYOさま   June 09, 2013 11:34
そう思われました?
中村義洋監督作品が好き(一部除きますが)なので、
テーマも興味あったし、是非観たいとずっと公開を待っていました。

そうなの。『若者たち』が挿入歌で、ここぞという時に効くんですが・・・
ドラマやあの時の山本圭さんをご存知、っていうと、年代がわかってしまう…
思えば、わたしも昔から繊細そうな人が好きでしたの(^_-)-☆
4. Posted by ◆裕さま   June 09, 2013 11:38
こんにちは。
関連本などが今目立つところに並んでますね。
っていうか、まぁ、そんな御縁が。
それは、是非観ましょう、ということかもO(≧▽≦)O

独特の演技の阿部さんも面白いけど、
こういう、実力者らしい演技がまた素晴らしいし、
描かれる夫婦や家族の愛もいいし、
到達する考え方、方法には驚かされるし・・・
お時間があるなら、是非是非。
5. Posted by メビウス   June 09, 2013 20:50
悠雅さんこんばんわ♪

地元が舞台なだけに自分は大甘評価込みですけど(笑)、悠雅さんにも良い作品だと思えてもらえてるようで嬉しいですっ^^

幼少、少年、美栄子さんとの結婚、そして長く険しいリンゴの無農薬栽培と、丁寧に順を追った進行や木村さんの人となりなんかもきちんと説明してる辺りも分り易かったんじゃないかなぁと思いますし、その木村さんを演じてた阿部さんを中心にして、出演者の皆さんも実力派揃いでしたから自分もかなり見応えを感じましたねぇ。
書籍を読んだりテレビの特集なんかで木村さんが紹介されるたびにもうたくさん感動と感銘を受けたクチなんですが、映画は映画で音楽や演出が素晴らしくて、久々にすんごい涙腺脆くなってしまいました^^;
6. Posted by ◆メビウスさま   June 11, 2013 10:58
こんにちは。
すっかりお返事が遅れて申し訳ないです。

やはり、地元が舞台だと思い入れも一入になるかとは思いますが、
そんなことは全く無関係でも、本当に良い作品だと素直に思いました。
わたしの場合は、中村監督作品に信頼があるのもありましたが、
観て本当によかったと思うことが多々ありました。

仰る通り、ご夫婦やご家族の関係を温かい視点で丁寧に描かれ、
同時に、ここで描かれた何倍、何百倍のご苦労があっただろうと思い、
また、適材適所のキャストの素晴らしさ、四季折々の風景やリンゴの表情も含め、
単に美談にするのではなく、丁寧に誠実に作られていると思いました。
良い作品に出会って、心から素直に流す涙はとても気持ちがいいものですね。

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