July 03, 2013
ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜
地球とおしゃべり。目覚めたオーロックス。小さなかけら。


■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: クヮヴェンジャネ・ウォレス
ドワイト・ヘンリー
監督: ベン・ザイトリン
2012年 アメリカ 93分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■
第85回アカデミー賞で、
史上最年少の主演女優賞候補ほか、
作品賞、監督賞、脚色賞の主要4部門候補となった作品が、
わが町で公開中。
物語は。
長く伸びた先に工業地帯が聳える堤防の近くに、
バスタブと呼ばれるコミュニティがある。
6歳のハッシュパピーは父ウィンクと2人で暮らしていた。
母は彼女を産んですぐに姿を消したが、
残していった服や持ち物に囲まれていて、
多くのペットたちはじめ、生物の命を実感し、
自分は大きな世界の中の1つのかけらだと信じ、
地球とおしゃべりしながら生きている。
だが、バスタブは、
地球温暖化の影響でいずれは海中に沈むと言われている。
賑やかで楽しい仲間たちとの気ままな生活が続いていたが、
ある時、大嵐がやってきて・・・
都会と隣り合わせの河口のコミュニティで暮らす6歳の少女が、
厳しい現実に直面しても、果敢に前を向いて生きてゆく、
現代の寓話。
手を伸ばせば届きそうなくらいの間近に、
現代の人々の営みがあるところで、
早晩、海に沈んでしまうだろうと言われている土地、「バスタブ」。
ここに暮らす人々は、
自分たちが望むものだけを受け入れ、
不要と感じるものを遠ざけて生きている。
6歳の少女、ハッシュパピーは、
地球の一部として、命を感じながらの暮らしに不満はないが、
何の記憶もない母への思慕を胸に秘めている。
ハッシュパピーにとって、ここでの生活が全てであり、
永遠に続いてほしいと願っているが、
徐々にそれが叶わなくなる事態が起こってくる。
そんな時、彼女はどうしようとするのか・・・
とてもじゃないが、物質的に恵まれているとは思えない環境で、
襲いかかってくる厳しい現実に直面した時、
彼女はどんな道を選ぶのか・・・
彼女に備わった力や、経験する出来事で学んだことが、
その後の彼女が向かうところを指し示す。
そんな姿を、まるでドキュメンタリーのように追い、
同時に、ファンタジックな映像を盛り込んで、
彼女のさまざまな「戦い」を描いてゆく。
その目や表情は、6歳の女の子というより戦士のようだ。
殊に、オーロックスの前に怖気づくこともなく対峙する目は、
彼女が失い、新たに身につけたモノの全てを語る気さえする。
この作品を観ながら感じたことがいくつか。
まず、これは、感想が大きく二分されるだろう、ということだ。
つまり、ここで暮らす人たち、
少なくとも、ハッシュパピーの父ウィンクの生業は何か?など、
現実的な目で見始めたら、
この物語をすんなり受け入れられないだろう、ということだ。
心が震えるほどに感銘を受ける人もいれば、
「これって何」と言う方も少なくはないのではないか・・・
そう思う設定や展開なのだ。
けれども、それらを全部受け入れて、
この6歳のヒロインの目線で、起こる出来事を見つめていれば、
その強さ、脆さ、逞しさ、決断・・・から、
感じ取れるものがたくさんあるだろう。
だって、このか細そうな女の子が、とってもかっこいいのだもの。
この、何千人もの候補の中から選ばれた彼女は、
ハッシュパピーを体現するに相応しい「何か」を持っている。
決して媚びたような演技をせず、
そこで本当に生きている存在感を漂わせる。
映画を観終わった今でも、
彼女はそこに暮らしていて、厳しい現実の中に希望も楽しみも見つけて、
命の音を聴いている気がしてくる。
今年のアカデミー賞授賞式で、
史上最年少の主演女優賞候補としてお洒落して登場した姿は、
可愛らしい小学生に見えたが、
何も説明がなかったら、あの華やかな席の彼女が、
このハッシュパピーを演じていたのが信じられないほどだ。
最近知ったのだが、
彼女は、スティーヴ・マックィーン監督の『12 years slave』で、
ブラッド・ピット、ベネディクト・カンバーバッチ、
マイケル・ファスベンダー、キウェテル・イジョフォーらとの共演や、
ミュージカル作品『アニー』で主演のアニーなど、
注目度の高い作品に出演するらしい。
それはともかく。
地球の上で生まれた以上、わたしたちは地球の一部の欠片であり、
それらが巧く繋がって、世界を作っている。
小さな欠片の一つが、姿や場所を変えれば世界は違う顔を見せる。
何かの都合で欠片の繋がりが変わった時、
それを元あった位置に直せば、元通りになるものだが、
その力が大きすぎた時は、もう元には戻せない。
だとしても、人は命の限り生きて行くものだとすれば、
何を、どうするか、なのだ。
たとえ他人の目にどう映ろうと、どのような未来に行き着こうと、
自分らしく道を選ぶしかない・・・
このお話の中の小さな女の子は、
そんなことを感じさせてくれた。
不思議な力に引っ張られるような、
とっても個性的なヒロインとお話に出会った。
出演: クヮヴェンジャネ・ウォレス
ドワイト・ヘンリー
監督: ベン・ザイトリン
2012年 アメリカ 93分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■
第85回アカデミー賞で、
史上最年少の主演女優賞候補ほか、
作品賞、監督賞、脚色賞の主要4部門候補となった作品が、
わが町で公開中。
物語は。
長く伸びた先に工業地帯が聳える堤防の近くに、
バスタブと呼ばれるコミュニティがある。
6歳のハッシュパピーは父ウィンクと2人で暮らしていた。
母は彼女を産んですぐに姿を消したが、
残していった服や持ち物に囲まれていて、
多くのペットたちはじめ、生物の命を実感し、
自分は大きな世界の中の1つのかけらだと信じ、
地球とおしゃべりしながら生きている。
だが、バスタブは、
地球温暖化の影響でいずれは海中に沈むと言われている。
賑やかで楽しい仲間たちとの気ままな生活が続いていたが、
ある時、大嵐がやってきて・・・
都会と隣り合わせの河口のコミュニティで暮らす6歳の少女が、
厳しい現実に直面しても、果敢に前を向いて生きてゆく、
現代の寓話。
手を伸ばせば届きそうなくらいの間近に、
現代の人々の営みがあるところで、
早晩、海に沈んでしまうだろうと言われている土地、「バスタブ」。
ここに暮らす人々は、
自分たちが望むものだけを受け入れ、
不要と感じるものを遠ざけて生きている。
6歳の少女、ハッシュパピーは、
地球の一部として、命を感じながらの暮らしに不満はないが、
何の記憶もない母への思慕を胸に秘めている。
ハッシュパピーにとって、ここでの生活が全てであり、
永遠に続いてほしいと願っているが、
徐々にそれが叶わなくなる事態が起こってくる。
そんな時、彼女はどうしようとするのか・・・
とてもじゃないが、物質的に恵まれているとは思えない環境で、
襲いかかってくる厳しい現実に直面した時、
彼女はどんな道を選ぶのか・・・
彼女に備わった力や、経験する出来事で学んだことが、
その後の彼女が向かうところを指し示す。
そんな姿を、まるでドキュメンタリーのように追い、
同時に、ファンタジックな映像を盛り込んで、
彼女のさまざまな「戦い」を描いてゆく。
その目や表情は、6歳の女の子というより戦士のようだ。
殊に、オーロックスの前に怖気づくこともなく対峙する目は、
彼女が失い、新たに身につけたモノの全てを語る気さえする。
この作品を観ながら感じたことがいくつか。
まず、これは、感想が大きく二分されるだろう、ということだ。
つまり、ここで暮らす人たち、
少なくとも、ハッシュパピーの父ウィンクの生業は何か?など、
現実的な目で見始めたら、
この物語をすんなり受け入れられないだろう、ということだ。
心が震えるほどに感銘を受ける人もいれば、
「これって何」と言う方も少なくはないのではないか・・・
そう思う設定や展開なのだ。
けれども、それらを全部受け入れて、
この6歳のヒロインの目線で、起こる出来事を見つめていれば、
その強さ、脆さ、逞しさ、決断・・・から、
感じ取れるものがたくさんあるだろう。
だって、このか細そうな女の子が、とってもかっこいいのだもの。
この、何千人もの候補の中から選ばれた彼女は、
ハッシュパピーを体現するに相応しい「何か」を持っている。
決して媚びたような演技をせず、
そこで本当に生きている存在感を漂わせる。
映画を観終わった今でも、
彼女はそこに暮らしていて、厳しい現実の中に希望も楽しみも見つけて、
命の音を聴いている気がしてくる。
今年のアカデミー賞授賞式で、
史上最年少の主演女優賞候補としてお洒落して登場した姿は、
可愛らしい小学生に見えたが、
何も説明がなかったら、あの華やかな席の彼女が、
このハッシュパピーを演じていたのが信じられないほどだ。
最近知ったのだが、
彼女は、スティーヴ・マックィーン監督の『12 years slave』で、
ブラッド・ピット、ベネディクト・カンバーバッチ、
マイケル・ファスベンダー、キウェテル・イジョフォーらとの共演や、
ミュージカル作品『アニー』で主演のアニーなど、
注目度の高い作品に出演するらしい。
それはともかく。
地球の上で生まれた以上、わたしたちは地球の一部の欠片であり、
それらが巧く繋がって、世界を作っている。
小さな欠片の一つが、姿や場所を変えれば世界は違う顔を見せる。
何かの都合で欠片の繋がりが変わった時、
それを元あった位置に直せば、元通りになるものだが、
その力が大きすぎた時は、もう元には戻せない。
だとしても、人は命の限り生きて行くものだとすれば、
何を、どうするか、なのだ。
たとえ他人の目にどう映ろうと、どのような未来に行き着こうと、
自分らしく道を選ぶしかない・・・
このお話の中の小さな女の子は、
そんなことを感じさせてくれた。
不思議な力に引っ張られるような、
とっても個性的なヒロインとお話に出会った。
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原題 BEASTS OF THE SOUTHERN WILD
2012年 アメリカ
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この記事へのコメント
1. Posted by にゃむばなな July 03, 2013 22:34
ほんと、この少女はハッシュパピーを演じるために出てきたかのような女優さんでしたね。
彼女以外が演じたら、また別の作品に見えていたのでしょうね。
彼女以外が演じたら、また別の作品に見えていたのでしょうね。
2. Posted by ノラネコ July 04, 2013 00:16
宮崎アニメに比較される作品ですが、テーマ的にも正に「生きねば!」でシンクロします。
ハッシュパピーちゃんアニー役やるんですか。
これはピッタリな気がする。楽しみですね。
ハッシュパピーちゃんアニー役やるんですか。
これはピッタリな気がする。楽しみですね。
3. Posted by ◆にゃむばななさま July 04, 2013 23:04
この彼女をハッシュパピーに選んだ時点で成功が決まったかのような、
本当に巧い人選だったと思います。
今でも、彼女はバスタブであの表情で生きている気がしますもの。
仰るように、もし別の女の子だったら、違うお話に見えたかもしれません。
本当に巧い人選だったと思います。
今でも、彼女はバスタブであの表情で生きている気がしますもの。
仰るように、もし別の女の子だったら、違うお話に見えたかもしれません。
4. Posted by ◆ノラネコさま July 04, 2013 23:07
偶々、映画ニュースで知ったんですが、
彼女のアニー、いいだろうな、と思いますよね。
彼女はまた今後も注目作に出演してゆくことになるんでしょうね。
彼女のアニー、いいだろうな、と思いますよね。
彼女はまた今後も注目作に出演してゆくことになるんでしょうね。