December 02, 2013

キャプテン・フィリップス

ソマリア沖。救命艇。座席番号15。
Captain Phillips







■・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出演: トム・ハンクス
    バーカッド・アブディ
    バーカッド・アブディラマン
    ファイサル・アメッド
    マハト・M・アリ
    マイケル・チャーナス
    キャサリン・キーナー
監督: ポール・グリーングラス
2013年 アメリカ 136分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

トム・ハンクス主演、実話を基にした作品が公開中。



物語は。


2009年4月。
ひとりの男が、自宅を遠く離れた勤務に就こうとして、
アメリカの自宅を旅立った。
彼は、リチャード・フィリップス。
ケニアへやソマリアへの援助物資を運ぶ、
アメリカのコンテナ船マースク・アラバマ号の船長だ。
無事、出航したものの、ソマリア沖の危険な海域を通行するため、
船員に訓練をしようとした矢先、それが現実になった。
武装した若い男たちが、金目当てに船に乗り込んで来たのだ。
恐怖に怯えながらも、何とか冷静に対処しようとするフィリップスだが、
結果的に、20名のクルーを守るため、船が故障したと嘘をつき、
単身、犯人グループの人質となり、
グループと共に救命艇に乗り込んで、ソマリアへと向かうことになった。

アラバマ号は、米国海軍に救援を要請、
ネイビー・シールズが出動する救出作戦が始まった・・・




2009年、ソマリア沖で実際に起こったコンテナ船襲撃事件で、
犯人グループの人質となった船長フィリップスの4日間を、
トム・ハンクス主演で描く作品。

ソマリアで、航行中の船を襲撃する若い猟師(=海賊)たち。
船員を庇い、犯人グループに人質として囚われてしまった船長を、
米国海軍が救出に向かう。
実話を基にしている作品なので、
「残念なことに、船長を救うことはできませんでした」というお話にはならない、と
確信を持って観てはいる。
観てはいるのだが、
武装してはいるものの、果敢(無謀?)にもボートで追尾し、
梯子を架けてコンテナ船に乗り込み、
時に大胆に、時に用心深く行動する海賊たちが
いつなんどき、理性を失った行動に出るのかと思うと、
生きた心地のしない時間の連続である。

彼らは、彼らなりにきっと恐怖心を持っていて、
おそらく、それを払拭し気分を高揚させるために麻薬を口にし、
空威張りをしながら船員を威圧する。
アメリカの商船であれば、積まれた現金も破格、
積荷も高級品であろうと踏むのだが、
生憎、アフリカへの救援物資が中心の船である。
要求が満たされないとわかり、何かのはずみに機嫌を損ねれば、
一瞬で船員たちの命が消し飛んでしまう可能性もある。
フィリップスは、怯えつつも主導権を取ろうと、
必死ななかにも冷静に対処しようと努力を続ける。
それが功を奏するのだが、結果的には、
犯人グループと共に、小さな救命艇で母船を離れることになる。
そして、数日かけてソマリアへと向かうしか道は無くなったのだ。
もちろん、米軍が黙っているはずがなく、
精鋭を集めたシールズが投入されてゆくのだが、
最初から最後まで、ほんのひと時も緊張感が途切れることがない。
事件が起きてからの、米軍の動きも当然の流れで、
信頼はしていても、本当に大丈夫だろうかと不安も募ってくる。
物語の大半がこんな時間なので、
(いや、実際に船長が経験したものと比べれば、
 映画を観ている者は呑気なものだけれど)
犯人たちの一挙手一投足、一言一句が極度の緊張となる。

だが一方で、
犯人グループのリーダーが言葉少なに語る端々に、
持てる者と持たざる者の大きな隔たりや、
本来の生業だけでは生きていけない厳しい現実が感じられる。
確かに、彼らのやっていることは正しいとは言えないが、
何が彼らをそんな立場に追いやったのか、
そんな現実を改善する手立てはないのか、と考えずにはいられない。
実力の何倍もの力を誇示してはいるものの、
骸骨のように痩せこけ、身なりも粗末で、
おそらく、充分な教育を受けていないと見受けられる彼の、
それでも感じられる知性と、見え隠れする優しさや現実への諦観など、
海賊だから、と一刀両断にできないものがある。
彼らを一方的に責めきれない、そんな描き方も見事だ。

そんなことを考えつつも、
終盤、満を持して到着するのは、流石に米軍である。
この小さな標的を潰すのは、
赤子の手を捻るようなものなのだろうと思わせる戦闘態勢は、
どんなにか心強いものだった。
とは言え、フィリップス船長の恐怖や緊張は、
如何許りであっただろうか。
ラストの船長の様子を見れば、その過酷さが窺い知れる。


若い頃からこれまで、
いったい何本の主演作品を観たかわからないトム・ハンクス。
この人の演技力をこれまでも全く疑ってはいないが、
今回はまた、演技の幅の広さ、表現力の的確さを、
改めて、深々と思い知った作品だった。


tinkerbell_tomo at 09:00│Comments(2)TrackBack(25) 洋画【か】 

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この記事へのコメント

1. Posted by メグ   December 15, 2013 17:33
悠雅さま こんにちは。
実話に基づいた作品ですから当然ではありますが
フィリップス船長を無敵のヒーローに描くのではなく、
船長といえども一般人が極限の恐怖を体験し、なんとか耐えきったのだということを、ラストのトム・ハンクスが見事に表現していましたね。
でも、どちらかと言うとこの映画はこの立派だった船長は狂言回しのような役割で、本当に描きたかったのは「雇われ海賊にならざるをえないソマリアの貧しい漁師たち」の現実であったように感じました。
終盤で、「漁師なら漁師としての暮らしがあっただろう・・・」というようなことを船長から言われて、海賊のリーダーが答える「言葉」に悲しみを感じました。

映画はテンポよく進行し、無駄な場面もなくて秀作だと思います。
そして、トム・ハンクスは上手いなぁ。でもいつの間に、ちょっと太り過ぎ(笑)
2. Posted by ◆メグさま   December 15, 2013 23:16
こんばんは。
本当に、まさに仰る通りです。
トム・ハンクスが素晴らしいと思ったのは、
海賊に乗り込まれた時でも、救命艇内でもなく
(もちろん、そこもいいんですが)
救出されてからの繊細な演技でした。
また、もしフィリップス船長を礼賛する作品ならば、
犯人たちとあんな遣り取りをしないだろうと思います。
彼の短い一言に、それまでの恐怖が違うものになりました。

トム・ハンクスといえば、枚挙に暇がないほど出演作も多いんですが、
未だに『スプラッシュ』の頃のお兄ちゃんを思い出してしまいます(笑)

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