December 09, 2013

利休にたずねよ

絶対的美意識。
利休にたずねよ

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出演: 市川海老蔵   中谷 美紀
    伊勢谷友介   大森 南朋
    成海  璃子   福士 誠治
    クララ        壇   れい
    大谷  直子   柄本   明
    市川團十郎   中村嘉葎雄
監督: 田中 光敏
2013年 日本 123分
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■

市川海老蔵主演の「茶聖」の物語が現在公開中。



物語は。


千利休の切腹の日の朝は嵐だった。
一茶人に大軍を差し向ける天下人に思いを馳せつつ、
心穏やかな利休。
彼の胸には、現在に至る原点となった、
ある出来事が甦って来る。
多くの人間を惹きつける力を持ち、茶人として名声を得てきた年月。
信長に気に入られ、秀吉の心も虜にする。
だがやがて、利休の名声や実力は、秀吉の心に邪な火を灯す。
自分に順ろわない利休に対し、執拗に食い下がる秀吉。

そして、利休は自らの美意識の追求の原点となった、
ある出来事に思いを馳せる。
それはまだ彼が19の青年だった頃のことだった・・・



「茶聖」として有名な千利休の切腹当日、
利休の心に甦った過去の日々を描く物語。
第140回直木賞受賞作の映画化作品らしく、
冒頭からラストまで、常に文芸作品であることを強く意識させ、
意外な視点の筋書きはそれだけで充分面白いのだが、
年々、その魅力を強烈に放つ市川海老蔵が主演であるので、
利休という人物に一気に興味が沸くと同時に、
気がついたら、すっかり海老蔵に魅了されてしまう。
茶聖と称えられるに相応しい所作の美しさ、凛とした佇まいも良いが、
大店の放蕩息子であった時代のやんちゃな感じなども、
海老蔵ならではの豪快さと繊細さで見せてくれる。
わたしが元々、海老蔵が(も)好きなせいもあるが、
見せるべき場面で見せてくれる役者は、観る価値があるものだ。

と、最初っから海老蔵のことばっかり書いてしまったが、
もちろん、この作品は海老蔵しか観どころがないわけじゃない。
利休切腹の朝から遡り、歴史的事実を淡々と積み上げる前半と、
がらりと趣を変え、
利休の絶対的美意識の追求の原点となるある出来事を、
情緒的に描く後半。
特に後半(実際には過去)はフィクションであるだろうが、
「もしかしたらそうだったかもしれない」と思わせるものもあって、
それならそれでアリじゃないか、と思えてくる。
余分なことを語らないであろう利休という人物らしく、
作品の中では、台詞は多くない。
たくさん喋る人物も登場してくるが、
基本的に、利休はぺらぺら喋りはしない。
ごく普通に身近にある四季折々の美しいもの。
特に高価なものというのではなく、
あらゆるものから余計なものを削ぎ落とした中にある美を見つめ、
理想化された自然の美を尊ぶ男
を描くに相応しい空気を
作品の中に作っている。

これまで、あまり関心を持たずにいたが、
利休という人物に初めて興味を持つ機会になった。

利休が見つめるのは、
徹底的に余分なものを省いた、本質的な美である。
何を尊び、何を棄て、何を愛そうと、
他人の評価など何するものぞ。
「美は自分が決める」と断言する彼の美意識は、
たとえその根源がどこにあろうと、どんな発展を遂げようと、
誰にも追いつけず、邪魔されない。
けれど、その能力を妬み、最終的には潰そうとする秀吉との対比が、
さらに利休という人物を浮き彫りにする。
そういう意味では、美の理解者として描かれる信長が
そのビジュアルも相俟って素敵に見えたりもする。


先に、前半と後半の趣が変わると書いたが、
必要最低限のことだけ淡々と置いてある感じの前半に対し、
後半は別人の物語のような展開になる。
そこに登場してくる若い女性の顔を見て、
わたしは最初てっきりペ・ドゥナだと思った。
でも、やっぱり違うか、と思い直し、じゃあ誰、と思ったのだが、
思い至らないはずだ。初めて観る韓国人女優だったのだもの。
クララさん、初めてお目にかかりました。
また、役者の顔ぶれも豪華で、
それぞれにその人物の雰囲気を作っていて、
それが海老蔵だけではなく、物語に入り込んで観れた理由の1つ。
伊勢谷友介の信長、大森南朋の秀吉、中谷美紀の利休の妻、
また、これが最後の親子共演となった、在りし日の市川團十郎さん。
福士誠治の石田光成、柄本明の瓦職人・・・
みんな、本当に良かったなぁ。

つい、海老蔵に魅了されてしまい、それが中心の感想になってしまった。
一晩寝て、もっと冷静に考えたら、
違う感想が出てくるんじゃないかとも思う^_^;
もしかしたら明日以降に追記するかもしれないけれど。
ともかく、この作品を楽しませてもらったのです、という
ちょっとしたご報告でありました。


tinkerbell_tomo at 00:33│Comments(2)TrackBack(20) 日本の映画 

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利休にたずねよ '13:日本 ◆監督:田中光敏「化粧師 KEWAISHI」「火天の城」 ◆主演:市川海老蔵、中谷美紀、市川團十郎、伊勢谷友介、大森南朋、成海璃子、福士誠治、クララ、川野直輝、袴田吉彦、黒谷友香、檀れい、大谷直子、柄本明、伊武雅刀、中村嘉葎雄 ◆STORY◆...

この記事へのコメント

1. Posted by にゃむばなな   December 14, 2013 11:38
この映画に関しては何だかんだ感想があっても、最後はみなさんエビゾーさんの所作の美しさで落ち着いてしまうのではないでしょうか。

それくらい、エビゾーさんは美しかったですね。さすが梨園の方だと改めて感心してしまいました。
2. Posted by ◆にゃむばななさま   December 15, 2013 22:57
小さな頃から芸を叩き込まれ、美しくてなんぼの人生を送って来られたのだから、
ひとつひとつの所作や立ち居振る舞いが美しく見映えするのは当然ですね。
わたしは海老蔵さんも好きな俳優さんの1人なので、
惚れ惚れ見蕩れるところも多々ありました。

流石、原作は小説だけに、
小説を読んでいる感覚で楽しめた作品でした。

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