February 20, 2014

大統領の執事の涙

懐中時計。ネクタイ。空気になる。
The Butler
 

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出演: フォレスト・ウィテカー
     オプラ・ウィンフリー
    ジョン・キューザック
    ジェーン・フォンダ
    キューバ・グッティング・Jr
    テレンス・ハワード
    レニー・クラヴィッツ
    ジェームズ・マースデン
    デヴィッド・オイエロウォ 
    ヴァネッサ・レッドグレイヴ
    アラン・リックマン
    リーヴ・シュレイバー
    ロビン・ウィリアムズ
    クラレンス・ウィリアムズ三世
    マライア・キャリー
    アレックス・ペティファー
監督: リー・ダニエルズ
2013年 アメリカ 132分
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プレシャス』の、リー・ダニエルズ監督、
オスカー俳優、フォレスト・ウィテカー主演の作品が公開中。



物語は。


白人が経営する綿花農場の奴隷として生まれ育ったセシルは、
経営者に父を殺害され、母は廃人となったことで、
経営者宅のハウス・ニガー(家で働く下男)として雇われ、
白人に仕えるための作法や礼儀を身に付ける。
このままでは終わりたくないと町に出た彼は、
運良く拾われた高級ホテルのボーイとして働くことになる。
それまで身に付けた作法が買われ、
ホワイトハウスの執事に大抜擢される・・・




アイゼンハワー大統領以降、レーガン大統領に至るまで、
7人の大統領の信頼を得る執事となった黒人、セシルの半生を描く物語。
邦題から受ける印象は、
歴代大統領との信頼関係を中心に描くように感じるのだが、
これは、大統領の最も近くで「空気のように」接することを、
生涯の仕事として生きた一人の執事セシル・ゲインズの物語だ。
各々はそう長い時間ではないものの、歴代大統領が登場し、
執務室での様子や本物の映像を使ってそれぞれの時代を描きつつ、
同時進行でセシル一家の長い年月が絡めて描かれる。
それはつまり、アメリカにおける黒人の歴史そのものである。
セシルは、執事として働くことに誇りを持ち、
妻と2人の息子を愛していて、息子たちも順調に育っていたが、
一方で、彼の家庭ではたくさんの問題が発生してゆく。
全ては、彼らが黒人であるが故だった。

これまで何度もさまざまな作品で観て来たので、
それはきっと事実なのであろうとは思うが、
それでもやっぱり信じ難い、黒人に対する迫害があった。
それゆえ、白人に見せる顔を作り、懸命に生きて来た執事たる父と、
だからこそ、公民権運動にのめり込む長男と、
だからこそ、ベトナム戦争へ赴く次男がいる。
三人三様の「戦い方」を見守り、愛し続ける妻(母)がいる。
その一家が何を見つめ、何を目指し、どのように生きてゆくのか、
その軌跡を追う中で、
少しずつ少しずつ進み、不充分ながらも得られてゆく公民権。
多くの人たちが血を流し、命を懸けて戦ってきた歴史があってこそ、
築かれてきたのが現在のアメリカである。

どんな平和で平坦な時代の家庭でも、
一家の何十年の時間の中には、さまざまなことが起きる。
どれだけ頑張っていても、良いことばかりがあるとは限らず、
苦しいことばかりが続くことも少なくないものだ。
まして、この時代、このような環境にいた彼らが、
それぞれの選択に至るのも、そのたびに苦しい思いをするのも、
当然の帰結のように思われるだけに、本当に辛くなる。
わたしなどは、主人公よりも主人公の妻であり2人の息子の母の立場で
祈るような気持ちで見守っていた感じだった。
この作品は、事実に着想を得て作られたものということで、
おそらく、この家族に象徴的なあれこれを盛り込んでいると思われ、
いろいろな要素がとても巧く纏まっていて、とても良い作品だと思う。
思うのだけど、何故かそこまでの感想になってしまう。
素晴らしいキャストがそれぞれに良い持ち味と力を出して、
たくさんのものが盛り込まれた作品で、感触はとても良いのだが。
それが、大きな映画賞でスルーされた理由だろうか・・・


主演は、フォレスト・ウィテカー。
若い青年期から老齢に達するまでの演技の素晴らしさは言うまでもなく、
セシルの信念に基づく生き方を体現するに相応しい人だ。
セシルの妻には オプラ・ウィンフリー。
この人、いいねぇ。職務に忠実なあまり家を顧みる時間が少なく、
キッチンドランカーになったりもするけれど、
生涯、夫を愛し支えてゆく女性にぴったり。
また、セシルの長男には、どうしても名前が覚えきれない^_^;、
デヴィッド・オイエロウォ。
この人は、BBCドラマの『スモールアイランド』で、
2人のヒロインのうちの1人、ホーテンス(ナオミ・ハリス)の夫、
ギルバートを演じた人で、そのドラマの感想の中で、
「男前じゃないけど、段々と頼り甲斐がある男に見えてくるのが不思議」
と書いたのを覚えているが、今回もまさにそんな感じ。
主人公一家もとても印象深い顔ぶれなのだが、
お話の筋書きとは関係なしに、
ついつい目を引かれてしまうのが、歴代大統領たちの顔ぶれだ。
ロビン・ウィリアムズ、ジェームズ・マースデン、ジョン・キューザック、
リーヴ・シュレイバー、
そして、思わずにっこりしてしまうのが、アラン・リックマン(^^♪
また、ヴァネッサ・レッドグレイヴだとか、
男前なのに、いつも何故か嫌な奴が多いアレックス・ペティファー…
さらに、セシルの執事仲間たちも皆良い味の人たちばっかり。

お話を通して再確認するような、
アメリカとアメリカの黒人たちの歴史と、
凄い顔ぶれの競演という、とても面白い持ち味の作品なのだった。 

tinkerbell_tomo at 23:13│Comments(0)TrackBack(3) 洋画【た】 

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