June 04, 2014

思秋期

孤独。秘密。一条の光。
Tyrannosaur




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出演: ピーター・ミュラン
    オリヴィア・コールマン
    エディ・マーサン
    ネッド・デネヒー
監督: パディ・コンシダイン
2011年 UK 98分
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観たくてWOWOWの放送を録画していたのに、
それが何故か消えて(間違えて消した?)おり、
どうしたものかと思っていたら、幸い再放送があったので再度録画。
よかった・・・観れて。
っていうか、間違って消してしまってたなんて、なんという失態。
でも、これを見逃さずに済んで本当によかった。

 

5年前に妻を心臓発作で亡くし、今は失業中のジョセフ。
小さなことで怒りを爆発させ、抑制することができないためトラブルが絶えない。
ある日、そんな最中にリサイクルショップで働くハンナと出会う。
裕福な家庭の人間と知ったジョセフは、
彼女に対し、粗暴で無礼な態度を取るが、ハンナは優しく対応してくれる。
だが、ハンナには他人に言えない秘密があって・・・



身も心も荒んだ生活を送る初老の男が、
一人の女性との出会いをきっかけに、少しずつ心を開き、
それまでとは違う方向に向かおうとするお話。
そんな風に書くしかないのだが、
そんな風に書かれたら、「何か、いつかどこかで聞いた話よねぇ」と
思われてしまうだろうな、と思う。
実際、わたしも最初は
「いつかどこかで観た何かと似てる」と思ったりもした。
冒頭、主人公の粗暴さ、ダメさ、子供っぽさなどが目に付き、
それを受け止めるかたちで、女性が1人登場する。
いかにも、優しく寛容で、嫌な派手さがない信頼できそうなタイプであるので、
「ああ。これで彼が立ち直るきっかけができるのね」と、
つい早合点してしまっても無理はないと思う。
なのだけれど、
それは間もなく、間違い…とは言い切れないけれど、
正解ではなかったのだと気づくことになる。
ジョセフの苦しみは他人には理解されにくいかもしれないが、
ハンナもまた、誰にも言えない苦悩を抱えていたのだ。
そこで、お話の方向性が大きく変わってくる。
そして・・・その後については、
いつもの通り、この作品をご覧になって確認していただきたい。
もちろん結末も、その理由もここでは言わない。

その展開も含め、
役者たちの演技の凄さに改めて驚いてしまう。
自分の名前以外、何も持っていないという男を描いた、
『マイ・ネーム・イズ・ジョー』の主人公を演じたピーター・ミュランだが、
最初はもう、どうしてもカブってしまうものがあった。
家はあるものの、妻も職も失った男という悲哀の見せ方も凄いが、
前半と後半の印象がここまで違うことになるとは・・・
ピーター・ミュランだからこそ出る味わいであるとも言える。
また、こちらも重要な登場人物、エディ・マーサン。
普段は、気の弱い善人を演じさせたら、
右に出る人はないんじゃないかとさえ思う人だ。
彼の役柄、その演技力についても語りたいところだけれど、
別に、もったいぶるわけじゃないが、これも敢えて控えておこう。
ベテランの役者たちの演技の力に今更目を瞠ることになるわけだが、
それと同時に、このお話をここまでの筆致で、
辛抱強く(本当のところはわからないが、何故かそう見える)、丁寧に描いた、
脚本と監督のパディ・コンシダイン、彼の実力は如何許りか。
この題材の選び方、目指す方向性、表現の仕方、
決して派手ではないが、落ち着いた知性が作品の中心を貫いている。
いやもう、これは。。。凄い。


身も心も荒んだ生活を送る初老の男が、
一人の女性との出会いをきっかけに、少しずつ心を開き、
それまでとは違う方向に向かおうとするお話。
先程書いた、曖昧な文章をもう一度使うけれども、
その、度合いの大きさ、意外性と、
原題『ティラノサウルス』に込められた意味の深さを、
どうぞ、作品の中で感じていただきたい。
(この原題では、恐竜映画と勘違いされそうなところ、
  『思秋期』と大胆な意訳をした邦題、Good Job!です)
遅れ馳せながら、本当にいい作品に出会えたことに感謝です。

tinkerbell_tomo at 23:00│Comments(0)TrackBack(0) 洋画【さ】 

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