June 01, 2014

レイルウェイ 運命の旅路

泰緬鉄道。唯一の真実。「A」。
The railway man




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出演: コリン・ファース
    ニコール・キッドマン
    ジェレミー・アーヴァイン
    ステラン・スカルスガルド
    サム・リード
    石田 淡朗
    真田 広之
監督: ジョナサン・テプリツキー
2013年 オーストラリア/UK 116分
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4月公開の作品が、
ちょっと遅れてわが町のシネコンで上映中。
コリン・ファース主演と聞いて、是非に、と待っていたが、
誰が主演であろうと、これは是非観ておきたい一作。



1980年。
鉄道愛好家の中年男性エリック・ローマクスは、
列車で出会った女性、パトリシアに一目で恋をした。
まもなく、2人は深く愛し合い結婚したが、その幸せは長く続かなかった。
パトリシアが、睡眠中も悪夢にうなされるエリックにその理由を尋ねても、
彼は何ひとつ語ろうとしなかった。
パトリシアは、エリックとの幸せな結婚を守りたい一心で、
エリックが抱えている秘密を探り、共に救いの道を探したいと思った。
そこで、戦友であったフィンレイを訪ねるが、彼も全てを知っているわけではなかった。

そんなある日、フィンレイがとある新聞記事を持ってエリックを訪ねて来た。
戦時中、捕虜として共に収容されていたタイで、
当時、通訳をしていた永瀬という男が、現地の案内人をしているというものだった。
フィンレイは、永瀬に復讐をする機会だと言うのだが・・・ 



第二次世界大戦下、タイで捕虜となり泰緬鉄道建設に従事させられたことで、
苦悩と屈辱の中で戦後を生きて来た退役軍人の、実話を基にした物語。 

物語は、冒頭、変わり者の世捨て人のように暮らす中年男性エリックが、
列車の中で美しい女性パトリシアに出会うところから始まり、
しばらく、2人の幸福な様子が描かれてゆく。
このまま、2人のラブストーリーばかりが展開しても、
それはそれで観れそうな感じでもある。
けれど、パトリシアは、その幸福が破綻しかねない事態に直面してしまう。
その尋常ではない様子から、彼が抱え続けて来たものは、
戦争中の深くて大きな心の傷だと考えた彼女は、
エリックの戦友であるフィンレイを訪ねてゆく。
エリックの、悪夢に魘される様子を見るパトリシア(と観客)は、
彼が今も尚、苛まれている出来事の重大を感じ取らずにいられず、
それを何とかしてあげたいと願うばかり。
けれど、唯一の突破口と思われるフィンレイも、
最初は言葉を濁し、彼女は原因に辿り着けないでいた。

実話をベースにしているというところから、
つまりそれは、主人公エリックがその重大な何かを克服することができ、
他人に語ることができた、という証拠であろう。
そして、やっと彼が掴んだ幸福を、
彼がみすみす手放すことになった、という結末ではないだろうとも思う。
だから、何かがこの作品の中で解決されてゆくのだとは思うのだが、
フィンレイが知る範囲のことを聞くだけでも相当な辛さであり、
現在のシーンに時折入り込んでくる過去のシーンから、
エリックが一人で越えなければならない壁の高さと厚さを思うと、
到底、わたしなどの想像では難しいだろうという予感がした。
更に、エリックを追い詰め虐待するのは、当時の日本軍である。
日本人として、そこに描かれていることのあれこれが、
どこまで真実のリアルな描写であろうとなかろうと、
辛い気持ちなしに観ることはできない。
あるいは、それぞれの立場や経験などから、様々なご意見もあろう。
けれど、これはあくまでも主人公の立場からの描写であると同時に、
冷静に、第三者の目線でもって描かれたものであるとも感じられ、
語られようとする出来事を、悪感情を抱くことなく観ることができると思った。

そして、いよいよエリックは、自らのこれまでとこれからを賭けるように、
ある行動に出ることになるのだが、
それは、スクリーンやDVDなどでご覧いただくほうがいいだろう。
エリック@コリン・ファースと永瀬@真田広之の、
本当にその場に居合わせた者たちだと思うような演技の素晴らしさもあって、
後半は特に見応えのある場面が続いてゆくから。
わたしは、あの有名な『戦場にかける橋』をちゃんと観たことがなく(^^ゞ
ほぼそのまま舞台設定がカブるらしい物語を比較もできないのだが、
その代り、と言っては何だが、
戦場のメリークリスマス』の俘虜収容所の様子を思い出していた。
似て非なる設定と、全く違うお話だけれど、
日本人と英国人の文化の衝突という意味では、共通するものがあって、
それが作品の見どころの1つであるから。


役者は役柄を演じるのが仕事ではあるのだけれど、
特に、若き日を演じる役者と、壮年期を演じる役者が違う場合、
壮年期を演じる役者は、過去の役者の演技を引き継いで演じるわけだから、
更に難しいのではないかと、ふと思う。
それも含め、コリン・ファースと真田広之、この2人のキャスティングは正解だった。
それにしても、真田広之は
こういう佇まいの、こういう日本人の役がとてもよくハマる。
これまで、何作も海外作品に出演しているけれども、
カズオ・イシグロが脚本、ジェームズ・アイヴォリー監督の
上海の伯爵夫人』も雰囲気によく馴染んでいたし、
あんまり評判が良くなかったダニー・ボイル監督の『サンシャイン2057 』、
わたしは作品自体、今でも嫌いじゃないんだが、
あの時の役柄もいいと思った。
でも、これまでで一番好きだったのが、『最終目的地』のピート。
あの、アンソニー・ホプキンスのゲイの恋人という役柄を、
とても自然な佇まいと綺麗な英語で、
可愛く切なく演じた彼が本当に素晴らしかったの。
その、ピートの演技と同じくらい、今回の永瀬も良かった。
思えば、英国のロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの、
もちろん、前編英語の舞台での演技ができた人なんだものね。
それから、
フィンレイ@ステラン・スカルズガルドも良ければ、
(ただ、こんなに重くてしんどい内容のものなのに、コリンとステランが並んだら、
  つい、『マンマ・ミーア! 』が頭に浮かんでしまったので、
  一生懸命、それを振り切って観ておりました)
パトリシア@ニコール・キッドマンの控えめな演技もいい。
また、彼女の衣裳はどのシーンのものも、
長身で脚長の彼女にとてもよく似合ってて本当に素敵でした。


冷静な視点での丁寧な描写と、役者たちの素晴らしい演技、
スコットランドのどんよりと寒そうで薄暗い風景、
何もなくても、暑さに参ってしまいそうなタイの風景、
何度も言うようだが、とても見応えのある作品。
どうぞ、1人でも多くの日本人が観てくれますように。
 

tinkerbell_tomo at 20:31│Comments(4)TrackBack(4) 洋画【ら】 

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2. 映画・レイルウェイ 運命の旅路  [ 読書と映画とガーデニング ]   June 02, 2014 08:30
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3. レイルウェイ 運命の旅路  [ 象のロケット ]   June 04, 2014 13:37
イギリス。 鉄道好きの退役軍人エリック・ローマクスは、列車で相席になった女性パトリシアと恋に落ち結婚する。 幸せな毎日だったが、毎夜、エリックは悪夢に悩まされていた。 第二次世界大戦中の1942年に日本軍の捕虜となった彼は、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道(たいめ
4. レイルウェイ 運命の旅路  [ 風に吹かれて ]   June 04, 2014 15:52
遺恨の彼方に 公式サイト http://www.railway-tabi.jp 実話に基づいた映画 原作: レイルウェイ 運命の旅路 (エリック・ローマクス著/角川文庫) 1980年、鉄道好きな初老の

この記事へのコメント

1. Posted by めりぃ   June 02, 2014 10:01
あ〜これもとっても観たかったのに多分無理なので、DVDかWOWOWを気長に待ちます…。
真田さん、いいですよね。私も「最終目的地」の彼が一番好きです。
若い頃からある時まではどちらかというと苦手な俳優さんだったのに、気が付いたらいつの頃からかいいなあと思うようになっていました。というか、邦画やドラマで見るよりも洋画で観る彼の演技が好きなのかも。
「サンシャイン2057」評判いまいちだったんですね〜。私は好きですよ!DVDも買って、一時は毎日のように観てました。まあ、ダニー・ボイルとキリアンどちらも大好きなので、彼らの映画ならどんな評判だろうと無条件に愛せるのですが(笑)
これはトニー&カーウァイ監督に関しても同じです(*^_^*)
2. Posted by ◆めりぃさま   June 03, 2014 00:00
観たい映画が全て観れるわけではないですもんね。
時間の都合、上映館の遠さ、お小遣いの残金…など、
WOWOWやDVD待ちする理由はたくさんありますよね。

わ!めりぃさんもですか(嬉)。
『最終目的地』自体も面白い作品だったけれど、中でも真田さんが本当によかった。
あの役を、あんな風に演じられる人だったのねぇ、と改めて見入っていましたもの。
思えば、JACにいた、アイドル同然だった頃の可愛さやアクションの印象が強いですが、
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで演技したり英国の勲章貰ったりと、
年齢を重ねたからこそ良いお仕事ができる人だったのですねぇ。

わはは。めりぃさんもお好きでしたか『サンシャイン2057』。
これは本当に嬉しい。だって、酷評だらけだったでしょう?
でも、わたしも何があってもダニー・ボイル監督もキリアンも好きだもの。
そう、トニー&カーウァイ作品(6月中旬以降のWOWOW必見ですね)も。
キリアンといえば、あの、途中からお話が変わってゆく『TIME』でも、
めちゃ味のある、かっこいい役柄でしたよね。
『ダークナイト・ライジング』の「裁判長」も好きでしたが(笑)
3. Posted by めりぃ   June 04, 2014 01:53
キリアンはキリッとしたスーツ姿も眼鏡姿もかっこいい役ももちろん素敵なのですが、私はやはり美しい男子がボロボロになりながら生き延びてゆく姿が好きなので(←変態ですね)「サンシャイン2057」や「28日後…」がお気に入り。
「28日後…」は、ホラー全然ダメな私が唯一観ることのできるゾンビものなのです。(しかもうっとりしながら(笑))

WOWOWのカーウァイ特集、私もプログラムを見てテンションダダ上がりでした。もう何度も観ていたりソフトを持っているはずなのに(しかも未見の映画がハードディスクにたまっているのに)絶対観なければ!というこの変な義務感はなんなんでしょう。あ〜早く「恋する惑星」でキュンキュンしたい!
4. Posted by ◆めりぃさま   June 04, 2014 22:33
あはは。それ、わかります(笑)
わたしは、美しい男の苦悩が一番好きであります(これも変わってるかしらん)
『28日後…』は、わたしもホラー全然苦手だけどキリアンだから観たら、
主題は別のところにあった、っていう作品自体も好きだったし。
『真珠の耳飾りの少女』で最初に観た時は「変な顔」って思ったのに^_^;
ボロボロじゃないけど、めちゃ綺麗になってく『プルートで朝食を』なんかもう、
あの優しいキトゥンに添い寝してほしい、って思ったり(笑)

WOWOWのカーウァイ特集の第一報はFacebookだったんですが、
そりゃあもう、一人で大騒ぎの悠雅さんでした。
わたしもいくらかは持ってるんだけど、持ってても持ってなくても録画して、
絶対全部ちゃんと観直すぞ〜〜、と思ってます。
『恋する惑星』、あれはもうダメです。制服着てようがあんな下着(笑)であろうが
チェックのシャツ着てようが、石鹸相手に…(もうええか)であろうが
もう、全部好き、好き。あ〜。早く放送にならないかな・・・

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