June 19, 2014

私の男

私の全部
私の男




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出演: 浅野 忠信   二階堂ふみ
    モロ  師岡   河井 青葉
    山田 望叶   三浦 誠己
    三浦 貴大   高良 健吾
    藤  竜也
監督: 熊切 和嘉
2014年 日本 129分
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桜庭一樹氏の、第138回直木賞受賞の同名小説の映画化作品が
現在公開中。



北海道。奥尻島地震で家族を失った10歳の花は、
遠縁で海上保安庁勤務の男、腐野淳悟の養女として引き取られ、
流氷の町、紋別で暮らし始める。
淳悟は家族に恵まれず、自分の家族を作りたいと思っていたのだ。
6年後、町の有力者の大塩は、
特別な関係になっている2人を危惧し、別れるよう花を説得する。
だが、花はそれを拒否する。
そして、2人は紋別を後にする・・・



自分の家族を作りたいと願っていた男と出会った、
家族を地震で失った10歳の少女。
流氷が接岸する町を舞台に、2人の「特別な」親子関係を描き、
子供から大人へと成長する「女」を浮かび上がらせる。

「禁断の愛」と「体当たり演技」という宣伝文句が溢れているが、
主題はそこにはない。
もちろん、親子として暮していたはずが、
少女が成長するにつれ、男と女の関係になっていたり、
(いや、思い返せば、最初からどこか異質な感じもしたか)
10代の女優が、流氷の海から這い出て不敵な笑みを見せたり、
浅野忠信相手に生々しい演技を見せたりするのだから、
それが取沙汰されたり、売りになったりするのも当然なのだが、
それだけが見せ場ではない。

主人公たちの置かれた環境が要因であろうとは言え、
その後のふたりの暮らし方や考え方は一般的とは言い辛く、
多くの第三者の理解の範囲を超えている。
だから、理解できないを通り越して、
嫌悪感を抱く方もいらっしゃるかもしれないし、
全く入り込めずに終わる方もあるのだろうと想像する。
ただこれは、禁断であれ、純粋であれ、何であれ、
ふたりに理解を求めようというものではなく、
このような特別な関係にある一人の男と一人の女の物語である。
自分は彼や彼女と同じ人間ではないから、
全部を理解することはできないけれども、
ところどころ、言わんとすることがわかる感情もあったり、
こんな愛のかたちや、生き方もあるのかもしれない…と
ここから何かを感じ取ったり、垣間見て通過するだけでもいいではないか。
冒頭から最後まで、強い不安と緊張を感じさせるのは、
雄大で美しく、人知を超えた自然の様相であり、
それを最大限に表現する映像や音楽でもあろうか。
ふたりがそこまで求め合うものの正体には気付けないが、
あるいは、何かが違ったら自分もそんなことが在り得るのか、と
思ってみたり、やっぱりそんなことはなかろうと思ったり。


熊切監督の作品には、その静けさと力強さにいつも惹きつけられるわけだが、
今回もまた、小説の世界を映像で巧く表現されたのではないだろうか。
残念ながら原作小説は未読で、
既読の方のご感想から知ったことは、時系列の配置が違うということ。
そうすると、作り手側が読者や観客にわからせようとする意図が
違うかたちになってくるのは当然で、
小説と映画は別の手応えになるだろう。
それについての賛否両論もあるだろうが、
違うかたちを取っても、筋書きや主人公たちの心情が描けるくらい、
原作の力が強いのだろうと想像する。
お話の中では、それでいいのか、と思う大問題も起きてくるが、
本当は、それを中心にさえできそうなものでも、
その後、少しも触れられることがなかったり・・・
直木賞受賞の小説が原作ではあるが、
観ている限りは、芥川賞受賞のような感じさえする。
でもそれもこれも、ふたりの関係性だけにフォーカスすると、
二の次、三の次の出来事なのかもしれない

それを、浅野忠信という、ただそこに居るだけで絵になる男と、
二階堂ふみという、力も勢いもある若い女優が、
圧倒的な存在感とリアルさで見せるのだから、
お話の中にのめり込んでしまうのも無理ないことよね。
最初は、ちょっと若さを出すには苦しいかも…と思わないではないが、
お話の中ごろ、ふたりの性描写が繰り返される頃は、
そりゃあもう、こんな男を誰にも渡したくはないわなぁ、と
浅野さんを観て思うばかり。
そして、その後の落差・・・後悔や空虚や不安を埋めるためのような、
汚れたものに埋め尽くされた荒んだ暮らしぶりに染まってしまった男を、
本当にそれらしく見せてくれるのよねぇ。
さらに、大きな出来事が起こるたびに堕ちてゆく男を後目に、
花@二階堂ふみはどんどん変貌を遂げるのも、その容姿も見事。
彼女が彼女自身の個性と、ここまでの演技を見せなければ、
この作品はもっと別のものに見えたかもしれない。

おそらくこれは、観る人によって感想は大きく違うであろう。
あるいは、わたし同様、観終わった直後の言い様のなさを通り超えた後、
ふと、「あの場面のあの台詞がやっと呑み込めた」と思える箇所が、
いくつも見つかるだろうか。
この、男と女の行く末は如何様になってゆくのか・・・
観終わって何時間も経ってから、妙に気にかかるのである。 

tinkerbell_tomo at 21:14│Comments(0)TrackBack(2) 日本の映画 

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1. 映画『私の男』観たよ  [ よくばりアンテナ ]   June 27, 2014 14:11
公式HPはこちら。 原作の感想はコチラ。 イメージ通りの暗さ・・・(; ^ω^) 原作も読んだ後にどよ〜んとした気分になってたので、 これを映像で観るか!?と思いながらも、 二階堂ふみさんのものすごい演技をしっかりと見なくては!と 覚悟して観て参りま
2. 私の男  [ まてぃの徒然映画+雑記 ]   July 19, 2014 23:35
二階堂ふみと浅野忠信が禁断の愛を演じるサスペンスドラマ。 北海道南西沖地震、奥尻島の津波で両親を失った花(二階堂ふみ)は、遠縁の淳悟(浅野忠信)に養女として引き取られる。数年後、紋別で淳悟と高校生になった花は2人暮らしをしている。流氷が接岸し、淳悟がま...

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