2023年3月11日に寄せて・・・
12年間の月日の流れをあなたはどう感じてますか?
記憶とは曖昧になってしまうもの。
あんなに心に忘れまいと誓ったのに・・・。
<2011.3.11私の回想録>
3月10日は次女の誕生日、大学進学も決まり家族全体が春を待ちわび浮足立っていた。そして翌11日、家族はそれぞれの持ち場でいつものように過ごし・・・午後2時46分ごろ私は友人宅にいて今までに味わったことがない変な揺れを感じた。その揺れがなかなか収まらず友人宅でテレビをつけて事の大きさを知り家族全員の安否を確認して、東京の知人や千葉の姉たちの安否を祈った。それからは大きな波が襲い掛かる場面を繰り返すテレビの前から動けなかった。自分が暖かい場所にいてご飯を食べ、何も不自由のない生活を送るるのが申し訳なかった。その後も祈ることしかできない自分の無力さを感じて日々が過ぎた。
2019年の8月24.25日。「全国絵本フォーラムin宮城」に参加するため、初めて震災後に仙台に訪れた。地図やメディアでしか見たことがなかったリアス式海岸の上を旋回して仙台空港に降り立った。その日は晴天で海は煌き本当に美しかった。この海が…この波が・・人々を襲い、あまりに大きなものを奪いとってしまったのかと思うと、真っ青な海と白い波が怖かった。電車に乗ってすぐにJR仙台駅に着いたが、そこは被災状況が比較的軽く済んだ地域だったせいもあり、既に復興が進み東北震災の影が薄かったと感じた。それでも仙台の街の所々に「ここの地盤は 海抜6メートル」という青い看板をよく目にした。
あれから12年の月日が・・・
私はその後も被災地のボランティア活動に参加する機会もなく、遠くから祈ることしかできずに12年が過ぎた。先日ある方から献本が届いた。それは、『ただいま、おかえり』~3.11からのあのこたち~(世界文化社)という写真絵本でした。
石井麻木さんは「3.11からの手紙-音の声」という写真展を数年に渡り全国各地で行ってきたそうです。
この絵本は、写真家の石井麻木さんが2011年から毎月命日に東北へ通う中で出会った人々や風景を映したものです。12年間通っているからこそ写せる写真、そしてひとつひとつの言葉を紡ぎだしたような文章が添えてあります。これこそが日常の何気ない一コマであり、かけがえのない時間、そして生きるメッセージだと私は感じました。
東北の被災地に足を踏み入れた時に麻木さんは、壊れた風景の中で人々にカメラを向けることは暴力にもなってしまうと現地では写真を撮らないと決めていました。そんな中、避難所に避難されていた方から「写して伝えてほしい。」と言われ、写真にはそういう役目もあるんだと気づかされたと言います。
石井さんは、恐らく目を覆いたくなる光景を何度も見たことでしょう、耳をふさぎたくなる瞬間もあったことでしょう。でも東北の人の強さと温かさ、そして多くの優しさに触れたと思います。子ども達のまっすぐな目線に生命力を感じて写真を撮り続け、いま私たちに伝えるために事実以上の真実をこの一冊に収めてくれたのだと思います。石井さんの文体がまた良くて、スーッと心に沁み込んでくる言葉に優しく豊かな響きを感じます。是非声に出して読んでほしいです。
印象に残った言葉
「残された者にできること。
当事者でない者にできること。
どんなに心を砕いても
追いつけない悲しみがある。
それを知った者の責任として、
こういう現実がある、
こういう心情を知った、
そして自分に何ができる、
それは悲しみからも喜びからも
眼をそらさずに
向き合うことでした。
乗り越えるのではなく、抱きしめる。」
(あとがきから一部抜粋)
2023年3月11日は東日本大震災で亡くなった方の13回忌
12年が経ち、今の子ども達は地震があったことも津波があったことも原発事故があったことも知らずに生きています。私はこれからも毎年3.11に震災に思いを馳せ、子ともたちにそして大人にもこの「ただいま、おかえり」の写真絵本を伝え繋いでいこうと思います。