ジャンプ29号の「アイシールド21
(285th down :『小泉花梨』 )の感想。

以下、ネタバレ注意。
泥門vs帝黒戦、5週目。
今週は花梨の能力披露がメインだったものの、
正直「期待外れ」と言わざるを得ない設定&展開だった。

●小泉花梨
普段とは微妙に雰囲気の違う扉ページによると
花梨のパーソナルデータは
 身長:157cm 体重:44kg 血液型:O型
 ベンチプレス:35kg 40ヤード走:4秒90
 趣味:イラスト・ピアノ 家族:両親&兄弟
とのことで、
やはり40ヤード走のタイムだけが妙に浮いている感じ。

「帝黒の一軍は全員5秒を切る」という設定にした以上
これはその条件の中では最低クラスの数値なんだけど、
それでも陸上部エースの石丸と同タイムだもんなあ。

普通に5秒台前半くらいで十分だったはずなのに、
わざわざ「一軍は全員5秒を切る」なんて言わせたせいで
作者自身が自分の作った設定に振り回されている気がしてしまう。
(しかも今後「全員5秒未満」を有効活用できるとも考えにくい)

セナと違って「パシリで鍛えた」みたいなバックボーンも無いから、
漫画として必要最低限の説得力すら欠如していた印象だ。

●花梨のグローブ
先週ラストで意味ありげにグローブをつけていたにも関わらず
今週は1ページ目から普通に素手で登場してきた花梨。

と、いうことは・・・前回のグローブは単なる描き間違い?
白秋戦の「QBセナ」で同じようなミスを連発したんだから、
今回はその反省を活かしてもう少し気を使ってほしかった。

●花梨ちゃんグッズ
帝黒の攻撃ターンに入って花梨がフィールドに出てきたことにより、
ミラクル伊藤は商魂逞しく観客席で「花梨グッズ」を販売。

無許可で一般人のグッズを作るのは色々と問題があるはずだけど、
ここはギャグシーンだから真面目にツッコむのもナンセンスなのか。

まあ、こういう描写をすればするほど
「なぜ今まで全く話題に上がらなかったんだ?」という
根本的な部分の疑問が強くなってくるわけなんだけれども。
(アイシールド21よりも花梨の方が話題性はあるはず)

●小泉花梨郎
相手が女でも遠慮なく全力を出し切れるよう、
蛭魔は泥門のメンバーに対して
「小泉花梨は実は男で本名は小泉花梨郎」と嘘をついている模様。

これは、泥門ライン陣に全力を出させるためには
ギリギリ納得できる範囲内の設定と考えるべき・・・なのか?

こんなデマに騙されるなんていくらなんでもアホすぎるし
「蛭魔はまず鷹や大和の対策を立てろよ」とは思うものの、
「QBが女」という設定が出てきた時点で
これくらいの展開は覚悟しておくべきだったのかもしれない。
(泥門選手の葛藤を全く描かないのであれば
 女性選手を用意する必要は無かったような気もするけど)

あと「小泉花梨」にしたのは
やっぱり元総理大臣の「小泉純一郎」が元ネタ?

●要注意人物
平良いわく、泥門守備の中で注意を払わなくてはいけないのは
光速で投手を潰しに突っ込んでくるセナで、
そのセナの素早さに対抗できるのは
帝黒一軍でも大和しかおらんわ」とのこと。

で、さらに「アキレスと鷹が惜しいけどな!」と言っていたということは
安芸と鷹も大和に近いレベルのスピードを持っているのかな。

鷹はともかく安芸はライン(のはず)だから
スピードはそれほど速くないものだとばかり思っていたけど、
「駿足の英雄アキレス」の設定は守ってくれそうで一安心。

「俊足のライン」は巧く使えれば面白い演出が期待できそうだ。

●似たもの同士
プレイ直前に互いに頭を下げあっていたセナと花梨は、
先週の感想で予想したとおり似たような性格をしているらしい。

しかし「アメフト部にブチ込まれたのもムリヤリで似てんだよ」とか
そのくせ音ェ上げて辞めたりしねえで
 ここまで続けてやがる
」といった設定は予想外で、
まさか高校の途中からスポーツを始めた女子が
日本最強チームのレギュラーになれるとは思っていなかったから
これは悪い意味で予想を裏切られた展開だった。

花梨の入部事情まで知っている蛭魔が
雑誌に載っている鷹の対策すら立てていないのは問題外として、
せめて花梨は中学時代にスポーツ経験があるものだとばかり・・・。

●花梨の過去
大和いわく花梨は「あの鷹が力を見込んでスカウトした逸材」で、
鷹が花梨に目を付けた切っ掛けは
「飛んできたボールを投げ返した」という偶然の出来事だったとか。

うーん・・・これは何ともありがちな設定で、
スポーツ漫画としての個性や新鮮味が感じられないなあ。

あるいはわざとベタな展開にしたのかもしれないけど、
最早「あるあるネタ」として使われるくらい定番のシチュエーションで
こんな使い古された内容では
女性QBの誕生エピソードとしてはちょっと弱いような気がする。

しかも「花梨は途中入部である」ことが判明して、
彼女が一年生だとするなら
アメフト経験はセナよりも更に短いことになってしまうし・・・。

●花片のシュート
そんな花梨が投げるパスは「究極に正確で究極に柔らかい」らしく、
ボールが止まっているように綺麗に回転するため
捕りやすさ100億万%」の
「花片のシュート(フローラルシュート)」と呼ばれているとか。

で、大和いわく
鷹がいる以上 変わったことは何もいらない
 ただ“捕りやすさ”こそが―――
 花梨&鷹の最強コンビになる……!!
」とのことで、
要するに花梨は「すごく捕りやすいパスを投げられるQB」なのかな。

しかし「正確で捕りやすいパスを投げる」なんていうのは
全国上位クラスのQBなら当たり前に出来そうなことだし、
どんな悪送球でもキャッチできるであろう鷹に対して
必要以上に「捕りやすいパス」を投げてあげる利点も無いよなあ。
(オンサイドキックでボールを確保した以上
 鷹に「悪球が苦手」という弱点がある可能性も低い)

「モン太ではギリギリ届かないピンポイントに投げる」というのも
既に高見が同等のコントロールを披露しているわけで、
これだけでは「花梨が一軍レギュラーである」ことには納得しづらい。

「味方に捕りやすいパス」というのは
逆に言えば「敵にも捕りやすいパス」なんだから、
結局凄いのは他を寄せ付けない制空権を持つ鷹になるんだろう。

そもそも「鷹と連携して初めて実力を発揮する」スタイルは
言い換えれば「鷹がいないとロクに機能しない」ことになるわけで、
そんな限定された状況下でしか活躍できないような選手
歴代無敗のチームでレギュラーになるのは不可能なはず。
(しかも「鷹専用のQB」をレギュラーにするなら
 コントロールが悪くてもとにかくロングパスを投げられる
 NASAのホーマーのような選手が最適だった)

これが選手層の薄い泥門のようなチームだったり
「帝黒には様々なタイプのQBがいて
 その中で泥門と相性が良いのが花梨だった」というのであれば
まだ納得することもできたのかもしれないけど・・・。

●栗田の実力
花梨のことを男だと勘違いさせられている栗田は、
峨王くんなら投げる前に潰す」と気合いを入れて
花梨にサックを仕掛けるため帝黒ラインの平良を突破。

で、その平良が
パワー比べやったら栗田 峨王と並んで日本最強や!
 アキレスと連携せんと………!
」と言っていたということは
「ヘラクレス氏の峨王対策」は
平良一人ではなく安芸とのコンビで機能する技なのか。

てっきり平良一人で対応するものだとばかり思っていたから
「連携技」という設定は全く予想していなかったものの、
帝黒でもトップ3に入るスピードを持つらしい安芸の俊足を
巧く活用してくれるような展開になると期待したい。

栗田が峨王と互角のパワーを持っている場合
安芸や平良は数プレイでボロボロになってしまうはずなんだけど、
とりあえず栗田が弱体化していなかったのは良かったと思うし。

●花梨の過去
回転の綺麗なパスを投げたことで鷹に見込まれたらしい花梨は、
半ば強制的に全国最強のアメフト部に入部させられて
そこで「とにかく敵を避ける」練習だけに励んでいたとか。

えーと・・・「他のことはええから もう 避ける練習だけ……!!」って
つまり彼女はロクに走りこみもせず
40ヤード走4秒9のスプリンターになったということ?

「本来は大人しい(内向的な)文化系の女子が
 なぜか抜群の運動能力を持っている」という点で
花梨は『バリハケン』の「磯辺 巻」と同じタイプっぽいけど、
仮にもリアルスポーツ漫画で
ギャグ漫画と同じような性質を持つキャラを出すのはどうなんだろう?

「指先が器用で綺麗なボールを投げられる」までは良いとしても
「避ける練習」で短距離走が速くなるわけではないし、
アメフト部に誘われるまでスポーツ経験ゼロだった彼女が
「40ヤード4秒9の俊足」と「綺麗なロングパスを正確に投げられる強肩」
さらには「敵を避ける身のこなし」の三つを兼ね備えているというのは
いくらなんでも滅茶苦茶すぎる設定だよなあ。

しかも、その三点についても
今まで登場したQBと一線を画すほどのレベルではないわけで、
全国最強のQBは普通にキッドなんじゃないかと思えてしまう。

「女としては異常」にも関わらず
「男なら十分にあり得る」くらいの能力値で
彼女が日本最強チームのQBというのはどうしても腑に落ちないし、
そんな花梨にレギュラーを奪われる帝黒のQB陣もショボすぎだ。

与えられたメニューを普通にこなしてさえいれば
「何年も経験と鍛錬を積んできた男性選手」が
「ポッと出の女性選手」にアッサリ抜かれることはないはずなのに。
(「花梨の能力」自体は良いとしても
 今週の描写を見た限りでは帝黒の一軍QBになれるとは考えづらい)

●女である理由
男ばかりのアメフト部に女の花梨が入っているあたり
てっきり「アメフトをやりたい強い動機」があるのかと思いきや、
実は「鷹や大和にムリヤリ入部されられただけ」で
主体性が無く流されているという設定は非常にガッカリした。

さすがに脅迫されたり強制されているわけではないんだろうから
「泣くほど嫌なら退部すればいいのに」と思ってしまうし、
「嫌々アメフトを始めた女性ビギナー」が一軍では
「帝黒アレキサンダーズ」というチームの格もガタ落ちだろう。

「男だらけの部活に女が一人だけ入る」のは
想像している以上に色々な壁や問題があるはずだから
本人の意向を無視して強引に入部させた大和&鷹の好感度も下がって
今回のエピソードでは誰一人として得をしていないような気がするし、
せめて「アメフト選手の絵を描いていたら自分もやりたくなった」とか
スタート地点には最低限の自主性がないと
読者が共感したり感情移入することも難しいと思う。

「高校の途中からアメフトを始めた女性選手」と
「全国から選りすぐりの精鋭をスカウトしている強豪校」という
相反する要素を一緒くたに詰め込んでいるのもミスマッチで、
花梨の二回目の回想パート中
大和のユニフォームの肩に「21」と書いてあったり
全体的に色々と詰めが甘い印象を受けてしまうなあ。

今週の内容を読んでいても、
結局は「才能>努力」であるようにしか感じられないし・・・。

●花梨のパス
平良を突破した栗田にタックルされそうになった花梨は、
大和に「俺は止めないよ」と宣言されるものの
自力で栗田を(アッサリと?)かわして大和にショートパス。

これは蛭魔の「過酷な環境が生んだ動く砲台」を彷彿とさせる演出で、
しかし花梨には蛭魔ほどの経験値は無いはずだから
ここのプレイにも少なからず違和感を覚えてしまった。

「女だからタックルできない」展開はNG
かといって「女に全力タックルする主人公チーム」もNGということで
花梨は「タックルしたくてもできない」ようなスタイル、
イコール「移動型のQBである」というところまでは予想できていたけど
いくらなんでも経験値と能力値のバランスが悪すぎる。

「敵を避ける練習」ばかりしていたとはいえ、
さすがに短期間の練習だけで身につく技術でもないんだろうに。
(セナのパシリやモン太の野球、ハァハァ三兄弟のケンカ等
 アメフト開始以前の経験を活かしているような描写も無いし)

●アイシールド21vsアイシールド21
花梨のパスを受け取った大和が
定番の「止まらねぇぇぇぇ」ランで独走していき、
最終防衛線のセーフティー・セナと
「アイシールド21vsアイシールド21」になったところで今週は終了。

「VS」のコマの「アイシールド21」が
手書きではなく作品タイトルのロゴになっていたのは面白い演出で、
これは非常に良いアイデアだったんじゃないかと思う。

「セナのスピードに対応できるのが大和だけ」なのであれば
「大和のスピードに対応できるのもセナだけ」のはずで、
この一騎討ちの行方には期待しておきたいところだ。

しかし大和はまだ右腕を封印したままのようだし、
さすがにこんな早い段階で
「本当のプレイスタイル」を披露する展開にはならない・・・のかな?

最低でも「右腕を使わせる」くらいまでは頑張ってほしいけど。

●総評
「絶対予告」や「空中歩行」といったトンデモ能力を持つ大和&鷹に対して
花梨は「身体能力の強化(PSIでいう「ライズ」)」に特化している印象で、
根本的に「花梨が女である必要性」を感じられなかったのは残念。

特殊能力持ちでないのは一安心だったものの
これなら普通に男のQBで問題無かったというか
男の方がまだ身体能力面に関しては納得できて、
花梨の特徴が「捕りやすいパス」と「回避率の高さ」だけだとすると
QBを女性にした意味が無いように思えてしまう。

「女にしかできない」ようなスタイルかと思いきや
「男でもできることを何故か女がやっている」というだけで、
本当に何の目的があってQBを女性にしたのか分からないなあ。

しかも肝心の花梨本人は
少なくとも入部当初はアメフトをやる気がなかったようだから、
少年漫画の敵キャラに必須の「ポリシー」すら持っていない印象だ。

現実的には考えにくい「女性プレイヤー」を出したにも関わらず
「女性である」ことを全く活かしていない話の構成で、
これはこの先の試合展開がかなり不安になってきた。
(今のところ花梨は「その場の思いつきだけで設定した」としか思えない)

とはいえ、まだ「自己紹介」の段階なんだろうから
試合が進むにつれて徐々に盛り上がっていくことを期待しておこうかな。

「現在の花梨」がアメフトに対してどんな感情を抱いているのか
いずれ明らかにしてくれる可能性もゼロではないわけだし、
せめてセナと同様に「今はアメフトが好き」だと思いたいところ。