週刊少年ジャンプ2023年01号掲載の
『HUNTER×HUNTER』連載再開7週目「397◆結成」の感想。
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(前回掲載分まで反映済み)
※画像データは物理的にも容量的にもサイズが大きめです
ウガ森の奥で袋詰めにされて吊るされた無残なサラサの死体を発見。
先週(なんなら先々週)から想定して心の準備はできていたとはいえ、
この無慈悲で重い結末はやっぱり精神的にくるものがあるなあ。
単に死体が放置されているだけでも十分ショックなのに
バラバラにされてゴミ袋に詰められて木に吊るされる、という
死者の尊厳を踏みにじるような猟奇的な殺され方をしていて、
この昏い感覚はカイトが死んだ時とはまた違う
ポックルの脳クチュクチュシーンを見たときに近い衝撃を受けた。
殺しの手口が残虐なことに加えて
「袋」を発見してからそれを下ろして中を確かめるまでの不安→絶望の流れや
クロロが「袋」を受け止めたときの「スシッ」という重さの描写、
「中身」がサラサと分かったあとのクロロの表情、
「早く…連れて帰ろう このままじゃ可哀想…
痛かったよね 怖かったよね ごめんね」というマチの台詞等がどれも効果的で
サラサを失ったショックや喪失感が手に取るように伝わってきた感じ。
というか、ヒソカの死に顔や
シャルナーク&コルトピの死体がブランコに放置されているシーンでも感じたように
冨樫先生は「死」の生々しい表現が巧すぎる・・・。
絵面のグロさだけで言えば
マサドルディーゴ(偽)やモレナに抱き込まれた執事等


もっと過激な死体のシーンがいくらでもあるんだけど、
今回のサラサは直接的な描写を抑えめにして読者に想像の余地を残すことで
より大きなインパクトを生み出していたんじゃないだろうか。
単純な画力だけでなく雰囲気や空気感の表現が抜群で、
読者に対して強烈な印象を与えたのはもちろんのこと
ただの劇団に過ぎなかった旅団がA級首の盗賊団に変貌する転換点としても
十分な説得力を持つ描写になっていたと思う。
犯人達が書き残していった2つのメッセージ。
「袋」が吊るされていた樹の根本と「袋」の中のサラサの頭部に
それぞれ一枚ずつ手書きメモが刺されていて、
紙のジャンプでは何が書いてあるのかまでは判別できなかったけど
電子版なら画質によっては多少解読できたりするのかな。
(サラサの顔の方のメッセージは
中央に「処分」、右下に笑顔マーク
っぽいものが書かれている?)
クロロはメモの内容を「死んでも言わない」と断言していたから
口にしただけでサラサを侮辱・冒涜してしまうような
胸糞悪い内容だったことは明白で、
この「メッセージを残す」やり方自体が非常に屈辱的だったからこそ
流星街も「何も奪うな」という「メッセージを残す」手法を取り入れたのかもしれない。
殺し方と同じくメッセージの内容も
詳しく描写しないからこそ読者各々が「最悪」を想像できるわけだし
精神衛生的にも内容は知らない方がいいような気もする・・・けど
いずれ犯人達に復讐するときがくればその際に言及される可能性はあるから
クロロ達の「復讐」がどう描かれるのかは注目しておきたいと思う。
そして、この「ナイフと手書きメモ」という組み合わせは
ヨークシン編のベーチタクルホテルでの停電作戦決行時に

クロロを捕らえたクラピカが旅団に向けて残したメッセージを彷彿とさせる。
「雨」「連れ去られた仲間」「ナイフとメモ」という要素は
サラサの事件を想起させるには十分なシチュエーションだったはずで、
ナイフにメモが結ばれていることに気付いたときのノブナガは

一瞬、サラサの事件とクロロの結末をダブらせていたのかも。
さらにノブナガからそのメモを渡されたパクノダは
このシーンで初めて「人間から」ではなく「物質から」記憶を読み取っていて

彼女が「記憶を読む」能力を発現させたのは
サラサの殺害現場に残されたメモや凶器、煙草の吸い殻といった遺留品の数々から
犯人の手がかりを掴みたい、という想いが強く影響していたとも考えられるんだろう。
サラサの一件があったことを踏まえて
ベーチタクルホテルから「人質交換」までのシーンを見返してみると
旅団内での意見対立やパクノダの覚悟、ゴン&キルアへの感謝なんかも
今までとはまた違った見方ができそうな感じ。
旅団が感情に焼かれて「サラサの仇」を容赦なく殺しているとすれば
ゴンの「クラピカはお前達と違う!!」という言い分も

かなり核心を突いた刺さり方をしていそうだし・・・。
念能力者・レンコによってエンバーミング処理され
生前とほぼ変わらない状態でクロロ達に見送られた模様。
マチはそのレンコの体の周りが「すごく光ってる」ことに気付いたようで、
何の鍛錬もせずにオーラを視認できていたということは
旅団の中で最も優れた念の才能を持っていたのは意外にもマチだったのかな。
(マチ以外のメンバーもオーラが見えていた可能性はゼロではないけど)
マチに才能を感じ取ったレンコは
「最終バスに乗って『キリモリ谷まで』って伝えてこれを見せれば
タダで連れて来てくれるよ」と言ってチケット(?)を渡していて、
素直に考えれば幻影旅団メンバーに念を教えたのは彼女ということになるはず。
マチが「レンコの体の周りが光っている」ことに気付いて師事を受けていなかったら
幻影旅団は「念」を知らないまま動き出していた可能性もあるから、
旅団が盗賊団になる上でマチは非常に重要な役割を担っていたのかもしれない。
先週の内容を読んだ段階では
マチの「念糸」の能力は劇団の衣装作りが由来なのかと思っていたから
エンバーミングに強い影響を受けていたのも驚きで、
マチの心が「エンバーミング」によって多少なりとも救われた経験があったからこそ


天空闘技場の戦いで死亡したヒソカの遺体も綺麗にしてあげようとしたわけか。
ヒソカが死亡した回の感想記事を見返してみたら
サラサが殺されるであろうことも先週・先々週の時点で分かっていた以上
この二つを結び付けて予想することは不可能ではなかったんだろう。
(衣装担当だと「血管・骨・神経・筋肉をほぼ100%繋げる」という
人体に精通していないと不可能な芸当の説明がつかなかったし)
多少の傷跡が残るマチの「念糸縫合」に対して
レンコの「エンバーミング」は少なくとも見た目はほぼ完全に復元されていて、
これが「遺体を生前と同じ状態に戻す」能力だとしたら
なぜそんな能力を修得するに至ったのかも興味深いところだ。
マチに「あなたオーラが視えるの!?」と言っていたあたり
レンコは無自覚な能力者ではなくキッチリ念の知識を修めているっぽいけど、
流星街の外に出て念を使って金儲けをするわけでもなく
かといって流星街の住人に念(武力)を与えて子供達を守っているわけでもなさそうで
何気に行動原理がミステリアスな人物という感じ。
ちなみに以前発売されたオフィシャルデータブック「ハンターズ・ガイド」では
シルバの妻(=キルア達の母)であるキキョウも「流星街出身」となっていて

レンコとキキョウはなんとなく出で立ち(主に帽子の形と羽根)も似ているし


漢字で「蓮子」「桔梗」なら名前が植物繋がりという共通点もあるから
キキョウもレンコと同じ「キリモリ谷」の出身だったりするのかも。
まあ「ハンターズ・ガイド」の記述はあまりアテにはならないし、
レンコの恰好を見たときに真っ先に連想したのはキキョウではなく

「暗黒の鬼婦神」状態のパームだったんだけれども。
すぐにでも流星街を出て一人で犯人を捜しに行こうとするウボォーギンに対して
クロロは「3年間で自分の力と流星街のシステムを全て整える」ことを明言。
「カタヅケンジャー」の上映会で劇団のようなことをやっていた経験が
文字どおりの「劇場型犯罪」を見抜く端緒になった、という流れは秀逸で
ここまで見据えて旅団の原点を「劇団」にしたのなら凄すぎるなあ。
クロロが説明した「ネット上に悪人の隠れ家を作る」計画は
言ってしまえば「ウェブ上で網を張って待つ」作戦ということで、
この「ウェブで獲物を待つ」姿勢が「蜘蛛」の異名の由来だったりするんだろうか。
「こいつらは……自分達の『作品』を世界中に発表出来る機会があると知れば
それを我慢出来ない…!!」
「空白地帯を利用し警察の追跡を避けるシステムを作れば
悪人は必ずそこを経由する!」とのことで
犯罪ハンターのミザイストムをして「画像からたどり着くのは不可能」と言わしめた
「特殊な趣味嗜好を持つ者が秘かに集う闇サイト」も


ここでクロロが作った「抜け道」を経由している可能性が高いんだろう。
「闇サイト」にはツェリードニヒが大量の「緋の目」動画を投稿しているから、
仮にそのサイトが「抜け道」を経由しているとすれば
僅かながらツェリードニヒと幻影旅団に接点があったとも言えるのかな。
ツェリードニヒは単に「緋の目」を収集しているだけでなく
「前途ある若者が極限状態下で産み出す総合芸術」と称して人を解体しているから

サラサの「解体」映像が公開されていれば目にしている可能性は高いはず。
さすがに流星街の住民誘拐の依頼者がツェリードニヒだったとまでは思わないけど、
サラサの「作品」を見たことがきっかけで性癖が歪んで
殺しを芸術と捉える現在の感性が形成された、くらいの繋がりはありえそうな感じ。
しかしハンター試験編の時点では
ホームコード(≒留守番電話)とケータイ電話と電脳コード(≒ネット検索)が
「ハンターの電波系三種の神器」なんて言われていたことを考えると

時系列的にそれより約15年も前(ヨークシン編で26歳だったクロロが11歳の頃)に
外界の情報も物資も乏しいはずの流星街の子供が
「通信の革命」を予見できていたのはちょっと説得力に欠ける気もする。
「三種の神器」のシーンが掲載されたのは平成11年(1999年)で、
作中の時間経過は2〜3年でもリアルタイムでは20年以上経っているから
このへんはもう「長期連載作品の宿命」と言うしかないんだろうけど・・・。
(『名探偵コナン』でも初期は携帯電話すらほとんど持っていなかったのに
今は誰でもスマートフォンを使うようになっているし)
ウボォーギン、シャルナーク、フランクリン、ノブナガ、
フィンクス、フェイタン、パクノダ、マチの8人がクロロの下に集った一方、
シーラだけはこの時点で彼ら9人と袂を分かった模様。
離れていったシーラの心境は
サラサは復讐なんて望んでいないから協力できない
3年も待てない、今すぐ復讐しに行く
サラサが死んだのは悲しいけど自分の人生を犠牲にしてまで復讐する気は無い
のどれかだと思うけど
クラピカ追憶編での言動が演技でなければ△鯀ぶほど血の気は多くないはず。
「サラサがやるなら私もやる」なんて言うくらい仲が良かったことを考えると

だけが理由だとちょっと薄情すぎる気もするから、
〃鶚という感じで
「将来ハンターになる」という夢が彼女の中では「サラサとの約束」になっていて

その夢を叶えることが自分にできる唯一の餞、と考えているのかな。
冒険活劇「ディノハンター」が公用語で書かれた本だとしたら
それを愛読していたシーラも犯人のメッセージを読めた可能性があるから、
単独行動の理由にはそのへんの事情も関係しているのかもしれない。
離れていくシーラのことを
クロロやパクノダ達がどう思っていたのかも気になるところで、
幻影旅団によるクルタ族の虐殺が
「シーラがクルタ族に誘拐された」と思い込んでの犯行だったとしたら
決別した後も変わらず仲間意識があったと解釈できるんだろうか。
(クロロ自身が「サラサは 決してそんな事 望んでいないから」と言っている以上
シーラに復讐を強制することは無く、本人の意思を尊重するはずだし)
一方、クロロをリーダーに指名したウボォーギンは
「お前が頭なら オレは死ぬまでついていくよ」と言っていて、
以前の感想で書いたとおり
ここから手足を4本増やして団員ナンバーを決めてクモのタトゥーを入れて
現在の幻影旅団の体制が整うまでの経緯も気になるところで、
「入団希望者が在団員を倒せば交代」ルールを筆頭に
「団員同士のマジ切れ禁止」や「揉めたらコインで」、
団員数は13人までと制定された理由なんかも興味深いところだ。
結成当初から13人構成だったわけではなく
創設メンバーはヨークシン編まで誰一人欠けていなかったということで、
「団員交代」の回数は想像以上に少なかったとも考えられるんだろう。
確定している「ヒソカに倒された元4」と「シルバに殺された団員」以外
メンバーチェンジは行われていない、という可能性すらあるのかも?
「犯人に近づく為の知恵と道具」「犯人を見つけた時に必要な力と技術」の他に
「これ以上流星街で サラサ達みたいな犠牲者を出さない様にする為に
自分の人生を 捧げる覚悟…!!」を挙げたクロロは
「3年経ったら僕は 沢山の人間を殺す」と宣言。
前回「クロロはそれでいい」「私は今のクロロが好き」と言っていたパクノダが
その宣言を聞いて沈痛な面持ちを浮かべていたのが印象的で、
「なんでもお見通し」なパクノダは
クロロが一歩間違えばこうなってしまう危うさを前々から感じ取っていたのかな。
そうならないよう先回りしてそれとなく釘を刺しておいたのに
結局こうなってしまうことを止められなかった、という後悔と
説得は通じないことを理解して「せめて傍で支える」ことを決めた覚悟が
あの表情に込められているように見えた。
そしてクロロは残りの人生を悪党として生きる覚悟を決めたようで、
クロロにとっての「悪党」が「サラサを殺した犯人」だとすると
ヨークシン編でゴンに問われた「なぜ 自分達と関りのない人達を殺せるの?」は


クロロの中で「犯人はなぜサラサを殺したの?」に変換されていたのかもしれない。
それなら「なぜだろうな 関係ないからじゃないか?」という
どこか他人事っぽい回答も納得がいくし、
クロロが「サラサを殺した犯人」をトレースして悪党を演じているなら
「無関係な人達を殺せる理由」も答えられないとダメなのに
そこは理解していなかった(というより理解することを拒否していた)ため
「あらためて問われると答え難」く、
「自分を掴む(=悪役としての動機や心境を理解する)カギ」が
「そこ=サラサを殺した理由」にあると考えた・・・と解釈することもできるはず。
しかし善悪に頓着が無いゴンと違って
クロロは悪を悪と認識した上で「毒を以て毒を制す」ために悪になることを決めていて
仲間の「緋の目」を取り戻すために手段を選ばなかったらしいクラピカも

根っこの部分はクロロと似ていたりするのかも。
そういう視点で考えてみると
クロロの「サラサ達みたいな犠牲者を出さない様にする為に」の根底にあるのは
「もう…… 仲間を失うのは 絶対にイヤだ!!」だし

「僕は決してこの世で 奴等をこのままにしない…!!」も
「冥府に繋いでおかねばならないような連中が〜」に通じるものがあるから

クロロとクラピカは敵同士でありながら本質的には似た者同士なんだろうか。
故郷も仲間もすべて失って守るべきものが無くなったクラピカと
故郷や仲間といった守るべきものがまだ残っているクロロなら
クラピカの方が道を踏み外してしまいそうなもんだけど、
実際にはクロロが「守る」ために道を踏み外しているのが皮肉な感じ。
クロロは以前
「頭が死んでも誰かが跡を継げばいい」
「オレを最優先に生かすことはない オレも旅団の一部
生かすべきは個人ではなく旅団」なんて言っていたものの

回想編を見る限り「クロロが頭である」ことが大きな意味を持っているのは明らかで、
旅団を取るかクロロを取るかで団員間の意見が割れていたのも納得できた。
フランクリンの
「致命的に旅団が崩壊することが団長に対する一番の裏切り」という発言も

自分の人生を犠牲にしたクロロの覚悟とその目的が分かった上で聞くと
説得力が増した気がする。
「僕は残りの人生を悪党として生きる 世界中の人間が恐れ慄く程の
小悪人共が震え上がり決して流星街に近づかない様
この街と自分をデザインする」とも表明。
「自分をデザイン」していることまでは予想できていたものの
流星街のシステムまでクロロがデザインしていたのは驚きで、
リゾルが長老会に「クロロを呼んで意見を聞いてみるのも〜」と進言していたから

クロロはそれを利用して長老会を上手く説得・懐柔して
流星街のルールを自分好みの方向性にデザインしていったんだろうか。
「旅団は流星街の中でも特異な存在」というレオリオの推測に反して

実際には旅団も流星街もクロロがプロデュースしていたようで、
流星街を守るために幻影旅団が生まれたのなら
キメラアント編でフィンクス達が蟻退治を引き受けていたのも納得という感じ。
しかし「小悪人が流星街に近づかないよう街と自分をデザインする」なら
ヨークシン編でマフィアが「偽の死体」を調査するまで

「幻影旅団は流星街出身」と知られていなかったのは何故なんだろう?
流星街が幻影旅団の庇護下に置かれているだけの状態だと
幻影旅団が壊滅した時点で元通りの扱いになってしまうから、
「我々から何も奪うな」の報復ルールをデザインして
「流星街そのものがヤバい」と思わせる必要があったのは理解できる・・・けど
それが功を奏して「流星街には手出しできない」状態を作れた時点で
当初の目的は達成できているわけで
「流星街と無関係な盗賊団」をデザインする必要は無かったように思えてしまう。
報復は流星街の長老の「番いの破壊者」を利用して行われていたから

長老が死んだら「自爆による報復」の遂行が不可能になり
報復が無くなればいずれ流星街は被虐民に逆戻りしてしまう、ということで
あのA級首・幻影旅団も実は流星街出身だった
↓
やっぱり流星街はヤバい場所だ、手出しするのは危険だ
と、流星街のイメージをダメ押しする意図があったと考えるべきなのかな。
あるいは「人員と引き換えに安全を得る」のはクロロや流星街の本意ではなく
いずれは「人員と引き換えなくても安全を得る」ことを見据えていて、
幻影旅団がヨークシン編で流星街とマフィアンコミュニティーの蜜月関係を壊したのは
流星街の完全な自立への足掛かりだったとも考えられるのかもしれない。
いずれにせよ
・まずは流星街単体でヤバいと世間に思わせる
・流星街とは無関係なところで「幻影旅団」の悪名を轟かせる
・準備が整い次第、機を見て「幻影旅団」と「流星街」を関連付ける
ところまでを当初から予定していたとしたら凄まじい計画性だなあ。
その場合、ウボォーギンが「世の中の筋モン全部敵に回す」ことを喜んでいたのは

単に戦闘狂だったから、というわけではなく
「計画が一段階進む」ことに対する喜びだったとも解釈できるのかも。
そしてヨークシン編の時点を基準に旅団の動きを時系列順にざっくり並べると
15年前 (クロロ11歳)
劇団としての旅団誕生、サラサ死亡、復讐のための準備期間に突入
12年前 (クロロ14歳)
準備期間終了、盗賊団としての旅団が正式始動(?)
5年前 (クロロ21歳)
シーラがクルタ族の村を訪れる、クルタ族虐殺事件発生
3年前 (クロロ23歳)
幻影旅団全員集結、シルバによる団員暗殺、シズク&ヒソカ加入
0年前 (クロロ26歳) ヨークシン編
ウボォーギン&パクノダ死亡、ヒソカ離反、クロロが念を封じられる
幻影旅団が流星街出身であることがマフィアに知れ渡る
1年後 (クロロ27歳) グリードアイランド編〜キメラアント編
カルト加入、クロロの除念終了、クロロとヒソカの鬼ごっこ開始
フィンクス達は流星街でザザン退治
2年後 (クロロ28歳) 王位継承編
天空闘技場でクロロvsヒソカ戦、シャルナーク&コルトピ死亡、イルミ加入
BW1号乗船中
という感じになるはず。
クルタ族が虐殺されたのは
準備期間が終わって「旅団」が正式始動してからさらに7年後の出来事で、
「世界中の人間が恐れ慄く程の悪名」を轟かせるためだけに
無実のクルタ族を襲って「緋の目」を奪った・・・というのは
時期的にも動機的にも、ありえなくはないものの可能性は低いんだろうか。
ノブナガが「結成当初の旅団」とエイ=イ一家を重ねたように
行き当たりばったりで虐殺をやらかした可能性もゼロではないんだろうけど、
機が熟すまでは「旅団」と「流星街」の繋がりを隠しておくつもりだったとしたら
クルタ族の村に「何も奪うな」のメッセージを残して
旅団と流星街の繋がりを仄めかしているのが不自然な感じ。
まあ、それを言い出すと
・クルタ族の村に「何も奪うな」のメッセージが残されていた
・「何も奪うな」は流星街からのメッセージだと世間には認識されている
・クルタ族の虐殺は幻影旅団の仕業だと世間には認識されている
という条件の中で
流星街と幻影旅団の繋がりが認識されていなかったのが不自然なんだろうけれども。
(クルタ族虐殺が幻影旅団の仕業だと認識しているのは
ニュースを見て村に戻って色々調査or発見者から事情を聞いたクラピカだけで
世間的にはクルタ族の虐殺も流星街の仕業だと認識されているとか?)
今週のラストシーン「旅団では…」は
以前描かれた「旅団結成」のシーンに繋がっていて


「結成」までの回想編としてはキリのいいところまで進んだ感があるものの、
クルタ族襲撃の真相なんかはまだ明らかになっていないから
回想が一旦終わるのか、このまま続くのかは非常に興味深いところだ。
前述のとおりクルタ族襲撃にはまだ不可解な点が残っているから
できればその真相まで一気に描いてしまってほしいと思う。
そして↑の画像の「結成」シーンと今回のラストシーンを見比べてみると

以前は描かれていなかったシャルナークが登場していることが分かる。
立ち位置的に「フキダシで隠れていた」ことにされたっぽいけど、
同様の手法で登場させられるはずのフィンクスを描いていないということは
このシーンでフィンクスが不在だったことには何か意味がある・・・のかな。
今週のラストシーンが約束どおり「3年後」だとするなら
クロロは11歳から14歳までの3年間で見違えるほどに成長していて、
前回の感想でも書いたようにマチの「あれ…クロロ?」は

久々にクロロを見て、その変わりように驚いたと解釈できそうな感じ。
ただ、だとすると準備期間の3年間
旅団メンバーは各自バラバラで行動していたことになりそうだから
クロロが念を教わったのはレンコではない、ということになるんだろうか。
しかし流星街で念を教えてくれる人がそう易々と見つかるとは思えないから、
クロロも1年くらいはレンコの下で他メンバーと一緒に念を教わっていて
その後の2年間の別行動中に急成長した、と考えれば辻褄は合うのかもしれない。
(前述のとおりレンコがキキョウと接点があったとしたら
そのツテを頼ってクロロをゾルディック家で修行させていた可能性もある?)
ちなみに以前作った旅団メンバーの一覧表を更新するとこんな感じで

14歳には見えないクロロやチャラついているシャルナークはさておき、
絵柄の変化を差し引いたとしても


以前と比べてマチの顔が幼くなりすぎているように見えてしまった。
マチは14歳のクロロよりもさらに年下のはずだから
今回描かれたガキっぽい顔つきの方が年齢相応なんだろうけど・・・。

遅刻しがちなフランクリン&ノブナガとよく喧嘩になっていたとは語られていたけど

「15分前に来てねーとかありえねェ」くらい時間にうるさかったのか
・流星街には捨て子も多くて血の繋がった親子が少ないから
子供は「乳母衆」が共同で面倒を見るシステムになっているのかな
・公演中止の報告のあと観客の子供達が捜索の手伝いを買って出たり
ウボォーギンに「絶対どこかでケガして動けなくなってるだけだ!!」と言わせて
一瞬だけ前向きな気持ちにさせていたのがその後の絶望を引き立てている感じ
・「工場長に頼めば男衆も力を貸してくれる!!」ということは
流星街に住む男は大半が「工場」で働いているわけか
・「クロロの名前を出せば絶対だ!断わる奴なんていやしねー!!」らしいから
クロロは教会や子供たち以外の層にも一目置かれていたということ?
・「袋」の中身を見たクロロの表情は

BW1号船内での「今にも誰か殺しそう」な顔とそっくりで

やっぱりシャルナーク&コルトピの死は相当堪えているっぽい
(クロロはサラサの死も「彼女を一人で帰してしまった自分の責任」と感じているし
旅団としての作戦任務中に死亡したウボォーギンやパクノダと違って
シャルナーク達の死は「自分が気を付けていれば防げた」という思いが強そう)
・マチはアテレコの際は「悪役がいい」なんて悪ぶっていたものの
サラサの「袋」を大切そうに抱きかかえていたから
そのへんが「なんだかんだいって優しい」と言われる由縁なのかも
・このシーンのフェイタンは涙を拭っているようにも見えるけど

ここで「犯人達を許さない」と復讐を誓ったことが

痛みを返す念能力「許されざる者」に繋がった・・・と考えるのは飛躍しすぎか
・今のところ過去編で「マチの勘がよく当たる」描写は見当たらないけど
そもそもレンコのオーラに気付いたのが第六感の片鱗なのかな
・レンコがマチに渡したチケット(?)の形状は
クロロの「栞のテーマ」の栞っぽくも見えるけど


特に珍しい形状ではないからさすがに無関係なのか
・「3年なんてあっという間さ」のシーンで
背景の樹木に比べてキャラの身長がデカすぎるように見えたのは
キャラの絵と背景の合成がイマイチ上手くいかなかったから?
・サラサを殺した凶器や煙草の吸殻を保管しておくのは分かるけど
普通の葉っぱまで証拠品として保管しているのは何故なんだろう?
(流星街には生えていない植物の葉で、犯人の居場所の手掛かりになり得るとか?)
・クロロが流星街のシステムまでデザインしていたということは
「番いの破壊者」の能力もクロロが指示して発現させていたのかな
(「長老は人間も人形も大差無いという考えの様だ」と言っていたから

基本的には長老の「心の闇」が反映された能力のはずだけど)
・クロロが流星街と長老会を裏で牛耳っていたとしたら
「番いの破壊者」は「盗んだ」わけではなく「譲り受けた」可能性もあるのかも
(「死後も本に残る」ことまではクロロも想像していなかったらしいから
長老が高齢で動けなくなったときに人間爆弾作りをクロロが代行したとか?)
・「クロロ お前が頭だ」のあとメンバーが人差し指を立てたシーンで
マチだけ指を上じゃなくクロロに向けていたのはちょっと気になる
(人差し指を立てるのはカタヅケンジャーの「クリンパワー集結」っぽいから

マチはそれを堂々とやるのが照れ臭かっただけ?)
『HUNTER×HUNTER』連載再開7週目「397◆結成」の感想。
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(前回掲載分まで反映済み)
※画像データは物理的にも容量的にもサイズが大きめです
●サラサの死
上映会当日に姿を見せないサラサを心配して捜索を始めたクロロ達はウガ森の奥で袋詰めにされて吊るされた無残なサラサの死体を発見。
先週(なんなら先々週)から想定して心の準備はできていたとはいえ、
この無慈悲で重い結末はやっぱり精神的にくるものがあるなあ。
単に死体が放置されているだけでも十分ショックなのに
バラバラにされてゴミ袋に詰められて木に吊るされる、という
死者の尊厳を踏みにじるような猟奇的な殺され方をしていて、
この昏い感覚はカイトが死んだ時とはまた違う
ポックルの脳クチュクチュシーンを見たときに近い衝撃を受けた。
殺しの手口が残虐なことに加えて
「袋」を発見してからそれを下ろして中を確かめるまでの不安→絶望の流れや
クロロが「袋」を受け止めたときの「スシッ」という重さの描写、
「中身」がサラサと分かったあとのクロロの表情、
「早く…連れて帰ろう このままじゃ可哀想…
痛かったよね 怖かったよね ごめんね」というマチの台詞等がどれも効果的で
サラサを失ったショックや喪失感が手に取るように伝わってきた感じ。
というか、ヒソカの死に顔や
シャルナーク&コルトピの死体がブランコに放置されているシーンでも感じたように
冨樫先生は「死」の生々しい表現が巧すぎる・・・。
絵面のグロさだけで言えば
マサドルディーゴ(偽)やモレナに抱き込まれた執事等


もっと過激な死体のシーンがいくらでもあるんだけど、
今回のサラサは直接的な描写を抑えめにして読者に想像の余地を残すことで
より大きなインパクトを生み出していたんじゃないだろうか。
単純な画力だけでなく雰囲気や空気感の表現が抜群で、
読者に対して強烈な印象を与えたのはもちろんのこと
ただの劇団に過ぎなかった旅団がA級首の盗賊団に変貌する転換点としても
十分な説得力を持つ描写になっていたと思う。
●犯人からのメッセージ
サラサの死体発見シーンの中で最も気になるのは犯人達が書き残していった2つのメッセージ。
「袋」が吊るされていた樹の根本と「袋」の中のサラサの頭部に
それぞれ一枚ずつ手書きメモが刺されていて、
紙のジャンプでは何が書いてあるのかまでは判別できなかったけど
電子版なら画質によっては多少解読できたりするのかな。
(サラサの顔の方のメッセージは
中央に「処分」、右下に笑顔マーク

クロロはメモの内容を「死んでも言わない」と断言していたから
口にしただけでサラサを侮辱・冒涜してしまうような
胸糞悪い内容だったことは明白で、
この「メッセージを残す」やり方自体が非常に屈辱的だったからこそ
流星街も「何も奪うな」という「メッセージを残す」手法を取り入れたのかもしれない。
殺し方と同じくメッセージの内容も
詳しく描写しないからこそ読者各々が「最悪」を想像できるわけだし
精神衛生的にも内容は知らない方がいいような気もする・・・けど
いずれ犯人達に復讐するときがくればその際に言及される可能性はあるから
クロロ達の「復讐」がどう描かれるのかは注目しておきたいと思う。
そして、この「ナイフと手書きメモ」という組み合わせは
ヨークシン編のベーチタクルホテルでの停電作戦決行時に

クロロを捕らえたクラピカが旅団に向けて残したメッセージを彷彿とさせる。
「雨」「連れ去られた仲間」「ナイフとメモ」という要素は
サラサの事件を想起させるには十分なシチュエーションだったはずで、
ナイフにメモが結ばれていることに気付いたときのノブナガは

一瞬、サラサの事件とクロロの結末をダブらせていたのかも。
さらにノブナガからそのメモを渡されたパクノダは
このシーンで初めて「人間から」ではなく「物質から」記憶を読み取っていて

彼女が「記憶を読む」能力を発現させたのは
サラサの殺害現場に残されたメモや凶器、煙草の吸い殻といった遺留品の数々から
犯人の手がかりを掴みたい、という想いが強く影響していたとも考えられるんだろう。
サラサの一件があったことを踏まえて
ベーチタクルホテルから「人質交換」までのシーンを見返してみると
旅団内での意見対立やパクノダの覚悟、ゴン&キルアへの感謝なんかも
今までとはまた違った見方ができそうな感じ。
旅団が感情に焼かれて「サラサの仇」を容赦なく殺しているとすれば
ゴンの「クラピカはお前達と違う!!」という言い分も

かなり核心を突いた刺さり方をしていそうだし・・・。
●エンバーマー・レンコ
無残な姿で発見されたサラサの亡骸は念能力者・レンコによってエンバーミング処理され
生前とほぼ変わらない状態でクロロ達に見送られた模様。
マチはそのレンコの体の周りが「すごく光ってる」ことに気付いたようで、
何の鍛錬もせずにオーラを視認できていたということは
旅団の中で最も優れた念の才能を持っていたのは意外にもマチだったのかな。
(マチ以外のメンバーもオーラが見えていた可能性はゼロではないけど)
マチに才能を感じ取ったレンコは
「最終バスに乗って『キリモリ谷まで』って伝えてこれを見せれば
タダで連れて来てくれるよ」と言ってチケット(?)を渡していて、
素直に考えれば幻影旅団メンバーに念を教えたのは彼女ということになるはず。
マチが「レンコの体の周りが光っている」ことに気付いて師事を受けていなかったら
幻影旅団は「念」を知らないまま動き出していた可能性もあるから、
旅団が盗賊団になる上でマチは非常に重要な役割を担っていたのかもしれない。
先週の内容を読んだ段階では
マチの「念糸」の能力は劇団の衣装作りが由来なのかと思っていたから
エンバーミングに強い影響を受けていたのも驚きで、
マチの心が「エンバーミング」によって多少なりとも救われた経験があったからこそ


天空闘技場の戦いで死亡したヒソカの遺体も綺麗にしてあげようとしたわけか。
ヒソカが死亡した回の感想記事を見返してみたら
・グリードアイランド編でと自分で書いていたし、
ヒソカに「この仕事が終わったらすぐ死んでいい」なんて言っていたマチが
死亡したヒソカのエンバーミングをやってあげようとしたのは
単に「マチはなんだかんだいって優しい」からなのか・・・?
サラサが殺されるであろうことも先週・先々週の時点で分かっていた以上
この二つを結び付けて予想することは不可能ではなかったんだろう。
(衣装担当だと「血管・骨・神経・筋肉をほぼ100%繋げる」という
人体に精通していないと不可能な芸当の説明がつかなかったし)
多少の傷跡が残るマチの「念糸縫合」に対して
レンコの「エンバーミング」は少なくとも見た目はほぼ完全に復元されていて、
これが「遺体を生前と同じ状態に戻す」能力だとしたら
なぜそんな能力を修得するに至ったのかも興味深いところだ。
マチに「あなたオーラが視えるの!?」と言っていたあたり
レンコは無自覚な能力者ではなくキッチリ念の知識を修めているっぽいけど、
流星街の外に出て念を使って金儲けをするわけでもなく
かといって流星街の住人に念(武力)を与えて子供達を守っているわけでもなさそうで
何気に行動原理がミステリアスな人物という感じ。
ちなみに以前発売されたオフィシャルデータブック「ハンターズ・ガイド」では
シルバの妻(=キルア達の母)であるキキョウも「流星街出身」となっていて

レンコとキキョウはなんとなく出で立ち(主に帽子の形と羽根)も似ているし


漢字で「蓮子」「桔梗」なら名前が植物繋がりという共通点もあるから
キキョウもレンコと同じ「キリモリ谷」の出身だったりするのかも。
まあ「ハンターズ・ガイド」の記述はあまりアテにはならないし、
レンコの恰好を見たときに真っ先に連想したのはキキョウではなく

「暗黒の鬼婦神」状態のパームだったんだけれども。
●悪人の隠れ家=蜘蛛の巣?
サラサを見送ったあとすぐにでも流星街を出て一人で犯人を捜しに行こうとするウボォーギンに対して
クロロは「3年間で自分の力と流星街のシステムを全て整える」ことを明言。
「カタヅケンジャー」の上映会で劇団のようなことをやっていた経験が
文字どおりの「劇場型犯罪」を見抜く端緒になった、という流れは秀逸で
ここまで見据えて旅団の原点を「劇団」にしたのなら凄すぎるなあ。
クロロが説明した「ネット上に悪人の隠れ家を作る」計画は
言ってしまえば「ウェブ上で網を張って待つ」作戦ということで、
この「ウェブで獲物を待つ」姿勢が「蜘蛛」の異名の由来だったりするんだろうか。
「こいつらは……自分達の『作品』を世界中に発表出来る機会があると知れば
それを我慢出来ない…!!」
「空白地帯を利用し警察の追跡を避けるシステムを作れば
悪人は必ずそこを経由する!」とのことで
犯罪ハンターのミザイストムをして「画像からたどり着くのは不可能」と言わしめた
「特殊な趣味嗜好を持つ者が秘かに集う闇サイト」も


ここでクロロが作った「抜け道」を経由している可能性が高いんだろう。
「闇サイト」にはツェリードニヒが大量の「緋の目」動画を投稿しているから、
仮にそのサイトが「抜け道」を経由しているとすれば
僅かながらツェリードニヒと幻影旅団に接点があったとも言えるのかな。
ツェリードニヒは単に「緋の目」を収集しているだけでなく
「前途ある若者が極限状態下で産み出す総合芸術」と称して人を解体しているから

サラサの「解体」映像が公開されていれば目にしている可能性は高いはず。
さすがに流星街の住民誘拐の依頼者がツェリードニヒだったとまでは思わないけど、
サラサの「作品」を見たことがきっかけで性癖が歪んで
殺しを芸術と捉える現在の感性が形成された、くらいの繋がりはありえそうな感じ。
しかしハンター試験編の時点では
ホームコード(≒留守番電話)とケータイ電話と電脳コード(≒ネット検索)が
「ハンターの電波系三種の神器」なんて言われていたことを考えると

時系列的にそれより約15年も前(ヨークシン編で26歳だったクロロが11歳の頃)に
外界の情報も物資も乏しいはずの流星街の子供が
「通信の革命」を予見できていたのはちょっと説得力に欠ける気もする。
「三種の神器」のシーンが掲載されたのは平成11年(1999年)で、
作中の時間経過は2〜3年でもリアルタイムでは20年以上経っているから
このへんはもう「長期連載作品の宿命」と言うしかないんだろうけど・・・。
(『名探偵コナン』でも初期は携帯電話すらほとんど持っていなかったのに
今は誰でもスマートフォンを使うようになっているし)
●集った8人と離れた1人
「3年間ですべてを整える」計画を聞いてウボォーギン、シャルナーク、フランクリン、ノブナガ、
フィンクス、フェイタン、パクノダ、マチの8人がクロロの下に集った一方、
シーラだけはこの時点で彼ら9人と袂を分かった模様。
離れていったシーラの心境は
サラサは復讐なんて望んでいないから協力できない
3年も待てない、今すぐ復讐しに行く
サラサが死んだのは悲しいけど自分の人生を犠牲にしてまで復讐する気は無い
のどれかだと思うけど
クラピカ追憶編での言動が演技でなければ△鯀ぶほど血の気は多くないはず。
「サラサがやるなら私もやる」なんて言うくらい仲が良かったことを考えると

だけが理由だとちょっと薄情すぎる気もするから、
〃鶚という感じで
「将来ハンターになる」という夢が彼女の中では「サラサとの約束」になっていて

その夢を叶えることが自分にできる唯一の餞、と考えているのかな。
冒険活劇「ディノハンター」が公用語で書かれた本だとしたら
それを愛読していたシーラも犯人のメッセージを読めた可能性があるから、
単独行動の理由にはそのへんの事情も関係しているのかもしれない。
離れていくシーラのことを
クロロやパクノダ達がどう思っていたのかも気になるところで、
幻影旅団によるクルタ族の虐殺が
「シーラがクルタ族に誘拐された」と思い込んでの犯行だったとしたら
決別した後も変わらず仲間意識があったと解釈できるんだろうか。
(クロロ自身が「サラサは 決してそんな事 望んでいないから」と言っている以上
シーラに復讐を強制することは無く、本人の意思を尊重するはずだし)
一方、クロロをリーダーに指名したウボォーギンは
「お前が頭なら オレは死ぬまでついていくよ」と言っていて、
以前の感想で書いたとおり
クロロを頭にノブナガ、フェイタン、マチ、シャルナーク、という形に落ち着きそうな感じ。
フィンクス、フランクリン、パクノダ、ウボォーギンという8本の手足があって
結成当初は9人でクモだった
ここから手足を4本増やして団員ナンバーを決めてクモのタトゥーを入れて
現在の幻影旅団の体制が整うまでの経緯も気になるところで、
「入団希望者が在団員を倒せば交代」ルールを筆頭に
「団員同士のマジ切れ禁止」や「揉めたらコインで」、
団員数は13人までと制定された理由なんかも興味深いところだ。
結成当初から13人構成だったわけではなく
創設メンバーはヨークシン編まで誰一人欠けていなかったということで、
「団員交代」の回数は想像以上に少なかったとも考えられるんだろう。
確定している「ヒソカに倒された元4」と「シルバに殺された団員」以外
メンバーチェンジは行われていない、という可能性すらあるのかも?
●3年経ったら…
3年間で準備するモノとして「犯人に近づく為の知恵と道具」「犯人を見つけた時に必要な力と技術」の他に
「これ以上流星街で サラサ達みたいな犠牲者を出さない様にする為に
自分の人生を 捧げる覚悟…!!」を挙げたクロロは
「3年経ったら僕は 沢山の人間を殺す」と宣言。
前回「クロロはそれでいい」「私は今のクロロが好き」と言っていたパクノダが
その宣言を聞いて沈痛な面持ちを浮かべていたのが印象的で、
「なんでもお見通し」なパクノダは
クロロが一歩間違えばこうなってしまう危うさを前々から感じ取っていたのかな。
そうならないよう先回りしてそれとなく釘を刺しておいたのに
結局こうなってしまうことを止められなかった、という後悔と
説得は通じないことを理解して「せめて傍で支える」ことを決めた覚悟が
あの表情に込められているように見えた。
そしてクロロは残りの人生を悪党として生きる覚悟を決めたようで、
クロロにとっての「悪党」が「サラサを殺した犯人」だとすると
ヨークシン編でゴンに問われた「なぜ 自分達と関りのない人達を殺せるの?」は


クロロの中で「犯人はなぜサラサを殺したの?」に変換されていたのかもしれない。
それなら「なぜだろうな 関係ないからじゃないか?」という
どこか他人事っぽい回答も納得がいくし、
クロロが「サラサを殺した犯人」をトレースして悪党を演じているなら
「無関係な人達を殺せる理由」も答えられないとダメなのに
そこは理解していなかった(というより理解することを拒否していた)ため
「あらためて問われると答え難」く、
「自分を掴む(=悪役としての動機や心境を理解する)カギ」が
「そこ=サラサを殺した理由」にあると考えた・・・と解釈することもできるはず。
しかし善悪に頓着が無いゴンと違って
クロロは悪を悪と認識した上で「毒を以て毒を制す」ために悪になることを決めていて
仲間の「緋の目」を取り戻すために手段を選ばなかったらしいクラピカも

根っこの部分はクロロと似ていたりするのかも。
そういう視点で考えてみると
クロロの「サラサ達みたいな犠牲者を出さない様にする為に」の根底にあるのは
「もう…… 仲間を失うのは 絶対にイヤだ!!」だし

「僕は決してこの世で 奴等をこのままにしない…!!」も
「冥府に繋いでおかねばならないような連中が〜」に通じるものがあるから

クロロとクラピカは敵同士でありながら本質的には似た者同士なんだろうか。
故郷も仲間もすべて失って守るべきものが無くなったクラピカと
故郷や仲間といった守るべきものがまだ残っているクロロなら
クラピカの方が道を踏み外してしまいそうなもんだけど、
実際にはクロロが「守る」ために道を踏み外しているのが皮肉な感じ。
クロロは以前
「頭が死んでも誰かが跡を継げばいい」
「オレを最優先に生かすことはない オレも旅団の一部
生かすべきは個人ではなく旅団」なんて言っていたものの

回想編を見る限り「クロロが頭である」ことが大きな意味を持っているのは明らかで、
旅団を取るかクロロを取るかで団員間の意見が割れていたのも納得できた。
フランクリンの
「致命的に旅団が崩壊することが団長に対する一番の裏切り」という発言も

自分の人生を犠牲にしたクロロの覚悟とその目的が分かった上で聞くと
説得力が増した気がする。
●流星街と自分をデザイン
「3年経ったら沢山の人間を殺す」宣言をしたクロロは続けて「僕は残りの人生を悪党として生きる 世界中の人間が恐れ慄く程の
小悪人共が震え上がり決して流星街に近づかない様
この街と自分をデザインする」とも表明。
「自分をデザイン」していることまでは予想できていたものの
流星街のシステムまでクロロがデザインしていたのは驚きで、
リゾルが長老会に「クロロを呼んで意見を聞いてみるのも〜」と進言していたから

クロロはそれを利用して長老会を上手く説得・懐柔して
流星街のルールを自分好みの方向性にデザインしていったんだろうか。
「旅団は流星街の中でも特異な存在」というレオリオの推測に反して

実際には旅団も流星街もクロロがプロデュースしていたようで、
流星街を守るために幻影旅団が生まれたのなら
キメラアント編でフィンクス達が蟻退治を引き受けていたのも納得という感じ。
しかし「小悪人が流星街に近づかないよう街と自分をデザインする」なら
ヨークシン編でマフィアが「偽の死体」を調査するまで

「幻影旅団は流星街出身」と知られていなかったのは何故なんだろう?
流星街が幻影旅団の庇護下に置かれているだけの状態だと
幻影旅団が壊滅した時点で元通りの扱いになってしまうから、
「我々から何も奪うな」の報復ルールをデザインして
「流星街そのものがヤバい」と思わせる必要があったのは理解できる・・・けど
それが功を奏して「流星街には手出しできない」状態を作れた時点で
当初の目的は達成できているわけで
「流星街と無関係な盗賊団」をデザインする必要は無かったように思えてしまう。
報復は流星街の長老の「番いの破壊者」を利用して行われていたから

長老が死んだら「自爆による報復」の遂行が不可能になり
報復が無くなればいずれ流星街は被虐民に逆戻りしてしまう、ということで
あのA級首・幻影旅団も実は流星街出身だった
↓
やっぱり流星街はヤバい場所だ、手出しするのは危険だ
と、流星街のイメージをダメ押しする意図があったと考えるべきなのかな。
あるいは「人員と引き換えに安全を得る」のはクロロや流星街の本意ではなく
いずれは「人員と引き換えなくても安全を得る」ことを見据えていて、
幻影旅団がヨークシン編で流星街とマフィアンコミュニティーの蜜月関係を壊したのは
流星街の完全な自立への足掛かりだったとも考えられるのかもしれない。
いずれにせよ
・まずは流星街単体でヤバいと世間に思わせる
・流星街とは無関係なところで「幻影旅団」の悪名を轟かせる
・準備が整い次第、機を見て「幻影旅団」と「流星街」を関連付ける
ところまでを当初から予定していたとしたら凄まじい計画性だなあ。
その場合、ウボォーギンが「世の中の筋モン全部敵に回す」ことを喜んでいたのは

単に戦闘狂だったから、というわけではなく
「計画が一段階進む」ことに対する喜びだったとも解釈できるのかも。
そしてヨークシン編の時点を基準に旅団の動きを時系列順にざっくり並べると
15年前 (クロロ11歳)
劇団としての旅団誕生、サラサ死亡、復讐のための準備期間に突入
12年前 (クロロ14歳)
準備期間終了、盗賊団としての旅団が正式始動(?)
5年前 (クロロ21歳)
シーラがクルタ族の村を訪れる、クルタ族虐殺事件発生
3年前 (クロロ23歳)
幻影旅団全員集結、シルバによる団員暗殺、シズク&ヒソカ加入
0年前 (クロロ26歳) ヨークシン編
ウボォーギン&パクノダ死亡、ヒソカ離反、クロロが念を封じられる
幻影旅団が流星街出身であることがマフィアに知れ渡る
1年後 (クロロ27歳) グリードアイランド編〜キメラアント編
カルト加入、クロロの除念終了、クロロとヒソカの鬼ごっこ開始
フィンクス達は流星街でザザン退治
2年後 (クロロ28歳) 王位継承編
天空闘技場でクロロvsヒソカ戦、シャルナーク&コルトピ死亡、イルミ加入
BW1号乗船中
という感じになるはず。
クルタ族が虐殺されたのは
準備期間が終わって「旅団」が正式始動してからさらに7年後の出来事で、
「世界中の人間が恐れ慄く程の悪名」を轟かせるためだけに
無実のクルタ族を襲って「緋の目」を奪った・・・というのは
時期的にも動機的にも、ありえなくはないものの可能性は低いんだろうか。
ノブナガが「結成当初の旅団」とエイ=イ一家を重ねたように
行き当たりばったりで虐殺をやらかした可能性もゼロではないんだろうけど、
機が熟すまでは「旅団」と「流星街」の繋がりを隠しておくつもりだったとしたら
クルタ族の村に「何も奪うな」のメッセージを残して
旅団と流星街の繋がりを仄めかしているのが不自然な感じ。
まあ、それを言い出すと
・クルタ族の村に「何も奪うな」のメッセージが残されていた
・「何も奪うな」は流星街からのメッセージだと世間には認識されている
・クルタ族の虐殺は幻影旅団の仕業だと世間には認識されている
という条件の中で
流星街と幻影旅団の繋がりが認識されていなかったのが不自然なんだろうけれども。
(クルタ族虐殺が幻影旅団の仕業だと認識しているのは
ニュースを見て村に戻って色々調査or発見者から事情を聞いたクラピカだけで
世間的にはクルタ族の虐殺も流星街の仕業だと認識されているとか?)
●幻影旅団始動
3年にわたる雌伏の時を経て盗賊団としての「幻影旅団」がついに始動。今週のラストシーン「旅団では…」は
以前描かれた「旅団結成」のシーンに繋がっていて


「結成」までの回想編としてはキリのいいところまで進んだ感があるものの、
クルタ族襲撃の真相なんかはまだ明らかになっていないから
回想が一旦終わるのか、このまま続くのかは非常に興味深いところだ。
前述のとおりクルタ族襲撃にはまだ不可解な点が残っているから
できればその真相まで一気に描いてしまってほしいと思う。
そして↑の画像の「結成」シーンと今回のラストシーンを見比べてみると

以前は描かれていなかったシャルナークが登場していることが分かる。
立ち位置的に「フキダシで隠れていた」ことにされたっぽいけど、
同様の手法で登場させられるはずのフィンクスを描いていないということは
このシーンでフィンクスが不在だったことには何か意味がある・・・のかな。
今週のラストシーンが約束どおり「3年後」だとするなら
クロロは11歳から14歳までの3年間で見違えるほどに成長していて、
前回の感想でも書いたようにマチの「あれ…クロロ?」は

久々にクロロを見て、その変わりように驚いたと解釈できそうな感じ。
ただ、だとすると準備期間の3年間
旅団メンバーは各自バラバラで行動していたことになりそうだから
クロロが念を教わったのはレンコではない、ということになるんだろうか。
しかし流星街で念を教えてくれる人がそう易々と見つかるとは思えないから、
クロロも1年くらいはレンコの下で他メンバーと一緒に念を教わっていて
その後の2年間の別行動中に急成長した、と考えれば辻褄は合うのかもしれない。
(前述のとおりレンコがキキョウと接点があったとしたら
そのツテを頼ってクロロをゾルディック家で修行させていた可能性もある?)
ちなみに以前作った旅団メンバーの一覧表を更新するとこんな感じで

14歳には見えないクロロやチャラついているシャルナークはさておき、
絵柄の変化を差し引いたとしても


以前と比べてマチの顔が幼くなりすぎているように見えてしまった。
マチは14歳のクロロよりもさらに年下のはずだから
今回描かれたガキっぽい顔つきの方が年齢相応なんだろうけど・・・。
●その他
・ウボォーギンが集合時間に遅れたことが無く
遅刻しがちなフランクリン&ノブナガとよく喧嘩になっていたとは語られていたけど

「15分前に来てねーとかありえねェ」くらい時間にうるさかったのか
・流星街には捨て子も多くて血の繋がった親子が少ないから
子供は「乳母衆」が共同で面倒を見るシステムになっているのかな
・公演中止の報告のあと観客の子供達が捜索の手伝いを買って出たり
ウボォーギンに「絶対どこかでケガして動けなくなってるだけだ!!」と言わせて
一瞬だけ前向きな気持ちにさせていたのがその後の絶望を引き立てている感じ
・「工場長に頼めば男衆も力を貸してくれる!!」ということは
流星街に住む男は大半が「工場」で働いているわけか
・「クロロの名前を出せば絶対だ!断わる奴なんていやしねー!!」らしいから
クロロは教会や子供たち以外の層にも一目置かれていたということ?
・「袋」の中身を見たクロロの表情は

BW1号船内での「今にも誰か殺しそう」な顔とそっくりで

やっぱりシャルナーク&コルトピの死は相当堪えているっぽい
(クロロはサラサの死も「彼女を一人で帰してしまった自分の責任」と感じているし
旅団としての作戦任務中に死亡したウボォーギンやパクノダと違って
シャルナーク達の死は「自分が気を付けていれば防げた」という思いが強そう)
・マチはアテレコの際は「悪役がいい」なんて悪ぶっていたものの
サラサの「袋」を大切そうに抱きかかえていたから
そのへんが「なんだかんだいって優しい」と言われる由縁なのかも
・このシーンのフェイタンは涙を拭っているようにも見えるけど

ここで「犯人達を許さない」と復讐を誓ったことが

痛みを返す念能力「許されざる者」に繋がった・・・と考えるのは飛躍しすぎか
・今のところ過去編で「マチの勘がよく当たる」描写は見当たらないけど
そもそもレンコのオーラに気付いたのが第六感の片鱗なのかな
・レンコがマチに渡したチケット(?)の形状は
クロロの「栞のテーマ」の栞っぽくも見えるけど


特に珍しい形状ではないからさすがに無関係なのか
・「3年なんてあっという間さ」のシーンで
背景の樹木に比べてキャラの身長がデカすぎるように見えたのは
キャラの絵と背景の合成がイマイチ上手くいかなかったから?
・サラサを殺した凶器や煙草の吸殻を保管しておくのは分かるけど
普通の葉っぱまで証拠品として保管しているのは何故なんだろう?
(流星街には生えていない植物の葉で、犯人の居場所の手掛かりになり得るとか?)
・クロロが流星街のシステムまでデザインしていたということは
「番いの破壊者」の能力もクロロが指示して発現させていたのかな
(「長老は人間も人形も大差無いという考えの様だ」と言っていたから

基本的には長老の「心の闇」が反映された能力のはずだけど)
・クロロが流星街と長老会を裏で牛耳っていたとしたら
「番いの破壊者」は「盗んだ」わけではなく「譲り受けた」可能性もあるのかも
(「死後も本に残る」ことまではクロロも想像していなかったらしいから
長老が高齢で動けなくなったときに人間爆弾作りをクロロが代行したとか?)
・「クロロ お前が頭だ」のあとメンバーが人差し指を立てたシーンで
マチだけ指を上じゃなくクロロに向けていたのはちょっと気になる
(人差し指を立てるのはカタヅケンジャーの「クリンパワー集結」っぽいから

マチはそれを堂々とやるのが照れ臭かっただけ?)
流星街の有力者に失望して独自のグループを形成した、ぐらいに予想していましたが、実際のクロロは予想よりも遥かに器の大きいキャラでした(フィンクスたちが有力者に失望どころかそもそも期待していないのは既に描かれてましたけどね)。
これだけの存在だと退場したときの流星街への影響も甚大でしょうが、逆にその後の流星街の行末も見てみたい気はします。
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