日本観光ミシュラン

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旅オタクの本棚(14)アルキヘンロズカン

アルキヘンロズカン(上)(下) (双葉社)しまたけひと 2012年 

歩き遍路を始めようとする人にぜひ一読をすすめたい、格好の入門書。むろんフィクション満載の漫画であって実用書ではないが、今どきの歩き遍路、特に中高年ではない若い遍路たちの姿をリアルに描いた快作だ。
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別々の男女二人を主人公とした構成が素晴らしい。一人は「誰も得しない」ロリエロ漫画を書き続けるもまったく売れず、辞めるべきかどうかで悩む漫画家、つまりは作者本人。もう一人はOLを辞めた後1年間実家で引きこもり同然のニート生活を続けた女性。
二人は自らの強い意志ではなく、なんとなく歩き遍路を始める(この辺もリアル)。道中で様々な人と出会い、たくさんの善意と親切心に触れる一方で、悪意やトラブル、事件にも遭遇する。サブキャラも登場し、それぞれの縁が絡み合いつつ、結願を迎えるシーンは清々しい。
作者の実体験と伝聞を再構成したエピソード集といった趣がある一方で、四国(札所を含めて)は良い人ばかりではないこと、そしてお遍路の側にも問題行動が多々あることを公平に描いているところが良い。そして、歩き遍路を成し遂げたからといって、本人の性格その他に大きな変化は生じない、という現実も。
お遍路体験者には「あるある」集としても楽しめる。すでに三回も読んだ本だが、結願したらまた読んでしまうに違いない。

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旅オタクの本棚(13)55歳の地図

四国を歩き始めてから気になって入手した、お遍路マンガをふたつ続けて紹介する。

・55歳の地図(日本文芸社)黒咲 一人 2005年
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作者は「ハスラーザキッド」「無頼風」などのヒット作を持つ漫画家。その名前はぼんやりと私の記憶にもある。
55歳にして仕事の依頼がなくなり、前途を悲観した作者は身辺を整理し、住んでいたアパートを引き払って死に場所を探すような遍路の旅に出る。
予算は1日300円。もちろん選択肢は野宿&自炊しかない。全財産を積んだポンコツ三輪自転車を相棒に、道中で色々な人に助けられながら、八十八ヶ所を約2か月で結願する。その体験を描いたセルフドキュメンタリー作品だ。
旅オタク視点では、要領の悪さと情報弱者ぶりを歯がゆく感じるが、作者は体力と生活力でそれをカバーしてしまう。
旅の冒頭で出会う職業遍路の先達のような男のサポートも大きい。二人が行動を共にする前半は、「乞食遍路」とも揶揄される、江戸の昔から変わらぬ遍路の一類型の姿を活写していて興味深い。
結局死ぬことは叶わず、四国の優しさに生かされた作者はある種の諦観を得て遍路を終えることになる。
作者の境遇はまったくうらやましくはないが、自分のように宿を泊まり歩く通称「贅沢遍路」には決して見えない世界があることを教えてくれる作品だ。遍路文化の本質に触れるには野宿での通し打ちが必須と、うすうす感づいてはいるのだが…。
作者はその後、自転車で全国を放浪したり、善根宿で管理人をするなどしていたようだが、いま現在どこで何をしているのかは分からない。大師と衛門三郎ではないが、遍路を続けていればそのうち出会うかもしれないと思っている。

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僻地等級

旅好きは「秘境」に憧れる。人里離れた天地で待つ、新鮮な驚きに期待する気持ちが根底にある。
「秘境」と似た概念に「僻地」があるが、「僻地」はそこに人が住んでいる、という点で秘境とは異なる。しかし、有人だからこそ興味深い面も多々あるだろう。
祖谷渓の山腹集落や、大東島など、交通アクセスが不便な場所が頭に浮かぶが、人事院規則に「僻地等級」なるものが存在することを、つい最近になって知った。
生活が著しく不便な土地にある官署を、一〜六級地に分け、勤務する職員に対して「特地勤務手当」を支給する、その根拠となるリストだ。数字が大きいほど僻地度が増し、手当も増額される。
六級地は数少なく、全国で6ヶ所。父島、南大東島、与那国島がド僻地ということになる。

・東京都小笠原村父島 小笠原諸島森林生態系保全センター
・東京都小笠原村父島 小笠原総合事務所
・東京都小笠原村父島 父島気象観測所
・東京都小笠原村父島 横浜海上保安部小笠原海上保安署
・沖縄県島尻郡南大東村 南大東島地方気象台
・沖縄県八重山郡与那国町  沖縄地区税関石垣税関支署与那国監視署

五級地まではみな離島で、四級地ではじめて本土の住所が現れる。ただ官署が隔絶地にポツンとあるはずもなく、あまり秘境感はない。

・福島県南会津郡檜枝岐村  会津森林管理署南会津支署檜枝岐森林事務所
・福島県南会津郡檜枝岐村  檜枝岐自然保護官事務所
・福島県南会津郡只見町  会津森林管理署南会津支署小林森林事務所

これとは別に、教職員に対する「僻地手当」の額を定めるために、「へき地教育振興法」に基づいて、各都道府県が条例によって定めている僻地等級もある(準へき地、一級〜五級の6段階)。
たとえば北海道の五級地は以下の4校だ。

・北海道上川郡新得町   新得町立富村牛小中学校
・北海道利尻郡利尻富士町   利尻富士町立利尻小学校
・北海道利尻郡利尻町   利尻町立仙法志小学校 
・北海道礼文郡礼文町  礼文町立神崎小学校

唯一離島ではない富村牛小中学校の存在感が光る。生徒数は15名(H27/12/1 現在)、地図や航空写真でも、辺りに集落らしきものが見当たらない、納得の僻地だ。トムラウシ山に登る際に、車で横を通り過ぎているはずだが、もちろん覚えてなどいない。事前に知っていれば良かったと思う。
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