2005年06月16日

まるでワンダーランド!明治の競馬は驚くことばかり

私が今まで読んだ中では、一番大変な競馬本だったように思う。
明治馬券始末』(大江志乃夫 紀伊国屋書店 2005年3月発行 1800円+税)のことである。

何が大変かと言うと、その読みづらさ。
著者の大江さんは、登場人物の属している組織や人事のことなどを、とても詳しく正確に書くのである。
そこまで書かなくても。。。と思うくらい。
それがなじみの無い明治時代の陸軍省のことだったりするので、難しい資料でも読んでるような気分になってしまうのだ。

大江さんは現在77歳で、茨城大学の名誉教授。
著書には明治政府や日露戦争関連のものが多い。
なるほど、納得である。
その辺を気にしなければ、内容は興味深いことばかりで相当に面白い。


タイトルからもわかるように、明治時代の競馬の話である。
読みづらさにもかかわらず、この本の評判は悪くない。
その頃に起きた将校の賭博事件を緻密に検証してゆく第3章が面白いという人が多い。
確かに私もそう思う。
でもこの本で私が一番楽しめたのは、第2章「競馬会ブームの到来」のほう。
目からウロコ話のテンコ盛りなのだ。

たとえば。
軍馬改良の目的で、国をあげて競馬を奨励したために、空前の競馬ブームになって主催団体が乱立したらしい。
私もやりたい!
という申請が二百件以上も集まったというからスゴイ人気だ。
当時は許認可制で、一定の要件(もちろんハードルは高い)を満たせば誰でも競馬を興行できたのだ。
そんなわけで、あっという間に全国で16もの競馬会(クラブ)が誕生するのである。


そこで行われていた競馬は、いまの私たちの目から見ればまさにワンダーランド。
とにかく競馬場の形もさまざまだった。
目黒競馬場の長円形コース(現在と同じ形)は、なんと酷評されたらしい。
当時は楕円形で、ホームだけ直線というのが見やすくて良しとされたのである(根岸や池上競馬場)。
松戸競馬場なんて土地がないもんだから、S字や急カープがあるトリッキーさ。
まるでサーキットだ。

もちろん走る馬もサラブレッドだけではない。
「連闘する」とは文字どおり毎日走ること。
出走馬が決まらない前に売り出す馬券(宝くじと同じ)が大人気。
近代競馬は池上競馬場から始まるのだが、その記念すべき第1Rに勝った騎手はアイヌ人だった。
川崎競馬会の会長は、自由民権運動で有名な、あの板垣退助である。。。

なーんて話の数々は、知ってるだけで競馬仲間から尊敬されるかも(しれない)。


この本の中で、大江さんは当時の朝日新聞の記事を多数引用している。
だから競馬場の雰囲気や、そこに集まる人々の熱気がその頃のままに語られるのである。
臨場感たっぷりで、とてもイメージしやすい。
明治時代の競馬のことを書いた本はたくさんあるけど、そこが他と大きく違う点だろう。

読みづらさもあって(何度もすみません、大江さん)、すべての競馬ファンにおススメとはさすがに言えない。
せっかくの内容なのになあ。。。残念。

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