2007年01月01日

オール1の落ちこぼれ、教師になる

「オール1の落ちこぼれ、教師になる」        宮本 延春



中卒で「超」がつくほど落ちこぼれだった著者が、難関大学に合格し、高校の数学教師になるまでの半生をつづったノンフィクション。

この著者のように、勉強というものは、やれば誰でもある程度はできるようになる。しかし、当たり前のことだが、誰でも東大や名大に入れるわけではない。この先生の場合は、小学校の時に勉強嫌いになり、いじめも重なってまったく勉強をしなかったために落ちこぼれになってしまったのだと考えられる。もともとは頭のいい、やればできる人だったのだろう。

偏差値でいえば、60レベルの中堅大学なら誰でも正しい勉強をすれば入れるはずだと私は信じている。だが、70を越える難関大学となると、そうはいかない。ある程度、生まれつきの頭の良さも必要になってくる。

そういう意味で、この本から受け取るべきメッセージは、「勉強は、正しい方法で一定の期間やれば誰でもある程度できるようになる」というものである。間違っても、どんな落ちこぼれでも名大に入れるなどと錯覚すべきではない。

もうひとつ、付け加えておきたいのは、この著者は物理学を愛していたということである。物理学を本格的に学びたいという強い情熱を持ち続けていたからこそ、仕事以外の空き時間をすべて勉強にあてるということができたのだろうし、定時制高校から現役で名大に受かるなどという離れわざをやってのけたのだろう。まさに、「好きこそ物の上手なれ」という言葉がぴったりである。

この本を読んでつくづく思うのは、現在の日本の教育のいびつさである。人間は好きなことなら放っておいても熱中してやる。小学生や中学生のうちに勉強を好きにならせるような教育が学校でできればベストだが、現在の知識偏重の制度では、それは望むべくもない。日本は資源が乏しいため、唯一の資源といえるのは人材だけである。そういう日本の特質を考えても、もっと本質的な意味での教育(特に受験)システムの改革を願わずにはいられない。


好きなことを見つけること、情熱を持ち続けることの重要性がよくわかる本である。


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tn581jp7 at 17:18│Comments(2)TrackBack(0) ノンフィクション 

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この記事へのコメント

1. Posted by そら   2007年01月29日 18:53
初めまして。
私のつたないブログの記事にコメントをありがとうございました。
早速おじゃまさせていただきました(^^)

著者の宮本先生は、学校の勉強という枠にとらわれず、広い意味での「考える力」というものが備わっている人だという印象を受けました。

それも環境のなせる業なのかもしれませんが、今の子ども達に、ひいては日本の教育に欠けているところであるように思います。

好きなことを見つけて、それに打ち込むことができるような環境は大切だと思います。

私のブログに『虹色★ロケット』という、高校生が製作した映画の記事があります。高校生が作ったとは思えないような出来の作品ですが、これも好きなことに情熱を傾けて打ち込んだ結果の一つの現れでは内科と思います。もしよろしければそちらもお読みいただけると、幸いです。

P.S.トラックバックさせてくださいm(_ _)m
2. Posted by そら   2007年01月29日 19:01
あら(^^;
トラックバックしようと思ったら、できませんでした。
残念(笑)

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