2007年02月28日

使命と魂のリミット

「使命と魂のリミット」              東野 圭吾



テーマとしては、重すぎもせず、軽すぎもせずという感じか。しかし、読後感は実にさわやかである。内容に触れることになるので詳しくは書けないが、困難な状況の中でも手術を行い、患者を全身全霊を尽くして救おうとする医師たち、裏切られた傷を抱えながらも患者を救うために電話をかける看護婦…その自らの使命を懸命に果たそうとする姿勢には、なんともいえないすがすがしさを感じる。読後には、すっきりとした爽快感が広がる。

「使命」…これが、この小説のキーワードになる。果たして,どれだけの人間が、それを意識して仕事をしているだろうか。しかし、どんな職業にもそれは存在する。プロ棋士にはいい勝負をしてファンを楽しませるという使命が、お笑いタレントには人を笑わせ、楽しい気分にさせるという使命がある。そのような職業の人間には迷う時期があるらしい。将棋を指して何の意味があるのかと思い、ボランティア活動に参加した棋士もいたそうだ。だが、その時期を過ぎると、これが自分の天職だと思えるときがくるという。このとき、その人は本当の意味でその道のプロになり、使命を自覚できるようになったといえるのだろう。この小説の中心となる事件は、ある人物の使命感の欠如から起きる。そういう意味では、多くの社会人に意識してほしい2文字である。


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tn581jp7 at 16:22│Comments(2)TrackBack(0) サスペンス 

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この記事へのコメント

1. Posted by らずむっち   2007年03月09日 17:46
コメントありがとうございました。
さっそく、私もおじゃましました。
「使命と魂のリミット」に関しては、
私の変な読み方ですが、
最近、お医者さんが本を書くということに対抗して、
東野さんが、自分の持っている推理小説家としてのスキルを駆使して書いたような印象を受けました。
あの美しすぎるフィニッシュでさらに
その印象を強めました。
2. Posted by きじ   2007年03月10日 14:00
案外、そうかもしれませんね。「チームバチスタの栄光」なんか、ベストセラーになりましたし。「使命…」の持つ、推理小説的な部分は、東野圭吾にしか書けないでしょう。

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