2007年03月19日

チームバチスタの栄光5

「チーム・バチスタの栄光」           海堂 尊



バチスタ手術という、心臓外科手術をめぐる謎を中心とした、エンターテインメントミステリー。第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

まず、この物語の中心人物である外科医が、自分は人を何人も殺したという意味のことをさらりと言ってのけることに不安を感じる。その人物自身は強い正義感や使命感を持っているのだが、それでもその発言には危険なものを感じざるを得ない。医者はそのへんのサラリーマンとは違う。心臓外科医の失敗は即、患者の死を意味する。もっと自分の仕事に対して危機感を持つべきであろう。死に日々接している医者がそれに無感覚になるのはある程度仕方ないが、やはり命の重さを常に頭の片隅に置いていてほしいものだ。
 
ストーリーは、前半はバチスタ手術をめぐる謎を中心として読者を引っぱっていく。現役の医者が書いただけあって、専門用語が適度にちりばめられており、物語の臨場感を高めている。それだけでも面白いのだが、厚労省の役人、白鳥が出てくるところから、物語はがぜん面白味を増していく。
 
白鳥のキャラクターが秀逸。超がつくほどずうずうしく、しかしとんでもなく頭が切れるトラブルメーカー。こんな奴、現実的にはありえない。しかし、彼のおかげで、この小説は一流のエンターテインメントになっている。極端に言うと、手術をめぐる謎を除けば、この小説は白鳥1人で持っているようなものだ。彼と田口のやりとりを読んでいるだけで十分面白い。新たなタイプの名探偵登場!! ―そう評しても差し支えないと思う。ただし、医療に関する事件に限られるが。ホームズやポアロにはほど遠いが、三毛猫ホームズを越えるぐらいのインパクトはある。
 
ロジカルモンスター・白鳥の活躍により謎は解決するのだが、その真相が明らかになった時、暗たんたる気持ちにならざるを得ない。冒頭の続きになるが、医者が命に鈍感になった時、それはその人物が辞表を出すべき時なのだ…そう考えずにはいられなかった。


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tn581jp7 at 02:20│Comments(0)TrackBack(0) ミステリー 

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