March 24, 2010

正鵠を得たウォルフレン論文

永田町異聞で紹介されているのですが,アムステルダム大学教授カレル・ヴァン・ウォルフレン氏が「日本政治再生を巡る権力闘争の謎」という論文を中央公論に寄稿しています.ネット上で閲覧できることは大変喜ばしいことですが,ほとんどのメディアには無視されたままです.この論文がいかに日本の現状と課題を精確に捉えているかは,お読みになればわかることですが,結びの言葉だけを引用させていただきます.

 日本のメディアは自由な立場にある。しかし真の主権国家の中に、より健全な民主主義をはぐくもうとするならば、日本のメディアは現在のようにスキャンダルを追いかけ、果てはそれを生み出すことに血道を上げるのを止め、国内と国際政治の良識ある観察者とならなければならない。そして自らに備わる力の正しい用い方を習得すべきである。さらに政治改革を求め、選挙で一票を投じた日本の市民は、一歩退いて、いま起こりつつあることは一体何であるのかをよく理解し、メディアにも正しい認識に基づいた報道をするよう求めるべきなのである。

 名古屋市議会の定数削減と,減給が盛んに報道されています.市議の年収1,600万円が不当に高いのか,現在の75議席が多過ぎるのか,私には分かりません.しかし確かなことは給与を半減し,議員定数を半減しても年間およそ3億円しか節約できないということです.ところが名古屋市には2万人近い市職員がいるようなのです.河村市長は,ロスアンゼルス議会の議員定数はたった15人だ,といっていますが,議員定数を減らしても大きな歳出削減に繋がるとは思えません.

 先日トヨタのリコール問題で豊田社長がアメリカ下院の公聴会に出席しましたが,印象的だったのは豊田社長の公聴会がアメリカ運輸省長官との会談に先立ち行われたことです.下院公聴会はテレビで見ても,明らかに下院選挙を意識した素人臭いものでした.しかしおそらくアメリカの有権者は役人の言葉よりも,自らが選挙で選んだ議員を信頼するのでしょう.

 少なくとも日本では役人は横領とか,収賄,あるいは破廉恥な事件を起こさない限り辞めさせられることはありません.しかし議員は会期が終われば,選挙という有権者の選択を受けざるを得ません.いつでも有権者は議員を辞めさせることができるのです.果たして今の日本の閉塞感の原因は,政治家の無能さや,政治とカネなのでしょうか.

 おそらく日本の最大の問題は,官吏が不必要なほど権限を握って手放さず,しかも閉鎖的な役所の中で育った官吏が現代の諸問題を解決する能力や手腕を持たないことだと思います.その兆候はすでにバブル経済の頃から現れていたのに,20年近くたっても一向に変わらない.それはウォルフレン氏が書いているようにメディアなどが官僚と癒着しているからですが,最大の問題は役人にとって代わる指導層がいつまで経っても生まれないことなのでしょう.

 共通一次試験,全国統一試験で文字通り日本の高等教育は全国レベルで統一化されました.研究費の配分も平等化し,私立,公立,国立といった大学の特色も希薄化したように思えます.しかし古くは手塚治虫氏や,ライブドアのホリエモンもソフトバンクの孫正義氏もいわばドロップアウトの落ちこぼれです.本当に異常なほどに緻密な日本の教育制度が優れているのか,その保障は一切ありません.いまだに四字熟語や,漢字の書き順を小学生に熱心に教えているのを見聞きするたびに,日本全体がコイン・ポリッシャー化しているように思えます.

いくら十円硬貨を磨き上げても,所詮十円は十円でしかありません.いくら四字熟語や漢字の書き順を知っていても,その知識は日本国内でしか通用しないでしょう.もちろん四字熟語を知っていることは良いことです.しかし切磋琢磨し,競わせるほどのことなのか.銀行に就職した新入社員がお札を数えるのも同じです.銀行員が紙幣を大切にするのは良いことですが,お札を正確に数える銀行員よりも,しっかり利益を出し,お金を貸してくれる銀行員のほうが顧客には助かります.日本では「型」を重視しますが,過剰な様式美は,「仏像作って魂入れず」になりかねません.どれも同じような報道を繰り返すテレビや新聞,顔の見えない役所,駅弁大学と揶揄される大学,綺麗だけれど,魂のない仏像が乱立しているといえないでしょうか.

 江戸時代末期にもやはり当時の支配層であった武士は,ペリーの開国要求や安政地震,そして飢饉に対処する能力を失っていました.むしろ商人や下級武士の方が新しい知識を貪欲に吸収し,発想の転換もできたのでしょう.しかし残念ながら今の日本にはそのような下級武士が育っていない.昨今のマスコミのように,検察など官僚にべったりで,報道する内容は,愛子さまの不登校とか,鳩山邦夫氏の離党,民主党副幹事長の辞任騒ぎといった,いわばゴシップばかりです.これでは報道の自由というようなものではなく,一杯飲み屋で上司の悪口や噂話をするサラリーマンと同じです.酔っていない分,話を聞かされるほうは白けるだけです.

 民主党政権に失望したといっても,もはや今の自民党にかつての力はありません.靖国参拝,刺客,改革の本丸といった小泉劇場という空疎な,その場限りの興奮には懲りたはずです.政治とカネ,辞任騒ぎ,新党結成といった表面的な騒ぎに右往左往するのは,もう止めた方が良い.じっくり考え,振り返ることが重要なのです.振り返れば中曽根内閣の臨調以来,ずっと政治家も,財界もマスコミも「改革」を口にしてきました.しかしそのような支配する側からの「改革」とは,逆に支配を強化するためのものだった,とそろそろ国民は気づいて良い時期に来ているのではないでしょうか.大学紛争を契機に始まった入試改革が,おそらく最も分かりやすい好例なのだと思います.



tnakadat at 21:34|PermalinkComments(3)TrackBack(0)記事,事件 

March 18, 2010

春は名のみの,風の寒さ

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今日は彼岸の入り.「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが,こちら東北では春は足踏みどころか,ここ数日は冬に逆戻りです.この写真は昨日北上市で撮影したもの.明日の盛岡市の最低気温の予想は氷点下5度.今週末まで寒さが抜けないようです.

tnakadat at 21:52|PermalinkComments(2)TrackBack(0)自然・環境 

March 17, 2010

回転寿司は食の堕落

 おそらくワシントン条約締結国会議で,クロマグロは国際取引を禁じる付属書1となるでしょう.水産庁は「乱獲は日本の責任ではなく,現地業者の取締りが甘いため」と反論していますが,漁獲高の80%が日本に集中し,築地の市場が高額で競り落とすことは世界の常識です.官僚が反論すればするほど,日本が国を挙げて資源の枯渇に手を貸しているという構図になりかねません.南氷洋捕鯨を日本固有の食文化と呼ぶ人たちがいますが,沿岸捕鯨は日本固有の文化かもしれませんが,南氷洋捕鯨は戦前,戦後の食料事情によって生まれた,いわば国策でした.税金を使ってわざわざ南氷洋に調査捕鯨を行うのは,いかにも時代錯誤です.
 
 大量のマグロを捕獲し,食べる行為はエコロジーからいっても問題です.マグロはご存知の通り回遊魚で,成長するのに大量の餌を必要とします.テレビでは近畿大学水産学部の稚魚からの養殖を取り上げていましたが,そのコストについては触れませんでした.マグロの蓄養とは異なり,資源保護に役立つとしていますが,卵から育てるのですから,蓄養よりも餌やエネルギーが使われるのは当然です.おまけに脂肪はタンパクや糖質に比べ,重量当たりのカロリーが高い.脂が乗ったマグロを育てるには,さらに餌を与えなければいけません.

 人口が増え続ける世界ではいずれ水産資源が食用に供されるのは時間の問題です.マグロのような大きな回遊魚がいつまでも食べ続けられる訳はないのです.しかもそれを食べる人間にも負担がかかります.いくら動脈硬化を防ぐEPAや不飽和脂肪酸が多いといっても,やはり脂は脂です.取り過ぎは体に良いはずもありません.ニュースでは大西洋クロマグロの在庫はあと一年分あるので,禁輸となっても,すぐには価格に反映しないといっていましたが,マグロの大量消費国日本がそれだけのクロマグロを掻き集めている,と自ら証明するようなものです.中国や台湾の富裕層が消費しているという,これまでの言い分が嘘だったということにはならないでしょうか.

 最後にマグロのトロがなければ寿司屋は成り立たない,というのは思い込みに過ぎません.ご存知の通り,トロを喜んで食べるようになったのは,つい最近のことです.まして週末に大挙して回転寿司に家族連れが殺到し,あたかも遊園地のように寿司ネタを漁る風景は,どう考えてもここ10数年のことです.回転寿司が繁盛する一方で,街中の寿司屋は閉店が相次いでいます.テレビで大間のマグロ漁を取り上げ,ショッピングセンターの客寄せにマグロの解体ショーが使われ,子供たちがウニだ,トロだ,アワビだ,エビだと食べまくるのが伝統の食文化なのか,豊かさの象徴なのか,日本人はよく考えるべきでしょう.

tnakadat at 11:56|PermalinkComments(4)TrackBack(1)記事,事件 

March 16, 2010

日本を今一度せんたく致し申候

自民党の鳩山邦夫氏が離党し,新党を結成すると表明しました.「龍馬のように,薩長を結びつけて,捨て石になりたい.」と述べましたが,はたして彼は龍馬になれるでしょうか.坂本龍馬が姉乙女に書いた手紙にこの有名な「日本を今一度せんたく致し申候」という言葉が出てきます.昨年北川正恭前三重県知事らが「地域・生活者起点で日本を洗濯する国民連合」を立ち上げてからこの「日本をせんたく」という言葉が一種の流行語となりました.しかしこの前後の文を読めば坂本龍馬の決意は決して生易しいものではないことが分かります.

  呆れはてたる事は、其長州で戦いたる船を江戸で修復いたし 又長州で戦い申候。是皆姦吏の夷人と内通いたし候ものにて候。右の姦吏などはよほど勢もこれあり、大勢にて候へども、龍馬二三家の大名と約束を堅くし、同志を募り、朝廷より先づ神州をたもつの大本をたて、夫より江戸の同志旗本大名其余段と心を合せ、右申所の姦吏を一事に軍(いくさ)いたし打殺、日本を今一度せんたくいたし申候事にいたすべくとの神願にて候。

 要するに龍馬は外国と戦った長州藩を見捨てて,外国の軍艦を修理した江戸幕府の役人を姦吏と呼び,多勢ではあるけれども,戦で打殺したいほどだ,とその心情を吐露しているのです.長年自民党にいた鳩山氏にその覚悟はあるのでしょうか.江戸幕府の名誉のためにいえば,実際には外国の軍艦を幕府が修復したという事実はなかったようです.しかし戦後の日本はアメリカ軍に基地を提供し,核密約で明らかになったように核兵器の持ち込みを容認していました.

 自民党政府の責任は核持ち込みに止まりません.1986年には空母ミッドウェーのアスベスト除去作業が横須賀基地で密かに行われました.1980年にはWHOがアスベストに発がん性があると認定,1981年にはアメリカで大規模訴訟が起きていたからです.アメリカ国内では処理できないアスベストを実質的には占領国である日本で処理したというわけです.横浜共済病院の三浦医師の報告では過去5年間に死亡した肺癌患者39名のうち三分の一が横須賀の米海軍基地の従業員だった,といわれています.住友重機は和解に応じましたが,当時の政府や厚生省,外務省,防衛庁が謝罪したということは聞いていないし,米海軍関係者が謝罪したという話も聞きません.

核密約,あるいは沖縄返還密約は遡ること30年です.すでにアメリカでは公文書も公開され,いわば公然の秘密でした.しかしいまだに中曽根元首相の証人喚問すら,実現していません.公文書を廃棄した官僚共々ぬくぬくと高額の退職金と年金で,悠々自適の余生を送っていることでしょう.現代の姦吏は幕末とは違い,手厚い保護を受け,批判されることすらないのです.坂本龍馬は続けてこう書きます.

「然に龍馬すこしもつかへをもとめず。実に天下に人物のなき事これを以て知るべく、嘆くべし。」と.

tnakadat at 21:18|PermalinkComments(1)TrackBack(1)記事,事件 

March 09, 2010

世論調査は世論操作?

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NHKが世論調査で鳩山内閣の支持率が低落,不支持が支持を上回ったと報じました.この世論調査は多くの新聞社やテレビ局が行っていますが,RDD方式というコンピュータでランダムに作成した電話番号をかけ,アンケートを行う方式.
番号は無作為抽出ですが,そこから先は無作為ではありません.まず20歳以上という制約がありますから,20歳未満は駄目,そして世論調査の目的を説明して,プライバシー保護についても必ず説明しなければなりませんから,これだけで5分から10分はかかるでしょう.だから忙しい人,外出中,勤務中の携帯も無理です.酔っ払いや認知症など,明らかに言動に異常がある場合もドロップアウトです.このNHKの調査では1,706人のうち65%に当たる1,104人から回答が得られた,としていますが,学術的な調査に比べると,この値は大き過ぎるように思えます.残念ながらこの手の世論調査の電話は一度もかかった試しはありません.日本の人口は一億人,一度の調査で2000人近くに電話をするようですから,その確率は5万分の一です.各社で無数の世論調査が行われているのですから,一度くらいかかってきてもよさそうなものですが.

 さらに質問全体もかなりのボリュームがありますから,よほど暇な人でないと答えられません.結果として世論調査に応じる人は,リタイアした高齢の男性か,主婦層が圧倒的に多いのでしょう.これはどの世論調査も明らかにしていませんが,これまでもネットとの乖離が云々されていますから,間違いないと思われます.残念ながら世論調査は何の決定権もありません.その時その時の国民の一部の「気分」を映し出しているに過ぎません.マスコミはこの手の世論調査をまるで鬼の首をとったようにトップで報道しますが,実はお手軽で,何のリスクもなく(これが国民の声だ!と言い張ることができるわけですから)取材できる手抜き報道に他なりません.こんなことをやっているから,何も変わらず,日本は世界から取り残されるのです.

tnakadat at 08:31|PermalinkComments(6)TrackBack(0)

大田あや:東大合格生のノートはかならず美しい

東大合格生のノートはかならず美しい
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かつて桐嶋洋子氏の「聡明な女は料理がうまい」というベストセラーがありました.中身を見ると,料理のレシピで,では料理がうまくなると聡明な女性なのかといえば,そんなはずはありません.「料理がうまければ,聡明である」(逆),「聡明でない女は,料理が下手」(裏)が必ずしも成り立たないのは論理学が教えるところです.

 この本も,言わんとする所は「美しいノートを作れれば,東大に合格できる」ということでしょう.しかし仮に「東大合格生のノートは必ず美しい」という命題が正しいとして,逆の「ノートが美しければ,東大に合格する」という命題は必ずしも成り立たないのは自明です.ノートが美しいということ自体が極めて抽象的,主観的ですが,ノートを美しく取る努力の分だけ,時間が失われることだけは間違いありません.

 先日銀行の新入社員の研修風景がニュースで報道されていましたが,いまだに大卒者にもお札の数え方を教えているのは驚きました.確かに銀行はお金が商品ですが,他にも教えなければならないことは沢山あるはずです.まるで旧日本陸軍のように,「娑婆の気分を叩き出す」,「愛社精神を涵養する」という洗脳まがいで有能な人材が育つとは到底思えません.残念ながら今の日本には肝心のものがぽっかり抜け落ちているような気がします.論理学といわずとも,自分の頭で考えること,自分の目で確かめること,自分の手足で動きまわること,そういう原初的な経験がない.ペーパーテスト万能,テレビゲームのような仮想現実だけでは,欧米のしたたかなエリートにも,中国やインドといった新興国のパワーにも勝てないでしょう.

今の日本の教育は,「いかに速く」,「いかに効率的に」ばかりを追い求めているようにしか思えません.しかしそれでは昨今散々叩かれているトヨタ車と同じです.アクセルペダルの不具合にせよ,フロアマットにせよ,電子制御装置の不具合にせよ,アクセルにブレーキが優先するブレーキ・オーバーライド・システムが重要なのです.トヨタでは今後全車種に搭載することになったようですが,日本の教育や社会にもブレーキ・オーバーライド・システムが必要ではないでしょうか.少なくともこんな子供騙しに引っかかるようでは,教育の価値が問われるのは当然です.

tnakadat at 07:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)書評 

March 07, 2010

ジャップに攻撃させるな

「ジャップに攻撃させるな.日本兵は攻撃の連携計画を持っているときは,スムーズに動く.だが,日本兵は攻撃されて,つぎになにが始まるのか見当がつかないときは,事情は違ってくる.」
 
 これはダグラス・マッカーサーが部下の士官に語った言葉です.以前紹介したザ・コールデスト・ウィンターにはこう書かれています.

 日本軍は行動計画を管理しその統率下にあるとき,また,すべてがあらかじめ決められた通りに遂行されるときは強力で,その厳格な指揮系統は一見,無敵である.すべては計画通りに動き,すべての兵士は厳格極まりない命令に忠実に従い,無謬である.しかし,日本軍にとって戦闘の潮目が暗転した場合や主導権が失われた場合,この長所がそのまま短所になる.驚くばかりに柔軟性を失い,うまく戦えるのは日本軍と同じような動きをする敵だけだということだ.日本の社会はきわめて階級的専制主義的で個人の創意には大きな価値を置いていないため,その軍隊は堂々とした軍には程遠く,戦場で要求される死活的重要な資質である未知のものへの対応能力を欠いた.そんなわけで,日本は軍事的には早々と硬直化した.

 おそらくこの言葉は半世紀前の軍事的敗北のみならず,バブル経済や,今回の経済危機にも,あるいはトヨタのリコール問題にも当てはまるでしょう.オバマ民主党はクリントン政権の日本叩きを踏襲していると評する人もいますが,何のことはない,日本を攻撃する最善の方法は全く変わっていないのですから,何度も同じ戦術を使うのは当然です.

 日本が戦争で敗れた原因がこのような硬直化した社会であって,個性や創意が生かされなかったから,総力戦に敗れたとするならば,個性や創意が生きる社会をつくるべきだというのは議論を要しないでしょう.しかし日本は階級制度も,専制君主も捨て去った筈なのに,相も変わらず個性や創意が生まれにくいというのは一体どういうことなのか.

 要するに旧日本軍の硬直性というのは,旧軍の制度のみならず,日本社会の硬直性の反映であって,天皇制でも,貴族のせいでもなかったのでしょう.日本の社会や,一見すれば効率的で完璧に見える日本の教育制度は,世界や日本が望む人材を生み出していないどころか,むしろ圧殺していると考える他ありません.今我々が真剣に考えなければならないのは,「政治とカネ」でも,愛子さまの不登校でもない,一見するときれいだけれど味もなければ,栄養もない,温室栽培の野菜のようなエリートしか生まれない日本の教育や社会のありようだと私は思う.

tnakadat at 10:18|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

March 04, 2010

ブルレー Vilive S10 Blade

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 まだ価格などは不明ですが,4月発売予定のタブレットPC.日本ではタブレットPCが法人向けに限られており,普及はまだまだですが,もしこの製品がリーズナブルな価格ならば,使ってみたいと思っています.レノボジャパンも低価格のタブレットPCを発売しましたが,液晶の解像度はこちらが上のようです.

 最近外国のドラマ,CSIマイアミや,CSIニューヨークにはタブレットPCがよく登場するようになりました.ちょっと前までパナソニックのタフブックが登場していましたが,様変わりです.その前はソニーのロゴが誇らしく輝いていたのですが,残念ながらタブレットPCは日本のメーカーかどうかもわかりません.今ではCPUも,液晶も外国製,組み立ても香港製ですから,もう日本企業が食い込むことは無理でしょうが.

 それにしても日本でタブレットPCが普及しないのは,第一に日本語キーボードの特殊性,そして未だに書類という紙媒体から離れられないこと,オフィスの椅子で坐って長々と仕事をするという,はなはだ時代遅れのビジネススタイルと無縁でないように感じます.またタブレットPCは対面してプレゼンするのに最も好適なツールですが,このような機会が我が国ではとても少ない.

 トヨタはリコール問題で,トップへの情報がなかなか上がらないことが批判されました.一人で黙々とプレゼン資料を作成,会議室に集まって,プロジェクターでプレゼン,合議の上で意思決定というスタイルは,そろそろ再考する必要があるのではないでしょうか.もちろん日本にはより小さい携帯や,UMPCというツールがありますが,これはあくまでも個人の情報端末です.タブレットPCは立ちながら閲覧,立ちながらプレゼンが基本です.現場や顧客を回って帰社後にパソコンでは半日から一日遅れます.坐るのが基本の我が国のビジネスは,スピードという点でも時代遅れになりつつあります.

tnakadat at 10:38|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

March 01, 2010

盛岡正ハリストス教会

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 この教会は盛岡市高松の小高い丘の上にあります.昨夜のNHK大河ドラマに土佐勤王党の山本琢磨が登場しました.彼は金時計を着服し,切腹を迫られますが,坂本龍馬に江戸から逃げるよう諭され,江戸を出て東北に向かいます.このエピソードはドラマの後で説明されたように実話です.ただし逃亡は,坂本龍馬だけでなく,武市半平太の指示でもあったようですが.山本琢磨は坂本家とも,武市家とも繋がりがあり,単なるヒューマニズムだけではなかったのでしょう.

 この山本琢磨(のちの沢辺琢磨)は函館に向かい,何とロシア正教会のニコライ神父の下で洗礼を受けたのだそうです.その後東北地方を北上川流域に沿って布教活動を行い,東京復活大聖堂(現ニコライ堂)の建設に尽力します.盛岡でも布教活動を行ったようですが,当時の教会は今の加賀野にあったようで,昭和35年現在の場所に移転したそうです.このハリストス教会にはこの沢辺琢磨以外にも,伊達藩の医師酒井篤礼や,少なからぬ数の南部藩士も入信したことが,この教会の掲示板に書かれています.推測するに旧藩士にとって,山本琢磨の数奇な運命が,彼らの境遇と重なったように思われます.それにしても彼の行動力は,当時の交通事情を考えると,凄いというしかありません.

 また剣の達人である山本琢磨に密偵と疑われながら,「切るのなら,正教を知ってからでも遅くはないだろう」と彼を招き入れたニコライ神父も立派です.それにしてもこの高松や上田は,かつて壬生義士伝でも舞台となった所.歴史とは不思議なものです.かつて日本には凄い男たちが大勢いた,それだけでも我々は誇りにすべきでしょう.当時の日本に比べれば贅沢三昧の日本人が,デフレだの,不況だのと暗い顔をしていては,それこそご先祖様に申し訳ないというものです.

tnakadat at 21:26|PermalinkComments(6)TrackBack(0)路上散歩 

津波に呑まれた東京マラソン

 昨日は朝から津波一色でした.幸い人的被害はゼロで,いささか過剰な対応に感じられたかもしれませんが,危機管理は過小よりは,過剰の方が良いわけで休日ということもあり,まずはスムーズな対応だったと思います.私が不思議だったのは,東京マラソンが開催されたかということだったのですが,ニュースではほとんど取り上げませんでしたが,予定通り行われたようですね.今回の津波騒動で一番面白くなかったのは東京都の石原都知事でしょう.今回の津波はおよそ1万8000キロ離れたチリから到達したもので,およそ22時間で第一波が襲来しているので,その速度はおよそ時速820キロメートル.ジェット旅客機並みの速度で,やはり自然の猛威は恐るべしです.

tnakadat at 08:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

February 28, 2010

民放テレビは第二の日航

 バンクーバー・オリンピックを見ていると,民放の経営状態があまり良くないであろうことが如実に分かります.まず前回トリノに比べても,中継が減り,ほぼNHKの独占状態です.しかもトリノでは嫌になるくらい放送された安藤美姫選手のようなCMも少ない.4年前には液晶テレビやレコーダーといった家電メーカーがまだまだ元気でしたが,今ではサムスンなどに押されて,ソニーもパナソニックも苦戦です.さらに北米では例のトヨタのリコールで揺れていますから,トヨタのCMも自粛ムードなのでしょう.

 対照的にNHKはジャンプの金メダリスト,シモン・アマン選手を取り上げたNHKスペシャル「空飛ぶ魔法使い」やアルペンのアクセル・スピンダル選手の「極限の恐怖に挑む」など質量ともに民放を圧倒しています.いまだに民放の正規職員の年収は日本のトップクラスのようですが,下請,孫請けと外注が主体で,しかも何もしないテレビ局が制作費を奪い取り,肝心の制作会社に制作費が回らないというかつての日本の製造業の悪習がそのままです.仕方がないのでお笑いタレントを使い,セットの費用が安い,ロケやバラエティー,クイズ番組だらけ.しかしどんどん質が低下し,まさに「悪貨が良貨を駆逐する」状態で,まるで日航が旅行会社にキックバックを行って,経営悪化に陥ったのと同じ構造です.

 彼らは今回の浅田真央選手や,上村愛子選手,スピードスケートの高木選手,そしてカーリング女子のようにテレビ映りの良い,あるいはスポンサーがつきそううな選手ばかりを取り上げ,さらにキムヨナ選手が転倒したとか,まるで大人げない報道を繰り返します.地上波デジタル移行前でこの体たらくですから,おそらく民放の幾つかは,ソチオリンピックまでもたないでしょう.浅田選手のことより低能,悪質な民放の統廃合を考えたほうが良い.総務省は携帯電話に比べ不当に安いテレビ局の電波使用料を上げ,経営が悪化した民放の淘汰を行うべきです.

 空いた電波帯域は,池田信夫氏が以前から書いているように,電波オークションにしてもよいし,外国のテレビネットワークに売りに出しても良いでしょう.BBCや中国電視台,アルジャジーラ,アメリカのCNN,PBSなど,候補は沢山あります.この国の成長力を削ぎ,考える力を奪い,子供の学力を低下させる最大の原因は,「おバカ」な民放テレビです.一昨年お隣秋田県が学力一位に輝きましたが,おそらくテレビ,ことに民放テレビの視聴時間と学力は,きれいに逆比例するに違いありません.

tnakadat at 11:15|PermalinkComments(4)TrackBack(0)記事,事件 

バンクーバー・オリンピックもそろそろ終わる

 女子団体パシュート決勝で日本は銀メダルを獲得しました.今朝の朝日新聞には田端選手と穂積選手が所属する富山県の地質調査会社「ダイチ」を取り上げています.年間売上9億円,社員40名の中小企業なのだそうです.遠征旅費に年間2000万円かかるということですから,大変な負担です.しかし私はむしろ小平奈緒選手の所属先に興味を持ちました.

 彼女は信州大学を卒業後に長野県松本市の相澤病院にスポーツ障害予防治療センターのスタッフとして勤務しているのだそうです.現在スポーツ選手は出身大学の研究生などとして,仕事とスポーツを両立させるケースが多いのですが,今後は彼女のように医療機関や,福祉施設などに務めるケースが増えるのではないか,と思います.トップアスリートの身体能力や,その障害を防ぐ技術は,おそらく通常の患者にもフィードバックされると考えられるからです.

 かつては冬季オリンピックといえば,コクドとか西部電鉄,雪印,三協精機といったゼネコンや,製造業のしかも大企業が中心でした.しかしコクドも,西部電鉄も,雪印もすでに往時の勢いはありません.スピードスケートの及川祐選手の所属は岩手県で生まれ,北海道を中心にチェーン展開するびっくりドンキーです.

 浅田真央選手が銀メダルに終わって一日経った昨日の新聞紙面を見ると,ほとんどお涙頂戴の記事ばかりでした.その中でスポニチの第三面に書かれていた記事だけが冷静なプロらしい分析だったように思います.それは浅田選手が昨年から極端なスランプに陥っていたことで,本来浅田選手は技術点で高得点を稼ぎ,一方ライバルであるキムヨナ選手は演技力,構成力で対抗してきたというのがジュニア時代からの構図だったのだそうです.

 ところがキムヨナ選手は3回転+3回転を成功させたのに対し,浅田選手は3回転半ジャンプが安定しない.結局3回転半ジャンプは成功させたものの,その後のジャンプを2回転にせざるを得ず,またその高さもキムヨナ選手に比べると見劣りするものであった.すなわち浅田選手は相当なハンデがあり,ショートプログラムの得点差は順当というより,むしろ上出来だったというべきでしょう.ところが日本のマスコミは大騒ぎ,練習でキムヨナが転倒したとか,これでは贔屓の引き倒しです.彼女や安藤選手に余計なプレッシャーをかけないのが,大人の対応でしょうが,今の日本のマスコミには無理な話です.マスコミはこぞってトリノオリンピックの荒川選手の金メダルを引き合いに出し,「追いかけるほうが精神的に有利」と言いましたが,彼女が重圧を免れたとすれば,日本のマスコミが安藤美姫選手に集中した故でしょう.浅田選手は端正な顔立ちに隠れて,結構負けず嫌いなのだと思います.残念ながらフリーの後半,極度の緊張のためミスをしてしまいました.愚かなマスコミの犠牲でない,と誰がいえるでしょう.

 もちろん彼女は4年後のソチオリンピックを目指すのでしょうが,キムヨナ同様,彼女も4年前は年齢制限で出場できませんでした.キムヨナも浅田選手も,下の世代の追い上げを受けることでしょう.私は歴代最高というキムヨナ選手の高得点を見て,同じカナダで行われたモントリオール・オリンピックを思い出しました.彗星のように現れたルーマニアのナディア・コマネチ選手は次々に10点満点を叩きだし,金メダルをさらいました.コマネチ選手以降の女子体操は,贅肉をそぎ取った選手による高度な技の応酬となり,いっそうの低年齢化に拍車がかかりました.女子フィギュアスケートも同じ道をたどることは間違いなさそうです.採点を巡る審査員の疑惑から純粋なポイント制となり,このような技の難易度による勝負になることは,競技である以上避けられないことかもしれません.しかしトリノオリンピック荒川選手のような演技がこれからは見られないとすれば,この進化は正しいのか一抹の疑問が残ります.

 オリンピックは今後どうなるのか.スポーツは今後どうなるのか.今回のオリンピックでも開催前に死者が出たり,温暖化のためか気象条件が不安定と,少なからぬ問題がありました.少なくともオリンピックは平和の祭典,バラ色の未来が待っているというのは,いささか楽観的に過ぎるように感じられます.

tnakadat at 09:08|PermalinkComments(2)TrackBack(1)記事,事件 

February 26, 2010

勝負はもうついている

 いよいよ女子フィギュアのフリーが始まりました.マスコミは浅田真央選手と,韓国のキムヨナ選手の日韓対決を煽っています.私は浅田真央選手にぜひ金メダルを取って欲しいし,安藤選手や,鈴木選手にも入賞してほしいと思いますが,日韓対決はすでに決着がついています.2月25日時点で韓国のメダル数は10,日本のメダルは3個,金メダルは韓国が5個,日本はゼロですから,たとえ浅田選手が金,安藤選手が銀や銅でも,日韓対決は日本の惨敗です.たかがスポーツ,たかが冬季オリンピック,韓国はメダルを取るとインセンティブがあるから,などと言い訳をするかもしれませんが,サムソンが40インチの大型液晶テレビを破格の安値で売りだしたというニュースを見れば,これは経済にもすっかり当てはまることが明らかです.

 政権交代からすでに半年が過ぎようとしていますが,マスコミは「政治と金」の報道ばかり.しかし小沢氏の資金問題がどれほど日本の現状や将来に影響があるというのでしょう.蜘蛛の糸のように張り巡らされた事細かな法律や,既得権益が日本の活性化を阻んでいることは,すでに明らかなのに,全く手がつけられません.官僚の裏金や,天下り,そして天下りの度に支払われる高額の退職金はどうなったのか.検察は正しい,小沢一郎は巨悪だ,と池田信夫氏や,立花隆氏は書きますが,検察が官に巣食う,裏金や天下りをきちんと捜査しているのでしょうか.私の知る限り裏金問題で逮捕されたのは,この問題を公表しようとした元大阪地検の三井環氏だけですが.

tnakadat at 13:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

February 25, 2010

「カーリングおばさん」になってほしい

カーリング女子チームは予選通過ならず,8位に終わってしまいました.チームの要,元橋選手は,オリンピック終了後転身がすでに決まっている,とスポーツ紙が報じているそうです.何だか残念です.今大会で日本チームは得点が取れなかった.あるいは大量点を許してしまった,それが敗因のようです.しかしあのドイツやスイスなどを見ていると,彼女たちに欠けているものは経験ではないか,と思います.四年前のトリノオリンピックでは小笠原(旧姓小野寺)歩選手がチームを引っ張りました.元橋選手もまだまだ引退しないで,目黒選手などとともに4年後,8年後を目指してほしい.マスコミも「カー娘」などと呼んで色物扱いせず,彼女たちがおばさんになっても取り上げていただきたい.何しろカーリングは氷上のチェスと呼ばれているそうですから,人生経験を積み,老獪になった手強い彼女たちのプレーを見てみたい.

tnakadat at 14:36|PermalinkComments(2)TrackBack(0)記事,事件 

February 21, 2010

ディビッド・ハルバースタム:ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争

ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上
ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上
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2007年交通事故で死亡したディビッド・ハルバースタムの遺作となった作品.ネットの評判を見ると「重厚長大」,「読みづらい」とあまり評価がよろしくない.確かに相当のボリュームなので,一晩ではとても無理ですが,年末年始に数日かけて読了しました.読みにくさには原因があって,その一つは戦史ものとして,誤訳が多いことが一つ.翻訳が元記者で戦史に詳しくないのが良く分かります.例えば以下の文章を見ただけで,これはどうかと思います.

 T-34は車体が低く,たびたび敵の砲弾をかわす効果があった.耐久性に優れ,スピードがあり,毎時51キロの最高時速を誇った.軌道は非常に幅が広く泥や氷に立ち往生するのを防いだ.(中略)重量は32トン,35ミリ砲一門,7.62ミリ機関銃二挺を装備し,分厚い装甲板を誇った.

 85ミリ砲を35ミリと間違えたのは単純な記載ミスでしょうが,「軌道は非常に幅が広く」は戦車の記述としては,全く意味が通りません.これはおそらく原著ではtrackなのだと思います.trackには軌道の意味もありますが,日本語の覆帯,すなわちキャタピラの意味もあります.ちなみに通常用いるキャタピラは商標で,アメリカでも正式にはtrackを充てるのでしょう.この他にも50口径機関銃が50ミリ機関銃,30口径機関銃が30ミリ機関銃となっており,これはそれぞれ12.7ミリ,7.7ミリ,すなわち1インチの半分,三分の一を示しているのですが,そういったごく基本的な知識がないので非常に分かり難い.しかし50ミリにせよ,30ミリにせよ,歩兵が携行できるはずはありません.ご丁寧にT-34の主砲が35ミリと書いているのだから,誤訳に気づいてもよさそうなものですが.

 このような誤訳や誤記は一義的には翻訳者の責任でしょうが,仮にもわが国で有数の出版社である文芸春秋社が出版したのですから,このようなミスは校正の段階でチェックされるべきだと思います.表紙のデザインも素っ気なく,よほど急いで出版したのでしょうか.活字離れが叫ばれて久しいのですが,出版社には責任がないのでしょうか.安直な企画や,この本のような話題性はあるが,ろくに校正も行わずに出版されるようでは,自ら首を絞めているという他ありません.

 しかし何といっても,この本が日本で評価され難いのは,いまだにマッカーサーや進駐軍が「軍国日本を解放し」,「寛大な占領を行った」という歴史観が日本では横溢しているためでしょう.しかしマッカーサーはこの本でも描かれている通り,傲慢で独りよがり,スタンドプレーを好む,極めて奇矯な人物だったということです.いまやアメリカにとってマッカーサーとは有能な将軍とは看做されてはおらず,朝鮮戦争は(そしてベトナム戦争も)勝てた筈なのに勝てなかった戦争と考えられているのです.

 結局トルーマン大統領が,マッカーサーを罷免したのは,中国に原爆を投下すれば,戦火がヨーロッパや大西洋に拡がると考えたからでした.同様にマッカーサーは当初北朝鮮の侵攻を,陽動作戦と考え,いずれヨーロッパで戦端が開かれる,と考えていたようです.さらにアメリカ政府首脳は「朝鮮半島の帰趨はアメリカの国防上大きな影響はないが,日本(国民)への影響は大きい」とし,日本の離反を警戒していたことが明らかになっています.

 ブッシュ元大統領がイラク占領に際し,「日本は最も成功した占領」と語ったように,そしてフセイン大統領を死刑にしてもイラクに居座るように,日米同盟は決して日本を守るためでも,自由主義の砦でもなく,純粋にアメリカの国益のためであることは,誰の目からも明らかでしょう.ところが保守派と呼ばれる産経新聞や,外務省は普天間基地移設を巡り,日米同盟の危機と声高に叫びます.一体誰のための保守なのか,耳を疑います.

 封じ込めた筈の中国は,いまやアメリカのみならず世界中に工業製品を輸出し,中国が世界の経済を握っている時代です.ソ連が崩壊したとき,冷戦に勝利したのは日本と言われました.しかし自信を喪失したままの日本と,独自の外交を貫きながら,経済でも日本を追い抜いた中国を比べる時,最後に誰が勝者と呼ばれるかは,誰が見ても明らかです.そろそろ日本も「坂の上の雲」や太平洋戦争から一歩進んで,冷徹に戦後史を見つめ直す時が近づいているように思えます.すでにアメリカですらこのような著作が世に出ているのですから.

tnakadat at 23:56|PermalinkComments(2)TrackBack(0)書評 

国母選手パッシングの滑稽さ

 バンクーバー・オリンピックも後半戦です.日本選手も健闘していますが,女子スピードスケートの岡崎選手や,高木選手の大騒ぎを見てもわかるように,日本のマスコミや広告業界の空回りが良く分かります.高木選手はフィギュアの浅田選手に代わる,広告塔を狙っていたようですが,まだ16歳なのですから,本来の目標は4年後のソチ・オリンピックでしょう.彼女にとっては最下位というのは大きな経験になったと思います.

 大会前にマスコミがこぞって取り上げたのがスノーボード国母和宏選手の服装でした.いわゆる「腰ばき」とシャツを外に出すファッションで,よく高校生がやっている格好です.彼はれっきとした大学生で,「反省してまーす」とか,「ちっ,うっせーな」という記者会見は決して褒められたものではありませんが,出場辞退とか,選手村退去というのも大人げない対応です.

 彼の着こなしというよりファッションそのものが,多くの大人が眉をひそめる,子供に真似してほしくないものであることは確かです.ドレッドヘア,鼻ピアス,あごヒゲ,全てがいわゆるストリートファッションで,街をたむろしている,あまり素行のよろしくない若者たちと同じで,言葉遣いや態度もまさしくこのようなヒップホップ小僧と変わりません.

 しかし思い出してほしいのは,戦後60年近く,日本のファッションというのは,こういったアメリカの猿真似を続けてきたということです.クルーカットやアイビー・ファッション,ジーンズや,ヒッピー・ムーブメント,そしてアフロヘアに至るまで,全てアメリカの風俗を無批判,無節操に取り入れたものです.その点で彼のファッションや,態度を批判できる人間がどれだけいるのでしょうか.ちょっと前まで,アメリカのネオリベラリズムや拝金主義を礼賛し,やれCEOだの,ロジスティクスだの,ホールディングスだのとこぞって猿真似をした大企業や,マスコミにその資格がないのは明らかです.

 日本人は半世紀にわたってアメリカ文化にどっぷり漬かり,特にマスコミはアメリカ以外に目もくれませんでした.小泉政権時代はラブミー・テンダーでブッシュに媚びへつらい,中国,韓国を敵視するような政策を取り続けました.爆笑問題の「太田光の私が総理大臣になったら」で,太田光が「小泉首相は良かった」という発言をしていましたが,確かに小泉元首相は都市圏の地価を上げ,株価も上がりましたが,その主たる要因はブッシュ共和党の際限ない浪費によるものです.懐古趣味もいい加減にしてほしいものですが,おそらくあの発言は彼個人のものでなく,テレビのライターが書いたものでしょう.企業の含み益が減り,広告料金がネットに奪われ,先細りのテレビ業界からすれば,現状は厳しいでしょうが,そんなことは多くの国民には関係ありません.貧すれば鈍すとは,まさにこのことです.

 日本国内でこのような騒ぎが起きている中で,オリンピックでも中国の存在感が強くなっています.サッカーの東アジア大会でも,岡田ジャパンや韓国の不甲斐無さも手伝い,中国が優勝をさらいました.人間の意識には深さと拡がりがあります.意識の深さは意識レベルという方法で測る事ができますが,拡がりは測る事が難しい.日本のマスコミは確かに覚醒していますが,拡がりが極端に狭い.東京の都心からせいぜい数十キロメートル,世界と言えばアメリカ,しかもニューヨークやワシントンばかりでは,日本はおろか世界も見えてきません.

tnakadat at 08:54|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

February 14, 2010

久しぶりの岩手山

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今朝の最低気温は氷点下8度,例年より3度低めです.ただここ数日の風は収まり岩手山が姿を見せました.独りそびえる岩手山の,美しくも厳しい山肌は,きりりと冷えた空気と相まって,ともすると怠惰に流れがちな日常に活を入れているような気がします.昔の父親のような存在でしょうか(笑).

tnakadat at 22:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)岩手山 

アジサイの冬芽

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2月も中旬になりましたが,こちら岩手は寒い日が続いています.それでもだんだんと日が長くなり,ほんの少しずつ春の兆しが現れています.

tnakadat at 21:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)季節の話題 

首が危ないのは,「小沢」より「岡田」

 NHK大河ドラマ「龍馬伝」を観終わってチャンネルを替えたら,岡田ジャパンは,韓国が2点リードで,ロスタイム3分.しかも攻撃のチャンスさえ掴めず,韓国が終始主導権を握っている.選手も選手だが,相変わらず何をやりたいのか,全然分からない.やっぱりワールドカップ前に更迭すべきじゃないのかな,と思います.誰もワールドカップで4位になれるとは思っていないでしょうが,このままでは間違いなく一次予選で4位になってしまう.今からでも遅くない,監督交代が必要です.

tnakadat at 21:11|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

渡邉文幸:検事総長

検事総長 - 政治と検察のあいだで (中公新書ラクレ)
検事総長 - 政治と検察のあいだで (中公新書ラクレ)
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先週池田信夫氏のブログで「検察は暴走したのか」という記事がありました.池田氏は検察を擁護する立場のようですが,多くのコメントは氏の見解には疑問を呈するものでした.

「利益誘導に回帰している民主党の暴走のほうが深刻な問題であり、その司令塔が小沢氏だ。何が「巨悪」かを見誤ってはならない。」
「小沢氏こそ最大の権力者だ。彼が何十人の社会的生命を奪ってきたか、知ってるのかね。」

 こういった記述は,いささか独断に過ぎるように思われます.私は,今回の起訴は,どう考えても無理があると思います.もし民主党が利益誘導に回帰し,小沢氏が最大の実力者で,巨悪とするのなら,なぜ4年も前の政治献金や,土地購入について捜査するのでしょう.利益誘導の政策を推し進めることが明らかならば,衆議院選挙の直前や,参議院選挙の前に秘書や,現役議員を逮捕する必要はないでしょう.氏の論が正しければ,「巨悪」の民主党や,小沢幹事長は利益誘導の政策を乱発するでしょうから,政治資金規正法ではなく,贈収賄で捕まえることができます.熟した柿が落ちるのを待てばよいだけです.

 氏は社会的に抹殺といいますが,検察は文字通り容疑者や関係者を「抹殺」しています.1,998年には自民党議員の故中島洋次郎氏を政治資金規正法,受託収賄,公職選挙法違反で逮捕していますが,これは議員が防衛庁政務次官時代に富士重工会長から500万円を受け取ったというもので,富士重工の前身が中島飛行機であったことを知っていれば,これが本当に受託収賄だったのかと誰もが考えます.中島洋次郎氏は上告中の2001年に自殺しました.

 また「検察が積極的に情報を提供して報道を操作することはない。どちらかというと報道する側が特定の見込みに沿った話を当てて、検察が答えることが多い。」と検察のリークを否定していますが,連日のようにどの新聞,テレビでも同じ内容が流れるのは,異常というしかありません.もし氏がいうように記者が当て推量で記事を書いたとすれば,各紙ばらばらな内容になる筈で,必ずしも検察の思い通りにはならないでしょう.しかし女性職員を長時間に亘って尋問したという週刊朝日の報道に対し,東京地検は抗議したところを見ると,やはり検察が世論を誘導しようとしているとしか考えられません.

 日本の検察は諸外国に例のない独特のものです.多くの国では検察に捜査権を持たせていません.しかも検察官の捜査に歯止めがかかりにくい構造上の問題があります.まず捜査権を持っていますから,自分たちが行った捜査を不起訴にするのは難しいでしょう.小沢氏を不起訴に決めた夜,異例の記者会見を開いたのは,特捜部の無念さを感じます.しかしいかに無念であっても,公判が維持できない事例は不起訴が相当で,無念というのは,あくまで組織内部の問題です.捜査権と公訴権が分離していれば,こんなことは起こり得ません.

 また検察指揮権発動という伝家の宝刀は,造船疑獄の悪評のために抜けない刀になりました.指揮権発動によって政権側の受けるダメージが大き過ぎるからです.しかしこの造船疑獄で指揮権発動したのは,当時の政治情勢からで,実際には法務大臣と検察の間で「話がついていた」ということが,著者である渡邉氏の調査で明らかになっています.

 さらに検察官適格審査会という制度も,検察官が統一組織として活動するという「検察官同一体の原則」では,検察官個人の評価は不可能といって良いでしょう.人事は検事総長が決め,国民は批判できない.この仕組みはかつての陸軍参謀本部と良く似ています.戦前平沼騏一郎が大逆事件と呼ばれる一斉検挙を行ったのを見て,政友会の原敬は陪審制を考えたといわれ,また彼の内閣で三浦陸相は暴走する参謀本部に業を煮やし,参謀本部廃止を考えたそうですが,結局潰されたといわれます.平沼騏一郎はその後も帝人事件で斉藤実内閣を解散に追い込み,近衛内閣を生むに至りました.取り調べの際に主任検事は「俺等が天下を革正しなくては何時迄経っても世の中は綺麗にならぬのだ」と恫喝したといわれます.しかし彼らが「天下を革正し」,「世の中を綺麗に」した結果は,皆さん御存知の通りです.近視眼的な正義が,災いを招くのは,青年将校も,日本赤軍も,オウム真理教も何ら変わりません.

 このように検察はいったん暴走した場合,歯止めが効きにくい構造であることは明らかです.しかも東京地検特捜部が失点続きであるように,彼らの熱意はともかく,その捜査が時代遅れに感じられます.特捜部が生まれたのは戦後で,1947年隠匿物質の摘発を目的とする隠退蔵事件特捜部が,1949年にはアメリカのFBIを模範とした政財界の不正摘発を目的とした特捜部となった,と書かれています.すなわち東京地検特捜部の雛型は,FBIだったのです.

 しかし聖バレンタインデーの虐殺で有名なギャングの大物,アル・カポネを逮捕したのは,アンタッチャブル,FBIではなく,国税局でした.脱税は国税庁が行えばよく,ライブドア事件や,村上ファンド事件は証券取引等監視委員会が行えば良い.特捜部は全国から検察官の応援を仰ぐとのことですが,捜査が長引けば長引くほど,引き抜かれた地方の検察は能力が低下します.
 
 さらに模範としたFBIには,ご存知の通りバージニア州クァンテイコにFBIアカデミーがあり,プロファイリングや,コンピューター犯罪など,警察にも負けない捜査技術の開発,教化プログラムがありますが,日本の検察には同じような組織があるとは聞きません.相変わらずがさ入れ,自白に頼り,調書が取れなければ拘留延期というのでは,足利事件と同じで自白を強要する恐れありと言われても仕方がありません.警察には科捜研や,サイバー犯罪部門があり,またマネーゲームには東京証券取引所と相互乗り入れで,研修会を開くなど,交流が盛んです.そろそろ日本の検察も諸外国並みに捜査は警察に任せ,公判活動に注力すべき時期ではないか,と思います.もっとも幼稚園は文科省,保育所は厚労省と不毛の縄張り争いが続いた「幼保一元化」のように,権限委譲こそ官僚の最も抵抗することでしょうが.

 とどのつまり,日本の検察は,厚生労働省と同じく,まさしく戦艦大和なのです.あるいはサーバークライアント型のシステムといってもよい.巨大なサーバーを設置すれば事足れりと考えていても,世の中が複雑になり,犯罪が多様化,巧妙になるにつれ,さまざまな分野のスペシャリストが必要になり,法律の専門家だけでは限界があります.それであれば,株や商取引の犯罪は証券取引等監視委員会,脱税は国税局というように分散化を図るのが自然な進化でしょう.

 コンピュータ・システムではピア・ツー・ピア,P2Pという仕組みです.また司法試験に合格し,司法修習生だけの純血主義も,かつての陸軍と同じです.士官学校,陸軍大学,三宅坂という視野の狭いエリートが多くの過ちを繰り返したことは歴史が教えるところです.さまざまな専門分野をモジュール化し,タスクフォース的に組み合わせるというのが,合理的な解決であるように感じます.確か池田氏自身が「スーパーコンピュータは要らない.分散型のシステムが主流」,「水平分業とモジュール化は避けられない」と言っていたような気がするのですが(笑).

tnakadat at 20:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0)書評 

February 09, 2010

矢作弘:「都市縮小」の時代

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)
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 池田信夫氏の「田中=小沢型政治の罪」という記事で,これは時代錯誤と感じたのは,「日本経済を建て直すために必要なのは、田中以来つづいてきた国土の均衡ある発展を求める政策をやめ、労働人口を都市に集中することだ。」という結論です.これ以上都市に労働人口を集めることが,果たしてこの国を活性化し,国民を豊かにするのでしょうか?

 最近完成した大橋ジャンクションは,落札価格116億円,二重らせん構造で,地下四階分に相当する高低差70メートルを一気に下る構造です.安全性や,環境には十分配慮しているようですが,多重衝突事故や,災害時は不安を感じます.何よりこのように地下とか,高層化を図らなければならない,というのが過密化が限界に近付いていることを示しています.大橋ジャンクションが完成し,渋滞解消が期待されても,首都高速羽田線が老朽化で,改修工事です.常に東京では工事が続き,その結果が公共事業費のトップです.高い工事費,何より高い土地代に,日本の税金は食われているのです.

 驚くことに国土交通省のサイトに国会等の移転ホームページというのがあるのですが,ここに日本政策投資銀行 地域企画部参事役藻谷 浩介氏の「 東京に依存しない国土構造のありかた」という提言が載っています.

 「そもそも東京集中促進論者は、都市規模の国際比較をしたことがあるのでしょうか。仮に都市のサイズが大きいことで国が強くなるのであれば、日本は既に世界を制覇しています。都市圏人口で見れば、東京は先進国のナンバー2であるニューヨーク都市圏に2倍以上の差をつけて圧倒的に大きい巨大集積だからです。上海は大きいと思っている人がいますが、実際に行ってみてわからないのでしょうか、東京の方が3倍も巨大です。人口に所得をかければさらに規模の差は拡大します。ですが、その東京はたとえばアジアの金融中枢としては機能していません。一時集まって来ていた外資系銀行のアジア本部は、人口規模10分の1のシンガポールに移転してしまいました。世界標準で言えば、大きい都市に企業の中枢が集中する必要はないのです。」

「米国を見れば、世界最大の小売企業・ウォルマートの本社はアーカンソー州の田舎町ベントンビル、マイクロソフトの本社はシアトルにあります。かつてはニューヨークに有力企業が集中していましたが、この100年間で全土に拡散が進み、今は連結売上高トップ100社のうちニューヨーク周辺に本社のある企業は3割未満です。これは、ニューヨークの企業が地方に移転したからではなく、この100年でニューヨークにあった企業が凋落し、地方にある企業が勃興したことが要因ですが、でも新興企業はニューヨークに本社移転をせずに、発祥の地で世界経営を続けているのです。金融の世界ですら、ウォールストリートへの一点集中は終わり、オマハやアパラチア山脈山中などに新興の大手が勃興しています。中国でも上海・北京・香港〜広州の3大中心があり、さらに、南京、西安、武漢、青島、大連、その他無数の大都市が発展しています。どこか一つの都市に極端な中心をつくらないことは、中国の長き歴史を見ても明らかです。」

 要するに東京への一極集中というのは,事実上破たんしているのです.「日本の常識は,世界の非常識」です.今の東京はまさに戦艦大和と言って良いと思います.当時最大の主砲を持ち,最良の測距儀を持ち,当時最先端のレーダーを持ち,自前の観測機やハリネズミのような対空機銃を持ちながら,結局大した戦果を挙がられなかった.その理由はあまりに集約化したため,全てを備えながら,全て使えなかったのです.主砲を撃てばその風圧で対空機銃は撃てない.レーダーを使えば,相手に逆探知されるので,うっかり使えない.重装備であるがゆえに,機動性に欠け,前線に出してレーダーを活用するためには,あまりに高価でした.一方アメリカ海軍は,レーダーを運動性に優れた巡洋艦や駆逐艦に搭載し,大きな輪形陣を形成しました.イージス艦はその進化の先にあります.

 東京の電力自給率はたったの6%,食料自給率は何と1%です.これで東京が日本経済に大きく貢献しているのであれば,このような自給率の低さも相殺されるでしょうが,今や製造業は国外や,地方に移転していますし,文化という点では,全く国際競争力がありません.国際競争力どころか,国内でも全く訴求力はありません.東京で新しい店が出来たとか,新しいトレンドとか,そういったニュースは地方に住む人間にはほとんど興味がありません.悲しいかな,東京発のニュースがもてはやされる時代はとうに過ぎたのですが,肝心のマスコミは気付かない,あるいは気付かないふりをしている.今のマスコミは,日本語という非関税障壁と,放送法などの有形無形のカルテルで保護されて,ようやく生き延びているのが現実です.

藻谷氏が書いているように,東芝のセルレグザというおかしなテレビで見られるように,商品コンセプトも東京への一極集中が無関係ではないと思います.東京というマーケットが巨大なので,東京で売れれば,国内でも海外でも売れる,そういう思い込みがおかしな開発コンセプトを生み,失敗を続けているように思います.例えば映画ゴールデンスランバーの舞台となった仙台を考えてみてください.週末は一時間足らずで,海にも山にも行けるでしょう.少し足を伸ばせば,山形や岩手にも行けます.懐具合に余裕があれば,小さなコテージで週末を過ごすことだって出来るでしょう.そのような生活は,東京では限られた階層にしか許されないのではないでしょうか.あるいは札幌でも,博多でも,広島でもよい.それぞれ独自の文化があり,歴史もあります.しっかりした「顔」や「町の匂い」があります.何もかも飲み込み,自らはノッペラボウになった東京に,果たして未来があるでしょうか.

「そもそも東京でしか手に入らないという種類の情報は、東京マーケットの内輪話にすぎません。東京に所在する営業拠点が、巨大とはいえローカルな一市場の特性情報として把握していれば十分です。経営の中枢までもがそんなものを判断の中心に置いていて果たして国際競争に勝てるのか、非常に危惧されます。バブルのころの東京の金融業界がまさにそうでしたし、デザイン能力やコンセプト創出能力の低い今の日本の家電業界にも同じ問題を感じます。」

 一頃池田氏が言っていた日本の「ガラパゴス化」と,東京への一極集中は決して無縁ではありません.それどころか,ガラパゴス化と,一極集中は表裏一体といっても良いでしょう.秋葉原のおかしなパフォーマンス,原宿の奇抜なファッション,そして霞が関の唯我独尊,赤坂や築地に陣取っておかしな報道を続けるマスコミ.この本によれば戦前「東洋のマンチェスター」と呼ばれた大阪は約50万人の人口減少だそうです.東京への一極集中を正さずに,日本の活性化は望めないと思います.それこそが官僚,都銀,大手マスコミが,まさに護送船団のように,小沢氏や,鳩山民主党政権に抵抗する理由なのでしょうが.




tnakadat at 07:39|PermalinkComments(0)TrackBack(2)書評 

February 08, 2010

ステレオタイプの報道が,日本を惑わす

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昨夜のNHK大河ドラマ「龍馬伝」は,見応えがありました.武市半平太は重臣吉田東洋に誹られ,岩崎弥太郎はいよいよ江戸への道が開ける.一方坂本龍馬は千葉道場での修業を許され,一年にわたる江戸修業を終え,土佐に戻る.時代は安政元年.後半出てきた吉田松陰がいわゆる安政の大獄で,斬首されるおよそ5年前です.ドラマは怖ろしいほどのスピードで,突進し,武市半平太や岩崎弥太郎,そして坂本龍馬,千葉道場の千葉定吉といった歴史上の人物に,俳優達が生気を吹き込みます.それこそまるで熱に浮かされたかのように.この熱気がいつまで続くのか,見ていて不安になるほどですが,忘れかけていた若い頃の熱気や,不安,挫折,そういったものを思い出させてくれます.

 ようやく小沢一郎強制捜査のニュースが下火になりましたが,結局不起訴というだけで,検察の意図や,告発した市民団体の正体は不明なままですし,検察のリークも,マスコミは取材源の秘匿を盾に沈黙したままです.一方的に小沢氏に責任説明を求めたり,逮捕起訴された石川議員に辞職勧告をするのは,バランスを欠くと思うのですが,第三の権力,マスコミの影響力は凄まじい.願わくは犠牲者が出ないことを祈ります.

 昨日紹介した郷原氏の「検察の正義」には西松建設事件で,老舗建設会社だった西松建設は,受注が激減し,会社経営が危機に瀕しているそうです.検察側は西松建設社長を,小沢一郎という政治家の政治生命を奪うために起訴したとすれば,もし西松建設が倒産し,従業員やその家族が路頭に迷ったら,小沢一郎という巨悪を退治するための犠牲;コラテラルダメージと切り捨てるのでしょうか.それでは青年将校どころか,地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教幹部と変わらないことになってしまいます.

 先週池田信夫氏のブログに「田中=小沢型政治の罪」という記事がありました.これは典型的な東京からのステレオタイプ化した視点だと思います.この中には幾つもの事実誤認があります.まず田中角栄氏が首相とし君臨したのはたった2年です.そして最後はご存じの通りロッキード事件で失脚した.彼が利益誘導型の政治モデルを作ったのかもしれませんが,それを長きに渡り徹底的に利用したのは,自民党です.竹下,金丸,小渕といった角栄直系だけではありません.

 一方小沢氏は自民党時代に幹事長になったものの,その後はずっと野党という浪人の身です.利益誘導を出来る立場からは遠いのです.さらに小沢一郎=ゼネコンという見立ては,マスコミの強烈な刷り込みで定着していますが,これほど事実から遠いものはありません.

 小沢一郎はゼネコンから距離を置かざるを得なかった.これはここ岩手では周知の事実です.いま小沢氏と民主党を支持しているのは,労組であり,農家であり,漁家であり,中小の経営者であるというのが,民主王国岩手の現実です.なぜ小沢一郎はゼネコンと手を切らなければならなかったか.それは地方における建設不況です.大口の受注は鹿島や大成建設といったスーパーゼネコンに奪われ,公共事業自体が膨らむ一方の財政赤字で減少しています.彼は確かにゼネコンと結びついていましたが,父親の代から支援してきた岩手県最大手の高弥建設が経営破たんし,労組や農家,漁家といった支持基盤を開拓せざるを得なくなったのです.このサイトを見れば分かるとおり,公共事業費の総額も,一人当たりの公共事業費は東京がトップです.青い中にぽっかりと浮かぶゼネコン王国東京.埼玉県や千葉県民はもっと怒って良い.

 もちろんその陰には,農業や漁業を支援するといいながら,道路やハコモノをつくるだけで業者や役人は潤うけれど,一般の農民や漁民が救済されないという,官と農協,漁協,自民党の「鉄の三角」,そして労せず組合票を取り込みながら,いつまでも現実的な政策提案をしない社民党や共産党への食い込みがあったのでしょう.しかし有権者は自分たちの主張が実現する候補者や,政党に投票するのが当然です.いつまでも政策に反映されない自民党や,万年野党の社民党や共産党から,政権交代が期待できる民主党に鞍替えするのは,自然な投票行動です.

一方地元岩手でも,小沢一郎嫌いは結構多い(笑).あの仏頂面や無愛想だけではなく,右も左もなく合理的と考えたら,直ぐ行動という性格はやはり敵を作りやすいのでしょう.考えれば,右手で自民党の票田を切り崩し,左手で社民党や共産党の票田を奪っているのですから,右からも左からも嫌われるわけです.

 社民党の福島代表が声高に「小沢氏には説明責任」と叫ぶのは,参議院選が終わると連立解消ということもあるでしょうが,民主党に票田を全て奪われかねないという危惧の念があるからだと思います.しかしこれまで社民党は時代の変化にどれだけ対応してきたというのでしょう.ただ「平和憲法を守れ」,「軍備反対」だけでは,政権を取れず,自社さ政権では,そのスローガンさえ捻じ曲げた.彼のように危機に追い込まれたことすらない.残念ながら御題目では現実は動きません.

 小沢一郎はこの日本にとって,毒薬か,良薬か.それこそが今の我々には重要です.もし良薬だとしても,口に苦いだけでなく,使い方を誤れば猛毒となる御仁であることは確実です.だから排除ではなく,どう使うべきかをそろそろ考える時期なのだと思います.吉田松陰を斬首しても,坂本龍馬が暗殺されても時代は大きく動いたように,小沢一郎を政治的に抹殺しても,日本の変化は間違いなく進むでしょう.「昔は良かった」ではこの国はまちがいなく潰れます.

 小沢氏の選挙は,田中角栄氏のいわゆるドブ板選挙を踏襲しています.しかし現代は高度経済成長期ではなく,彼自身も日本列島改造論をぶっているわけではありません.彼が攻撃の標的とするのは,官僚支配であり,このようなステレオタイプ化した虚像を流すマスコミ,そして米軍統治,冷戦体制からいまだに抜けきれない55年体制の残滓なのかもしれません.

tnakadat at 12:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件 

February 07, 2010

郷原信郎:検察の正義

検察の正義 (ちくま新書)検察の正義 (ちくま新書)
著者:郷原 信郎
販売元:筑摩書房
発売日:2009-09
おすすめ度:3.5
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 著者は最近テレビや週刊誌にも度々登場しているので,ご存知の方も多いでしょう.東京大学理学部を卒業して,三井鉱山に就職するも,旧財閥系の古臭い会社の体質が合わず,途中退社.司法試験を受け,見事合格し司法修習生時代に検事になる事を勧められ,検察官になったという変わり種です.

 「政治献金として受け取ったものが,職務に関して賄賂になるとは夢想だにしなかった.私は,検察庁が私を逮捕,拘禁するのは,政界から葬り去るのが目的だと感じた.」 こう書いたのは小沢幹事長でも,鈴木宗夫氏でもなく,1948年昭電疑獄で逮捕された元民主党首相芦田均です.芦田氏は拘留中に河井検事から「穏便な方法」として議員辞職を促された,と日記に書いているそうです.

「いつの日であったか,河井検事は現在の政界を浄化する.それが正義感からも,国に対する忠義からも我々の義務と思ふといふ話をした.私は,その志は良いとしても,ソレに独善が加はるととんだ事になる.青年将校というところですね,と半分笑ひ乍ら私が批判したら,彼はマジメになって,青年将校ではありませんよ,と否認した.」(渡邊文幸著 検事総長より)

 この本にはライブドア事件も,村上ファンド事件も書いてありますが,東京地検特捜部が失点続きであることを,閉鎖的で,古い体質から抜け出せていないことにあると明確に指摘しています.彼が特捜部にいた時に上司が経済学にも数字にも,表計算ソフトにも全く無知であったことも示されています.このような閉鎖性は新型インフルエンザ対策で暴走した厚生労働省の姿と重なります.かたやカメラマンの居並ぶ中強制捜査を行い,かたや防護服とマスクという異様な姿で国民の不安を煽った機内検疫.疫学的にも,人権の配慮からも,全く有害無益だったあのパフォーマンスです.

 西松建設事件でも献金の20%が小沢事務所に寄付されたのだそうです.ということは残り80%のかなりが当時の与党自民党に流れたと考えるのが普通です.しかも西松建設の関連政治団体「新政治問題研究会」という名称には,重大な疑惑があります.この団体は東京都千代田区にあるのですが,全く同じ名前の故橋本龍太郎氏が代表を務める政治団体も,同じ東京都千代田区に存在していた,というのです.この団体は多くの自民党議員に寄付を行っていたのですが,政治資金規制法では,収支報告書には金額と,団体の名称,所在地しか記載する義務はありません.すなわち西松建設は自民党議員の寄付を隠すために,わざわざ同じ名前と,所在地を選んだと推測されるのです.当時自民党から飛び出した小沢氏にはこのようなメリットはないわけで,そもそも西松側が小沢氏を選んだ訳でないことがこの事でもわかります.

 今の日本は危機的状況にあると思います.組織の閉鎖性や硬直性に阻まれて,大事なものが見えなくなっていると感じざるを得ないのです.基本的人権,推定無罪は,報道の自由や,取材源の秘匿よりずっと重要だと思います.足利事件や,横浜事件,そして明石歩道橋事故で検察の過誤を指摘しながら,一方的に小沢氏や石川議員を責めるのは,全く理性的ではありません.まさに著者のいう「思考停止社会」であり,その旗振りを率先してマスコミがしているのだから呆れます.検察もマスコミも,リークを否定していますが,ライブドア事件の判決で検察のリークを東京地裁が事実認定したことを,マスコミは忘れているのでしょうか.

tnakadat at 19:03|PermalinkComments(0)TrackBack(1)書評 

御掘直嗣:ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本

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トヨタに逆風が吹いています.アメリカでのアクセルの不具合に加えて,ブランドイメージを変えたプリウスのブレーキ事故が相次いでいるからです.北米でのアクセルのトラブルはテレビもよく報道しますが,プリウスのブレーキについては,なかなか報道しません.むしろ国内のユーザーや,これから購入しようと思っている人はプリウスの不具合のほうが気になる筈で,困ったものです.

 今回問題となった三代目プリウスは昨年発売されたもので,初代のプリウスに比べ,自重で70kg増え,その代わりエンジンは1500CCから1700CCに増えています.普通に考えれば,自重が増え,排気量が増えたのですから燃費が悪化しそうなものですが,燃費は初代プリウスが1リッター当たり28Kmだったのに比べ,38Kmと大幅に改善されています.排気量を増やしてトルクを増やし,低い回転数で駆動する.その分モーターやバッテリーを小型化する.そのような設計変更が行われた,とこの本には書いてあります.

 しかしハイブリッドカーの燃費向上の秘密は,加速時のモーター・アシストと,減速時の回生ブレーキにあります.時速100kmのエネルギーは地上13階から落下するのと同じだそうですから,そのエネルギーを電気エネルギーに変換し,バッテリーに蓄えるのが回生ブレーキです.変換効率は40%なそうですから,大したものです.回生ブレーキはアクセルペダルから足を離した瞬間から働き,ブレーキペダルを踏むと機械式ブレーキも働く,そういう仕組みになっているようです.これは電車のブレーキとよく似ていて,電車の回生ブレーキと機械式ブレーキの使い方が難しいように,初代プリウスも制動がぎくしゃくすることがあったようです(マイナーチェンジで改善).

 燃費や,バッテリーの充電を考えると出来るだけ回生ブレーキを使うのが合理的です.しかしそれでは急な制動に不都合なこともあるでしょう.特に都市部のストップ・アンド・ゴーでは,どちらを取るかは悩ましいところでしょう.急制動が出来ないのも困るし,一方新型プリウスは,旧型や(こちらはもっと重要ですが)ホンダのインサイトに比べ圧倒的な低燃費を謳っているのですから,回生ブレーキがうまく使えないのは困ります.

 おそらくハイブリッドカーは,一般人が考えるほど夢の技術ではない.技術者にとっては夢の技術どころか,骨身を削って悪戦苦闘しているのでしょう.ハイブリッドとは「混血」です.レシプロエンジンを何とか永らえさせるための苦肉の技術なのでしょう.もし電気自動車になれば,部品点数はガソリンエンジン車の30%に減らせるのだそうです.これまでは日本やドイツといった技術先進国の独壇場であった自動車市場ですが,電気自動車となれば,インドや中国といった新興国が,低価格にものを言わせ,席巻することは確実です.トヨタの「ブレーキの故障ではない.感覚の問題」という,いかにも不適切な回答の裏には,ひたひたと迫る新興国やライバルメーカーがあった,そう考えたくなります.

tnakadat at 08:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)書評 

February 06, 2010

「自浄能力」ということ

 予想通り小沢幹事長は不起訴となりました.東京地検は一時間以上司法記者クラブで会見を行ったそうですが,カメラの持ち込みは禁止ということで,翌朝の新聞紙面でもほとんど扱っていません.そのかわりマスコミは,「民主党には自浄能力がないのか」,「自浄能力を示せ」の一点張りです.

 それでは「自浄能力」とは一体何でしょうか.元々は生態系の用語であることを記者は知っているのでしょうか.河川・水・湖の自浄作用というサイトに書いてある通り,一つは化学的作用,すなわち酸化,還元,凝集,吸着などの作用によって汚濁物質が無害なものに変化したり,沈殿しやすくなったり,水中に溶出しにくくなったりすること.第二には,生物的作用で,汚濁物質が生物により吸収され,分解されること.この生物学的浄化にはバクテリアが多くは関与しています.すなわち,自浄作用は水や汚濁物質それ自体ではなく,そのエコシステムに共存する他者によってなされる.つまりマクロ的には「自浄」だが,ミクロ的には溶存酸素であったり,バクテリアという「他浄」に他なりません.今回の民主党の小沢氏を例にとれば,最終的に(彼が不法な行為をしたとして),最終的に「浄化」するのは無数の有権者です.同じく逮捕された石川議員も最終的に地元の有権者が審判を下すべきでしょう.組織が身内を庇うのは当然で,組織全体が不利となれば,切り捨てる,それこそが自浄作用です.

 他人から「自浄」は強要されるべきでない.「自白を強要した」から冤罪が生まれたのです.私が中学時代に学生運動に嫌悪感を持ったのは,大学関係者に「自己批判」と称する吊るし上げを繰り返したからです.文化大革命の真似事ですが,あまりの浅はかさに腹が立ちました.大勢が取り囲み,罵声を浴びせられながらする「自己批判」など,自己批判ではありません.革命と言いながら,やっていることは戦前の軍隊と変わらない.それに気付かない,一つ上の世代,いわゆる団塊の世代への不信感と,軽蔑はこの時からなのかもしれません.

 しかし朝青龍の傷害事件にしても,今回の政治資金規正法の強制捜査にしても,マスコミには全く自戒も反省も見られません.検察が異例の記者会見を開いたように,体制側も澱みが溜ってきているのは明らかです.それなのに,なぜテレビや大新聞は,こんなに浅薄なのでしょう.「市民団体」である世論を正す会には行政書士と元新聞記者が含まれているそうです.大方フジサンケイグループの元記者なのでしょうが,「世論を正す」のならば,いつまでも匿名希望というのは,潔くないとは思わないのでしょうか.マスコミは政治家の浄化というが,短い任期で常に国民の審判に晒されている職業は,タレントや一部の経営トップ以外ないでしょう.カルテルともいえる記者クラブや,放送法に守られたテレビ局,そして首切りのない公務員が「政治家の自浄作用」を声高に叫ぶのは,いささかお門違いではないか,と私は思うのですが.

 自浄作用が働かなければ,組織が腐敗する.そのことは間違いないでしょう.しかし,このままでは無数の国民によって,浄化されるのは,選挙が行われる政治家ではなく,旧態依然の体制に胡坐をかく,マスコミや官僚機構の方ではないかと思います.


tnakadat at 10:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)記事,事件