February 19, 2005

妖怪達の蠢く地上波デジタル

森前首相や麻生総務大臣が相次いで堀江社長のニッポン放送の株取得をめぐって批判的な発言を行ないました.一企業の活動を政治家が批判するというのは極めて異例なことです.前回の記事で地上波デジタル事業で民放の経営が悪化する可能性が高い,ということを書きました.しかし政治家の視点からみればまた別の面が見えてきます.

それは新たな事業の認可に伴い,甘い汁が吸える機会が増すということです.殊に放送事業の許認可は総務省が握っていますから,麻生総務大臣の発言は当然といえば当然です.社団法人地上デジタル推進協会を見ると双方向通信や,データ通信の他に,携帯端末で視聴できるサービスも行なう予定です.この携帯端末での視聴はMPEG4を用いた高圧縮の動画となる予定ですが,まだ詳細は決まっていないようです.アナログからデジタルへの変更は要するに電波の再分配です.政治家がこんな美味い話を黙って見ている筈がありません.しかし地上波デジタルへの移行には大工事が必要です.今まで利用していた帯域にデジタル放送を流せば混信してしまいます.そこで今までの放送を他の周波数帯に移動して,その上でデジタル放送を流すのです.このため従来のアナログ放送の聴取者もチャンネルの変更が必要になります(アナ−アナ変換).そして大多数の受信者がデジタル受像機に切り替えたところで,アナログ放送を中止する予定で,それまではデジタル放送もアナログと同じものを流さなければなりません(サイマル放送).これではデジタル放送をわざわざ聴取しようとは思いません.このような状況から2011年のデジタル波への完全移行はとても無理と囁かれているのです.一方高画質テレビについてはどうか.これは世界的にそっぽを向かれています.アメリカの米業界誌Television & Broadcastの編集長であるマイケル・グロッティチェリ氏はなぜ日本がHDTVにこだわり続けるのか理解に苦しむとしながら「アメリカのデジタルTV放送は多チャンネル、双方向TVに進むのみ」と書いています.少し古い資料ですが,大勢は変わらないでしょう.こういった世界の流れ,すなわちハイビジョン,HDTVは不要という見解をNHKはもちろん,新聞や他の放送局も全く伝えようとしません.我が国の放送業界,電気業界ではハイビジョンを批判することはタブーなのでしょう.どうやらこの地上波デジタル事業はハイビジョンの復権が悲願のNHK(曲がりなりにも日本で普及すれば,外国への売り込みの目も見えてきます.多分無理でしょうが…),テレビ,ビデオの買い替え需要を狙う弱電器械メーカー,新たな利権を貪ろうとする政治家が放送局(民放)の不安をそっちのけにして強引に推し進めているようです.ところがデジタル放送とインターネットが融合してしまうと(もともと親和性があり,欧米ではこの方向に進みつつあるのに)自分たちの目論見が崩れてしまう.そこで堀江社長の株取得に待ったをかけようとしているのではないかと推測します.しかし例えライブドアーがニッポン放送の経営権を獲得しようとしまいと,世の中の流れは変えられない.ソフトバンクも楽天も近い将来放送事業に参画することを視野に入れてプロ野球球団を取得した筈です.でなければ事業単体では大赤字の球団経営の旨みなど全く無いと思います.今のマスコミはいろいろと書けない,言えないことが多過ぎるようですね.

tnakadat at 08:59│Comments(6)TrackBack(3)記事,事件 

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1. 法律を守っていればいいだけの時代は終わった  [ 新・むらい。ブログ ]   February 19, 2005 15:10
 ライブドアの件に関し、政治家などが倫理面から批判を加えていることに対し、ここやここなどで、批判が加えられています。  しかし、僕は「法律さえ守っていれば何をやってもいい」という発想は「金さえ出せば何やってもいい」という発想と同じくらいいやらしい発想だ
2. 法律さえ守ればいい時代は終わった  [ 村井裕一郎 ]   February 19, 2005 15:10
 ライブドアの件に関し、政治家などが倫理面から批判を加えていることに対し、ここやここなどで、批判が加えられています。  しかし、僕は「法律さえ守っていれば何をやってもいい」という発想は「金さえ出せば何やってもいい」という発想と同じくらいいやらしい発想だと思
3. 想いで話をひとつ 〓ライブドア〓  [ 拾い猫日記 ]   February 19, 2005 22:12
15年ほど前の話。当時、私は新卒の新入社員。 就職先は情報通信系の企業(当時は”

この記事へのコメント

1. Posted by ららさん   February 19, 2005 14:30
公共性とか言うけれど
新聞社が放送局を持つという構図(逆もあり)は
あまりにもマスメディアの硬直化を表しています。
ブログの普及も新聞社は、あまり取り上げてない。
政治家の息子、娘の就職先にマスメディアが多いのは
あまり知られてない。
また、大企業の息子、娘の就職先に電通があるのも
あまり知られてない。

今までの構造のままでは、日本は落ちて行くのが
わかっているのにね。
2. Posted by tantanmen   February 19, 2005 19:14
NHKに政治家の子供が多いというのは事実のようですね.高知県知事の橋本大二郎氏もNHK出身でした.ただ記事に書いたとおりマスコミにタブーが多過ぎるのではないか,と思います.記者の自己規制,会社の自己規制が働き過ぎて,結果として価値の無い情報が溢れ過ぎている気がします.多分書いている記者自身もつまらないと思っているのではないでしょうか.
3. Posted by kits   February 19, 2005 22:16
TBさせていただきました。

連日の引用、すみません。。。(^^;)
4. Posted by tantanmen   February 20, 2005 09:30
ハイビジョンに関するNHKの罪は重い,と言わざるを得ません.アナログハイビジョンの電気信号帯域は20MHzで,地上波では全く扱えない代物でした.それをMUSE変換という圧縮をかけて,ようやく衛星放送で試験放送を開始しました.しかし当初NHKは衛星放送を全国の難視聴地域の解消のためと言っていたのです(確か2000世帯程度です.ケーブルテレビでも良かった筈ですが).アメリカはこのハイビジョン技術を受け入れないこととし,デジタルハイビジョンが好ましいという判断をしました.当初は政治的な決定だと国内のマスコミは揶揄しましたが,今となってはアメリカの放送業界の方が正しかったと思えます.しかもデジタルハイビジョンですら,地上波デジタルでは不要だ,と世界の放送局は云っているのです.むしろハイビジョンや高画質テレビの導入に積極的なのは映画業界です.膨大なフィルムの現像,編集をデジタルに置き換えるメリットは計り知れません.技術の利用法が間違っているのです.
5. Posted by kits   February 20, 2005 10:37
書いてる途中で送信してしまいました(;_;)
すみませんが上記コメントを削除してくださいませ。。

おっしゃるとおり、フィルムのデジタル化にデジタルハイビジョンが有効だという事は、映像に関して素人の私でも簡単に想像できます。

映像は何も放送業界の専売特許じゃないんだから、地上波にこだわらずに他の業界でもどんどん利用を進めるべきですね。

ハイビジョンの技術は他業界でも利用できるくらいオープンなのか疑問ですが。。。
6. Posted by tantanmen   February 20, 2005 16:14
以前HD24/Pというデジタルハイビジョンの規格について取上げましたので参考にしてください.また最新デジタル映像情報:http://members.aol.com/oldsea/digital3.htmlというサイトもあります.仮面ライダー・アギトやスパイ・ゾルゲなどはデジタルハイビジョンで作られた数少ない作品の一つですが,これから増えてきそうです.ひょっとすると今公開中の「ローレライ」もそうかもしれません.でこのハードなのですがソニーとパナソニックが数多く手掛けているようです.まだまだ優れた銀塩フィルムに比べると画質は問題があるそうですが,いずれフィルムレスの方向へ向かうと予想されます.そうなるとテレビと映画の違いというものが無くなるでしょうね.ぜひ日本の映画業界も再び活気を取り戻してほしいものです.

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