January 2007

January 31, 2007

二ノ宮知子:のだめカンタービレ

のだめカンタービレ 16巻 限定版
少女漫画という言葉があります.今は少年マガジンを大人も読むし,少年漫画を女の子が読んでも,少女漫画を男の子が読んでも,不思議には思われません.それでもずっと前から,少年漫画や少女漫画というジャンルがこの国では確固として存在しています.この辺りの考察をしてみるとなかなか面白そうですが,一晩や二晩では終わりそうにありません.

 この「のだめカンタービレ」昨年大変に話題になりましたが,数日前にようやくこの16巻まで読み終わりました.この漫画は多分少年誌や青年誌では,企画の段階で多分没となってしまったのではないでしょうか.この漫画の登場人物は音楽,それもクラシックの虜になった人間だらけだからです.暴力もなければ,濡れ場もない,音楽もクラシックとあっては編集者も食指を動かさなかったのではないか,と思います.この辺りは繊細な感情表現を得意とする少女漫画の強みでしょう.もちろん少年誌や青年誌にも薀蓄にあふれた作品は数多くあります.細野不二彦氏の「ギャラリー・フェイク」や手塚治虫氏の「ルードウィヒ・B」などもそうかもしれません.東大受験を目指す「ドラゴン桜」なども加えて良いかもしれません.

 しかしこの作品は本当に朝から晩まで音楽に明け暮れて,何とか高みを目指そうとする若者たちをこれでもか,というくらい描いています.彼らは昨今日本が夢中になってきた金銭的な欲望とは対極にいます.何しろクラシックは金になりません.オーケストラはどこも慢性的な財政難,音楽大学の卒業生の多くは,好きな道とは別の道を歩まざるを得ないのが厳しい現実です.卒業して行く仲間たちが,家業を継いだり,音楽会社に就職してゆく風景は感慨深いものがあります.それでも彼らは音楽を捨てない,少なくとも続けて行こうと誓う.全編に描かれるのは音楽への大きな愛なのです.それは家業の中華料理店の手伝いをしながら,ヴァイオリンを続けようとする峰も変わりません.主人公の千秋とのだめ,こと野田恵の恋愛感情も,音楽に対する愛に比べれば,とても淡いものです.とはいえ殻に閉じ篭りがちな孤高の天才千秋を引っ張るのだめ,逆に野生児ともいえるのだめに、作曲家の声を聞け,と諭す千秋の関係はとても麗しい.日本の漫画のレベルの高さを示す作品でしょう.

 楽しいという状態にはいろいろあると思います.相手が何も努力しなくとも,楽しいというものもあれば,相手が準備や知識を得て初めて楽しいと感じるもの,さまざまです.しかしこういうエンターテイメントに,読み手や聞き手に努力を強いるものがあっていいと思います.小説のダヴィンチ・コードなどはその最たるものでしょう.ダヴィンチやキリスト教の知識があればあるほど,小説の楽しみが増すという仕組みでした.受け手の感性が下がれば下がるほど,作品には刺激的な要素が要求されます.ジェットコースターのような,息をもつかせぬ展開,爆破シーン,血しぶき,過激なアクション,二転三転するストーリー.受け手が怠惰になればなるほど,過剰な演出が求められるのです.しかし最近のハリウッド映画や,小説を見れば分かるとおり,このようなギミックはもう限界に近づいています.

 ポップコーンや,ポテトチップスをほおばりながら,誰もが何の苦労もなしに楽しめるという映画はこれからもつくられるのでしょうが,そうでない映画や小説もまたあって良いのではないでしょうか.ただしこのような作品を映像化しても,成功するとは限らないというのは,映画「ダヴィンチ・コード」を観ても分かります.映像ではストーリーを追う余り,知識や薀蓄はどこかに飛んでいってしまうからです.この「のだめカンタービレ」も映像化はとても難しそうです.のだめの弾くピアノや,千秋の指揮を音楽や,映像にすることは聴く者,見る者の自由なイマジネーションを奪ってしまう恐れがあるからです.尤もフジテレビの実写版は,竹中直人がシュトレーゼマンを演じた段階で,私は観る気が失せましたが(笑).

tnakadat at 22:22|PermalinkComments(0)TrackBack(1) 書評 

朝の風景

朝の風景新幹線から撮影しました.大分太陽が高くなってきました.線路沿いの田畑も雪がほとんどありません.農家は虫が心配といってるそうですが,雪解け水も今年は少なそうです.降水量の少なさも気がかりです.

tnakadat at 13:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 自然・環境 

雪とフリージア

雪とフリージア今週の日曜日に撮影したもの.フリージアは園芸店に置かれた鉢植えで,多分この時だけ外に出していたのでしょう.後ろに見えるテラスにはうっすら雪が積もっています.この雪も日陰を残して,ほとんど溶けてしまいました.暖冬です.

tnakadat at 13:09|PermalinkComments(3)TrackBack(0) 花たち 

January 30, 2007

全てはフジテレビから始まった

かつてフジテレビといえば,新年2日の隠し芸大会と,サザエさんや鉄腕アトムなど,アニメしかない,というマイナーなテレビ局でした.それが明石家さんまとビートたけしの「オレたちひょうきん族」や「笑っていいとも!」などのバラエティーで日本テレビ,TBSの二強に追いつき,「東京ラブストーリー」や「101回目のプロポーズ」などのバブル景気に煽られて,甘い夢を見たがった若者の心を掴み,見事に民放の雄に躍り出ました.

 女子アナは報道だろうが,ニュースキャスターだろうが,バラエティーだろうがお構いなし.ルックス優先で,原稿をちゃんと読めるかどうかより話題性重視です.有賀さつきが「旧中仙道」を「一日中山道」と読んでしまったことは有名です.河野景子さんは,若乃花と結婚,中井美穂は古田監督と結婚,木佐彩子はピッチャーの石井と結婚と今も続く女子アナブームの火付け役ともなりました.このような露骨な戦略を他の民放が黙って見ているはずもありません.こぞって大学のミスキャンパスなどを採用,高価なブランドを身に付け,教養や能力はそっちのけのアイドルと化してしまいました.柳沢厚生労働大臣が「女性は産む器械」と女性蔑視の発言をしましたが,フジテレビが始めた,ただ綺麗でスタイルが良いだけの女子アナ競争も,実は女性蔑視なのだと思います.外見だけが女性の属性ではないからです.

お笑いタレントを大胆に起用したのも,フジテレビでした.しかし「オレたちひょうきん族」のザンゲのように,いじめの色彩も付きまとうものでした.笑いのためには何でもやるという姿勢は,「ウッチャンナッチャンのやるならやらねば!」でとうとう収録時に死亡事故を起こし,この番組は打ち切りになってしまいます.朝の「目覚ましテレビ」に出演中の菊間千乃アナは,避難用はしごから落下,腰椎圧迫骨折で入院という事故まで起こします.

 スポーツイベントに人気アイドルを起用したのもフジテレビです.男子バレーの国際マッチにジャニーズの若手を呼び,アイドルのコンサートなのか,スポーツの大会なのか分からないほどの騒ぎとなり,男子バレーは少なくとも大きく視聴率を稼ぎました.しかし無理なスケジュールのためか,古傷を抱えた選手達は,強豪相手に勝ち進むことは出来ません.イベントとしては盛り上がるものの,肝心の成績はぱっとせず.これが日本における冠大会の問題点です.九死に一生を得た菊間アナが,仙台で深夜ジャニーズの未成年のアイドルと飲酒,謹慎をくらった事件などは皮肉そのものです.このスポーツの大会にタレントやアイドルが起用されることについては,トルシエ監督ら,サッカー日本代表の歴代の監督が違和感を持ち,止めるようテレビ局や,サッカー協会に申し入れていたことは,残念ながらマスコミは大きく報道することはありません.

 そして「発掘!あるある大事典」の数々の偽造や捏造は,系列局である関西テレビの責任ではありません.日本テレワークは元々フジテレビの子会社で,フジテレビの社員が中心となって興した会社であるといわれています.現在日本テレワークのホームページは閲覧できませんが,その関連会社であるJTWのホームページを見ればフジテレビとの関係は明白です.テレビ朝日や日本テレビの番組制作を行なっているとはいうものの,「こたえてちょーだい!」,「ネプリーグ」,「トリビアの泉」,「幸せって何だっけ」,「クイズ・ミリオネア」など多くの人気番組を作っています.そういえば「クイズ・ミリオネア」は打ち切りが決まったそうですが,みのもんたさんが降りてしまったのでしょうか.そもそもこのJTW(日本テレワークの建物の内部にある)や日本テレワークは,品川区東品川にあり,お台場のフジとは目と鼻の距離にあります.関西テレビはダミーとしか思えません.

確かにフジテレビの流行の先を見抜く目というものは,抜きん出たものがあります.先に挙げたバラエティーに見る,さんまやタケシ,タモリの起用は見事に当たりました.漫画「のだめカンタービレ」を目ざとく見つける腕もなかなかです.しかしやはりこの売れるためなら何をやっても良い,という社風は問題です.「あるある」の数々の偽造,捏造にはフジテレビの体質が沁み込んでいるとしか,私には考えられないのです.

tnakadat at 11:22|PermalinkComments(2)TrackBack(2) 記事,事件 

January 29, 2007

半径10キロ以内,細菌数10万個以下

岡山県高梁市で起きた鶏の大量死が鳥インフルエンザかどうか,今日結論が出るそうです.鳥インフルエンザであると分かれば,半径10km以内にある養鶏場では鶏や,卵の移動が全面的に禁止されます.この処置は鳥インフルエンザに罹った鶏の死骸や,汚染された飼料を食べた野鳥や野生動物が,他の養鶏場にウイルスを伝播する可能性から作られたようで,半径10kmというのはカラスなどの行動半径から割り出されたもののようです.しかし宮崎の日向市と清武町は60km離れていますし,岡山県高梁市は何と320km離れています.このウイルスは韓国,モンゴルで確認された高病原性鳥インフルエンザと同一のものとされていますから,このウイルスは渡り鳥が運んできたものである,と考えて良いと思います.つまりカラスのような縄張りを持つ鳥ではなく,渡り鳥が相手なのです.しかし相変わらず県はマニュアルに沿った防疫対策で充分だ,と考えているようなのです.また国も野鳥やカラスの死骸が見つからないから,鳥インフルエンザはその他の地域では蔓延していない,と説明しています.ではどのような経路で宮崎や岡山で鶏が感染したのでしょうか?

同じような数字の一人歩きが不二家の報道でも見られます.食品衛生法で定めた食品の一般細菌の数より10倍多い自主基準を食品廃棄の目安にしていた,というものです.食品衛生法では1g当たり10万個以下と定めてあるようです.しかしこの10万個以下というのも,これまた一つの目安です.キャンピロバクターや病原性大腸菌は少数の細菌でも食中毒を起こすそうですし,ノロウイルスなど100個や500個で感染が成立するといわれています.細菌は一個の細胞から,二分裂で増えます.分裂速度は温度や細菌の種類によって異なりますが,大腸菌でおよそ20分で一回といった速度のようです.1個の細菌が20分経つと2個,40分経つと4個,60分で8個,80分で16個…と指数関数的に増殖します.N時間後の細菌数は,2の3×N乗です.2の17乗は131,072ですから,最初一個の大腸菌が含まれていれば,5.6時間後に10万個に増えてしまいます.これが100万個になるのは,2の20乗が1,048,576ですので,6.6時間後でおよそ1時間の違いしかありません.

 確かに不二家の衛生管理が問題だったのかもしれませんが,問題はもっと別なところにあるのではないでしょうか?キャンデーやチョコレートは工場で作って全国に流通させても大きな問題はありません.賞味期限切れでも,風味は悪くなるかもしれませんが,食中毒は起きないでしょう.しかしシュークリームや,ショートケーキは別です.数日前に作ったシュークリームやショートケーキを何の疑問を持たずに流通させ,販売する神経,これは食中毒以前の問題です.シュークリームやショートケーキは作り立てがもっとも美味しい筈です.さくさくとした食感や,クリームのなめらかさは時間と共に失われてゆきます.

 多分このような食品の中にはいろいろな添加物が入れてあるのだ,と思います.クリームの中には分離を防ぐための乳化剤が,シューの皮には水分が入ってきても膨潤しない,でんぷんなどが.これは食中毒があろうが,なかろうが変わりありません.コンビニで売られているおにぎりや,サラダの添加物を試しに見てください.pH調整剤,酸化防止剤,グリシン,リン酸塩など,ありとあらゆる添加物が詰まっています.食中毒が起きれば企業にとっては大きなダメージですから,このような添加物を入れざるを得ないのです.ではこのような添加物は本来人間にとって無害なのか?有害事象が無いからといって,無害とは限りません.不特定多数に大量の食品を販売する危険性は,何も食中毒だけでは無いのです.

 本来シュークリームや,豆腐,パン,牛乳などは地域の小さなお店が,顧客の規模に合わせて小規模に生産すべき食品です.作りたてを売り,一日で売り切ってしまう.食中毒が起きても,その被害は小規模なものです.しかし豆腐屋さんは高度経済成長の時代に消滅し,牛乳も消費の伸び悩みで,生産規模が縮小しています.さらに郊外型のショッピングセンターのために,商店街はさびれて行き,地元のケーキ屋さんや,パン屋さんも経営は厳しいでしょう.荒っぽい資本主義の中で,良心的な経営など,株主や市場はどれくらい評価してくれるのでしょうか.細菌の数が基準を満たせば良い,クレームさえなければ良い,売れれば良いという現代のマスプロ生産そのもの,利益さえ上がれば良いという利益至上主義が大きな問題ではないか,と思うのです.それはチョコレートの中に虫が入っていることよりずっと大きな問題ではないでしょうか?

tnakadat at 09:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 記事,事件 

January 28, 2007

後手に回った鳥インフルエンザ対策

岡山県高梁市でも鳥インフルエンザが確認されたようです.ここにきてようやく政府は,西日本全体で鳥インフルエンザが発生する可能性があることを認めたようです.しかしお隣韓国ではすでに鳥インフルエンザによる鶏の感染が昨年続いており,日本にやってくる渡り鳥の飛来地でもあるモンゴルでは,カモの糞から鳥インフルエンザが検出されています.この韓国やモンゴルの状況については,笹山登生氏のブログに詳細に書かれていて,大変参考になりました.宮崎県日向市や清武町も川や海岸に近く,また渡り鳥の飛来地として有名な一つ葉入り江があります.もはやカモなどの渡り鳥を介して,インフルエンザを海や国境を越えて伝播していることは確実です.死んだ野鳥を調べているようですが,カモや白鳥などの渡り鳥は,渡りに数週間かけるようですから,鳥インフルエンザに対し何らかの免疫を持ち,不顕性感染のまま棲息している可能性も考えなければなりません.鶏肉や鶏卵の安全性を謳うのは結構ですが,まず行なうべきは野鳥の生息地における糞便の検査でしょう.それも宮崎県や岡山に限らず,です.我が国には高名なウイルス学者や,新進気鋭のインフルエンザの研究者が,沢山いる筈なのですが,どうも行政は判断の甘さや,戦力の逐次投入といった,まるで第二次大戦の日本軍のようなミスが目立ちます.

tnakadat at 10:04|PermalinkComments(2)TrackBack(1) 記事,事件 

January 27, 2007

ようやく雪

ようやく雪今朝は久しぶりに雪の朝.昨年はありふれたというより,うんざりするくらい見かけた風景ですが,今年は本当に久しぶりです.昼には溶けてしまいましたが,明日も雪の予報で,交通機関への影響が心配されています.

tnakadat at 21:06|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 自然・環境 

January 26, 2007

何だか腑に落ちない

分譲マンションやホテルを手がける「アパグループ」のホテル二棟で,耐震強度不足が見つかりました.昨夜アパグループの社長が涙ながらの謝罪記者会見を行なったようです.富山市にある田村水落設計事務所の一級建築士が,構造強度の偽装を行なった,と報道されていますが,何だか腑に落ちないのです.昨年暮れに姉歯建築士の懲役5年の実刑判決が出ました.姉歯被告は上告したようですが,今回の事件を含め,建築士の単独犯行という見方は,どう考えても無理があるように思えるのです.建築士が倫理観を持っているかどうかは別にして,彼らが構造強度を偽装する大きな動機に欠けているからです.

 一方施工業者や販売業者,ホテル経営者には強い動機があります.コンクリートや鉄筋,人件費が安ければ,安いほど会社にとっては好ましい筈です.彼らは「経済設計は要求したが,耐震強度の偽装は指示していない.」,「大幅に鉄筋や,コンクリートを節約できる設計をする優れた建築士であるという評判があったので依頼した.」と答えています.私は国土交通省の耐震強度を割り出すソフトのことは全く判りませんが,多分既存の工法で設計した場合の耐震強度しか,ソフトからは出てこないのではないか,と思います.これまでに使われなかった画期的な工法であれば,そもそもコンピュータは耐震強度を算出できるのでしょうか?そしてもう一点,これは姉歯事件が起きた当初からの疑問ですが,実際に姉歯建築士の設計したビルは,大幅に経費が節約でき,鉄筋も細かったそうです.幾ら構造建築士という専門家が設計したものとはいえ,誰も気づかなかったのでしょうか?

 確かにヒューザーや,アパグループは偽装を指示しなかったのかも知れません.しかし偽装しているかもしれない建築士に依頼したり,偽装せずに真っ正直に,太い鉄筋を使って,工費がかかる設計を行なう建築士が仕事にあぶれるようでは,それは偽装をそそのかすようなものです.姉歯建築士が浮気をしていたという報道もありました.ベンツを購入するほど,一時は羽振りが良かったという話もあります.しかしそれは取りも直さず,彼に依頼する施工主が多かった,ということです.彼の業界内での評判は何から生まれたのでしょうか?それは彼の設計の「経済性」しか考えられないのです.

 フジテレビ系の「発掘!あるある大事典」でも,そもそも納豆でダイエットできるのか?という疑念を誰も持たないところに事件の発端があります.下請け,孫受けという複雑な製作現場や,タイトなスケジュールが更にチェックをルーズなものにしてしまったのでしょうが.今回の事件でも建築士だけが実刑判決というのでは,実行犯だけ有罪,教唆したものはお咎めなしという,悪しき前例が定着してしまうような気がするのです.

tnakadat at 14:37|PermalinkComments(4)TrackBack(0) 記事,事件 

January 25, 2007

ダイエットに王道なし

池田信夫氏が「納豆ダイエット捏造はなぜ起きたのか」という記事を書かれています.いつもこのブログは興味深く拝見させてもらっていますが,今回の記事には賛同しかねる,というのが結論です.氏はテレビ局にはこのような捏造を防ぐ術はない,と結論し,その事情を次のように説明します.

「私は番組を発注する側にも受注する側にもいたことがあるが,発注元のテレビ局がこういう捏造をチェックすることは不可能である.試写でチェックするのは,客観的に見て辻褄のあわない部分やわかりにくい部分だけだ.下請けプロダクションは制作の過程から関与しているので、事実関係の誤りなどはチェックできるが,それでも捏造されたらだめだ.ディレクターが嘘をつくということは想定していないのである.」

一見もっともなのですが,この番組の結論は「納豆はダイエット効果がある」,あるいはもっと直接的に「大量の納豆摂取で痩せることが出来る」です.実際に8人の被験者が2週間で2〜4kg痩せたという実例を紹介していますから,この番組の要旨は「納豆で痩せられる」ということなのです.イソフラボンや,DHEAはそのメカニズムを補足する,いわば補強材料です.DHEAやイソフラボンの含有量よりまず,納豆で痩せるのか,という証明が無ければなりません.

 これは何もアメリカの高名な研究者にインタビューをする必要など全くありません.そもそもアメリカ人は納豆を食べないし,大豆もポーク・アンド・ビーンズくらいしか食べないでしょう.学生や主婦などのボランティアを募り,納豆摂取群と,非摂取群に分け,体重の変化を見れば良い.あるいは体脂肪や,血液中の中性脂肪や,コレステロールを測れば良い.極めて単純なことです.しかも納豆は江戸時代には,すでに普及していたようです.もし納豆に内臓脂肪を減少させる効果や,肥満を抑える効果があったとすれば,もっと前からその効果が知られていて良いのではないか.そう考えるのが常識的です.

 もう一つ,今では日本全国で食べられるようになりましたが,少し前までは関東,東海,東北,北海道など東日本で多く食べられる,地域性のある食べ物でした.京都や大阪で育った人間で,どうしても納豆の匂いは耐えられない,という人も多かった筈です.納豆の消費量は地域により大きな差があり,摂取量の多い県と,少ない県ではおよそ6倍の開きがある,といわれています.もし納豆に素晴らしい効能があれば,これらの地域で何らかの差が現れるに違いがありません.実験は国内で出来るし(というより国内でしか出来ない),何もペンシルバニア州立大学に行かなくとも,もし納豆にダイエット効果や生活習慣病予防効果があるならば,それは過去の疾病統計や,死亡統計に表れている筈です.何が何でもアメリカの後追いをしなければならない,アメリカの権威を借りなければならない,という風潮は滑稽を通り越して,哀れですらあります.

 要するにこの「納豆で痩せられる」というのが真実ならば,これは多分世界的な医学雑誌に投稿できるでしょう.しかしそんな命題をお粗末な実験で検証しようとした.科学的に証明できないから,証拠を捏造するしかない.しかしそもそも「納豆でダイエット」という番組のテーマが根拠薄弱で,暴論であったのです.まず企画の段階で,医学者か,栄養学の専門家に打診すべきだったと思います.良識ある学者は「お止めなさい」,と忠告したと思います.納豆自体にもカロリーがあり,しかも肉とほぼ匹敵する値なのですから.納豆以外は食べないという条件なら,痩せられるかもしれませんが,それでは鶏肉でも,豚肉でも同じです.コンニャクや寒天のようにカロリーがほぼゼロという食品はともかく,食べながら健康的に痩せるというのは,結局摂取カロリーと消費カロリーの差が大きければ,大きいほど効果があるわけで,運動するか,摂取カロリーを抑えるか,二つに一つです.

 確実に痩せられる,ダイエット効果が分かっている幾つかの薬物があります.一つは甲状腺末,もう一つは覚醒剤,そして利尿剤です.更に今ではインターネットで個人輸入できる小腸で脂肪吸収を抑制する薬があります.最初に挙げた三種類の薬は明らかに健康への悪影響があります.脂肪吸収を抑える薬も下痢や腹痛などの副作用,そして脂溶性ビタミンを摂取するなど,かなり大変なようです.もちろんこの薬は脂肪の吸収を抑えるだけですから,炭水化物を大量に摂取したり,運動をしなければ,ダイエット効果が現れないかもしれません.結論としてはやはりダイエットに王道はない,ということでしょう.

 私は事前のチェック云々より,テレビ制作者のあまりの科学的素養の無さや,そして捏造へのハードルの低さが,この不祥事の最大の原因ではないか,と思います.マスコミは健康ブームを煽ってはいるものの,実は制作者の多くは健康に興味が無く,科学雑誌もろくに読んでいないのではないか,とも推測されるのです.自分がダイエットをしてみれば,リンゴや黒酢,納豆など単品でダイエットできる,という結論には疑問を感じる筈です.ダイエットは地道な食生活や運動の繰り返しで達成されるもので,魔法の食品などある筈はないことを身を持って知る筈ですから.このようなレベルの低い人間達がテレビ番組を作っていることの方が,不二家の衛生管理の杜撰さより,ずっと有害なのではないか,と思います.


tnakadat at 10:01|PermalinkComments(4)TrackBack(2) 記事,事件 

January 24, 2007

メカブ

メカブ−生メカブ突然品薄になったかと思うと,実はダイエット効果無しと,ローラーコースターのように,ヒーローからただの食品と成り果てた納豆.しかしネバネバ,ヌルヌルは納豆だけではありません.春の味メカブ.最近は年中ありますが,やはり春のメカブは美味しい.細かく刻んで,加熱したものがカップに入って売られていますが,やはり生のものを刻んで,加熱したものは全くの別物です.磯の香り,爽やかな食感,そして何より若草のような鮮やかな緑.ご飯にかけて良し,酒の肴に良し.言うことなしです.

tnakadat at 23:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 季節の話題