February 2008
February 24, 2008
February 22, 2008
世界の傑作機:ロッキードF-117ナイトホーク
ロッキードF-117ナイトホーク (世界の傑作機SPECIAL EDITION (Vol.2))
前にも紹介しましたが,ステルス機の第一世代であり,湾岸戦争に初めて投入されたステルス爆撃機F-117について書かれた本です.F-117だけでなく,レーダーとステルス技術について,分かり易く書かれているので,参考になると思います.この飛行機,姿形も変わっていますが,性能も変わっています.まず速度はマッハ0.9と,亜音速,宙返りも背面飛行も駄目,急降下も駄目,アフターバーナーがないから,ダッシュもできない,とまるで旅客機並の鈍重さです.さらにレーダーがない.あるのは機首上面のFLIRとDLIRという,赤外線暗視装置のみです.攻撃するのは夜に限られていますから,常にこの赤外線暗視装置で飛行すると考えて良い.
「ステルスの発達とF-117の開発」というセクションに,電波で物が見えない(あるいは見える)ということはどういうことか,という説明があります.
1)電波が当たっていない物体は,レーダーに見えない.
2)電波を反射しない(吸収する)物体は,レーダーには見えない.
3)電波を透過する物体は,レーダーには見えない.
4)電波を特定方向へ反射する物体は,(特定方向以外では)レーダーには見えない.
このうち1)以外の現象を利用したのがステルス技術です.2)の電波を吸収する物質はあるものの,全ての波長の電波を吸収する素材はない.3)の電波を透過する物質としては強化プラスチックがありますが,船にせよ,飛行機にせよ,強化プラスチックだけで出来ているわけではありません.従って電波をレーダーの方向へ戻っていかないような三次元構造が,ステルス技術のコアなわけです.このF-117は自分では電波を出しません.電波を出せば「闇夜に提灯」で,自らの存在を明らかにしてしまいます.ですからGPSや,AWACS(早期警戒機)からの情報をリアルタイムにリンクさせているのでしょう.またF-117は訓練の時には,RCS enhanser(レーダーリフレクター)と,衝突警戒灯をつけます.これがないと他の航空機や管制塔からは全く見えないわけですから,当然のことです.
漁船と衝突した護衛艦「あたご」には,水上レーダーの記録が無かったそうです.これはとても奇妙な話で,レーダーで前方に船舶を感知すると,自動的にコンピュータが位置や速度から,警告を発するシステムを採用しているという情報と矛盾します.このようなコンピュータには当然ながらメモリーや,ハードディスクが搭載されている筈で,それが瞬時に消える筈はありません.沈没した清徳丸の僚船の他,「あたご」の前方には6隻の漁船がいました.レーダーで見逃すはずも,注意を喚起しないはずもありません.この謎の答えは,さきほどの「電波が当たっていない物体は,レーダーには見えない」以外ありません.
日本の沿岸には多くのレーダーサイトがあります.しかし事故の起きた房総半島だけでなく,東京湾周辺にはたった一か所しかレーダーサイトはありません.中部航空方面隊中部航空警戒管制団峯岡山第44警戒隊です.通称愛宕山レーダーサイト,地図で見れば,護衛艦「あたご」が自動操舵で航行していた,進行方向にあることが,自ずと分かるでしょう.日本では何か事故が起きると,JR福知山線列車脱線転覆事故でもそうであったように、まず見落としとか,怠慢という言葉が出ます.また官尊民卑とも囁かれますが,しかし事故で死者が出てしまえば,官も民もありません.今回の事故は航空自衛隊と,海上自衛隊が新鋭艦「あたご」のステルス性能と,地上レーダーのステルス艦探知能力を検証するために起きた事故ではないか,また残念ながら極めて稚拙で,充分な危険予防策を講じなかったために起きた悲劇的な事故である,と私は推測するのです.
前にも紹介しましたが,ステルス機の第一世代であり,湾岸戦争に初めて投入されたステルス爆撃機F-117について書かれた本です.F-117だけでなく,レーダーとステルス技術について,分かり易く書かれているので,参考になると思います.この飛行機,姿形も変わっていますが,性能も変わっています.まず速度はマッハ0.9と,亜音速,宙返りも背面飛行も駄目,急降下も駄目,アフターバーナーがないから,ダッシュもできない,とまるで旅客機並の鈍重さです.さらにレーダーがない.あるのは機首上面のFLIRとDLIRという,赤外線暗視装置のみです.攻撃するのは夜に限られていますから,常にこの赤外線暗視装置で飛行すると考えて良い.
「ステルスの発達とF-117の開発」というセクションに,電波で物が見えない(あるいは見える)ということはどういうことか,という説明があります.
1)電波が当たっていない物体は,レーダーに見えない.
2)電波を反射しない(吸収する)物体は,レーダーには見えない.
3)電波を透過する物体は,レーダーには見えない.
4)電波を特定方向へ反射する物体は,(特定方向以外では)レーダーには見えない.
このうち1)以外の現象を利用したのがステルス技術です.2)の電波を吸収する物質はあるものの,全ての波長の電波を吸収する素材はない.3)の電波を透過する物質としては強化プラスチックがありますが,船にせよ,飛行機にせよ,強化プラスチックだけで出来ているわけではありません.従って電波をレーダーの方向へ戻っていかないような三次元構造が,ステルス技術のコアなわけです.このF-117は自分では電波を出しません.電波を出せば「闇夜に提灯」で,自らの存在を明らかにしてしまいます.ですからGPSや,AWACS(早期警戒機)からの情報をリアルタイムにリンクさせているのでしょう.またF-117は訓練の時には,RCS enhanser(レーダーリフレクター)と,衝突警戒灯をつけます.これがないと他の航空機や管制塔からは全く見えないわけですから,当然のことです.
漁船と衝突した護衛艦「あたご」には,水上レーダーの記録が無かったそうです.これはとても奇妙な話で,レーダーで前方に船舶を感知すると,自動的にコンピュータが位置や速度から,警告を発するシステムを採用しているという情報と矛盾します.このようなコンピュータには当然ながらメモリーや,ハードディスクが搭載されている筈で,それが瞬時に消える筈はありません.沈没した清徳丸の僚船の他,「あたご」の前方には6隻の漁船がいました.レーダーで見逃すはずも,注意を喚起しないはずもありません.この謎の答えは,さきほどの「電波が当たっていない物体は,レーダーには見えない」以外ありません.
日本の沿岸には多くのレーダーサイトがあります.しかし事故の起きた房総半島だけでなく,東京湾周辺にはたった一か所しかレーダーサイトはありません.中部航空方面隊中部航空警戒管制団峯岡山第44警戒隊です.通称愛宕山レーダーサイト,地図で見れば,護衛艦「あたご」が自動操舵で航行していた,進行方向にあることが,自ずと分かるでしょう.日本では何か事故が起きると,JR福知山線列車脱線転覆事故でもそうであったように、まず見落としとか,怠慢という言葉が出ます.また官尊民卑とも囁かれますが,しかし事故で死者が出てしまえば,官も民もありません.今回の事故は航空自衛隊と,海上自衛隊が新鋭艦「あたご」のステルス性能と,地上レーダーのステルス艦探知能力を検証するために起きた事故ではないか,また残念ながら極めて稚拙で,充分な危険予防策を講じなかったために起きた悲劇的な事故である,と私は推測するのです.
February 21, 2008
ステルスでも,もう隠せない
護衛艦「あたご」がレーダーで漁船を確認できたかどうか,何時確認したのか,防衛省は明言を避けています.護衛艦「あたご」にはフェイズド・アレイ・レーダーの他,機械式のレーダー,そして艦首には音響ソナーがあります.つまり艦橋の左右に見張り員,レーダー操作手,ソナー操作手,そして当直士官と,多くの乗組員が漁船に気付く可能性があったのです.
見張りは衝突12分前に漁船の光に気付いていたようですから,当然この情報は他の乗組員にも伝えられた筈です.ところが衝突2分前まで,「あたご」は自動操舵で,減速せずに直進を続けていたのです.これは明らかに異常な行動です.まず12分前に見張り員が灯火に気付いたら,レーダーで正確な位置を確認するか,AISなどで船舶を確認する筈です.ところが何もしていない.これらの事実が指し示すものは,「あたご」が何らかの命令で,レーダーを使用せず,決められたルートを動いていたということです.
レーダーを使用していれば,海上に複数の輝点が確認でき,またその記録は残る筈です.ということは水上レーダーも,フェイズド・アレイ・レーダーも,音響ソナーも使用していなかった.また艦長は漁船に気付きながら,命令に従わざるを得なかった,そういうことが推測されるのです.周囲の海域に自衛艦がいないとすれば,「あたご」の進行方向の延長上にある,航空自衛隊峰岡基地のレーダーサイト以外,共同演習の相手はないのではないか.
防衛省にとって想定外だったのは,すでに漁船ですら,GPSやレーダーを搭載し,その記録が残っていたことでしょう.イージス艦や,ステルスを可能にした科学技術は,漁船にも波及していたのです.この問題は単に石破防衛大臣の進退に止まらず,福田政権に下される最後の鉄槌となる可能性があります.さらに北朝鮮を巡る国際情勢の変化と共に,ブッシュ政権と小泉政権の下で進められた,ミサイル防衛構想にも,大きな影響を及ぼすことでしょう.
見張りは衝突12分前に漁船の光に気付いていたようですから,当然この情報は他の乗組員にも伝えられた筈です.ところが衝突2分前まで,「あたご」は自動操舵で,減速せずに直進を続けていたのです.これは明らかに異常な行動です.まず12分前に見張り員が灯火に気付いたら,レーダーで正確な位置を確認するか,AISなどで船舶を確認する筈です.ところが何もしていない.これらの事実が指し示すものは,「あたご」が何らかの命令で,レーダーを使用せず,決められたルートを動いていたということです.
レーダーを使用していれば,海上に複数の輝点が確認でき,またその記録は残る筈です.ということは水上レーダーも,フェイズド・アレイ・レーダーも,音響ソナーも使用していなかった.また艦長は漁船に気付きながら,命令に従わざるを得なかった,そういうことが推測されるのです.周囲の海域に自衛艦がいないとすれば,「あたご」の進行方向の延長上にある,航空自衛隊峰岡基地のレーダーサイト以外,共同演習の相手はないのではないか.
防衛省にとって想定外だったのは,すでに漁船ですら,GPSやレーダーを搭載し,その記録が残っていたことでしょう.イージス艦や,ステルスを可能にした科学技術は,漁船にも波及していたのです.この問題は単に石破防衛大臣の進退に止まらず,福田政権に下される最後の鉄槌となる可能性があります.さらに北朝鮮を巡る国際情勢の変化と共に,ブッシュ政権と小泉政権の下で進められた,ミサイル防衛構想にも,大きな影響を及ぼすことでしょう.
ステルスは「欺瞞」の技術
「透明人間」は,H・J ウェルズが創作したものです.ケビン・ベーコン主演で「インビジブル」と言う映画も作られました.もし透明な自動車が出来たとします.この車は,警察が持っていれば,隠密捜査や,覆面パトカーとして,大変有用であるに違いありません.しかしその一方たとえ正当な調査のために使われたとしても,危険極まりないものであることは間違いありません.透明なパトカーの運転手が,注意深く運転していなければ,他の車の運転手からは見えないわけですから,たちまち衝突事故を引き起こします.今回漁船と衝突した護衛艦「あたご」は,昨年3月就航した新鋭艦です.最近のトレンドであるステルス性を考慮したデザインで,当然外皮の素材も,ステルスを考慮したものが使われているでしょう.艦橋の上部には多くのアンテナが乱立していますから,全く電波を反射しない,ということはないでしょうが,反射面積が少なくなれば,それだけ発見は遅れます.それより相手のレーダーから見て,軍艦と判断し難い電波の反射パターンを持っているのかもしれません.貨物船や漁船と紛らわしい反射パターンを有していれば,これも立派な欺瞞,カムフラージュです.しかし漁船だと思っていたら,目の前に巨大な護衛艦が現われた,という事態は極めて危険です.ステルス技術の発祥地であるアメリカでは,F-117の訓練飛行にわざわざ電波を反射させる,リフレクターを装着させることになっています.「あたご」など自衛艦の航行に関して,こういう安全対策が行なわれていたという報道は今のところありません.広辞苑には「欺瞞」とは「人目を欺き,騙すこと」と書かれています.ステルスとは騙すことなのです.この軍事技術に,我々はあまりに無知であり,当の防衛省も,その危険性に無関心であった,これがこの悲劇の原因ではないか,と考えてしまうのです.
February 20, 2008
世界の艦船:多機能レーダーと艦艇デザイン
世界の艦船 2008年 03月号 [雑誌]
護衛艦「あたご」と漁船の衝突事故について,あまりにも非常識な報道が飛び交っています.まず第一にスポニチに載っていた軍事評論家神浦 元彰氏の「イージス艦のレーダーの性能は貨物船並み」と言う発言.さらにイージス艦のレーダーはミサイルや飛行機のためのもので,漁船を探知するのは難しいというもの.こんな与太記事を書く記者はまずこの本を読んで戴きたい.
もともとフェイズドアレイ・レーダーは,索敵レーダーと追尾レーダーを一元化したものです.機械的にスキャンするより,電子的にレーダービームをスキャンさせた方が良い,そういう技術革新から生まれたのが,護衛艦「あたご」に搭載されたSPY-1です.艦橋の四方に設置された平板型レーダーは,360度にレーダービームを走査させます.水平方向にほぼ180度ビームを走査できれば,上下方向にも180度走査できるはずで,見下ろすことも可能なはずです.波によるノイズも入りますが,これはクラッターノイズといって,これを排除することが,レーダーのルックダウン能力を左右します.
エグゾゼミサイルの「エグゾゼ」はフランス語で「トビウオ」です.エグゾゼミサイルは海面3メートルを飛翔する能力があります.このような船腹を狙う巡航ミサイルの脅威に対抗できるイージス艦が,漁船を見逃す筈はないのです.また強化プラスチックで出来た漁船はレーダーで判別し難い,と毎日新聞に書かれていましたが,これも嘘っぱちです.この辺りは文林堂の「世界の傑作機 ロッキードF-117ナイトホーク」に詳しいのですが,この本に浜田一穂氏が「レーダーの原理とステルス」という一文を書いています.たとえレーダー断面積(RCS)が半分になっても,探知距離は0.84倍にしかならない.たとえRCSが十分の一になっても,探知距離は0.56倍にしかならない,と書いています(探知距離はレーダー断面積の四乗根に比例する).したがって強化プラスチックの反射が少なくとも,単にそれだけではレーダーで探知されなくなるわけではないのです.そんな簡単なことでステルスが実現すれば,皆ステルス機やステルス艦は,強化プラスチックでつくれば良いことになります.実際にはステルス技術の核心は,放射された電波をレーダーへ跳ね返さない,三次元形状にあります.軍事音痴というより,科学音痴というしかありません.
アメリカではF-117の訓練飛行の際にレーダーリフレクター(RCS enhanser)を装着するそうですが,極めて小さなものです.実際F-117のRCSは,鳥と同じくらいなそうですから,このような小さなものでも充分なのでしょう.このようなレーダーリフレクターの装着を防衛省は義務付けているのでしょうか.報道からは全く分かりません.私は防衛省の二転三転する説明と,怪しげな軍事評論家の妄言から,ますますこのイージス艦が,水上レーダーを稼動させていないと確信するに至りました.
イージス艦はハワイから還ってきた筈なのに,なぜ一度南下し,房総沖で北上する航路を取ったのでしょう.進路を真っ直ぐ北に伸ばせば,航空自衛隊の峰岡レーダー基地があります.かたやレーダーに探知されにくいステルス艦,かたや東京湾を見下ろす位置にある(それは重要性からいえば岩手県山田町の比ではありますまい)レーダーサイト.沖合40キロメートルといいますが,イージス艦「あたご」のレーダー,SPY-1Dの最大探知距離は500キロメートルに及びます.地上に固定されたレーダーが,それ以下の能力である理由はありません.また遮る物のない海では,40キロメートルは決して遠距離ではありません.戦艦大和の主砲はそれだけの射程がありましたし,巡航ミサイルでは発射されて3分ほどで到着してしまいます.自動操舵で,全く回避動作をしなかったことといい,単なる偶然とは到底思えないのです.興味のある方は,ぜひ一読をお勧めします.新聞やテレビは当てになりません.
護衛艦「あたご」と漁船の衝突事故について,あまりにも非常識な報道が飛び交っています.まず第一にスポニチに載っていた軍事評論家神浦 元彰氏の「イージス艦のレーダーの性能は貨物船並み」と言う発言.さらにイージス艦のレーダーはミサイルや飛行機のためのもので,漁船を探知するのは難しいというもの.こんな与太記事を書く記者はまずこの本を読んで戴きたい.
もともとフェイズドアレイ・レーダーは,索敵レーダーと追尾レーダーを一元化したものです.機械的にスキャンするより,電子的にレーダービームをスキャンさせた方が良い,そういう技術革新から生まれたのが,護衛艦「あたご」に搭載されたSPY-1です.艦橋の四方に設置された平板型レーダーは,360度にレーダービームを走査させます.水平方向にほぼ180度ビームを走査できれば,上下方向にも180度走査できるはずで,見下ろすことも可能なはずです.波によるノイズも入りますが,これはクラッターノイズといって,これを排除することが,レーダーのルックダウン能力を左右します.
エグゾゼミサイルの「エグゾゼ」はフランス語で「トビウオ」です.エグゾゼミサイルは海面3メートルを飛翔する能力があります.このような船腹を狙う巡航ミサイルの脅威に対抗できるイージス艦が,漁船を見逃す筈はないのです.また強化プラスチックで出来た漁船はレーダーで判別し難い,と毎日新聞に書かれていましたが,これも嘘っぱちです.この辺りは文林堂の「世界の傑作機 ロッキードF-117ナイトホーク」に詳しいのですが,この本に浜田一穂氏が「レーダーの原理とステルス」という一文を書いています.たとえレーダー断面積(RCS)が半分になっても,探知距離は0.84倍にしかならない.たとえRCSが十分の一になっても,探知距離は0.56倍にしかならない,と書いています(探知距離はレーダー断面積の四乗根に比例する).したがって強化プラスチックの反射が少なくとも,単にそれだけではレーダーで探知されなくなるわけではないのです.そんな簡単なことでステルスが実現すれば,皆ステルス機やステルス艦は,強化プラスチックでつくれば良いことになります.実際にはステルス技術の核心は,放射された電波をレーダーへ跳ね返さない,三次元形状にあります.軍事音痴というより,科学音痴というしかありません.
アメリカではF-117の訓練飛行の際にレーダーリフレクター(RCS enhanser)を装着するそうですが,極めて小さなものです.実際F-117のRCSは,鳥と同じくらいなそうですから,このような小さなものでも充分なのでしょう.このようなレーダーリフレクターの装着を防衛省は義務付けているのでしょうか.報道からは全く分かりません.私は防衛省の二転三転する説明と,怪しげな軍事評論家の妄言から,ますますこのイージス艦が,水上レーダーを稼動させていないと確信するに至りました.
イージス艦はハワイから還ってきた筈なのに,なぜ一度南下し,房総沖で北上する航路を取ったのでしょう.進路を真っ直ぐ北に伸ばせば,航空自衛隊の峰岡レーダー基地があります.かたやレーダーに探知されにくいステルス艦,かたや東京湾を見下ろす位置にある(それは重要性からいえば岩手県山田町の比ではありますまい)レーダーサイト.沖合40キロメートルといいますが,イージス艦「あたご」のレーダー,SPY-1Dの最大探知距離は500キロメートルに及びます.地上に固定されたレーダーが,それ以下の能力である理由はありません.また遮る物のない海では,40キロメートルは決して遠距離ではありません.戦艦大和の主砲はそれだけの射程がありましたし,巡航ミサイルでは発射されて3分ほどで到着してしまいます.自動操舵で,全く回避動作をしなかったことといい,単なる偶然とは到底思えないのです.興味のある方は,ぜひ一読をお勧めします.新聞やテレビは当てになりません.
February 19, 2008
全ての船舶に船舶自動識別装置(AIS)を
漁船と衝突事故を起こした護衛艦「あたご」に,海上保安庁の強制捜査が入りました.吉川海上幕僚長は「レーダーに漁船が映っていたかどうか,確かではない」と意味深な釈明を行いました.私は前の記事に書いた通り,「あたご」はレーダーから,少なくとも電波を放射していない,と考えています.不審船や,ゴムボートで接近するテロリスト,特殊部隊を想定する現代の艦艇が,漁船を発見できない筈はないからです.「あたご」はイージス艦であると同時に,ステルス船でもあります.自ら電波を発射すれば,そこでもはやステルスではなくなります.そこには現代兵器の危うさがあります.不審船の事件を受け,日本でも多くの船舶に対し,船舶自動識別装置の搭載を義務付けることになりました.しかし今回犠牲となった小さな漁船に対してはまだ義務化はなされていないようです.今回「あたご」はこの船舶自動識別信号を発していたのでしょうか.テレビのニュースでは,さっぱり分かりません.
暫定税率も,道路利権も,「そのまんま東」
今日スーパーマーケットに行ってみると,カップ麺がほとんど148円になっていました.つい先日まで98円だったのが,いつの間にか50円も値上げです.今年の4月に政府小麦売り渡し価格が30%上がるそうですが,この値上げは更なる値上げの前哨戦なのでしょうか.鉄鋼も価格が上がるそうですから,電気製品や自動車なども値上げの可能性があります.ガソリンも重油も,天然ガスも価格は高止まりです.アメリカの景気後退は深刻ですから,誰が大統領になろうと,アメリカの政策は変らないでしょう.ブッシュ政権時代の緩みに緩んだ財布の紐を締めるしかありません.中国はオリンピック以後の景気が心配です.日本の東京オリンピック後のように,物価上昇と不景気が襲う可能性は払拭できません.アメリカの消費と,中国へのパーツの輸出に頼っている日本の製造業にはダブルパンチです.これは近未来に起きるかもしれないことではなく,今年中に起きる可能性が高いのです.そんな時に「暫定税率維持,高速道路を宮崎に!」でしょうか.すでに医療や福祉は,小泉政権時代に絞れるだけ絞っています.公共事業もかなり減りましたから,残るは道路財源しかありません.そもそも石原都政の副知事に収まった猪瀬氏は,道路公団の無駄遣いを糾弾することで,名を挙げたのではなかったか.私には東国原知事も,橋下知事も,そして政策集団「せんたく」も,背後に読売グループの渡邉氏の姿が見え隠れしているように感じられます.昨年末「大連立」に失敗した読売グループが,今度は日本テレビの息のかかった人間を使って,自民党の延命工作を画策しているように思えて仕方がありません.しかしもはや景気はまさに「どげんかせんといけん」状態です.高速道路など,先の先の話です.「暫定税率はそのまんま」,「道路利権もそのまんま」.東国原ならぬ,「そのまんま東」に騙されてはいけません.
航空自衛隊愛宕山レーダー基地と,護衛艦「あたご」
青森県三沢基地にはアメリカの空軍基地があります.マルチロール・ファイターといわれたF-16がその主体です.このF-16が岩手県の北上山地を低空で飛び,1999年には釜石市の山林に墜落するという事故まで起こしました.私自身も何度か見たことがありますが,低空で接近し,急反転して太平洋を北に戻ってゆくのです.このF-16部隊の任務が,ワイルドウィーズルという敵防空レーダーをミサイルで破壊する部隊であり,このワイルドウィーズルが,アメリカ国内を除けば,三沢とドイツのシュタングターレムにしか,派遣されていないことを後で知りました.湾岸戦争やイラク戦争の開戦時に,三沢の部隊も参加していたのでしょう.
今朝未明に南房総沖で,最新鋭のイージス艦「あたご」と漁船が衝突し,漁船は沈没し,乗組員の安否は不明です.海水温からいって,生存は難しいでしょう.イージス艦というと艦橋に備え付けられたフェイズド・アレイ・レーダーが有名ですが,現在の艦船ではステルス性も要求されます.台形の艦橋や,マストもレーダー波が真っすぐ反射しないためのものです.この事故が起きた南房総には,航空自衛隊愛宕レーダー基地があります.愛宕山は標高600メートル,千葉県では最も高い山です.ロシアの偵察機が飛来する日本海側と違い,太平洋側のレーダーサイトには,そのようなスクランブルの任務はないと言って良いでしょう.初めに書いた三沢基地のF-16が目標としたのは,宮古市の隣,山田町にある航空自衛隊のレーダーサイトだった,と推測されます.
今回護衛艦「あたご」の航海の目的はミサイル防衛の訓練だったようですが,ステルス性能の確認は何度も行わなければなりません.長い航海で塗料が剝がれたり,艤装が壊れてレーダー波を反射しやすくなるなど,航空機とは違った問題がある筈です.となれば当然無線封止,レーダー波も出さず,パッシブモードです.大きな船はレーダーを搭載しているから,探知できますが,今回のような漁船ではどうでしょうか.国防に関してはデリケートな部分が多く,この事故でもどこまで真相があきらかになるかは不明ですが,やはり透明性がなければ,信頼も生まれません.きちんとした原因解明が必要です.
今朝未明に南房総沖で,最新鋭のイージス艦「あたご」と漁船が衝突し,漁船は沈没し,乗組員の安否は不明です.海水温からいって,生存は難しいでしょう.イージス艦というと艦橋に備え付けられたフェイズド・アレイ・レーダーが有名ですが,現在の艦船ではステルス性も要求されます.台形の艦橋や,マストもレーダー波が真っすぐ反射しないためのものです.この事故が起きた南房総には,航空自衛隊愛宕レーダー基地があります.愛宕山は標高600メートル,千葉県では最も高い山です.ロシアの偵察機が飛来する日本海側と違い,太平洋側のレーダーサイトには,そのようなスクランブルの任務はないと言って良いでしょう.初めに書いた三沢基地のF-16が目標としたのは,宮古市の隣,山田町にある航空自衛隊のレーダーサイトだった,と推測されます.
今回護衛艦「あたご」の航海の目的はミサイル防衛の訓練だったようですが,ステルス性能の確認は何度も行わなければなりません.長い航海で塗料が剝がれたり,艤装が壊れてレーダー波を反射しやすくなるなど,航空機とは違った問題がある筈です.となれば当然無線封止,レーダー波も出さず,パッシブモードです.大きな船はレーダーを搭載しているから,探知できますが,今回のような漁船ではどうでしょうか.国防に関してはデリケートな部分が多く,この事故でもどこまで真相があきらかになるかは不明ですが,やはり透明性がなければ,信頼も生まれません.きちんとした原因解明が必要です.
February 18, 2008
ブルーレイの敵は,DVD
東芝はHD-DVD事業から撤退することを表明しました.これで次世代DVDはブルーレイ・ディスクに絞られたことになります.この決定は昨年ワーナーブラザースがブルーレイに一本化したことが大きいとは思いますが,それではブルーレイは既存のDVDを駆逐できるでしょうか.
HD-DVD陣営も,ブルーレイ陣営も昨年こぞって新しい圧縮技術を使って,既存のDVDディスクにハイビジョン画質で書き込める製品を普及価格で発売しました.これはAVCHDと呼ばれる記録フォーマットで,これまでビデオカメラでハイビジョン映像を録画するために導入されてきました.ソニーが出した民生用ビデオカメラには当初からこれまでのデジタルビデオテープを流用してきました.つまり,映像を圧縮すれば,これまでのメディアにハイビジョン映像を録画できることは分かっていたわけです.
HD-DVDの売りは,既存のDVDの生産ラインを利用できることでした.まだまだブルーレイディスクは高価で,アジアからの安価な製品も出てきません.いずれは量産されるようになるかもしれませんが,その間にAVCHDが主流になってしまったら,ブルーレイは価値が下がります.
かつてカセットテープの次世代製品として,ソニーのMD,松下,フィリップス陣営のDCCが争ったことがありました.ランダムアクセスという点で,MDに軍配が上がったわけですが,今はMDもデジタルオーディオに圧され,風前の灯です.勝ったはずのMDは録音可能なCD-Rと,圧縮フォーマットに敗れ去ってしまいました.次世代のCDとして登場したSACDやDVD-オーディオも同じです.SACDがDVDオーディオに勝ったとはいえ,既存のCDを脅かすどころか,極めて少数しか売れていません.SACDというフォーマットは極く一部のマニアには支持されても,普通の音楽愛好家にとっては,遠い存在です.
そもそもなぜ次世代DVDなのか.それはユーザーのニーズというよりは,ハリウッドなど映画産業と,ハードを作る日本の電機メーカーの思惑です.DVDは過去の作品も含め,ほぼ商品化され尽くしました.安いものは1000円そこそこで,もはや市場は飽和状態です.このままでは採算がとれない.だからこその次世代DVDでした.
ところがアメリカは景気後退,たぶん大型テレビの需要も落ち込むでしょう.我が国ではコピーワンスからの切り替えといった問題があります.その間に新たな圧縮技術が現れるでしょうし,世の中はブロードバンド,そしてYou Tubeのような圧縮画像が,既存のメディアに挑戦する時代です.本当にブルーレイの一人勝ちなのか.実はブルーレイは,既存のDVDに勝てないのではないか,ブルーレイ陣営もこのニュースを簡単には喜べないのではないか,と思います.
HD-DVD陣営も,ブルーレイ陣営も昨年こぞって新しい圧縮技術を使って,既存のDVDディスクにハイビジョン画質で書き込める製品を普及価格で発売しました.これはAVCHDと呼ばれる記録フォーマットで,これまでビデオカメラでハイビジョン映像を録画するために導入されてきました.ソニーが出した民生用ビデオカメラには当初からこれまでのデジタルビデオテープを流用してきました.つまり,映像を圧縮すれば,これまでのメディアにハイビジョン映像を録画できることは分かっていたわけです.
HD-DVDの売りは,既存のDVDの生産ラインを利用できることでした.まだまだブルーレイディスクは高価で,アジアからの安価な製品も出てきません.いずれは量産されるようになるかもしれませんが,その間にAVCHDが主流になってしまったら,ブルーレイは価値が下がります.
かつてカセットテープの次世代製品として,ソニーのMD,松下,フィリップス陣営のDCCが争ったことがありました.ランダムアクセスという点で,MDに軍配が上がったわけですが,今はMDもデジタルオーディオに圧され,風前の灯です.勝ったはずのMDは録音可能なCD-Rと,圧縮フォーマットに敗れ去ってしまいました.次世代のCDとして登場したSACDやDVD-オーディオも同じです.SACDがDVDオーディオに勝ったとはいえ,既存のCDを脅かすどころか,極めて少数しか売れていません.SACDというフォーマットは極く一部のマニアには支持されても,普通の音楽愛好家にとっては,遠い存在です.
そもそもなぜ次世代DVDなのか.それはユーザーのニーズというよりは,ハリウッドなど映画産業と,ハードを作る日本の電機メーカーの思惑です.DVDは過去の作品も含め,ほぼ商品化され尽くしました.安いものは1000円そこそこで,もはや市場は飽和状態です.このままでは採算がとれない.だからこその次世代DVDでした.
ところがアメリカは景気後退,たぶん大型テレビの需要も落ち込むでしょう.我が国ではコピーワンスからの切り替えといった問題があります.その間に新たな圧縮技術が現れるでしょうし,世の中はブロードバンド,そしてYou Tubeのような圧縮画像が,既存のメディアに挑戦する時代です.本当にブルーレイの一人勝ちなのか.実はブルーレイは,既存のDVDに勝てないのではないか,ブルーレイ陣営もこのニュースを簡単には喜べないのではないか,と思います.
やっぱり弱い岡田ジャパン
昨日の東アジア選手権,北朝鮮戦は一対一の引き分け.しかし北朝鮮にとって勝ちに等しい引き分けで,後半同点に持ち込むのがやっとだった日本には実質的に負けのようなものです.会場が重慶であったこともあって,日本にとってはアウェーだ,と何度も繰り返していましたが,そんなことは開催前から分っていたことです.韓国と中国が三対二で,中国が優勝候補の韓国に善戦したわけですから,何とか上位に食い込みたい開催国中国のファンが熱くなるのは当然です.それにしても弱い.せっかくコーナーキックやフリーキックを与えられても,上がってきた中澤に合わせるだけでは,相手守備陣に意図を読まれてしまいます.最初の北朝鮮の得点も,元々が川崎に所属している選手ですから,癖やシュートパターンだって分からない筈はありません.かつての代表久保選手を思わせる反応の良さで少ない人数でシュートまで行ってしまいました.日本の代表は遠征を繰り返して,格上のチームに挑むしかないと思います.人数をかけてビルドアップという戦術は,そこそこの相手なら何度もシュートチャンスに持ち込めるでしょうが,やはりそう何度もチャンスはありません.中盤の選手が多いということは,逆にフォワードに信頼性が欠けているということです.とにかく一人か二人でシュートに行く,しかもその精度を上げるということを考えないと,その先は厳しい.北朝鮮に苦戦するようでは,韓国といい勝負をした中国にも勝てる保証はありません.岡田ジャパンは前途多難です.