August 21, 2005

ポジティブ・ウェルフェア

電池を換えるときに古い電池を残して新しい電池と一緒に使ってはいけない,と言われています.古い電池が抵抗として電力を消耗してしまうからです.つまり電源としてゼロではなく,マイナスになってしまう.失業者についても同様のことが言えます.失業で社会のコストはゼロにはならず,失業保険や社会不安などでマイナスになってしまいます.失業保険を打ち切り,または大幅に減額すれば犯罪の温床になりかねず,警察官の増員など結局社会のコストは増大します.我が国の失業率は6月現在で4.2%.2003年の5.5%に比べれば改善されましたが,まだこれだけの失業者がいるわけです.イギリス労働党のブレア首相が提言したのは「第三の道」という新しい社会福祉のあり方でした.手厚い保護から就労への手助けへ,民間活力を生かすこと,このような福祉のあり方をポジティブ・ウェルフェアと名づけました.これらの施策にはブレア政権のブレーンである社会学者アンソニー・ギデンズの影響が大きいと言われています.昨日のNHK「ウォーター・クライシス」ではウェールズの上水道事業が破綻し米国系の多国籍企業が買い取ったものの,ホテル業などに手を伸ばし経営が悪化,結局NPO団体として再出発したという事例を紹介していました.先進諸国では富の偏在化,高福祉の歪みが大なり小なり現れているはずです.今のところはその処方箋はいろいろで,グローバル・スタンダードは存在しない筈です.アメリカに移民が殺到した理由は例えアメリカの最底辺にいたとしても,母国よりまし,食べ物にはありつけるから,というのが最大の理由だったと聞きます.パイが大きければ弱肉強食でも生きていけますがパイの大きくない国では最善の選択肢でしょうか.イラク戦争への協力や地下鉄テロで苦境に立たされているブレア政権ですが,内政に関しては学ぶべき点は多い.少なくとも国家のビジョンの明快さと説明責任においては我が国と雲泥の差があるような気がします.

tnakadat at 16:44│Comments(4)TrackBack(6) 記事,事件 

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この記事へのコメント

1. Posted by さなえ   August 22, 2005 11:40
ごめんなさい。あちこちで起きているTBダブりが発生しました。削除をお願いします。
英国での鉄道民営化は悲惨なことになっていますね。米国の電力会社の民営化もそうですし。
民営化をしたらどうなるか、その後のシミュレーションを何通りか提示して問うべきではないでしょうか。また政府がやらないなら、マスコミが示すべきでしょうね。
2. Posted by tantanmen   August 23, 2005 09:44
最近の論議で一番気になるのは市民社会はどうあるべきかという議論がどんどん矮小化されている点です.どういう社会体制であれ,全ての構成員がそれぞれの力や能力に応じて力を発揮し,社会に還元させることが社会を豊かにし,結果として構成員の豊かさも保障される.脱落者を放っておいては社会は崩壊し,激しい競争は短期的には成果が上がっても,結果的には資源を浪費し,貧富の差が増大し,やはり社会全体の活力は失われてしまう.今のアメリカの好況が長く続く保障は全くない.むしろ行き詰まると考えられる様々な予兆がみられるのに,レミングのように走り出そうとしている.とても危険です.
3. Posted by kochikika   August 24, 2005 01:01
はじめまして。
このエントリ、禿同です。
http://blog.goo.ne.jp/hwj-tanaka
こちらにも別の識者による「第三の道」の話がありますが、手法については意見は分かれようとも、議論はして欲しいですね。
自分も“あるべき姿”の話を考えましょうよという意見を背骨にしょうもない話ばかり出してるのですが、うちひとつTBさせてもらいました。
4. Posted by tantanmen   August 25, 2005 11:21
kochikikaさん初めまして.田中氏のブログ紹介していただいてありがとうございました.昨今のマスコミの論調は二者選択が多すぎるような気がして書いてみた次第です.生物と同じで国家も多様性があっていいのではないか,と思います.

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