December 04, 2005

小林一輔:コンクリートが危ない

コンクリートが危ない
著者は東大生産技術研究所教授を経て千葉工大教授,専攻はコンクリート工学.1999年に出版された本でちょうど山陽新幹線の橋脚が剥離し,落下する事故が続いた時に書かれた本です.建築基準法改正の頃に書かれたため,指定確認検査機関について「現状改善に向かっての第一歩として今後の展開に注目したい」と結んでいるのが,今読むととても皮肉な感じがします.本書に書かれているのは高度経済成長期以後いかにコンクリートの質が劣化したか,ということです.しかし後半には分譲マンションについても触れていて,数年前と書かれていますから1997年頃と考えていいと思いますが,知り合いのゼネコン幹部が著者の耳元で「今時のマンションは設備で売り込んでいますが数年もすればボロボロですよ」と囁いたそうです.「バブル崩壊後に建設されたマンションの品質を施行したゼネコン自身が問題視していることを示すものである.値下がりが止まらない土地を沢山抱え散るデベロッパーは,一刻も早く分譲マンションを建設,販売して資金を回収しなければならない.マンションは価格を出来る限り安く設定しないと売れない.そのためには建築費を極力低く抑えることになる.しかしマンションを販売する際には,セールスポイントが必要である.それがシステムキッチン,オートロックシステム,自動給湯ユニットバスなどの設備である.受注額が低く抑えられた上に,このような設備を整えることになれば,ゼネコンとすれば建物本体の工事費で辻褄を合わせざるを得ない.これが数年でボロボロの背景である.」今回の事件について書いたものではないはずですが,見事に的を衝いていると云わざるを得ません.建築物は製造者責任法(PL法)の対象外なそうです.また10年間の瑕疵担保責任が法律に明記されていますが,財団法人住宅保証機構のホームページを見ると,住宅性能保証制度でカバーされる瑕疵は共同住宅の場合,外壁,屋根,床板などに限られ今回のような柱は対象外になっています.要するに現行の制度では購入者を守るセーフティ・ネットというのは恐ろしく希薄なものだということです.この現実を充分考えて,マンションを購入すべきだと思います.更に云えば我々消費者に出来る最善のプロテストはマンションを買わないことです.マスコミが騒いだり,説明会で社長に詰め寄っても,悪徳業者は嘘を繰り返すだけです.マンションの売れ行きが減れば業者にとってはこれ以上ない痛手なのです.Esspresso Diaryでも書かれていますが,マンションの資産価値を過大に評価し過ぎたことを我々も今回の事件で充分反省すべきではないかと思います.工業製品である以上マンションだって,初期不良もあれば,経年変化もあるはずです.ところが自動車や電化製品のようなリコールは住宅一軒ならともかく,マンション一棟ともなると,もはや無理なのです.車や電化製品と同様,というより車や自動車以上に,幻想を捨てて「耐久消費財」と云われてきた住宅を考える態度が求められているのだと思います.

tnakadat at 21:10│Comments(0)TrackBack(2) 書評 

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1. 日経平均15,000円をむかえて。  [ Espresso Diary@信州松本 ]   December 06, 2005 15:00
ゴールドは、1オンス500ドルを突破。日経平均は、15,000円。となると次に破られる壁は、1USドル=120円でしょうか。日本国債の新発10年債利回りは、1.455%あたり。 この債券市場の強さが、最も予想外ですね。チャートで見ると、2003年の夏から金利が横ばいで来ていること....
2. 【コンクリート構造物が悲鳴を上げている】コンクリートが危ない  [ ぱふぅ家のサイバー小物 ]   September 10, 2010 19:36
私は、コンクリート構造物が一斉に壊れはじめる時期が、30年後よりもはるかに早い2005〜10年頃までにやってくる可能性が高いと考えている。

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