January 05, 2007

男と女の事件

世の中には男と女しかいません.殺人事件の被害者と加害者の組み合わせは,四通り.男が男を,男が女を,女が男を,女が女を,この四通りです.一般的に加害者は圧倒的に男性が多い.腕力が強いだけでなく,男性ホルモンは闘争心や,暴力衝動,あるいは性行動と密接な関係があるといわれています.また性行動と暴力は結びつくことが多い.魚や動物の縄張りを巡る争いは,しばしば繁殖行動と繋がっています.
 昨年暮れに居酒屋チェーン店の女性店員が,同僚の男性店員に殺されるという事件がありました.今年年明け早々,東京都渋谷区の歯科医宅で,短大生がバラバラ死体で見つかるという事件がありました.犯人は短大生の兄に当たる21歳の浪人生であると警察は発表しています.居酒屋店員の犯行は計画的です.予め店の更衣室に忍び込み,女性の鍵を盗み,合鍵を作り,鍵は返す.盗まれたことも合鍵を作られたことも知らない女性は,何も疑わない.勤務を終えて帰宅する女性を尾行し,住宅を確認しする.勤務表で彼女の勤務は筒抜けですから,彼女が勤務を終える前にアパートに忍び込み,乱暴しようとした.ここまでの計画は周到です.この犯罪を振り返ると,この容疑者は以前から同様の犯行を繰り返していたか,あるいはこういう犯行を手引きする人間がいたか,どちらかだと思います.更衣室の鍵の管理がルーズなこと,「貴重品は金庫に預けること」と店の壁に張り紙がしてありましたから,貴重品はロッカーにはない.あるのは私物や,携帯,キーだけです.まさかキーを盗むとは思いませんから,ロッカーに鍵をかけないということも多いのではないでしょうか.そして勤務表を見れば,大体の行動が読めてしまう.プライバシー保護といいますが,実社会のプライバシーなどこんなものです.同僚が狙っていると思わない,あるいはそう考えさせないのが日本の会社という組織です.しかし容疑者が狡猾だったのはここまで.万が一被害者が抵抗したら,どうするかという,いわば出口戦略が無かった.不法侵入,暴行,強姦未遂で,逮捕されればもう終わりです.したがって被害者を殺した.しかし物証が沢山残されていたのでしょう.狡猾にして愚かと呼ぶしかありません.
 一方渋谷の歯科医家族の事件は,悲しい事件です.現在歯科は構造不況業種といっても過言ではありません.虫歯は激減,欧米のような歯列矯正で儲かるかといえば,歯列矯正はまだまだ患者の数が少ない.基本的に八重歯が好感を持って迎えられる社会です.八重歯や大きな耳が悪魔のようだ,とされる欧米とは文化が違います.美意識にも宗教が絡んでいるのです.一方歯科医院は過当競争にあえいでいます.歯科ユニットは高価.今は診察室も待合室も,まるで美容室のように優雅でなければ,客は来ない時代です.歯科衛生士や受付嬢も若くてきれいな女性を集めます.一昨年盛岡では昼は歯科医院の受付,夜はホテトル嬢という女性が,金銭トラブルで客に刺し殺されるという事件が起きました.3年近く浪人して歯科医を目指すというのは,なかなか苦しいものがあったと思います.殺された妹は短大生で舞台女優を目指していたといいます.彼女に「夢が無い」となじられ,かっとなり犯行に及んだと供述しているそうですが,真実というのはしばしば相手の心を刺すものです.普段はおとなしかったといわれていますから,内向的な性格だったのでしょう.だから妹も強く責めたのかもしれません.しかしひとたび感情が爆発すれば,内にこもったもろもろの感情が一気に噴出した可能性があります.自由奔放に好きな道を生きる妹と,長い間浪人生活を続け,鬱屈した青春を生きざるを得ない兄.彼女の言い分が正しければ正しいほど,怒りの矛先が向かうという気持ちも,理解できないものではありません.もちろん殺された被害者を責めるつもりはありませんが,もっと他の道もあったのでは,と同情の気持ちもまた湧いてくるのです.

tnakadat at 10:38│Comments(8)TrackBack(3)記事,事件 

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1. 歯医者に非ざれば人間に非ず  [ 時事を考える ]   January 05, 2007 22:56
切断遺体:逮捕兄 被害妹と「3年間話すことなかった」とのこと、子供を三浪もさせる
2. [短大生バラバラ殺人]歯医者の家に生まれたから?  [ BBRの雑記帳 ]   January 06, 2007 20:52
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3. 夢ある人≒頑張れ礼賛主義  [ 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン ]   January 07, 2007 17:02
[切断遺体]殺害された亜澄さん、女優の夢追い この殺された女性、夢のある人=頑張る人=いい人、という固定観念で世の中を見ていたみたいで嫌だ。

この記事へのコメント

1. Posted by c.c   January 05, 2007 10:56
世の中には、性は2から3(たとえばニューハーフとか)種類しかないけれど、人間関係といったら山ほどになります。
なかでも血族関係の心理的複雑さは、たまったもんじゃない。夫婦は他人なので、割り切れます。
うちの実家、母の姉妹4人が祖父の土地にそれぞれ家を建て住んでます。この人たちがまあ「これが姉妹か」と思うほど、相手の不幸を喜ぶ。一見慰めあってるようで、影ではぼろくそ。しかも3対1になることが多い。「誰の貯金がどのくらい」とか、「誰の年金がどちらより多い」とか。実につまらない。さらに近頃では、口の強い従姉弟が退職で帰ってきてるので、もうたいへん。
とてもやってけない、でも彼らにとっては日常茶飯事。
骨肉ほど、距離をとらないと、他人じゃないだけコワイ。
「親しき仲ほど礼儀あり」です。
2. Posted by tantanmen   January 05, 2007 15:27
c.cさん:小さな町や村では,結構噂話や,中傷も絶えませんよ.大きな争いや,喧嘩は無くとも,ちくちくとやり合っている感じです.それがガス抜きになっているのかもしれませんね.
3. Posted by いい歯医者さん   January 05, 2007 16:37
1 日大附属中高からそのまま大歯学部を内部進学推薦でと狙い失敗。

日大が酷いなあ。

※読みにくいブログですね。自分のことしか考えていないね。
4. Posted by まろ   January 05, 2007 17:43
 どこかでスイッチが入ってしまったのでしょうか。
 何度もニュースで流れるたびにやりきれない気持ちになります。
 殺してしまう、そして切断する・・という過程での心のあり方、どんなんだったのでしょうか。

 そうか、ブログって、読んでいただく方たちのことも考えねばならなかったのか。うーむ、そんなところにまで気を遣っていると胃潰瘍になりそう・・。
 
 消化器系統はまだ需要がありそうですね。

 それにしても、他人様のブログにやってきて、こういう事を書きつけて去って行く・・という精神構造は、どうなんでしょうか?

  
5. Posted by 明るい空   January 06, 2007 09:23
ネットには本当にいろんな方がいらっしゃいますから、私の場合、文章が長くなるので、読みやすいようには考えては打ち込むことにしています。でも、花崗岩さんのはこれが逆にスタイルになっているので、私はここは居心地の良いBLOGの一つになっています。

歯科医師宅での事件、わが家では兄弟仲が良いので、3年間も口をきかない関係というのがちょっと信じられません。多少の仲たがいがあっても、その不満のガスを抜いてあげるというのは親の義務のうちではないかなと思っています。

ぼけてきたら無理ですが、家族が心から楽しい家庭であるようにするのも家族全員が気にすべきこと。特に親は大人として子供間の問題を解決すべきですし、場合によっては子供は大人の不備を補う。そういう関係が良いなと思っています。理想論かもしれないけど、でも、目指したいと思います。
6. Posted by tantanmen   January 06, 2007 12:26
まろさん:この被害者となった妹と,加害者の兄は一つ違いでしょう.いわゆる年子という奴で,双子のような感覚で育ったのだと思うのです.ところが兄の方は高校進学時期から,歯学部を目指すよう親のレールががっちり敷かれ,逃げる術がない.一方妹の方は反発したのか,父親が女に学歴は無用とでも思っていたのか,短大に進み,演劇など自由に生きている.長年にわたって積もり積もった鬱積が突然爆発してしまった,そういう風に解釈せざるを得ません.しかしその不満や鬱積は本来別のところにぶつけるべきだったのですね.それが悲劇の原因だったと思います.
7. Posted by tantanmen   January 06, 2007 12:36
明るい空さん:この書き方が読みにくいというご指摘は,幾つか以前からされています.では分かち書きとか,リード,見出しをつければ良いか,というとこれが結構難しいんですね.何だか違うという気がしてくるのです.読者を考えていない,という指摘は当たっていると思います.ただ明るい空さんの書かれているとおり,これが今のところ,私の書き方だというしかありません.ただ文章の長さは,もっと努力して縮めるべきだろうな,とは思っています.この次に書いたジョン・ハートの「キングの死」はまさに父親と息子の対立,そして妹と兄の相克を描いています.所詮はフィクションかもしれませんが,殺伐とした現実を離れて,親子関係を考えさせてくれる一冊でした.
8. Posted by 明るい空   January 08, 2007 09:13
tantanmenさん

確かに、文章の長さも無理に短くするとスタイルが崩れます。だったら逆にこれがスタイルだと開き直るのも得策かな?とも思います。ただ、これも難しい選択ですが、文字の大きさをもう少し大きくした方が良いかもしれませんね。私のBLOGは団塊の世代の友人方からの心温まるご指摘(苦笑)で文字を大きくしました。そういう道もありますが、ただそれでこの長さはまた別の意味で辛いかもしれません。悩みますね。ところでご紹介いただいた本、ぜひ読んでみようと思います。

そう分かち書きですが、私は一息で読める分量と習った事があります。ご参考までに。

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