February 07, 2010

郷原信郎:検察の正義

検察の正義 (ちくま新書)検察の正義 (ちくま新書)
著者:郷原 信郎
販売元:筑摩書房
発売日:2009-09
おすすめ度:3.5
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 著者は最近テレビや週刊誌にも度々登場しているので,ご存知の方も多いでしょう.東京大学理学部を卒業して,三井鉱山に就職するも,旧財閥系の古臭い会社の体質が合わず,途中退社.司法試験を受け,見事合格し司法修習生時代に検事になる事を勧められ,検察官になったという変わり種です.

 「政治献金として受け取ったものが,職務に関して賄賂になるとは夢想だにしなかった.私は,検察庁が私を逮捕,拘禁するのは,政界から葬り去るのが目的だと感じた.」 こう書いたのは小沢幹事長でも,鈴木宗夫氏でもなく,1948年昭電疑獄で逮捕された元民主党首相芦田均です.芦田氏は拘留中に河井検事から「穏便な方法」として議員辞職を促された,と日記に書いているそうです.

「いつの日であったか,河井検事は現在の政界を浄化する.それが正義感からも,国に対する忠義からも我々の義務と思ふといふ話をした.私は,その志は良いとしても,ソレに独善が加はるととんだ事になる.青年将校というところですね,と半分笑ひ乍ら私が批判したら,彼はマジメになって,青年将校ではありませんよ,と否認した.」(渡邊文幸著 検事総長より)

 この本にはライブドア事件も,村上ファンド事件も書いてありますが,東京地検特捜部が失点続きであることを,閉鎖的で,古い体質から抜け出せていないことにあると明確に指摘しています.彼が特捜部にいた時に上司が経済学にも数字にも,表計算ソフトにも全く無知であったことも示されています.このような閉鎖性は新型インフルエンザ対策で暴走した厚生労働省の姿と重なります.かたやカメラマンの居並ぶ中強制捜査を行い,かたや防護服とマスクという異様な姿で国民の不安を煽った機内検疫.疫学的にも,人権の配慮からも,全く有害無益だったあのパフォーマンスです.

 西松建設事件でも献金の20%が小沢事務所に寄付されたのだそうです.ということは残り80%のかなりが当時の与党自民党に流れたと考えるのが普通です.しかも西松建設の関連政治団体「新政治問題研究会」という名称には,重大な疑惑があります.この団体は東京都千代田区にあるのですが,全く同じ名前の故橋本龍太郎氏が代表を務める政治団体も,同じ東京都千代田区に存在していた,というのです.この団体は多くの自民党議員に寄付を行っていたのですが,政治資金規制法では,収支報告書には金額と,団体の名称,所在地しか記載する義務はありません.すなわち西松建設は自民党議員の寄付を隠すために,わざわざ同じ名前と,所在地を選んだと推測されるのです.当時自民党から飛び出した小沢氏にはこのようなメリットはないわけで,そもそも西松側が小沢氏を選んだ訳でないことがこの事でもわかります.

 今の日本は危機的状況にあると思います.組織の閉鎖性や硬直性に阻まれて,大事なものが見えなくなっていると感じざるを得ないのです.基本的人権,推定無罪は,報道の自由や,取材源の秘匿よりずっと重要だと思います.足利事件や,横浜事件,そして明石歩道橋事故で検察の過誤を指摘しながら,一方的に小沢氏や石川議員を責めるのは,全く理性的ではありません.まさに著者のいう「思考停止社会」であり,その旗振りを率先してマスコミがしているのだから呆れます.検察もマスコミも,リークを否定していますが,ライブドア事件の判決で検察のリークを東京地裁が事実認定したことを,マスコミは忘れているのでしょうか.

tnakadat at 19:03│Comments(0)TrackBack(1) 書評 

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