March 09, 2010

大田あや:東大合格生のノートはかならず美しい

東大合格生のノートはかならず美しい
東大合格生のノートはかならず美しい
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かつて桐嶋洋子氏の「聡明な女は料理がうまい」というベストセラーがありました.中身を見ると,料理のレシピで,では料理がうまくなると聡明な女性なのかといえば,そんなはずはありません.「料理がうまければ,聡明である」(逆),「聡明でない女は,料理が下手」(裏)が必ずしも成り立たないのは論理学が教えるところです.

 この本も,言わんとする所は「美しいノートを作れれば,東大に合格できる」ということでしょう.しかし仮に「東大合格生のノートは必ず美しい」という命題が正しいとして,逆の「ノートが美しければ,東大に合格する」という命題は必ずしも成り立たないのは自明です.ノートが美しいということ自体が極めて抽象的,主観的ですが,ノートを美しく取る努力の分だけ,時間が失われることだけは間違いありません.

 先日銀行の新入社員の研修風景がニュースで報道されていましたが,いまだに大卒者にもお札の数え方を教えているのは驚きました.確かに銀行はお金が商品ですが,他にも教えなければならないことは沢山あるはずです.まるで旧日本陸軍のように,「娑婆の気分を叩き出す」,「愛社精神を涵養する」という洗脳まがいで有能な人材が育つとは到底思えません.残念ながら今の日本には肝心のものがぽっかり抜け落ちているような気がします.論理学といわずとも,自分の頭で考えること,自分の目で確かめること,自分の手足で動きまわること,そういう原初的な経験がない.ペーパーテスト万能,テレビゲームのような仮想現実だけでは,欧米のしたたかなエリートにも,中国やインドといった新興国のパワーにも勝てないでしょう.

今の日本の教育は,「いかに速く」,「いかに効率的に」ばかりを追い求めているようにしか思えません.しかしそれでは昨今散々叩かれているトヨタ車と同じです.アクセルペダルの不具合にせよ,フロアマットにせよ,電子制御装置の不具合にせよ,アクセルにブレーキが優先するブレーキ・オーバーライド・システムが重要なのです.トヨタでは今後全車種に搭載することになったようですが,日本の教育や社会にもブレーキ・オーバーライド・システムが必要ではないでしょうか.少なくともこんな子供騙しに引っかかるようでは,教育の価値が問われるのは当然です.

tnakadat at 07:41│Comments(0)TrackBack(0) 書評 

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