March 17, 2010

回転寿司は食の堕落

 おそらくワシントン条約締結国会議で,クロマグロは国際取引を禁じる付属書1となるでしょう.水産庁は「乱獲は日本の責任ではなく,現地業者の取締りが甘いため」と反論していますが,漁獲高の80%が日本に集中し,築地の市場が高額で競り落とすことは世界の常識です.官僚が反論すればするほど,日本が国を挙げて資源の枯渇に手を貸しているという構図になりかねません.南氷洋捕鯨を日本固有の食文化と呼ぶ人たちがいますが,沿岸捕鯨は日本固有の文化かもしれませんが,南氷洋捕鯨は戦前,戦後の食料事情によって生まれた,いわば国策でした.税金を使ってわざわざ南氷洋に調査捕鯨を行うのは,いかにも時代錯誤です.
 
 大量のマグロを捕獲し,食べる行為はエコロジーからいっても問題です.マグロはご存知の通り回遊魚で,成長するのに大量の餌を必要とします.テレビでは近畿大学水産学部の稚魚からの養殖を取り上げていましたが,そのコストについては触れませんでした.マグロの蓄養とは異なり,資源保護に役立つとしていますが,卵から育てるのですから,蓄養よりも餌やエネルギーが使われるのは当然です.おまけに脂肪はタンパクや糖質に比べ,重量当たりのカロリーが高い.脂が乗ったマグロを育てるには,さらに餌を与えなければいけません.

 人口が増え続ける世界ではいずれ水産資源が食用に供されるのは時間の問題です.マグロのような大きな回遊魚がいつまでも食べ続けられる訳はないのです.しかもそれを食べる人間にも負担がかかります.いくら動脈硬化を防ぐEPAや不飽和脂肪酸が多いといっても,やはり脂は脂です.取り過ぎは体に良いはずもありません.ニュースでは大西洋クロマグロの在庫はあと一年分あるので,禁輸となっても,すぐには価格に反映しないといっていましたが,マグロの大量消費国日本がそれだけのクロマグロを掻き集めている,と自ら証明するようなものです.中国や台湾の富裕層が消費しているという,これまでの言い分が嘘だったということにはならないでしょうか.

 最後にマグロのトロがなければ寿司屋は成り立たない,というのは思い込みに過ぎません.ご存知の通り,トロを喜んで食べるようになったのは,つい最近のことです.まして週末に大挙して回転寿司に家族連れが殺到し,あたかも遊園地のように寿司ネタを漁る風景は,どう考えてもここ10数年のことです.回転寿司が繁盛する一方で,街中の寿司屋は閉店が相次いでいます.テレビで大間のマグロ漁を取り上げ,ショッピングセンターの客寄せにマグロの解体ショーが使われ,子供たちがウニだ,トロだ,アワビだ,エビだと食べまくるのが伝統の食文化なのか,豊かさの象徴なのか,日本人はよく考えるべきでしょう.

tnakadat at 11:56│Comments(4)TrackBack(1) 記事,事件 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. クロマグロ禁輸案否決  [ 王様の耳はロバの耳 ]   March 19, 2010 10:29
クロマグロ禁輸案否決=日本の「反対」実る−ワシントン条約会議委員会(時事通信) - goo ニュース カタールで開かれているワシントン条約国会議の第1委員会で採決されたモナコ提案の「クロマグロの禁輸案」が賛成20反対68危険30票の大差で否決されました。 まだ来週...

この記事へのコメント

1. Posted by c.c   March 19, 2010 19:30
トロって、昭和の初期までは捨てられていたんですよね。
有名なネギマも赤身ですし。
トロが高級で美味しいって、そんな先入観がどこかで造られた気がします。
ほんとにそうなのか、高いお金を出してまで食べるものなのか、各自が考えるべきでしょう。
食産業のワナは、こわいよね。
2. Posted by さいのめ   March 20, 2010 17:51
畜養マグロってまずいですよね。驚くほどまずい。食べていて気持ち悪くなります。今後の技術の発展で改善されていくのだろうけれども、それでもむずかしいだろうなあ。冷凍マグロは1年分だけど、イカは10年分とも30年分とも聞いたことがあります:)
3. Posted by tantanmen   March 24, 2010 21:48
c.cさん:フカヒレを巡って中国と共同戦線を張り,何とかクロマグロ禁輸を阻止しましたが,大量のマグロを消費する構造は変わっていませんね.マスコミはトロやマグロ信仰を煽ってきましたから,変わらないでしょうね.干瓢や,海苔,コハダといったネタではテレビ的には見栄えがしないでしょうから.
4. Posted by tantanmen   March 24, 2010 21:56
さいのめさん:お久しぶりです.私自身は畜養と天然のマグロの味が分かるほど食べ比べたわけではないのですが,確かに畜養マグロは全体に脂が乗って,しかも肉質が締まっていなくて,赤味も足りないような気がします.魚網で区切られた養殖生簀では充分な運動ができないのでしょうね.赤味の色はおそらくミオグロビンです.酸素をくっつけて筋肉の長時間の活動を支える物質ですから,畜養マグロには不要なのでしょう.あるいは餌の種類とか,抗生物質なども入っているかもしれません.イカもそんなにかき集めているのですか.日本の食はいびつですね.

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔