映画,DVD

October 03, 2009

ワイルドスピードX3:トーキョー・ドリフト

ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT 【プレミアム・ベスト・コレクション¥1800】 [DVD]
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オリンピック招致に敗れた石原都知事は「東京のプレゼンテーションは誰に聞いても,最高だった.なぜ敗れたのか分らない」と語りました.しかし開催都市の支持率は四都市中最低の55.5%でした.石原都知事やJOC,電通には東京以外の日本や,世界の声は届かないのでしょうか.大体プロモーション・ビデオを見て,どこの誰が東京に来たいと思うでしょう.スーツ姿のサラリーマン,制服で通学する学生たち.人があふれる渋谷の交差点,同じくまるでラッシュアワーのような東京マラソン.しかもその出発点が威圧感のある城塞のような東京都庁ですから,余計秩序に圧迫される個人を象徴するように映るのです.

 一体東京を舞台にした秀逸な映画が最近あったでしょうか.パリ,ロンドン,ニューヨーク,ローマ,それぞれ都市を舞台にした優れた映画がありますが,その中で東京は大きく見劣りがします.少なくとも江戸や戦前,戦後の東京ではなく,今の東京を舞台にした秀作はないといって良いでしょう.一つは個性的な街並みや景観が決定的に欠けている.どれも外国の都市の模倣に過ぎず,しかも街としての統一感がありません.さらに東京は全く映画のロケに協力的でない.この映画でも東京で街並みを撮影し,アクションシーンはロスアンジェルスでセットを組み,デジタル合成を行なっています.特に渋谷の交差点を模したカーアクションは秀逸と言って良い.ハリウッドの底力を見る思いです.東京にも東京駅や皇居,国技館,国会議事堂など映画向きの舞台は多いと思います.しかしこれらの多くは様々な規制や,融通の利かない役人や警察のため,ロケはほぼ困難です.

 この映画はいわゆるB級アクション映画です.しかも第一作,第二作に出演したヴィン・ディーゼルやポール・ウォーカーも出ていないので余計に注目度は低いかもしれません.しかしこの映画を見ると,外国人から見た東京というのが,よく分かります.主人公は全く日本人とは交流がない.彼は事情があって高校に編入するのですが,「ガイジン」と呼ばれ疎外されるだけの存在なのです.彼が心を通わせるのは在日米軍の子供と,中国系と思われるチューナーだけ.主人公とこのチューナーが渋谷の交差点を見下ろし,チューナーに聞く.「なぜこんなところにいるんだ.」,「彼らを見ろ.彼らが掟を守っているのは,恐れるからだ.大事なことは何をしたいかだ.」

 要するにこの映画を作ったスタッフにとって,東京というのはやたらと規制が多くて(そのために映画のロケすらできない),便利かもしれないが,窮屈な,つまらない都市なのでしょう.このことを認識しない限り,東京は何度チャレンジしても敗退するだけなのではないか,と思います.石原氏や電通はこのDVDを一度見ることをお勧めしたい.もっとも石原氏は「シナ」とか「第三国人」と差別意識丸出しですから,監督が中国系アメリカ人というだけで,見ようとはしないでしょうが(笑).

tnakadat at 18:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

December 14, 2008

サンキュー・スモーキング

サンキュー・スモーキング (特別編) [DVD]サンキュー・スモーキング (特別編) [DVD]
出演:アーロン・エッカート
販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2008-04-16
おすすめ度:4.5
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原題はThank you for smoking.これはThank you No smokingのもじりなのだそうですが,これをカタカナにして,しかもforを省略するという,どうも言葉足らずのタイトルです.

 出だしはタバコ産業の裏話かと思いきや,実はロビイストを徹底的に皮肉り,しかもエンターテイメントとしても上質という,優れた映画です.主人公のニック・ネイラーはタバコ産業に高給で雇われる辣腕のロビイスト.対談では話の論点をすり替え,司会者や視聴者を味方に惹きつける話術と,天性の魅力を持っています.しかし取材に来た女性記者との寝物語から,肺癌に罹った元俳優に大金を渡し,口封じをしたこと,酒造業,銃器産業など,MODSと呼ばれる「死の商人」と頻繁に情報交換を行っていることを暴露され,慌てたタバコ会社から解雇を言い渡されます.彼のモットーは「全てはローンのため」でしたが,暴露記事を書いた記者からも「私もローンのため」と云われ,すっかり意気消沈してしまいます.

 ここまではよくある展開ですが,実はここからがこの映画の真骨頂.何と彼はタバコ会社から解雇されたにもかかわらず,無謀にも議会の公聴会に出席し,上院議員や,自分を解雇に追い込んだ記者との再戦に挑むのです.ここから先は書きませんが,実に良く出来た映画で,良くも悪くも,アメリカ映画らしい楽しさに満ち溢れた映画で,娯楽映画としても立派に成功していると思います.しかし彼はこの戦いを自分と,彼の息子のために選んだのであって,タバコやタバコ産業のためではありません.

 彼のボスはその直前に心臓病で命を落とし,彼自身もタバコを吸えない身になってしまいます.この映画の終わりで出てきますが,アメリカ国内でも,喫煙という習慣と,タバコはもう命運が尽きていたのでした.1998年クリントン政権時代にアメリカ国内のタバコ産業5社は,総額2460億ドルの賠償金を46の州政府に支払うことに合意しました.和解金は,アメリカの裁判の和解金としては史上最高額だったそうです.この裁判は州政府が医療保険への補助金として支出した医療費のうち,喫煙によってかかる病気の治療に使った分をタバコ業界に支払うよう求めた裁判でした.

 ですからすでに彼のロビイストとしての運命は,スキャンダルが無くとも尽きていたのでした.こういう事情をアメリカの観客は,すでに知っているのです.そしてタバコが癌や心臓病,慢性肺気腫という肺の慢性疾患の原因であることも.そしてこれは何もクリントン政権のアメリカだけではなく,日本や中国,ロシアなどを除く欧米諸国では,すでに常識となりつつあります.

 それでは日本はどうか.自民党の税制調査会がタバコ税増税を見送った次の日の朝刊で,この話題を深く追求した新聞は皆無でした.共同通信だけがJTなど,タバコ税増税に反対する団体が,230万人分の署名を集めたこと,公明党も,タバコ税増税に強く反対したことを伝えました.また税制調査会の主要メンバーである柳沢 伯夫議員や中川昭一氏,そして総理大臣である麻生氏も愛煙家であることはブログでも書かれているとおりです.

 しかし230万の署名がどのように集められたかを検証した記事は皆無です.残念ながら,日本の常識は世界の常識ではありません.年間肺癌の新規患者は16万人,喉頭癌は3000人,喉頭癌の95%は喫煙者であることから,数は少なくとも喫煙の関与する割合は非常に高い,そして慢性肺気腫に至っては,潜在的に530万人の患者が存在するといわれています.230万人の署名の多くはタバコ栽培農家ではなく,零細なタバコ販賣店でしょう.タスポカードの導入で,自動販売機の導入費用がかかり,その上コンビニに客を奪われたのですから,増税に反対する気持ちは理解できます.しかしそれはタスポカードという制度が稚拙であった,ということでこれらの零細な商店を救済しながら,タバコ税を増税する方法はあるはずです.

 230万の署名が重要なのか,これらの患者が大事なのか,そう問う声がテレビはもちろん,新聞,雑誌からも全く発せられないのは一体どうしたことでしょう.この国の政治家のみならず,マスコミの時計も数十年前から動きを止めているのではないか,そう思わずにはいられません.
 

tnakadat at 17:59|PermalinkComments(0)TrackBack(2)

October 29, 2008

CSIマイアミ6

Csi: Miami - Sixth Season (6pc) (Ws Dub Ac3 Dol)
Csi: Miami - Sixth Season (6pc) (Ws Dub Ac3 Dol)
ご存知CSIマイアミ.wowowでシーズン6が始まりました.主役のホレイショ・ケインの決め台詞はもちろん,銃撃され後遺症に苦しんだエリック・デルコ,首になったライアン・ウルフなど,なかなか波乱があって楽しめます.セサミストリートのパロディ,RSIも笑えますが,何といってもジム・キャリーのモノマネはもっと面白い.ぜひ本物と比べてください.

tnakadat at 16:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

October 04, 2008

ミッドナイトイーグル

ミッドナイトイーグル スタンダード・エディション

先日WOWOWで放送していたのを録画で見ました.はっきり言って素面では見れません(笑).酔っ払っていてもきついかも.ストーリーは横田基地から発進したアメリカのステルス爆撃機が,日本アルプスに墜落.第三国がステルス爆撃機に搭載されていた特殊爆弾を狙い(第三国,特殊爆弾と本当に伏せ字ばかりです.原爆投下直後の大本営発表じゃあるまいし,いまどき特殊爆弾はないでしょう.)自衛隊と銃撃戦を展開.カメラマンが巻き込まれるというものです.

 突っ込みどころが多過ぎて,語りだせばきりがないのですが,まず物語がお粗末.なぜアメリカが戦時でもないのに,ステルス爆撃機に特殊爆弾を搭載して,第三国に向かおうとするのか.戦闘は特殊爆弾一発で終わる筈もないし,横田基地から発進する以上,日本もそれに加担していなければなりません.それなのに総理大臣も,在日アメリカ軍や,在日大使と話し合う場面すらありません.さらにそういう緊迫した外交情勢でありながら,多数の特殊部隊の潜入を許すお粗末さ.

 ステルス爆撃機の墜落や,ゲリラの潜入といったシーンが全く描かれず,いきなりアルプスに墜落,その後は登場人物の会話で,全容を知るといった進行なので映画としては退屈なことこの上ありません.こういう展開は小説なら許されるのでしょうが,観客を置いてきぼりにするため,映画としては好ましくありません.しかも雪や,寒さがスクリーンから伝わりません.雪の全くない東京から車で移動して,おそらく凍結した,あるいは圧雪状態の路面を走る緊張感が,全く感じられません.そういう細かなシーンの積み重ねが,せっかちに筋書きを追うあまりに,省かれているのです.

 時間経過がはっきりしないのも難点です.人気シリーズ「24」とまではいきませんが,相手が特殊爆弾を奪取せんと迫るゲリラなのですから,時間経過はドラマを盛り上げる上で重要な要素です.ところが肝心の時間経過が曖昧で(映画を見ただけでは彼らが山中にいたのが一晩なのか,二晩なのかさっぱりわかりません),ゲリラをかくまう女性や,亡くなったカメラマンの妻や,子供といった本筋から離れた描写でさらに緊迫感を削いでしまう.構成も弱いのです.

 あれほどの装備を抱えたゲリラが,本来墜落場所も秘匿されている筈の日本アルプスに,自衛隊よりも素早く到着できて(厳重警戒中の筈なのに),しかもロケット砲まで都合よく持っているのか,全く分かりません.また精鋭習志野第一空挺師団が次々にやられてしまい,しかもステルス爆撃機に立て籠るのに無線機を持たず,民間人の無線でしか連絡できないというのも,おかしな話です.強力な無線装置,GPS,赤外線暗視装置は今では標準装備ではないのでしょうか.

 巻き込まれたカメラマンが銃を手に取るシーンでも,自衛隊員からのレクチャーは一切なしです.切換レバーで連射,三点バースト,単射に切り換えるわけで,安全装置を兼ねています.せめて「三点バーストで狙え,無駄弾を撃つな」くらいは言う筈なのですが.また何度もゲリラから狙撃されているのに,鮮やかなオレンジ色のジャケットを着続けているのもお笑いです.私ならリバーシブルの裏側を表にするか,殺された自衛隊員の迷彩ジャケットを迷わず着用します.生死を分ける場面で,そんなことを躊躇してはいられません.修羅場をくぐりぬけてきた筈の戦場カメラマンがそばにいて,しかも精鋭部隊の三佐が放置するのはあり得ないでしょう.

 最後のアメリカ原潜による巡航ミサイル攻撃というのも,不可思議なオチです.精密攻撃は何も巡航ミサイルに限りません.JDAMや,それより古いレーザー照射による誘導でも良いでしょう.それこそアパッチでも飛ばせばよい.ヘリが飛べなくとも,固定翼機は飛ばせます.固定翼機が精密誘導爆弾を高空から投下し,ヘリがレーザーを照射すれば良いのです.そもそも自衛隊特殊部隊の任務がゲリラ掃討のみならず,ステルス爆撃機の確保,機密の保持にあるのなら,アメリカ海兵隊が黙ってみている筈もありません.沖繩からでも駆けつける筈です.沖繩の海兵隊はイラクに派遣されていることから分かるとおり,極東に限定されてはいません.東北の自衛隊と合同訓練を行っているくらいですから,臨戦態勢でない筈はないのです.まして第三国が極東ならば,何をかいわんやです.もうケチの付け所は無限にあります.

 また撮影もメリハリがありません.雪山も吹雪いているという設定なので暗く,東京でも室内のシーンがほとんどで明暗の差に乏しいのです.せめて薄暮の銃撃戦では,フラッシュハイダーからの光りを雪原で際立たせるとか,工夫があってよいと思います.これではつまらないカメラワークといわれても仕方がありません.松竹か,テレビ朝日か,わかりませんが,二時間ドラマやバラエティーしか作らなければ,腕が磨けないのは当然でしょう.ゲリラをかくまう第三国(いっそ北朝鮮と書きたいのですが)の女性が全く日本語をしゃべれない,というのも摩訶不思議.実働部隊を支援するスリーパーないし,アンダーカバーは周囲に溶け込み,公安などから気づかれることがあってはいけません.ハングルをしゃべらないことで「第三国人」で通そうとしたのでしょうが,まるでリアリティーがありません.

 この映画は一体どんな層をターゲットにしたのでしょうか.おそらくミリタリーオタクでないことだけは確かですが,それでもいまどきの中学生でもこの映画の数々の矛盾を指摘できるでしょう.竹内結子,玉木宏といった俳優に金をかければ,良いとでも思っているのでしょうか.しかしやはり映画の成否を決めるのは一にも二にも,台本です.それからリアリティー,演出でしょう.大きな嘘をつくためには,細かな真実がなければいけません.残念ながらこの映画は全てが落第点.せっかく寒いところで撮影した俳優さんには申し訳ありませんが,最初から最後までお寒い内容でした.

tnakadat at 15:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

August 23, 2008

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

 「ぜったい見て損のない映画」という表現がありますが,この映画は「ぜったい見て損をする映画」です.スピルバーグは数々の駄作,凡作を世に出していますが,これは恐らく駄作の最右翼に位置する作品でしょう.もちろんスピルバーグは押しも押されもせぬ「大監督」です.「未知との遭遇」や「E.T」などで瀕死のハリウッド映画を立て直し,ベトナム戦争で疲弊し,国際的に信用を失ったアメリカを,底辺で支えた功績は大したものでしょう.

 しかし何度もアカデミー賞を取り逃がしているように,興行成績と,映画という作品の質とは別物です.「プライベート・ライアン」,「マイノリティ・レポート」,「キャッチミー,イフ・ユーキャン」など一部のファンはともかく,構成の弱さは致命的で,とても大人の鑑賞に堪える水準には達していません.人の目を欺く,映像の魔術師とも呼べるテクニックは大したものです.しかも早撮りで有名なそうですから,会社にとってはこれ以上ない逸材です.しかしそれは観る側にはどうでもよいことです.

 この映画には今年65歳になるハリソン・フォードと,ケイト・ブランシェットが出ていますが,どちらの演技も全く精彩がありません.嫌々出演しているのがよくわかります.シナリオも全く平凡,水晶髑髏,ロズウェル事件,UFOなどありきたりの小道具を取り混ぜて,西部劇でおなじみの乱闘シーンや,カーチェイスといったこれもハリウッド映画でお馴染みの演出ですが,新鮮味はまるで感じられません.最悪なのはネバダの核実験でしょう.私はこのシーンだけでも日本での上映をボイコットすべきだと感じました.それなのに反核団体や,平和団体の抗議もなく,新聞,雑誌でも一切批判はありません.ディズニーと,スピルバーグを批判することは罷りならぬ,ということなのでしょうか.すっかり日本のマスコミや知識人は飼い慣らされ,牙を抜かれてしまったようです.

 私にとっては空しい2時間10分でした.「パイレーツ・オブ・カリビアン」の2時間50分も長かったけれど,内容の下らなさからいえば,本作の勝ちです.恐らく今年暮れにはDVD化され,初回3980円だったものが,数年で駄作「宇宙戦争」のように2000円ほどで流通することでしょう.それまで待って良い代物です.スピルバーグはもはや過去の監督である,それがこの映画の最も確かなメッセージであると私は思います.

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July 13, 2008

300 (スリーハンドレット)

300<スリーハンドレッド>特別版(2枚組)
まず断っておきたいのは,この映画はかつてハリウッドで多く作られた史劇ではない,ということです.グラディエーターのようなフィクションではあるけれど,それなりに時代考証を重ねた映画だと思ってみると,がっかりするどころか,悪趣味ともいえる映像で途中で投げ出したくなるでしょう.

 私も何度か観るのを止めようか,と思いました.何しろほとんどがコンピュータ・グラフィックで,これでもかというほどの残虐シーン.映像のノリはコンピューター・ゲームのそれに近いのです.日本の劇画や,香港映画の様式美といっても良いかもしれませんが,首は飛ぶわ,血飛沫は飛ぶわで,ハッキリいって品が悪い.さらにあまりにあからさまな人種偏見.スパルタ軍はヨーロッパ,ペルシャ軍はアフリカ系,中東系,そしてまるで忍者が能面を被ったような「不死の軍団」.極めつけはペルシャ帝国の王クセルクセスで,もはや人間ですらなく,まるでドラゴンボールのナメック星人のようです.

 しかしこのような破天荒な映像ながら,わずかな兵を率いて戦い,全滅したスパルタの王レオニダスの言葉は,重く心に残るのです.
クセルクセスは「私に跪け」という.従者は「王に跪けば,そなたはギリシャの王となり,スパルタは富み栄えるであろう」,「世界の真の支配者と同格になる」だから武器を捨て,跪け,というのです.どこかで聞いたような文句ではありませんか.

 レオニダスは盾を捨て,全力を振り絞り,鎗をクセルクセスに投げ,ペルシャ軍の放つ無数の矢に貫かれて,息絶える.その前に裏切り者,エフィアルテスには「お前は永遠に生きろ」と命じ,エフィアルテスの顔は歪み,視線をそむけるのです.先日民主党が在日米軍基地を縮小し,長期的には国内から移転することを,マニフェストに加える,と発表しましたが,マスコミの扱いは小さく,山本モナ不倫騒動や,大阪道頓堀の「くいだおれ」閉店の方が扱いが大きい有様です.多分マスコミは,そして官僚も,自民党も,財界もそんなことを報道してほしくないのです.誰もが裏切り者,エフィアルテスになってしまったから.その毒を飲んでしまったから.

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June 30, 2008

ストレンジャー・コール

ストレンジャー・コール
高校生が豪邸のベビーシッターとして泊まっていると,謎の電話がかかり…とえらく古典的なスリラーだと思ったら,1979年の「夕暮れにベルが鳴る」というハリウッド映画のリメイクなのだそうです.しかし昨今のリメイクが,とにかく刺激的に,暴力や破壊をコンピュータ・グラフィックを駆使し,これでもかとこねくり回すのに対し,この映画ではそのような演出が一切ありません.監督は「コン・エアー」や,「トゥム・レイダー」を作ったサイモン・ウェストですが,この割り切り方は見事です.多分CGは湖畔に立つ豪邸の遠景のみで,あとは全てが実写です.最後の最後まで血や暴力は出てこず,これ見よがしのセックス描写はなし.大体「スクリーム」や「ラストサマー」など,こんなところでセックスしている場合じゃないでしょう,というのがこの手の映画には多過ぎました.若い映画ファンは「史上最大の作戦」や「バルジ大作戦」の兵士の倒れ方がリアルでない,という感想を持たれているようですが,かつての時代劇のように,死をある種の様式美で見せるというのが,節度ある表現だったのです.それが内臓は飛び出すわ,指が引きちぎれるは,では芸術も糞もありません.この映画ではある種の原点回帰が見られるという点で,大いに評価すべきだと思います.ではこの映画どこに金をかけたかというと,この舞台となった豪邸なのでしょう.中庭には日本庭園を模した池があり,直線を基調としたデザインは何となくフランク・ロイド・ライトの設計した個人住宅を連想させます.間取りまで分かるような撮影が,恐怖感を誘うのです.日本映画も下手なCGや爆発シーンの真似は止めて,こういう演出を真似て欲しいものです.いかにもセット然とした安手の家では,どんな名演も白けてしまいます.

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November 22, 2007

ブルーレイ・ディスクはベータと同じ道を歩む?

東芝がDVD-Rにフルハイビジョンを2時間録画できる,HDレコーダーRD-A301を発売しました.この製品の特徴は,新しい映像記録規格であるHD Recを採用し,高い圧縮率で現行のDVD-Rに録画できる点でしょう.MPEG4AVC(H.264)はハイビジョンビデオカメラにすでに採用されていたのですから,技術的にはそうハードルは高くなかったのでしょう.ブルーレイか,HD-DVDか,と一部のマニアは燃え上がっているようですが,はっきりいって今のDVD-Rは一枚100円と安いし,昨今の原油価格上昇,サブプライム・ローンで,アメリカ市場もお先は真っ暗,日本の企業もアメリカ市場が冷え込めば,日本経済も,アジア経済も暗いでしょう.理想を追ったベータが,販売力でVHSに屈したように,現行ディスクが使えて,同じ生産ラインを使えるHD-DVD戦線にまたも負けてしまうのではないか,ソニー信者には悪いのですが,そんな感じがします.

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September 04, 2007

バック・トゥ・ザ・フューチャー

バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー・ボックスセット
昨日NHK−BSで「バック・トゥ・ザ・フューチャーを放映していました.もう何度も地上波で放送されていて,珍しくもないのですが,改めて見てみると本当に良く出来ています.

 舞台は1985年,レーガン政権の時代です.クリストファー・ロイド扮するドクと,マイケル・J・フォックス扮するマーティーが,当時の希少車であるDMCデロリアンを改造したタイムマシンで,未来と過去に旅立つというのが,粗筋です.第一作では1955年,第二作では2015年と,1955年,そして第三作では1955年から大西部時代である1885年に旅立ちます.

 監督であるロバート・ゼメキスにとって,1950年代というのは,とても思い入れが深いようで,「ロジャーラビット」や「フォレストガンプ」でも,とても美しく描かれます.一方1985年マーティが目を覚ますシーンでは,時計がパナソニック製,ピックアップトラックはトヨタ製,2015年になるとベッドタウンは貧民窟となり,日本人社長(フジツー氏とは笑わせます)にクビを宣告されます.雷に打たれショートした日本製のICチップを見て,1955年のドクは「安物を使うからだ」と言い,マーティは「日本製は最高だよ」と答え,笑わせます.この映画の冒頭に出てきたパナソニックに,ユニバーサルは買収されるわけで,何とも皮肉なものです.

 この映画はアメリカ経済がまだまだ沈滞していた時代に作られたのでした.日本製のビデオデッキ,テレビ,自動車に押しまくられ,パーソナルコンピュータで巻き返しを図りつつあった(マックがちらりと出てきます)のですが,ICチップでは日本が市場を独占していた時代です.

 多分日本経済は近いうちに更に活力を失うでしょう.農業も駄目,製造業も中国や韓国に太刀打ちできなくなり,いずれマツダや,日産,ホンダといったトヨタ以外の自動車メーカーは韓国や中国の安さに屈するかもしれません.デロリアンはGMの副社長だったジョン・デロリアン氏が,会社を設立し,作った車です.ガルウイング,無塗装,ヘアライン仕上げのステンレス製ボディ,近未来的なスタイルでしたが,1.3トンの車重に130馬力のSOHCエンジンは非力で,わずか8000台余りで製造中止になりました.

 あと10年もしたら,日本でもロータリーエンジンを積んだコスモや,RX-7をタイムマシンにした映画が作られるのでしょうか.その時中国製や韓国製の商品を「最高だよ」と手放しで褒めることが出来るだろうか.何より我々はこの国のどの時代に,タイムトラベルしようと思うのだろう.帰るべき時代や,帰るべき場所があったのだろうか,あまりに急ぎ過ぎて,もはや過去すら見失ってしまったのではないか,そんな気にさせるのです.

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August 26, 2007

フォレスト・ガンプ 一期一会

フォレスト・ガンプ
言わずと知れたトム・ハンクス主演,ロバート・ゼメキス監督で大ヒットした名作.「ロジャー・ラビット」や「バック・トゥー・ザ・フューチャー」といった特撮を多用し,どちらかといえばスラプスティックな喜劇作品を得意としていたゼメキス監督は,この作品を作ったことで「ホワット・ライズ・ビニース」や「コンタクト」といったシリアスな作品も作り始めました.そしてこの作品と「バック・トゥー・ザ・フューチャー」は日本のテレビ,特にフジテレビの一連のドラマに大きな影響を与えたように思えます.大仰な音楽,大げさなほどの演技,かつてはバタ臭いと敬遠されていた演技が,茶の間に溢れ,今では「三丁目の夕日」のように映画でも主流となっています.しかし今になってこの映画を見ると,この映画はただ単にトム・ハンクスが走り回る映画か,というとそうではないのです.この映画で徹底的に茶化されるのは,アメリカ社会の「進歩」です.フォレストは当時の最新科学であった知能指数が75だったから,という理由で養護学校へ行け,と校長に勧められます.彼の幼なじみであるジェニーは,ジョーン・バエズに憧れ,反戦運動に染まり,そして再開もつかの間,エイズのために命を落とす.フォレスト・ガンプは変われない男なのです.彼がアメリカ中を走る時に映されるアメリカの大自然と同じく,彼は変らない.変ってゆくのは社会の方で,彼の周囲の人間はそれに翻弄される.それは戦争であったり,社会の変化であったりします.モータリゼーション,ベビー・ブーム,公民権運動,ベトナム反戦運動,ヒッピー・ムーブメント,アポロ計画,フォーク,ロック,フリーセックスやマリファナ,同性愛,カルトと呼ばれたさまざまな新興宗教,フリーズ・ドライ,ファーストフード,戦後のアメリカはまさに走り続け,狂ったように「進歩」し続けました.封切当時「反戦運動を茶化すのは抵抗を感じる」と書いた評論家がいましたが,この映画ではベトナム戦争も,政治も何もかも茶化しているのです.目まぐるしく変化し,皆が「改革」や「進歩」を求めるこの社会を徹底的に皮肉っているのだ,と思います.だからこの作品は今見ても充分に面白い.実写フィルムとの合成も,テーマがしっかりしているからこそ,楽しめるのだと思います.映像と重なる音楽の選択もこれまた絶妙.この作品に比べれば,残念ながら「三丁目の夕日」はどうしようもなく子供っぽく,幼稚です.技術の習得では,彼の一連の作品は役に立ったのでしょうが,残念ながらしたたかなゼメキス監督の精神までは,コピーできなかったようです.

tnakadat at 17:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0)