音楽,CD

July 04, 2009

メーカーが教えないリニアPCMレコーダーの楽しみ

010a5029.jpg タスカムやソニーに続いて,ヤマハやオリンパスからリニアPCM録音が出来るデジタル・レコーダーが発売されています.ICレコーダーが長時間録音,しかも会話を録音することに目的を絞っているのに対し,このリニアPCMレコーダーはかつての生録やバンド演奏を録音し,編集することを前提にしているので,リニアPCMという非圧縮音源を録音,再生することができます.

 しかしバンド演奏をしないとなると,かつてのような生録の対象はどこにあるでしょうか.かつては蒸気機関車,SLや野鳥の録音のマニアがいましたが,SLはほとんど廃止,街中に溢れていたさまざまな音は,画一的な電子音に置き換わってしまいました.風鈴や,物売りの声,季節を感じるこのような音は,騒々しいスピーカーの音にかき消され勝ちです.

 このリニアPCMレコーダーの賢い利用法は,CDを非圧縮のまま,パソコンでコピーして聴くことです.ウィンドウズ・パソコンならば,付属するウィンドウズ・メディア・プレーヤーで簡単にWAVファイルを作成でき,しかもタイトルや,曲名,アーティスト情報をネットからダウンロードできます.あとはUSBケーブルで接続して,ファイルをコピーするだけ.写真のタスカムDR-1では,32GBのSDカードも使えるようなので,およそ60枚のCDを納めることができます.まあ一泊旅行くらいなら,8GBか,16GBくらいで充分でしょう.連続使用時間は,カタログデータで7時間.これは録音時なので,再生ではもう少し持つように感じますが,実際に調べたわけではないので,ご参考までに.

 MP3ファイルとWAVでは,音楽の質が全く違います.また世の中には多くのMP3プレーヤーがありますが,多くのデジタルプレーヤーは,圧縮音源であるMP3ファイルをうまく聴かせるようにチューニングしてあり,このリニアPCMレコーダーはそのようなチューニングはしていないようです.ですからこのタスカムのレコーダーでMP3ファイルを聴いても,平凡な音にしか聴こえません.しかしWAVファイルを再生すると,雰囲気が一変.ちょうど街中をゆっくり走っていたスポーツカーが,ワインディグ・ロードで生き返るような感じです.エコ全盛のご時世ですが,メモリーに少し贅沢をしても,バチは当たらないでしょう(笑).

 こういうと,若い音楽ファンは笑うかも知れませんが,五分の一とか,十分の一に圧縮された音楽では欠落した部分が必ずあります.ポップスなどでは分かりにくくとも,クラシックやジャズ,しかも生楽器や,ボーカルでは倍音成分や,楽器や肉声に付帯する震えのようなものが,見事に消え失せてしまいます.MP3ファイルを聴いているときの何となくつまらない感じは,そういう情報の欠如を人間は敏感に感じているからだと思います.

 今では安価な製品は,MP3プレーヤーとそう変わらない,1万円台で売られています.リニアPCMレコーダーは,リニアPCMプレーヤーとして使える,至極当たり前ですが,メーカーは著作権保護の建前から,表立っては宣伝できないようです.しかしこの音は素晴らしい.圧縮した音源は,冷凍食品や,フリーズドライのカップめんのようなものです.それはヘッドホンや,プレーヤー側の工夫で幾分は音質の改善があるかもしれませんが,微々たるものです.メモリー価格が下落した今,リニアPCMの音に浸ることをお勧めします.

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僕等の時代:麻生総理に捧げるバラード

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もうそれ以上そこに 立ち止まらないで
僕等の時代が 少しづつ今も動いている

あの頃の時代に 戻ってやり直したいこと
誰にでも それぞれ心の中に

時は移りゆくもの 明日を見つめて
あの頃は時々 振り向くだけにして

もうそれ以上 そこに立ち止まらないで
僕等の時代が 少しづつ今も動いている

あなたの時代が 終わったわけでなく
あなたが僕たちと 歩こうとしないだけ


もうそれ以上 そこに立ち止まらないで
僕等の時代が 少しづつ今も動いている

あぁ 心を閉じて 背を向けるひとよ
僕等のことばに 耳を傾けて

もうそれ以上 そこに立ち止まらないで
僕等の時代が 少しづつ今も動いている
少しづつ今も動いている


作詞,作曲:小田和正,1980年アルバム We areに収録

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June 29, 2009

Various artists:Yes We Can- Voices of grassroots movement

イエス・ウィー・キャン:ヴォイセズ・オブ・ア・グラスルーツ・ムーヴメント
イエス・ウィー・キャン:ヴォイセズ・オブ・ア・グラスルーツ・ムーヴメント
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 発売が昨年11月11日になっているので,オバマ大統領が大統領選挙で選ばれて一週間で世に出たアルバムということになります.参加したミュージシャンはライオネル・リッチー,スティービー・ワンダー,ジャクソン・ブラウン,シェリル・クロウ,ビービー・ワイナンス,ヨーランダ・アダムスなど多彩な顔ぶれ.何より冒頭のライオネル・リッチーが懐かしい.往年と変わらない力強い声が嬉しい限りです.

 多くの曲にオバマ大統領のスピーチが,重ねられているのですが,実に似合っている.彼のスピーチは,というか話し方は,リズムが美しいということが,よく分かります.亡くなったマーチン・ルーサー・キング牧師の演説も取り入れられていますが,すでにオバマの演説は神格化されているという感じがします.

 そしてこのアルバムのタイトルからも分かるとおり,彼を大統領に押し上げたのは,紛れもなく公民権運動などから続く,草の根民主主義の伝統だ,ということ.ブッシュ大統領が,世界同時多発テロを梃子にして,徹底した世論誘導,言論の制限,そして新自由主義の名の下で行われた福祉や医療,教育費の削減,富裕層優遇の減税政策,八年間に亘る共和党政治に反旗を翻したのは,たった一人の黒人ではなく,無数の草の根運動家たちだったということを,もう少し考えるべきでしょう.

 過剰な福祉は怠惰な人間を生む,というサッチャー,レーガン流の「小さな政府」が主流となり,旧ソ連が崩壊し,社会主義は過去のものという時代になると,貧困層は分断され,まさに「強欲は美徳」,敗者は生き残れない,社会的ダーウィニズムの世界になってしまいました.福祉や医療費,教育費の削減で誰が大きな影響を被ったかは,云わずと知れています.

「チャンスは平等だ」と共和党が強弁しても,スラム街で育ち,両親が離婚したり,失業していれば,公的教育や,福祉,公的医療がなければ,チャンスをつかむどころか,生き抜くことさえ難しい.恐らくヒップホップやダンスはこのような社会状況で生まれ,だからこそ世界中に広まったのではないか,と思います.なぜならば楽器も,音楽の教育も要らない(ピアノや声楽のレッスンは貧しい子供には無縁です),ヒップホップや,ダンスに共感する若者が,グローバル化と同時に世界中に溢れたからです.

 昨日山下達郎氏がモータウンの歴史を番組で紹介されていましたが,特にアメリカにおいて,音楽と社会とは分かち難く結びついていると感じました.モータウンの歴史とベトナム戦争,公民権運動もまた深い関係がある.しかし残念ながら日本ではそういう皮膚感覚とでもいうものが伝わらない.オバマのスピーチ集は売れたそうですが,このアルバムはそうでもなさそうです.政治は政治,音楽は音楽,同じ社会で起きたことなのに,別々のフォルダーに整理されているように感じます.

 アメリカは変革を求める国です.旧ソ連と並んで,実験的国家とすら言って良い.オバマ大統領はまさにそのような変革の時代に,未曾有の国家的危機だからこそ選ばれたのでしょう.このことを我々はどれだけ理解しているでしょうか.一度は死んだと思われたリベラルが復活し,経済というよりも,社会を再生しようとしている.本気になったアメリカの恐ろしさを,我々日本人は嫌というほど知っている筈なのですが.

 これに比べると東国原知事で大騒ぎの,マスコミの何と志の低いことよ.大体任期半ばで知事の職を放り投げる,移り気な人間が一国の代表になれるのか.宮崎県の県庁で行われる定例記者会見を個人的な宣伝の場にするなど,公私混同も甚だしい.カリフォルニア州知事であるシュワルツネガー氏といえども,そんなことはしないでしょう.

 彼の中身のなさ,何でも記事にするマスコミのアホらしさ,そして何といっても彼を担ぎ出すしかない末期的な自民党には呆れます.出るのは勝手だが,まず知事をおやめになったら.地鶏やマンゴーが売れれば,総裁候補になれるというのなら,ジャパネットタカダにでも総理をお任せすれば良いのではないか(笑).

tnakadat at 12:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

Original sound track:The Bodyguard

THE BODYGUARD
THE BODYGUARD
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マイケル・ジャクソンの訃報に接して,ふと聞いてみたくなったのがホイットニー・ヒューストン.思えば1980年代から,90年初めにかけてポップスはブラック・コンテンポラリーが席巻した,といって良いくらいでした.元ルーファスで,独立したチャカ・カーンや,アニタ・ベイカー,男性ではライオネル・リッチー,ビリー・オーシャンなどなど.そういえばブルーアイド・ソウルでリック・アストリーもいた.ジェイムズ・イングラム,オリータ・アダムス,Come In Out Of The Rainというスマッシュ・ヒットを放ったウェンディ・モートンはどうなったのでしょう?

 チャカ・カーンと,リック・アストリーは数年前にイギリスでスタンダード集を発表しましたし,ライオネル・リッチーもオバマ大統領の就任記念CDで元気な声を聞かせてくれます.それに比べるとホイットニー・ヒューストンはご難続き.元夫のボビー・ブラウンの乱行,麻薬中毒などでアーティストとしての活動を休止してしまいました.

 このアルバムは,ご存じケビン・コスナーと共演した映画のサウンドトラックですが,彼女のアルバム,あるいはコンピレーション・アルバムとしても完成度が高い.この人の成功がなければ,マライア・キャリーもいなかったと思うし,日本のいわゆる「ディーバ」もなかったように思います.

 冒頭のオールウェイズ・ラブ・ユーはフジテレビなどで何度もかけていささか食傷気味ですが,実はカントリーシンガーの大物,ドリー・パートンの作.カントリーの名曲をブラコンに取り込む,という大胆な仕掛けが当時のアメリカの音楽状況,そして当時の黒人音楽の自信を示していたと思うのですが,残念ながらその後の彼女の人生は波乱万丈だった.

 それでも彼女は何とか現役復帰を目指し,公式サイトによれば,すでに新作アルバムを完成し,9月1日発売予定なそうです.昨日山下達郎氏がマイケル・ジャクソンの死について「アメリカ音楽界の地獄に引き込まれて」と表現していましたが,地獄から何としても生還してほしいものです.

tnakadat at 08:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

April 27, 2009

Simon & Garfunkel:Live 1969


Live 1969
Live 1969
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このところ堅苦しい内容が多かったので,感動したアルバムの紹介を(笑).何と40年前グループとして最後のアルバムとなった「明日に架ける橋」発売直前に行われた全米ツアーのライブアルバムです.一部ノイズが入っている部分がありますが,録音状態は極めて良好.そして何といっても素晴らしいのは,「明日に架ける橋」に収められた「ボクサー」や,「明日に架ける橋」のライブ・バージョンが聴けること.このライブは構成がこれまでのポールのギターのみというシンプルな構成から,ピアノ,ドラムス,ベースといった,より多彩な楽器を取り入れた構成に移っていったことが分かります.そういう意味では,Live from New York City, 1967 と解散後に共演したConcert in Central Park とを繋ぐ,特にポール・サイモンの音楽の軌跡を知る貴重なアルバムと言えます.確かに「明日に架ける橋」はピアノなしでは語れません.そのピアノはアルバムでも演奏したラリー・ネクテル,ドラムスはハル・ブレイン,ベースがジョー・オズボーンという,これまた凄いメンバー.ファンはもちろん,普通の人も聴いてほしい.サイモンとガーファンクルのハーモニーの凄さ,ギターのテクニック.今でこそコンピュータがリズムも,コーラスも完璧に作ることができますが,このアルバムは全て手作業で,しかも一発録音.流行とか,トレンドとかという言葉が馬鹿らしく感じられます.国内盤は出ていませんが,輸入盤がアマゾンから購入できます.お勧め.

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April 24, 2009

夜空ノムコウ

ca8c9a90.jpg あれから僕たちは 何かを信じて来れたかな
 夜空の向こうには 明日がもう待っている


 誰かの声に気付き 僕らは身をひそめた
 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた
 君が何か伝えようと 握り返したその手は
 僕の心のやわらかい場所を 今でもまだ締め付ける

 あれから僕たちは 何かを信じて来れたかなぁ
 窓をそっと開けてみる 冬の風の匂いがした
 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ
 タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた


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April 12, 2009

チャーリー・ヘイデン:ファミリー&フレンズ


ファミリー&フレンズ:オーシャン・オブ・ダイアモンズ
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チャーリー・ヘイデン,パット・メセニー,ブルース・ホーンズビーと来て,ジャズ・アルバムかと思ったら,これも何とカントリー.といってファミリー&フレンズというタイトルが示すように,彼自身も若い頃はカントリー・ミュージックで名が知られており,彼の娘たちもザット・ドッグという名前で活躍しており,彼らの中では全く矛盾の無いアルバムです.

 一方共演するパット・メセニーも初期の名盤「アメリカン・ガレージ」や「アズ・フォールズ・ウィチタ,ソー・フォールズ・ウィチタフォールズ」ではジャズの枠に止まらず,ロックやフォーク・ミュージックを取り入れ,アメリカの草原や,土の匂いを感じさせる音楽を作り上げたミュージシャンです.チャーリー・ヘイデンとは,「ミズーリの空高く」でも共演していますが,彼にとっても異なるジャンルという意識は,全く無いのだと思います.前の記事で紹介したロバート・プラントとアリソン・クラウスのアルバムや,このアルバムはここ盛岡で聴く分には全く違和感を感じないものです.しかし長らくヒップホップが流れ続けてきた東京ではどうでしょうか.

 かつては街のあちこちに個性豊な喫茶店があり,そこではロックやフォーク,シャンソンなど,喫茶店のマスターの目に適った音楽が,流行とは無縁にかかっていたものです.「流行を追う」とか「トレンドアイテム」といった言葉からそろそろ卒業しても良いのではないか.あのバッハだって長い間忘れ去られた時代があったわけだし,マーラーの交響曲だって,LPレコードやCDといった長時間録音できるメディアが登場するまで,全然ポピュラーじゃなかったそうですから.

tnakadat at 15:35|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

January 25, 2009

オバマ大統領就任記念コンサート

 昨日wowowでオバマ大統領就任記念コンサートの模様が放映されました.見るからに寒そうなホワイトハウス前に大観衆が集まった様は,まるで映画「フォレストガンプ」の1シーンのようでしたが,あの映像はエキストラをデジタル合成したものでした.集まった俳優,アーティストはフォレストガンプのトム・ハンクスや,デンゼル・ワシントン,歌手ではルネ・フレミング,ジョシュ・グローバン,ブルース・スプリングスティーン,ハービー・ハンコック,ガース・ブルックス,シェリル・クロウなどまさに多士済々.最後にスティービー・ワンダー,U2が登場するという本当に豪華なコンサートでした.スティービー・ワンダーをオバマ大統領の娘がデジカメで撮影するところでは,思わず笑ってしまいました.普通の家族がホワイトハウスの住人になった,という印象を与える一瞬だったと思います.

 ハリウッドでもジョージ・ルーカスが参加するなど,本当にブッシュ,ネオコン,共和党政権に飽き飽きしていた芸術家が歓喜の歌を歌うという趣でした.そういえば,スターウォーズ・シリーズの最後を飾るエピソード3:シスの復讐は,共和制の崩壊でした.しかし見ていると,リンカーン大統領や,セオドア・ルーズベルト大統領の功績も織り込まれるものの,公民権運動など,基調はリベラル派の復権といってよい雰囲気を漂わせているのです.この熱気をよそに市場は株安,ドル安を更新し続けており,これまで共和党政権の新自由主義で恩恵を蒙ってきた経済界の冷ややかな反応を感じます.

 オバマ大統領は国民の結束を呼びかけ,「レッド・ステーツもブルー・ステーツもない」と云いますが,いくらアメリカとはいえ,人間の心理はそう単純な筈はありません.ブッシュ政権時代に愛国者法で監視,抑圧されたリベラル派は黙っていないだろうし,グローバル経済で困窮した低所得層も,富裕層や企業への大増税を求めるに違いありません.良くも悪くも,選挙は政権を目指す熾烈な戦いであり,利害や権謀術策は当たり前,しかも勝者が敗者に寛大である筈はありません.多くの民衆の支持を受けて政権を奪取したオバマ民主党は,これまで共和党を支持した勢力とは,融和より対決せざるを得ないでしょう.政権獲得を目指す民主党の小澤代表を「政局だけで,政策がない」と批判するマスコミは,勘違いをしているとしか思えません.

 それにしても,あれだけよその国の大統領就任式やスピーチを取り上げる日本のマスコミが,オバマ大統領が地上波デジタル移行の延長を求めたことを報道しないのは何故でしょう.アメリカ全体で6.8%に当たる780万世帯が,デジタル・チューナーを購入しておらず,その大半が高齢者や低所得層であると考えられています.まさに日本でも2011年に遭遇する事態であるわけで,それゆえ報道したくないのでしょうが,こんなけち臭い報道管制を行うとは,度量の小ささに呆れてしまいます.

tnakadat at 10:01|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

January 08, 2009

稲垣潤一:男と女 TWO HEARTS TWO VOICES

男と女-TWO HEARTS TWO VOICES-
男と女-TWO HEARTS TWO VOICES-
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昨年11月に発表されたアルバム.昨日ふと店頭で見かけて,大して期待もせずに試聴したところ,予想に反してなかなか良かった.稲垣潤一は昨年デビュー25周年だそうですが,もう半ば忘れ去られたような存在だったと思います.ベテランと云っても,ユーミン,中島みゆき,サザン,小田和正と本当に寡占化してしまい,他のアーティストも地道に活動しているのでしょうが,なかなか聴く機会がありません.おそらく音楽業界も大変な不況であって,こういった正規雇用のミュージシャンにしか費用を割けないのだと思います.昔のように,芽が出ない新人をじっくり時間を掛けて売る,というシステムは,とっくに崩壊したのでしょう.

このアルバムは稲垣潤一氏と小柳ゆき,辛島 美登里,中森 明菜,白鳥 英美子など最近あまり露出の少ない(ファンの方々には,申し訳ありません)女性歌手のデュエット集です.中森 明菜さんをはじめ,みなうまく音が絡んでなかなか良い出来です.あややこと,松浦 亜弥さんが松田聖子の「あなたに逢いたくて」を歌っていますが,これもなかなかいい.そろそろこのような元アイドルも,落ち着いた歌が似合うように感じました.
 
 最近は楽曲が枯渇してしまったのか,カバーアルバムが全盛です.80年代の勢いはポップスの世界も,日本の歌謡曲も,いわゆるJ-ポップスも全くありません.あの時代にアイデアというアイデアは,出尽くしてしまったように思えるほどです.シンセサイザー,リズムマシーン,バリライト,ダンス,プロモーション・ビデオ,コンパクト・ディスク,極め付きは世界に冠たるカラオケでしょうか.

 「どこでも誰でも」の利便性は,反面音楽の持つ神々しいほどのパワーも奪ってしまったように思われるのです.一期一会の感動,その場に居合わせたものしか分かち合えない連帯感,利便性はこのような音楽の本質にかかわる大きな部分を損なってしまったように感じます.この10年は音楽にとっても,「失われた10年」だった,私にはそう感じられてなりません.

 しかしぽつり,ぽつりと地味だけれど良いアルバムも出てきたように感じます.昨年暮れに出たジェームス・テイラーの「カバーズ」も良かった.もちろん彼のことですから,脇を固めるのは一流ミュージシャンですが,録音されたのはマサチューセッツの農家の納屋を改造したスタジオ.アルバムジャケットを見る限り,ミュージシャンのみならず,子供たちもくつろいだ表情で写っていて,音楽にも反映されているように感じられました.

 テクノロジーの進歩で,巨大なコンソールや,サンパチ,32トラックなどという猛烈な録音機も不要になりました.巨大なスタジオを借り切るのは,お金が掛り,だからマルチトラック録音.しかし今ではハードディスクとコンピュータがあれば,録音も編集も可能な時代です.だから農家の納屋でも,音響特性が良ければ録音は可能,もちろん人件費は別ですが,快適さからいえば,大都市のスタジオよりは,マサチューセッツの農家の方が良いに決まっています.

 そう考えると何もメガヒットを狙わなくとも,そこそこ音楽制作がペイする時代ではないか,と思います.視点を変えれば,良いだけなのです.いつまでもお子様,ローティーン向けの振り付け命,の歌謡曲や,Yo!Yo!とうるさいだけの空疎なヒップホップもどき,甘ったるいJ−ポップでは,耳の肥えた大人を取り込むことはできないでしょう.「レンタルや音楽配信でCDが売れない」のではなく,売れない音楽を作り続けているから,売れないのだと思います.

tnakadat at 14:48|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

December 18, 2008

シェリル・クロウ:ホーム・フォー・クリスマス

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ホーム・フォー・クリスマス
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今年のクリスマス・アルバムは例年にない不作.これはアメリカの不況が影を落としているようです.このアルバムの他,エンヤ,サラ・ブライトマン,ハリー・コニック・ジュニア,トニー・ベネットなど数えるほどです.アメリカではクリスマスが一大商戦の筈で,この時期にこれほど少ないとなると,自動車も,液晶テレビ,も売れる筈はありません.

 このアルバムも,はっきり言ってショッピングセンターでかけたくなるような音楽とは程遠い感じで,また車の中でナンパ目的に使おう,と思う人はいないでしょう.では駄目か,と言うと決してそうではありません.気のあった連中と,ビールやバーボンを飲みながら,ゆったり聴くのが似合うアルバムです.ホーン・セクションやオルガン(何とブッカー・T・ジョーンズが弾いています)が,まるでかつてのサザン・ロックやタワー・オブ・パワーのよう.

 それでもThere is a star that shines tonightのようなしっとりとした曲もある.アメリカの普通の人々が,普通に聴けるアルバムになっています.そしてこの国はまだ戦争状態であることを忘れてはいけません.シークレット・サービスに守られたブッシュには,靴しか飛んでこないかもしれませんが,兵士を狙うのは銃弾であり,ロケット弾であり,テロリストの自爆攻撃です.

 マライア・キャリーのアルバム,「恋人たちのクリスマス」のようなアルバムが欲しい人は買わない方が無難です(笑).ああいうバブル時代の名残りは,もう世界中どこにもないでしょう.フジテレビ的な世界観は消滅した,と云って良いでしょう.アメリカも,ヨーロッパも,中国もグローバリゼーションの宴が終わり,瞬くネオンサインより,ロウソクの灯を見つめる時代に移ってきているからです.埃っぽい,ちょっと土臭さもある,それでいて懐かしさのある,癖になるアルバムです.

tnakadat at 21:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)