129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 17:16:36.58 ID:6bHC7clQO
「老いぼれが、そなたでは我に勝てん!」
「そうかも知れん。だがこの「永遠の岩」にて戦うのであれば…万が一にも勝ち目はあろう!」
スペクターの緑色の魔力がシャザムの金色の魔力とぶつかり合い拮抗する。
シャザムは永遠の岩と呼ばれるこの神殿からほとんど外へ出る事ができないが…
その代わりに永遠の岩を通して神の力と古のギリシャ魔術王達の力を引き出す事ができる。
この場所でこそ、シャザムは全力を出す事ができるのだ。
今、魔術師が精霊を引きつけている。
「(すげぇな爺さん…)」
そのチャンスを。
「(だから俺も頑張らねぇと)」
上条は見逃さなかった。
「後ろがガラ空きだぜ!」
スペクターの背後から走り寄る上条。右手に宿る幻想殺しは精霊にもなんらかの効果があろう。
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 17:42:30.27 ID:4e8RGQaaO
なんぞこれ
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 21:03:12.80 ID:6bHC7clQO
>>132
Day of vengenceとのクロス
上条さんは女の子だけでなくもっと爺さんも救うべき
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 17:26:40.73 ID:6bHC7clQO
背後から迫る上条に反応するように、スペクターは右手だけを背後に向けた。
「余裕のつもりかよ!?」
舐められたものだ。だがそこまで考えたところで強烈な違和感を感じた。
「(これは…ヤバいぞ!)」
結果からすれば反射的に右手をスペクターの方に向けて正解だった。
「くぅ…!」
スペクターはただ手を向けたに過ぎない。
だがその効果は数千、数万、数億…数え切れないほどの、いや無限の効力を発生させていた。
右手越しに伝わる無数の殺意。ここで上条は、改めて自分達が戦っている存在の恐ろしさを確認できた。
復讐の精霊。それは神が地上に派遣した代理人。神の意思を代弁し、弱き者達の代わりに復讐を執り行う。
そして神は彼に全能に等しい権限を与えている。
これ以上は簡単に接近できそうにない。
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 17:35:22.36 ID:6bHC7clQO
しかしほんの一瞬だけ隙を作れたのも事実である。魔術師はその隙を見逃さない。
「これ以上の愚を晒すでない!」
その隙をついて放たれたシャザムの魔力がスペクターを吹き飛ばした。
「そなたは自らの愚行に気づいてない!魔術は破壊できん!ただ、その性質を変える事しかできないのだ!」
これで精霊が耳を貸せばいいが、貸す事はあるまい。
「そなたは魔術を破壊しようとしているが、それは破壊ではなく魔術を原初の無秩序なものへと戻す事になるのだ。それが理解できないのか?」
133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 17:44:33.27 ID:6bHC7clQO
「魔術を現在の秩序ある体系から無秩序なものに戻せば、世界は混沌の時代へと逆戻りする」
本来はスペクターとてこれぐらい常識として知っているはず。全知なる彼ならば造作もない。
「そうなれば古の脅威達が解き放たれるのだぞ!」
シャザムの追撃がスペクターを更に吹き飛ばす。吹き飛ばされたスペクターは巨大な石像へと激突する。
その石像こそが…
「我を騙すのかシャザム!嘘をつくな!」
やはり精霊は耳を貸す気はないのか。なぜこうも盲目的になったのか。シャザムと上条には理解ができない。
立ち上がったスペクターはさっきよりも遥かに膨大な魔力を放出した。シャザムもそれに応じるが…
しかしその力量差はあまりにも大きかった。
134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 17:53:35.26 ID:6bHC7clQO
「爺さん!」
上条当麻は再び己の力の無さを悔いていた。スペクターの全能に近い力は幻想殺しでも相殺が限度である。
自分に対応しつつ同時にシャザムを圧倒する精霊の力に、上条はただ歯を食いしばるしかできない。
簡単な話。主なる神から絶大な権限を与えられたスペクターと、あくまで元人間に過ぎない魔術師のシャザム。
いかにこの老魔術師の力が強大であろうと、精霊が持つ力には届かない。
「ヴラレム(VLAREM)…」
無駄と知りつつも、シャザムは遥か昔の若き自分に力を貸してくれた神々の頭文字を呟く。
もちろん、かの神々が人々に忘れ去られた今ではもはやなんの意味もない言葉だ。
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 18:02:04.88 ID:6bHC7clQO
シャザムが現実へと干渉する。しかしスペクターの干渉力の方が上回っている。
シャザムが次元へと干渉する。無駄な事だ、精霊の干渉力はその遥か上を行く。
シャザムが精神へと干渉する。魔術師と精霊の差を思い知るだけだった。
実際、魔術を極めた事でシャザムの力は全能にも近い段階へと達している。
恐らく地球でも彼に勝てる魔術師はほとんどいないだろう。
だがそんなものはこの復讐の精霊を前にすれば、「世界一の魔術師など世界一強いシロアリ」と同義。
なんの意味もない肩書きと実績。
スペクターはシャザムにゆっくりと近づく。シャザムの強まる抵抗もスペクターの歩みを止める事はできない。
136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 18:10:49.59 ID:6bHC7clQO
スペクターが一歩近づく。スペクターに1000人の魔術師を軽く殺せる暴風が打ち付けられた。スペクターには傷1つない。
更に一歩近づく。太陽に匹敵する熱量がスペクターの体を焼く。暖炉の前にいるのと大差なかった。
スペクターという存在の現実をズタズタにすべく老魔術師が力を行使する。発光するだけにとどまった。
更に一歩。スペクターの左手がシャザムの首を掴む。依然右手は背後の上条を捉えたまま。
「爺さん!」
上条の目の前で老魔術師は復讐の精霊に締め上げられている。
この右手にもっと力があれば。そう考えたところで状況は好転しない。
137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 18:18:32.54 ID:6bHC7clQO
精霊の右手がただ締め上げているだけではない事ぐらいは上条にも認識できた。恐らくは力を奪い去るつもりだろう、と。
「ふざけんじゃねぇよ上条当麻、てめぇは目の前で襲われてる爺さんの1人も助けられねぇ腰抜けなのかよ…」
「てめぇの意思は見て見ぬふりしかできねぇ薄っぺらいものなのかよ!」
右手よ。幻想殺しよ。目の前の老人を助ける事ができる力を。
「どうした?こんなモンさっさとブチ壊せよ!なにが誰も泣かずに済むハッピーエンドだ?」
「ふざけんじゃねぇ!」
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 18:27:59.46 ID:6bHC7clQO
微かに右手が光る。
「いいぜ…」
光は右手を包んだ。
「上条当麻、てめぇが自分の力が足りずに尻込みしてるんなら」
なによりも眩い光がその右手に宿った。
「まずはその弱さをブチ殺す!」
黄金の輝き。誰もが羨む金色の栄光。誉れ高き明けの明星。
上条当麻の目は、かつて堕天するその時ですら栄光に燃えていた「彼」と、同じ目をしていた。
右手に宿る明けの明星、その掲げる光は神の代理人の放つ力を食い破った。
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 18:39:10.63 ID:6bHC7clQO
精霊は自らの力が押されるのを感じて振り返った。そして驚愕した。
「その右手…」
だがそこまで。「ほぼ」全知全能なる精霊はそれの不完全さも察知していた。
「完全に覚醒する前に潰せばいい」
「いいや、それはそなたが受けよ」
また、隙が生まれたのだ。
「ぐふっ!」
精霊の胸を、背後からなにかが突き破った。慌てて振り返る。シャザムがなにをしたのか。
シャザムの前には5つの「物体」が浮いていた。
黄金の菱形の八面体。黄金のスカラベ。黄金のダガー。黄金の破片。黄金の彫像。
それぞれは手に持てる程度の大きさでしかないが…
強大な力を持つアイテムである事がスペクターにはわかった。
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 18:48:29.69 ID:6bHC7clQO
「今までの礼だ!」
輝く右手を振りかぶりながらスペクターへと上条が殴りかかる。スペクターは上条へと神の力を向けるが。
「効くかよ!」
やはり。不完全と言えど、上条の右手に宿るそれは、精霊よりも上位の権限であった。堕天した今となってもそれに変わりはない。
記憶を消された今となっては知る由もないが、堕天した「彼」はかつてのスペクターの上官でもあった。共に天界に反逆した同志。
そうして無防備を晒していたスペクターを、上条は右手で殴り飛ばした。
「(少しだけど…効いてるな!)」
そう、それは精霊すらも傷つけれる力の片鱗。
上条の右手に脅威を感じながらも、スペクターは落ち着いて立ち上がろうとする。しかしそこで5つの煌めきが自分の周りを取り囲んでいるのを目にした。
「やれ」
142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 19:02:35.37 ID:6bHC7clQO
シャザムの命令と共に、5つのマジックアイテムがスペクターに襲いかかった。
蝿のように飛び回りながら、高速で精霊の肉体を食い破る。
壮絶な光景に、意気込んでいた上条も思わず息を呑んだ。
マジックアイテム達がスペクターの肉体を貫く度に、彼の白い肌から肉片が飛び散る。
手足を、顔を、胴体を。群がる蛆かカラスのように無差別に貪る。
10秒ほど、マジックアイテム達が食事をすると、精霊は倒れ臥した。
「もはやそなたからは力を感じる事もできん。これで終わりだ」
シャザムも上条も、恐らくこれ以上の抵抗はないだろうと判断したが。
「力がない?」
「笑わせるな。我こそが力であるぞ!」
だが精霊はシャザムの言葉に答えながらゆっくりと立ち上がった。未だに煙の上がるズタズタの肉体で。
その姿は酷いものだった。頭部はグチャグチャ、腕は繊維ごと溶け、ボロボロの肋骨と内臓のようなものが顔を見せていた。
しかしそれでも精霊ははっきりとした口調で告げる。
「我こそは不死なる復讐の精霊…」
「っ!ヤバい!」
だが遅かった。
143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 19:13:41.61 ID:6bHC7clQO
そう、遅かった。上条が走り寄る前に精霊は緑色の魔力を纏い、一瞬で肉体を再生させた。
ズタズタになっていた深緑のローブと白い肌は、戦闘の始まる前の状態へと一瞬で戻ってしまったのだ。
「我は全ての魔術を奪える」
「この要塞からも」
精霊の言葉を裏付けるように要塞の力が奪われてゆく。
「そなたが我に差し向けたマジックアイテムからも」
マジックアイテム達がシャザムのコントロール下を離れる。
「そなた自身からも」
上条が認識するよりも速く、精霊が一瞬で魔術師に掴みかかった。
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 19:34:08.06 ID:6bHC7clQO
「我によこすのだ、魔術師よ」
上条が視認した時には。
「我に全てよこすがいい!」
スペクターがシャザムから魔力を根こそぎ奪い取っていた。
「やめろぉぉぉ!」
走り寄るも、既に遅い。上条が精霊に接近するより早く床が崩壊した。永遠の岩が崩れ始めたのだ。
「世界が千切れる!」
遥か下方で見ていた魔術師達が叫ぶ。
スペクターの力で異常をきたした永遠の岩は、魔術師達の努力も虚しく本来の次元を離れた。他の次元へと次々に移動し始める。
ほんの数秒で、その衝撃が700万の超然とした神々を震え上がらせた。
永遠の岩は毎秒毎に100の次元を通過している。
同時にその内部では石像に封印されていた7つの脅威、すなわち7つの大罪が解き放たれた。
次の瞬間には巨岩が倒れ臥したシャザムの上に落ちる。
その次の瞬間には永遠の岩はゴッサム上空に転移し…
大爆発を起こし街並みを破壊した。
146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 20:04:38.73 ID:6bHC7clQO
爆発と共にゴッサムの上空から2人の少年が落下する。
破片の1つがベスレヘムの帰宅途中の少女の頭を貫き、彼女は13分後に死ぬまで不吉な予言を喚き散らした。
ランカスターでは破片の1つが散歩中の老人に、人類が6つの不吉な言葉を忘却している事を思い出させる。
実際にそれらの言葉を発声すると、都市が破壊された。
エルパソにはかつてブルービートルが持っていた黄金のスカラベが落下した。
そう、かくして世界は引き裂かれたのだ。
147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 20:13:17.93 ID:6bHC7clQO
スペクターに眠らされていた少年は地上まで200mのところで目が覚め、自分と気絶した上条当麻が地上激突コースに招待された事を理解した。
「シャザム(SHAZAM)!」
少年、ビリー・バットソンの叫びと共に彼を落雷が貫く。6柱の神々が少年を人類最強の存在へと変身させる。
「当麻?起きてくれ!大丈夫か?」
ビリー、いやキャプテン・マーベルは上条が地上に落ちる前に彼を抱えた。
右手には触れないように上条をお姫様抱っこの形で抱えて飛行し、呼びかける。上条はゆっくりと目を開けた。
「ん…ああ…って爺さんは!?」
「見ての有り様だよ。シャザムは恐らく…それだけじゃない。
永遠の岩も魔術の秩序も破壊され、ゴッサムを中心に世界中で多くの人々が亡くなっている」
「…マジかよ」
眼下で崩れる高層ビル。逃げ惑う人々。次々に起こる火災。
「だからね、とりあえず今は僕達にできる事をしよう」
「そうだな…ああ、すげぇ心が痛むけど、ありがとうビリー。救助を手伝うぜ。まずは地上に降ろしてくれ」
「ああ。行こう」
「(助けてやれなくてごめんな爺さん…あんたを助けるつもりがこんな事に。
俺、みっともねぇよな…せめて誰か他の人を助けて償うから)」
キャプテン・マーベルに抱えられながら上条当麻は地上へと降りる。
その目からは煌めく液体が流れていたが、それでもしっかりとした意思を保っていた。
終わり
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/20(土) 20:45:28.55 ID:4e8RGQaaO
乙
つーかアメコミSSなんて初めて見たわ