772 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:52:34 ID:nJrPjmHY

――バレンタインデー当日。

「おー、みさか白井~! おかえりー」
「ただいまですの!」
「ふいー、ただいまー」
 外出しようと玄関の扉に向かった土御門舞夏は、丁度学校から戻ってきた御坂美琴と白井黒子に声をかけた。

「お疲れさんだねー。私はちょっと出かけてくるよー……お?」
 舞夏は美琴の持っていた紙袋を覗き込む。
「あー、流石だねー。みさかくん」
「ほんと勘弁してほしいわ、私は女だっつの」
「さっき帰り道でも、中身が2つ増えましたわね」

 本日はバレンタインデー。美琴はあまり嬉しくないモテっぷりで、なぜかチョコをいただく立場となっていた。

「貰っても複雑な気分だし、またお返しも考えると……やってらんないわね」
 渋い顔の美琴とは対照的に、機嫌の良さそうな黒子に、舞夏は問いかける。
「白井は何か機嫌よさそうだなー?」
「それはもちろん、これから部屋でわたくしのチョコケーキをお姉様に召し上がっていただく至高の時間が、というのもございますし、……なによりお姉様が誰にもチョコを渡さなかったこと、これが大きいですの!」
「ちょっと待てアンタ。珍しく『一緒に学校行きましょう、お姉様』つって、朝一からやたらベタベタしてくるなと思ってたけど、それってもしかして監視してたってワケ……?」
「そりゃもう。もしあの類人猿などが近づこうものなら、お姉様ごと飛ばす所存でおりましたし」
「く~ろ~こ~~~~!」

 土御門舞夏は慌てて逃げ出し、寮から外へ飛び出した。
 高レベル者の対決はともかく、寮監が間違いなく来るであろう展開に、長居は無用と言うわけだ。


(さ~て、兄貴と上条当麻にチョコ渡して、トンボ帰りだなー)
 そう、外出といっても、兄貴である土御門元春の帰宅時間に合わせて戻り、チョコを渡すだけの用事である。
 ついでに、隣の部屋の上条にも。
(まあ、あのシスターに食われることを想定して、質より量にしておいたけどなー……さて、お掃除ロボットは、と)
 あわれ掃除ロボット。謎の嗅覚であっさり捕まり、少女のお尻にひかれることになった。

 鼻歌を歌いつつ、舞夏は掃除ロボットに乗ってくるくると廻りながら進む。
 と、その時、見知った頭が見えた。特徴のある、ツンツン頭。
「おーい、かーみじょう、とうまー」
「……ああ、舞夏か」
 先ほどチョコを渡さねば、と思っていた当の相手、上条当麻がのんびりと振り向いた。

773 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:52:49 ID:nJrPjmHY

 土御門舞夏は上条当麻に追いつくと、そのまま一緒に進む。もちろん、上条は歩くスピードを落とさざるをえない。

「……相変わらずだな」
「便利なのだよー。兄貴はー?」
「荷物あったから俺は先出てきたけど、アイツもじきに帰ってくると思うぞ」
「荷物となー? お、それはもしやー?」
「……ふっふっふ、コレ見てくれよコレ」
 自宅の寮の方向に歩きながら、上条が白い紙袋を舞夏に差し出す。

「おー? やったじゃーん、上条当麻! チョコの嵐じゃないかー!」
 中には、10個には満たない程度のチョコが入っていた。
「ふははははー、上条さんにモテ期が来てるわけですよ!」
「まあ兄貴も、『カミやんは不幸の避雷針として大人気だからにゃー。たぶん幾つか貰えると思うぜい』なんていってたけどなー」
「るっせー! ……まあ義理でも嬉しいもんだよな。帰ったらインデックスに全部食われそうだけど」
 不幸を招く男として嫌われていた時代(があったらしい)を考えると、今の状況は天と地であろう。とはいえ恋人として見ればとんでもない不幸属性であるのは変わり無く、あくまで義理どまりのようだ。

「あれ? これすごくないかー? 義理にしては豪勢な感じ……」
 くるくると廻りながらごそごそと物色していた舞夏は、大きめに包装されたチョコを取り出した。
「ああ、手作りのを除けばたぶんソレが一番すげえな」
「ふーむ、……むむう?」

 舞夏はじっと見つめていたが、やがて上条に問いかけた。
「これは……どこのお嬢様に貰ったんだー?」
「へ? い、いや、普通の、普通の奴、ですよ?」
「これ、ピエールマルコリーニだぞー。しかも最高級クラスだー」
「すごいのか、それって?」
「絶対に3千円は下らないなー。普通の学生だとしたら、90%本命クラスだぞー、これって」
「うっ……」
「まあお金持ちのお嬢様なら、義理でもありえるレベルだがなー。上条当麻の知り合いで、金持ちって誰だー……?」
「…………、」

「共通の知り合いで、これぐらいポンと渡しそうな金持ちのお嬢様となれば、みさかか白井だけど……」
「い、いや上条さんいーっぱい知り合いいますので、」
「でも先刻の話を聞く限り、今日はまだ会ってないぽいしなー。上条当麻もまっすぐ帰ってきてるんだよなー?」
「ええい、推理すんじゃねー! 誰であれ義理だ義理! 貰った時だって、頬染めてとかそんな展開何一つねーよ!」


 内心、上条はズバリ言い当てられたことにドギマギしていた。

――何のことはない、昨日の13日、御坂美琴から貰った、チョコであった。

 ◇ ◇ ◇

774 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:53:02 ID:nJrPjmHY

――バレンタインデー前日。

 上条当麻は、デパートの地下食品売場でいくつかタイムセールのお惣菜を買い込んだ後、案内版をぼんやりと眺めていた。
 その案内版には『7F:バレンタイン特設会場』とあり、その派手な案内につられて立ち止まっていたのである。
(明日はバレンタインデーか。ネタでも何でもいいから、一つは欲しいよなあ)

 インデックスはとりあえず論外である。日本の風習に関係ないというのもそうだが、そもそも彼女はお金を持っていないし、彼女が何らかの手段でチョコを手に入れてプレゼントしてくれても……結局食べられてしまいそうで、カウントしたくない。
(姫神に期待かなー。アイツの弁当にかける情熱の延長上に、手作りチョコがきっとある! 俺たち3バカにくれるぐらいの事は……アリじゃねえかな? 甘いかねえ……)

 上条はエレベーターに乗り込むと、『7F』を押した。
(まあどんな喧騒か見て帰るか……)
 ただの野次馬というやつである。

 0個だった時に備え、1個買っておいたほうがいいのか? とかなり後ろ向きなことを考えている間に、エレベーターは7Fに到着した。
 フロア中に、かすかではあるが甘ったるいチョコの香りがする。試食品などがあるのだろう。
 人はそれなりにいたが、混雑とは言いがたい混み方であった。さすがにバレンタインデー前日のこの時間となると、ピークはすぎていると思われる。
(ふーん……)
 上条はそのままぶらぶらと歩き出した。
 店を覗き込むような事はせず、人が群がっているメーカーをチェックして「ああ、あの有名なヤツか」と思い出したり、いい商売だよな全く、などとつぶやきつつ、大きい通りを歩く。

 上条当麻は記憶を失っているため、去年以前のバレンタインデーの思い出はない。
 しかし、土御門元春や青髪ピアスの言葉を信ずるならば、去年はほとんど収穫がなかったらしい。
(……うーん、夏以降知り合った女性陣も、よく考えりゃ海外組だのお嬢様だので、わざわざ義理チョコで来るわきゃねえワケで、今年もダメなんじゃねーか、俺……?)
 考えれば考えるほど、クラスの女子から運良く貰える可能性しか無い事にしか行き着かない。姫神様どうかお願いします、といった心境である。

 色々と考え事をしながら歩いていると、何となく空気が変わった事に気がついた。
(なんか、この辺高そうだな)
 どうやら有名ブランド系の一画に差し掛かったらしい。
 客もまばらだが、それが大学生風であったりお嬢様風であったり、……いわゆる普通の中高生が激減したのだ。

(ふーん、常盤台のお嬢様とかが居そうだな……っと、あれは……)
 偶然にも常盤台中学らしき制服の女の子がいた。
 ブランド店っぽい店の前で、コートを小脇に抱えて、カウンターの上でなにやらペンを走らせている。

 その斜め後ろからの姿には、個人的に超見覚えがあった。
(うっ、御坂じゃねーか! ……ま、まずい!)
 今さらながら、もしここで知り合いに会ったら、マズイというか相当恥ずかしい事に気付いた。
 これではチョコに興味ありますと喧伝しているようなものだ。

 キョロキョロと見渡すと、更に進んだところは行き止まりになっており、そこから大きめの階段が繋がっていた。
(よし、あそこから帰ろう! 長居は無用!)
 幸い、御坂美琴は全くこちらに気づかず、ペンを持った手は動かずそのままに、店員と話している。
 足音をたてずに上条はその後ろ約2メートルを早歩きで通りぬけ、階段にたどり着いて一息ついた。

(あっぶねえ……しかしアイツ何やってたんだ?)
 上条は、踊り場からこっそりさっきの店を覗き込んでみた。この距離なら十分、美琴の姿は確認できる。
 丁度、会釈して店員から紙袋を受け取るところだった。十中八九、中身はチョコだろう。
(宅急便かなんかで宛先でも書いてたのか? でも今日こんな時間に送ったって、明日に間に合わねえだろうしなあ)
 そんな事を考えながら、何となく美琴を眺め続けていたが、彼女が妙な動きをし出した事に気が付いた。

 携帯を取り出し、開いた所まではいいが、そのまま携帯を閉じてしまい、はーっとため息をつき。
 また思い直したように、携帯を開き……また閉じる。
 またまた携帯を開き、今度は指をタタタと軽快に走らせていたが……また10秒もしないうちに首を振って、閉じてしまった。
 そして、また深い溜息をついている。
(何やってんだアイツ? まるで俺が小萌先生に宿題できませんでした電話をする時みたいな動きしてやがる)

775 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:53:17 ID:nJrPjmHY

 やがて、彼女は意を決したように軽く頷くと、また携帯を開き、今度はピピッと指を動かすと、そのまま携帯を耳に当てた。
(お、ついに掛けた……う!?)
 上条の携帯が震えだした。
(まさか、俺かよ!?)
 おそるおそるサイレントモードになっている携帯を取り出す。――やはり、美琴からだった。

(ど、どうすっか!? 出たら声聞こえちまうか?)
 シカトという手もある。だが、さっきのやたら躊躇っている姿をみた以上、出ないというのは……。

「はーい。上条さんですよん」
 言葉は軽く、しかし凄まじく小声で上条は、出た。
『私だけど、今ちょっといい?』
「あー……いいといえばいいし、良くないといえば良くない」
『アンタ何ボソボソ言ってんの、聞こえないわよ? あー、こっちもまわりウルサいから、ちょっと移動する』

 ギクッ。
 あそこからだと、静かそうなのはこの階段の踊り場だ。

 マズイ、こっちに来る!? 上条は慌てた。
 階段を駆け下りるのはもう無理だ、せめて……小細工を。
 上条は携帯が音を拾わないように、足音を立てずに階段に駆け寄り、少し降りて振り向き、……あたかも『今、ようやく下から7Fにたどり着きました』風を装うことにした。

 そして、振り向くと同時に、御坂美琴が駆けながら階段の踊り場に飛び込んできた。
「待たせたわね、もういい……わ?」

 生の声と、電話の声をサラウンドで聞きつつ、上条当麻は引きつった笑いで、美琴を迎えた。


「あれ? お前なんでここに? ……あー、携帯はもういいよな」
「な……な……、」
「すっげー偶然だな、俺今から8Fの本屋行こうとしてたんだけど、7Fて何かあったっけ?」
「…………、」
「んで、電話ってことは、何か用か?」

 上条は、まくしたてながら美琴を観察した。……どうやら、状況を整理出来ていないように見える。まだゲコ太携帯を閉じずに固まっている。
 そして、上条の小細工に気付いてる様には見えない。

「おーい御坂、どうした?」
「…………、」
「よくわかんねえけど、電話のほうが話しやすいのか? じゃ、俺は8F行って帰るから、後で適当に電話くれ」
「……忘れた」
 さりげなく逃げ出そうとした上条の足が止まる。
「は?」
「何伝えようとしたか、忘れた」
「おいおい」
 突っ込みながらも、上条は美琴が相当動揺しているらしい事を見て取った。

776 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:53:32 ID:nJrPjmHY

「……んじゃ、思い出したら電話を……」
「いやその、ちょっと待って。え、えーと」
 やたらモジモジした感じの動きをする美琴を、上条はいぶかしんで見つめる。

「で、出会っちゃったから、あげる」
 美琴は持っていた紙袋を、上条にずいっと差し出した。
「チョ、チョコレート、ですか?」
「分かるでしょそれくらい!」
「ば、バレンタインは明日だろうが!」
「明日、わざわざ待ち合わせて渡せって言うの? 会えるかどうか分かんないんだから、持って行きなさいよ! ほら!」
「ちょ、ちょっと落ち着け! 第一ソレ俺用なのかよ!?」
「誰用でもいいでしょ! いいから受け取りなさいよ!」
「お前な……」
 上条は押し切られるように、美琴から紙袋を受け取った。

(断り続けるのは失礼だしな……それにチョコ0という不名誉記録は本番を待たずして無くなるワケだけど……)
 ただ、また御坂美琴の強引さに負けてしまうのか、というスッキリしない点が引っ掛かっている。

「わ、分かった! ありがたく頂く! でもお前な、渡すにしてももっとムードっつーか、何つーか」
「わ、私だってもうちょっと、その……」
 美琴の強ばったような表情が一転して、ちょっと悲しそうな表情がよぎる。

 が、すぐ俯くと。
「……じゃあね。ホワイトデー楽しみにしてるわよ」
 言うやいなや、御坂美琴は階段を駆け下りていった。


「ホワイトデー、って……押し付けてお返し求めるって、アイツらしいというか何というか……」
 上条はつぶやいて肩をすくめた。

 それにしても、貰ったはいいが、悩ませるチョコである。
 あの口ぶりだけでは、誰宛のチョコなのか分からない。
 ただ……やたら高級感が漂っていて、箱も結構大きい。自分に宛てたものとはとても考えにくい。
 何だか、それを奪ってしまったかのような気分になってくる。

(アイツだったら……そうだな、山積みのチロルチョコで『アンタにはこれがお似合いでしょ?』とか、高級チョコが2つほど入った小さい箱で『お嬢様からのチョコよん♪ ありがたく受け取んなさーい』とか、そんなイメージなんだよな)
 まあ高級チョコという点では合致しているが……、出会い方がマズかったせいか、ハンパな貰い方をしてしまった。
 そして、別れ際のちょっと悲しそうな顔。あの表情も少し気になる。

(うーん、とりあえず今日これ食うとフライングな気分だし……明日食って、改めてお礼言うことにしよう。インデックスに見つからないようにしねえとな)


 ◇ ◇ ◇

777 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:53:46 ID:nJrPjmHY

――バレンタインデー当日、再び。

 という出来事があった前日であった。
 今日、結構クラスの女子からチョコを貰えて、更には姫神・吹寄の合作手作りチョコまで貰えて、ホクホクの上条当麻であったが、それらを入れた紙袋に、前日の美琴からのチョコも一緒に入れていたのである。

 土御門舞夏は、その美琴からのチョコが気になって仕方ない様子だ。
「なあ上条当麻。これって、めっちゃ本命くさいけど、大丈夫かー?」
「ほ、本命!?」
「うん。例えばゴディバみたいな超メジャーなものなら、あまり何も考えてないケースがあるから本命か義理か読みにくいけどなー」
「…………、」
「でも、この辺りのメーカーになると、本当にこだわって大切な人に贈る、って意味合いが強くなるんだなー。義理でも感謝度MAXぐらいに思ったほうがいいなー、社会人ならともかくなー」
「て、適当に選んでるっつー可能性もあるだろ? 金持ちだったら、ブランドも見ずにさ」
「可能性言い出したらキリないけどねー。でも上条当麻、ピエールマルコリーニってね……」
「な、何だ?」

「『本命と間違われやすいから、義理では使いにくいチョコ』ではトップクラスのメーカーだからねー。ふふふふー」

「…………!」
 上条は言葉に詰まった。しかし、そうであるならば、尚更。
(やっぱ俺宛じゃなく、誰かに向けたモノなんだろコレ? そんなモノを押し付けやがって、アイツ……)
 ひょっとしたら、チョコを贈りたい憧れの人でもいるのかもしれない。でも、あの時俺に会ってしまって混乱して、つい渡してしまったとか。

「……ま、少なくとも本命ってことはねえよ。実際、いい雰囲気でもらえたもんじゃねーし」
「まあ、単に自分が好きなメーカーのチョコを渡しただけかもしれないし、私の言葉は参考程度にしておきたまえー」
 そう言いながら、廻りつつ舞夏は上条にチョコを返す。
 改めて上条は、まじまじとその包装を見つめ、何の気なしに裏側を見てみた。

「ん……? メッセージカード在中?」
 小さくスタンプが押されていた。
「おー、これは急展開!? 告白が入ってるかもー?」
「…………、」
 さすがに上条も動揺を隠せない。

「……部屋に戻ってからじゃ、まずいな。ここで開ける」
「そうだね、あのシスターの前では」
 上条は丁寧に包装のシールをはがし、中身の箱を取り出した。――メッセージカードは、二つ折りになって、添付されていた。
 そうか、あの時……と上条は思い出す。美琴が何やら書き込んでいたのは、これだったのか、と。

 上条は、おそるおそる、そのブルーのメッセージカードを、開いてみた。そこには、シンプルに、一行の言葉が。


『    いつも、ありがとう。    美琴 』

778 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:54:01 ID:nJrPjmHY

 思わず、上条に笑みがこぼれた。
「何つーか、……本命とか、義理とかそういうもんじゃない、って感じがする」
 これは、自分宛だ。よく考えれば、メッセージカードを入れたチョコを、他人に渡すわけがない。
 そして、普段気が強くて、自分にどんな時もお礼の言葉など一切言ったことのない彼女が、こんなメッセージを。
「いい言葉が入ってたみたいだなー」
「ああ、すげえスッキリした」

 今にして思えば、これを貰ったとき、美琴が一瞬悲しそうな顔をした意味が分かる。
 折角考え抜いたカードを同封したチョコを、乱雑な渡し方をしてしまった事を、悔いたのであろう。
 本当は、あの電話で今日きちんと渡す段取りをつけたかったのだろうが、自分が滅茶苦茶にしてしまった。
(来月、真面目に返してやらねーとな……)

「昨日のうちに見とくべきだったな、今日会ってたら変な対応するところだったぜ」
「あー、昨日貰ったのか、なるほどなー。となると……」
「またいらねえ事考えてやがんな? あー、暗くなってきたし、さっさと帰るぞ舞夏」

 急ぎ足になった上条に、舞夏はついてゆく。ほぼ、その贈り主を特定しつつ……


 ◇ ◇ ◇

 1時間後。
 土御門舞夏は、兄貴である元春と、上条当麻にチョコを渡し、また常盤台中学学生寮に戻ってきていた。

 机拭きをしようと食堂に入った舞夏は、のんびり紅茶を飲んでいる御坂美琴を発見した。
「みさかみさかー、どうした一人でー?」
「黒子が部屋のセッティングするから、外で待っててくれって。何のセッティングをしてるのやら」
 机の上をみると、チョコが積んである。ここに座っている間にも、贈られているらしい。
「ほんとモテモテだなー」
「ほんとマジでリアル男に渡せと言いたい。でもあんなキラキラした目で渡されちゃーねえ」
 ふう、とため息をついた美琴に、舞夏はそろそろと近づき、美琴の耳元で、一言。

『……ピエールマルコリーニ』

 みるみる美琴が真っ赤になったと思うと、舞夏の方にギギギ、ときしむように首を回す。
「な、な……?」
 カマをかけてみた舞夏は、読みが当たったことにニンマリとする。

「いやー、さっき外で、ある高校生と話してたんだがなー。そこでチョコの話になってさー」
「…………、」
「ピエールマルコリーニは、ド本命の証だって言っておいたよ、あははははー」
「ちょ、ちょっと何言ってんのよアンタ!」
「その時、その高校生の反応はいかに! 次回放送を楽しみに待て! というわけで私は仕事、仕事~♪」
「まっ、待ちなさい、いや、待ってくださいっ、土御門ー!」


――数分後、美琴を呼びに来た白井黒子は目を白黒させる。何故かメイドに揉み手をしながらご機嫌伺いをしている常盤台のエースの姿に……


fin.

779 :ぐちゅ玉:2011/02/13(日) 19:55:01 ID:nJrPjmHY
以上です。
タイトルは当然「それ町」からいただきました。

ではまた地中に潜って冬眠します。ではでは!


781 :■■■■:2011/02/13(日) 20:19:33 ID:F.fkFU/s
顔の2828が止まらないんだがどうしてくれるつもりだw

782 :■■■■:2011/02/13(日) 20:33:43 ID:.IVwYysc
とても良かったです!
ホワイトデーが期待できそうな引きで更なる妄想も楽しめそうw


783 :■■■■:2011/02/13(日) 20:50:07 ID:YespwlL2
メッセージカードに感激です。GJ!


もふもふこう続く