Todo Diary~読書録

ここは2018/04以降に読んだ本の感想の置き場所です(基本ブクログからの転送です)。
全ての読書データは本家HP「トドの部屋」上にあります。ぜひHPにもご訪問ください

正々堂々とプチ整形履歴を開陳した「カワイイ命」の主人公。しかしそれに対する同僚達の反応は微妙で、反発した主人公は本格的な整形手術を一度は受けようとするが・・・「眼帯のミニーマウス」。
つまらぬYoutuberに嵌った主人公。やがて好き過ぎる余りにアンチコメントを書き込む粘着ファンになる。しかしリアルのYoutuberにであった主人公は・・・「神田タ」
新築祝いに伺った妻の友人宅の一室で、妻と友人夫婦に不倫を問い詰められる自己肯定感過多の夫・・・「嫌いなら呼ぶなよ」
インタビュー記事をめぐる著者本人、インビューア(ライター)、若い編集者のメールバトル・・・「老は害で若も輩」
内容紹介には「心に潜む“明るすぎる闇”に迫る!」とありますが、闇というより普通なら隠れているべき“裏”という気がします。外から見るのではなく「中に入って行ったらこんな“裏”が見えました」というものを描いた作品。
視点は面白いのだけど、ある意味ありきたりかな。もっとハッとするような“裏”が欲しかった様な気がします。

10作品。うち再読2作品。
結構重めの作品も多かったので、10作品は良く読んだ方ですね。

今月の一作は久しぶりに読んだ乙川優三郎さんの『クニオ・バンプルーセン』にします。
『宙わたる教室』伊与原新も捨てがたいけれど・・・・。



赤と青とエスキース  青山 美智子

  評価;★★★  読了日;2023-11-02


  ISBN  :
  ジャンル:一般
  シリーズ:-
  出版社:PHP研究所
  タイプ:図書館本


因果の刃  西條 奈加

  評価;★★★  読了日;2023-11-07


  ISBN  :9784101802541
  ジャンル:ファンタジー
  シリーズ:-
  出版社:新潮文庫nex
  タイプ:図書館本


モモ  ミヒャエル・エンデ

  評価;★★★★  読了日;2023-11-10


  ISBN  :9784001141276
  ジャンル:ファンタジー
  シリーズ:-
  出版社:岩波書店
  タイプ:図書館本


宙わたる教室  伊与原 新

  評価;★★★★★  読了日;2023-11-12


  ISBN  :9784163917658
  ジャンル:一般
  シリーズ:-
  出版社:文藝春秋
  タイプ:図書館本


マーティン・ドレスラーの夢  スティーヴン・ミルハウザー

  評価;★★★★  読了日;2023-11-16


  ISBN  :9784560071717
  ジャンル:一般
  シリーズ:-
  出版社:白水社
  タイプ:図書館本


クニオ・バンプルーセン  乙川 優三郎

  評価;★★★★★  読了日;2023-11-19


  ISBN  :9784104393107
  ジャンル:一般
  シリーズ:-
  出版社:新潮社
  タイプ:図書館本


ハブテトル ハブテトラン  中島 京子【再読】

  評価;★★★★  読了日;2023-11-20


  ISBN  :9784591120965
  ジャンル:一般
  シリーズ:
  出版社:ポプラ文庫
  タイプ:蔵書


イワン・デニーソヴィチの一日  ソルジェニーツィン【再読】

  評価;★★★★★  読了日;2023-11-23


  ISBN  :9784102132012
  ジャンル:一般
  シリーズ:
  出版社:新潮文庫
  タイプ:蔵書


田舎のポルシェ  篠田 節子

  評価;★★★★  読了日;2023-11-26


  ISBN  :9784163913551
  ジャンル:一般
  シリーズ:-
  出版社:文藝春秋
  タイプ:図書館本


水やりはいつも深夜だけど  窪 美澄

  評価;★★★★  読了日;2023-11-28


  ISBN  :9784041021347
  ジャンル:一般
  シリーズ:-
  出版社:KADOKAWA
  タイプ:図書館本

同じ幼稚園に子どもを通わせるそれぞれの家族の問題を描いた5つの独立した短編です。
女性に人気の作家さんなのだろうな~と思います。
「人(>女)を描く」というより「女(>人)を描く」作家さんという気がします。たとえ男性が主人公の物語でも、周りの女性の方が際立ってしまう。その分、どうも私はやや苦手です。
そういえばタイトルの深夜の水遣りシーンって有ったかな?
全ての短編のタイトルに植物の名前を含むこの短編集は全体に暗鬱なストーリーです。しかし、例え深夜の水遣りシーンは無くても「だけど」の言葉が示すように、決して明るくは無いけれど、少し前向きに終わる物語でした。
その中で、最後の「かそけきサンカヨウ」は良かった。主人公が流行の言い方ではヤングケアラー風だけど素直な女子高校生だし、その義母も表裏の無さも相まって、爽やかな物語でした。

表題作を含むいずれも自動車絡みの中編三作。
「田舎のポルシェ」:大型台風接近の中、岐阜から東京まで、紫のツナギを着た男性・瀬沼の操る田舎のポルシェ、すなわち軽トラで往復する羽目になった主人公の翠。道中では思わぬハプニングが・・・。
「ボルボ」:伊能と斎藤はリタイア男性。二人は伊能の歯医者寸前の愛車・ボルボで北海道を旅するが、斎藤は妻の浮気を疑い、その後を追うのが目的だった。
「ロケバスアリア」:春江は古希の祝いに、かつて憧れの歌手が歌い、コロナ下の現在は客を呼べないホールを借り切りアリアを歌おうとしている。甥の大輝は本職のディレクター神宮寺と共にその舞台をDVDにしようとするが・・・。
ストーリーも良く出来てるし、主人公立ちんの心の揺れ動き方も堂に入ってます。特に、特にロケバスアリアの春江さんと神宮寺さんの二人のやり取りが良いですね。
全体にどこか浅田次郎を思い起こす作品群でした。

ノーベル賞作家・ソルジェニーツインのデビュー作。
3度目のレビュー。2度目にかなりきっちり書いているので、それに加えれば・・・。
10年の刑を受けラーゲリ(強制収容所)に収容された主人公の8年目のある一日を、起床から就寝まで、淡々と、しかし克明に描いた作品。
何せ、煉瓦を組むため塗りつけたセメントが見る間に凍ってしまう酷寒です。そんな寒風の中でちゃんとした防寒着もなく、何度も行われる点呼。貧しい食事の奪い合い。しかし、どこか明るいのです。
きちんと仕事をこなし、同僚の窮地を救い、あまり多くを望まない。きちっとして、ずる賢く無く、前向きな主人公。8年間をなんとか無事過ごしてきたのは、主人公のその処世術ゆえです。最後は以下のような文章で締められます。
「ショーホフは、すっかり満ちたりた気持で眠りに落ちた。・・(中略)・・
一日が、少しも憂うつなところのない、ほとんど幸せとさえいえる一日が過ぎ去ったのだ。
こんな日が、彼の刑期のはじめから終わりまで。三千六百五十三日あった。閏年のために、三日のおまけがついたのだ・・・」
ちょっと別の訳でも読んでみたいと思いました。
【感想 ;2010-12-18】  評価;★★★★★   読了No;10-111

マイナス30度の酷寒での屋外作業、量/質ともに不足する食事、看守たちの搾取。悲惨な状況を淡々と、しかも奇妙に明るい筆致で描いている。
文章は頭でっかちでなく極めて平易で読み易く、局地的な個人の一日の生活を舞台にしながら、時代・国情などを見事に映し出す。

読む人により様々な見方がされているようです。
反体制の書、前向きな希望の書、希望を捨てることによって生き抜くための書。ともかくも充実した中身があって、それ故に読む人に様々な想いを起こさせる作品と言えそうです。
10代のころ読んで以来、折に触れ、何度も読み返してきた本です。

本論とは関係ありませんが、最初に読んだ時に痛烈な印象を持ち、以後30年、なぜか印象に残り続けているシーンが二つあります。
◇「信仰は山をも動かす」という同僚に対して主人公が反論する言葉
 「・・・いや、白状すりゃ、おれは山ってものをまだこの眼で見たことはないがね。・・・」
◇差し入れを受けた同僚から貰った一切れのソーセージをかじるシーン
 そして自分では、一切れのソーセージを口の中にほうりこむ!歯でかみしめる!歯で!ああ、肉のかおり!本物の肉の汁!それが今、腹の中へ、入っていく。
 それで、ソーセージはおわり。

【感想 ;2009/03/02】09-023  ☆☆☆☆☆
この本の凄さは何なのでしょう。「文学」という言葉が実に似合います。
内容で言えばイワン・デニーソヴィチの一日が淡々とした口調で綴られているだけです。ソ連時代に出版された体制批判の本と見ることも出来ます。でもそれだけでは有りません。
読了後、胸の中に残っている「何か」が他の本より圧倒的に多いのです。ただその何かが良く判りません。色々な書評を読めば、どこかに私には書けない何かを上手く表現したものがあると思います。でも止めて置きましょう。何かがある。それで良いのだと思います。

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