ちなみに僕のお薦めは「石塔の屋根飾り」と「気さくなお人形、19歳」と「僕は秋子に借りがある」である。以上、僕の紹介終了。

嘘である。


さて、冨樫先生が森博嗣という方の短編集「地球儀のスライス」の巻末に解説を書いている件についてです。


まず初めに、森博嗣先生について少し解説を。

森博嗣先生は、国立N大学工学部建築学科助教授を務める傍ら作家としても毎年3〜4冊を越える作品を発表する速筆家。森先生の作品には数学的、科学的な比喩や描写があり、一般的に「理系ミステリィ」と評され高い人気を博しています。
代表作は、「すべてがFになる」。

作品の多くはシリーズもの。

特に、犀川創平(さいかわそうへい)と西之園萌絵(にしのそのもえ)が登場する「S&Mシリーズ(全10作)」と、瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)、保呂草潤平(ほろくさじゅんぺい)、小鳥遊錬無(たかなしねりな)、香具山紫子(かぐやまむらさきこ)らが登場する「Vシリーズ(全10作)」が人気。森先生のデビュー作でありS&Mシリーズの一作目に当たるのが、「すべてがFになる」です。


今日紹介するのは、そんな森博嗣先生の短編集「地球儀のスライス」(文庫本)であります。この本の巻末の解説を冨樫先生が書いています。
集英社の漫画家の冨樫先生が、なぜ講談社文庫の解説を依頼されたのか全く不明ですが、恐らく何らかのコネクションがあったのでしょう。講談社で漫画を描いている武内直子さん経由かもしれません。

文庫「地球儀のスライス」が発行されたのは2002年3月。ここから考えて、冨樫先生が解説を執筆した時期は、2001年の年末から2002年の年始頃と推測できます。
この時期にも何度か休載はあったようで、(hunter.noihjp.com様 2001年、2002年休載リスト参考)
「こんな解説書く暇あったんなら掲載しとけよ」とお怒りになる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは棚上げにしておきましょう。(というより、当時叩かれなかったんでしょうか?)


「地球儀のスライス」には、10作の短編が収録されています。

「小鳥の恩返し」
「片方のピアス」
「素敵な日記」
「僕に似た人」
「石塔の屋根飾り」
「マン島の蒸気鉄道」
「有限要素魔法」
「河童」
「気さくなお人形、19歳」
「僕は秋子に借りがある」

の10作です。

この中での僕のお薦めは、一番初めに書いた通り。


以下、冨樫先生の解説の中から、興味深かった部分を一部引用して紹介します。
先入観や前情報ナシで冨樫先生の解説を読みたい方は、下にスクロールして、画像が表示されている所まで飛ばすことをお薦めします。







冨樫先生の解説は、第一文から「ちなみに」で始まります。
普通とは一味違う、冨樫先生らしさが滲み出た名解説の幕開けです。


まず初めに冨樫先生は、「小説の入手動機」を9つに分けて考察しています。以下の9行引用。

----------------------------------------------------------
1、作家のファンだった。もしくは以前に読んだその作家の作品が面白かったから。
2、評論や前評判を見聞きし、興味を持った。
3、友人・知人の薦め。
4、解説を読んで。
5、帯の煽り文句(○○賞受賞!! とか)で。
6、本の装丁が気に入った(いわゆるジャケ買い)。
7、タイトルに惹かれて。
8、あとがきや本の裏表紙などにつくあらすじ、または本編の最初の数ページを読んでみて面白そうだった。
9、その他(本編を全て立ち読みして面白かった。拾った。もらった。間違って買ってしまった。など)。
-------------------------------------------------------

こういう分類は見てて好きです。
自分の持ってる本はどうだったか当てはめて考えてみると面白い。


いくつか考えました。
僕が以前読んでこのBlogでも紹介した「西の魔女が死んだ」はどれに分類されるだろうか。
この本は、「『西の魔女が死んだ』電車で読むんじゃなかった。これこそ人目を憚らず泣きたかったのに。」という冨樫先生のコメントに興味を持ち買ったものでした。
これは、恐らく2に該当するんでしょう。
「この本を読んで私は泣いた」という冨樫先生による”評判”が、僕の購買意欲を動かしたからです。

では、僕が本書「地球儀のスライス」を買うに至った理由は、どれに分類されるだろうか?
一見4がそれらしいですが、微妙に違う。僕は解説を読んで本を買ったのではなく、解説を読むために本を買ったからです。

3も違う。まず、冨樫先生は僕の友人でも知人でもない。
僕が一方的に敬い、崇め、奉り、愛でているだけで、全く面識は無いのだから当然であります。もちろん、薦められたわけでもない。

では2か?いいや、これも違う。森博嗣については何の評判も見聞きしていなかったし、予備知識は全く無いに等しかったです。もちろん僕がこの本を買ったときは、まだ冨樫先生の解説も読んでいませんでした。

となると、やはり9の「その他」しか残されていない。
どれにも当てはまらないからと言って「その他」に分類してしまうのは、メレオロンやビノールトの念系統が分からず取り合えず特質系としてしまうときの心境と似ていて、あまり気持ちのいいものではないですが仕方ありません。

「芸能人で言えば誰と似てますか?」という質問をされ返答に窮し、「誰にも似てないニュータイプの顔です」と答えるしかないときの、あの感じにも近い。(わかりづらい例えだな)

ちなみにこの冨樫先生の「小説の入手動機」は、少し手を加えれば「漫画の入手動機」にもなれそうです。その場合、

10、ジャンプやマガジンなどで連載を読んで面白いと思った

11、アニメや映画、ゲームなど展開したメディアに先に触れ、原作を読みたくなった。


の2つを追加すれば完璧でしょう。

とすると、僕がハンターハンターを買ったのは11によります。
ハンターハンターを知ったキッカケは、アニメです。
ある日テレビを付けたら丁度放送していて、ゴトーのコイン勝負の回でした。
それを見て「おお、面白いな」と思い、その数年後に本を手に取りました。(もっと早く買っておけば・・・)

ハンターを読んで冨樫先生が好きになったので、幽遊白書やレベルEを買ったのは、当然1によります。



さて、

次に、冨樫先生の解説は「文系と理系の定義の話」に移ります。
以下の4行に引用。

--------------------------------------------------------
私の定義では、「理系」とは「この世のすべてのもの」を指す。
そして「文系」とは、「理系」の中の特に「人と人との関わりによって生じる事柄」を指す。
殺人は「文系」だ。凶器は「理系」。トリックは「理系」で、それを使った者と見破ろうとする者との駆け引きは「文系」なのである。
----------------------------------------------------------

若干曖昧な定義ですが、なるほどと感心しました。
ならば、ジャジャン拳のフェイントは「文系」だが、ジャジャン拳そのものは「理系」。
携帯電話そのものは「理系」で、それによってなされる会話やメールのやり取りは「文系」。
テレビは「理系」だが、番組は「文系」。ツモは「理系」で、ロンは「文系」。
みたいになるのかな?なかなか深い。

その後も冨樫先生は、「理系」と「文系」の位置関係などを、手書きのイメージ図まで用いて解説されておりました。


どれもこれも、冨樫ファンなら一見の価値があります。
短編の方を読まずに解説だけ見ても大体理解できますが、
事前に短編の方を読んでおけば、より深く理解できるでしょう。
興味を持った方は是非、買って読んでみて下さい。

ただ、当然のことながら幽遊白書やハンターハンターの話などは微塵も出てこないので注意。
唯一漫画と関係のあった発言といえば、

「漫画本の話だが、ごくまれに私は嫌いな作家の作品を、嫌いであることを再確認するために買うことがある。」

の一文のみ。これも面白い発言です。
冨樫先生が嫌いそうな漫画を予想してみるのも一興。


さて、ここから先は完全に蛇足になりますが、僕はどうやら森博嗣の小説にハマってしまったようです。

「地球儀のスライス」の短編が結構面白かったために、試しに長編のS&Mシリーズ第一作「すべてがFになる」を買って読んでみたところ、途轍もなくエキサイトしてしまいました。
そして今、第二作「冷たい密室と博士たち」、第三作「笑わない数学者」と立て続けに読み漁っています。
短編集を紹介しておいて今更こんなとこを言うのもなんですが、短編よりも長編の方がずっと面白い。
「西の魔女が死んだ」よりも、こっちの方が性に合うようです。

ミステリー小説界なんて、いい加減飽き飽きした陳腐な展開がお約束のように繰り返される三文ストーリーが氾濫してるものだと思っていただけに、森博嗣先生との出会いは衝撃でした。

冷房の効いた部屋で音楽をかけて寝っ転がりながら森博嗣ミステリィを読むのが、
最近の僕の休載を耐え抜く清涼剤となっています。
うっかり読み耽っていると、いつの間にか夜になってたーなんてこともしばしばあり、侮れません。
怖いぐらい熱中して読んでいる自分にふと気づく時もあります。
時限爆弾と恋人をいっぺんに手に入れたような気分を味わいました。

まずは、講談社文庫「地球儀のスライス」から、どうでしょうか。

地球儀のスライス



※注意
「地球儀のスライス」は、講談社ノベルス版と文庫版の2種類が存在しますが、冨樫先生の解説が載っているのは文庫版の方です(上の画像が文庫版)。現在本屋で販売しているのは文庫版が主流なので問題は無いでしょうが、ネットや古書店で購入する場合はご注意下さい。)



@関連リンク

森博嗣の浮遊工作室】(森博嗣先生の公式HPです)

森ぱふぇ】(森博嗣先生公認のファンクラブ)