October 2013

October 31, 2013

尖閣日中抗争(27)尖閣国有化1年の現場(中)

【正論】帝京大学教授・志方俊之 尖閣を「中国聖域の海」にするな 2013.10.30
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131030/plc13103003260003-n1.htm
昨年9月にわが国が尖閣諸島3島の国有化を発表して以来、尖閣周辺での中国公船の活動は常態化している

公船、軍艦、爆撃機も登場
中国海軍艦艇の活動も挑発的になっている5月には、潜水艦が奄美大島付近と久米島周辺の接続水域を潜没したまま通過する大胆な行動に出た7月には、ロシア海軍とウラジオストク沖で合同演習をした帰路、中国艦艇は宗谷海峡を通過して太平洋に出て、わが国を周回する形で航行し、その外洋能力を誇示している。9月には、爆撃機2機が初めて沖縄本島と宮古島の間を通過して往復飛行をし、無人機も出没し始めた。

わが国の固有の領土、尖閣諸島の領有権を中国が主張しだしたのは、1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が海洋調査の結果、周辺の海底にイラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油資源が埋蔵されている可能性を報告してからのことである。当時の中国は、経済発展のための石油エネルギー資源の確保が最大の関心事で、米国からわが国に返還されたままになっていた尖閣に目を付けたのである。

一方、中国は核開発を進め、冷戦が激化した64年、核実験に成功し核弾頭を持つに至った87年に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪1号」(JL−1)、2008年に「巨浪2号(JL−2)」(射程8千キロで米本土へ到達可能)を開発し、04年には12基の巨浪2号を搭載して水中から発射する「晋型原子力潜水艦(SSBN)」(1万2千トン)の一番艦を進水させ15年ごろまでには就役させるとみられている。

資源から「核」心的利益へ
中国の核戦略は、最低でも米国のいくつかの大都市を破壊できる核弾頭数とその運搬手段を保有すればよいとする「最小限核抑止」と呼ばれるものである。相手からの核攻撃の第一撃に生き残り、最小限の核報復を行うという戦略であるから、第一撃に対する残存性が鍵となる。地上配備型の核弾道ミサイルは偵察衛星によって探知され、攻撃・破壊される可能性が高く、残存性が低い。その点、核弾道ミサイル搭載原潜は海中を遊弋(ゆうよく)して狙われる確率が低く、つまり残存性が高いから核抑止力として機能する

尖閣諸島をめぐる、右肩上がりの中共の軍事力の実態です。
論説では「尖閣を中国聖域の海にするな」とあたりまえの訴えをしています。
あたりまえのことであっても、訴えなくてはならないほどの尖閣諸島周辺海域の実情なのです。
今ここにあるのは、一進一退に例えられるような、手に汗握る恒常化した臨戦態勢です。 
外国で起きてるテロのようにテレビの画面を眺めるではなく、その生の姿を知るべきです。

【海防 第3部 尖閣国有化1年】(中)現場での燃料補給や赤外線監視装置… 海上保安庁の大型巡視船、充実した装備 2013.9.8
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130908/crm13090807000001-n1.htm
7月24日、中国が海上法執行機関を統合して立ち上げた海警局所属の船「海警」4隻が、初めて尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域に姿を現した。海上保安庁には緊張が走ったが、ある幹部は、前線の巡視船から送られてきた映像を見て、思わず苦笑した。4隻の船体には真新しい文字が浮かんでいた。「中国海警 CHINA COAST GUARD」。しかし、船の型は、これまで尖閣で航行を続けていた中国国家海洋局所属の海洋監視船「海監」や農業省漁業局所属の漁業監視船「漁政」と一致。つまり、船体を塗り替えただけだった。この海保幹部は「中国海警局は、船の転用を続けているにすぎない」と説明する。尖閣国有化後に配備された最新鋭の船もあるが、海軍から譲り受けた古い軍艦などもあるという。海洋調査に漁業監視、警察活動。「中国海警局は目的がバラバラの船の集まり。領海警備に適しているとは思えない」。警備を担う第11管区海上保安本部(那覇)での勤務経験がある幹部は、こう分析する。

長期任務に強み
一方、海上保安庁は、任務に応じて計画的に巡視船を配備している。尖閣の最前線基地である石垣海上保安部にも、警備に適したPL型巡視船(Patrol Vessel Large、大型巡視船)が配備される。はてるま」「よなくに」「いしがき」の3隻。昨年9月の尖閣諸島国有化後、「はてるま」は現場の先頭で活躍してきた。11管幹部は、「尖閣警備は特殊だ」と断言する。島に港はなく、約170キロ離れた石垣港や約410キロ先の沖縄本島との間を行き来せざるを得ない。このため、長期戦になると、燃料や水を十分に積み込めない小型の巡視船は苦しい状況に追い込まれる。そこを念頭に置いて整備されたのがPL型巡視船だ。「はてるま」は全長89メートル、全幅11メートル、排水量1300トン。速力は公称27ノット(時速約50キロ)以上だという。小型巡視船やヘリコプターに現場で燃料補給を行えるほか、乗組員の休息場所も提供し、長期任務を支えている。海保幹部は「同型の船は東日本大震災の被災者への給水でも活躍した実績がある」と説明する。

操舵室は防弾化
「はてるま」などのPL型巡視船には高い能力も備わる。夜間でも正確に相手を監視できる「赤外線捜索監視装置」があるほか、操舵室は防弾化されている。荒波でも照準を合わすことができる「射撃管制機能」を有する30ミリ機関砲を搭載、数十メートル先に毎分2万リットルの水を吹き付けることができる遠隔放水銃もある。船体の横揺れを極力抑える設計も施されている

海保は、平成16年の中国人活動家による尖閣諸島・魚釣島上陸や、巡視船が銃撃を受けた13年の奄美大島沖の北朝鮮工作船沈没事件などを教訓に、巡視船の装備や警備体制を強化してきた。

海保は27年度末までに中国公船に対応する専門部隊を設け、新たに巡視船10隻を建造する予定だが、ここにも過去の経験を生かして新たな工夫をこらす。一般的に、船には水面を滑るように進む「滑走型」と、船体下部が水面に沈み込む「排水量型」がある。これまで尖閣周辺で主に活動してきた巡視船は高速航行がしやすい滑走型だが、揺れやすいという難点があった。海保では、速度がさほど速くない中国公船には「速度重視の巡視船は不要」(幹部)と判断。10隻には航行時の安定性が保てる排水量型を採用し、乗組員の負担を減らす。「根負けするわけにはいかない。これからも冷静に理性的に対処していく」。海保幹部は、長期戦を見据えている。

海上保安庁の巡視船 全国の海上保安部などに配備され、領海警備や海難救助、海上災害の防止といった任務に従事する。ヘリコプターを搭載したPLH型巡視船(Patrol Vessel Large with Helicopter、ヘリ搭載型大型巡視船)は13隻、その他の排水量1千〜3500トンのPL型は38隻ある。全巡視船艇は355隻。不審船対応を想定した高速巡視船や厚い氷を砕きながら航行できる巡視船もある。


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尖閣日中抗争(26)尖閣国有化1年の現場(上)

【尖閣国有化1年】領海に中国船8隻侵入 日本「公務員常駐、選択肢の1つ」2013.9.10
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130910/plc13091020490014-n1.htm
日本政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化してから11日で1年を迎えた10日には中国海警局の船8隻が尖閣周辺の日本領海に侵入、中国の挑発による緊張は収まる気配がない菅義偉官房長官は同日の記者会見で、尖閣への公務員常駐について「選択肢の1つだ」と述べた8隻の同時侵入は4月23日と並び過去最多で、国有化以降の中国公船の領海侵入は計63回に達した

外務省の斎木昭隆事務次官は同日、程永華駐日中国大使を呼び抗議。程氏は会談後、記者団に「日本政府が島を買い上げたことで中日関係が混乱した」と斎木氏に伝えと明らかにした。中国外務省の洪磊報道官は同日の定例会見で、菅氏が尖閣への公務員常駐に言及したことについて「中国の領土主権に対する、いかなる挑発行動も許すことはできない」と批判した

かつて民主党政権の末期、野田首相が政治の”せ”の字も会得しないままに、ぶっ込んでしまった尖閣の国有化。
要は札束で頬を叩くように所有者から島を手に入れ、その後の対策もないまま、現場の混乱は一層エスカレートしました。
中国の反発は日本をはじめとして一層国際社会の目を開かせましたが、その所業は日本国民さえ驚く荒技でした。
きっかけを作った石原都知事(当時)による東京都所有のための募金運動、尖閣諸島と共に生きるため20億近くに上る膨大な寄付が全国から集まりましたが、その寄付金も未だ宙に浮いたまま、国民の想いも届かないままです。
それだけに安倍政権菅官房長官による公務員常駐への提言は重要なのです。
1年前の民主党野田政権は中国に対して尖閣に手をかけないと約束したつもりで国有化を乗り切ろうとしていたのですから。
つまりは膨大な国税をはたきながらも、中国の顔色を伺って絵にかいた餅を作ろうとしていたのですから。

尖閣国有化は事実として、経緯はともかく、当然のことと国民は受け止め、それ以降の日本人の戦いを強いられます。
日本人のための日本の海域、地元民が平和に過ごせること、そして未来の日本に栄華が来ることを願います。

【海防 第3部 尖閣国有化1年】(上)領海侵入繰り返す中国公船 「感情抑え」挑発乗らず 支えるのは現場の「士気」2013.9.7
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130907/crm13090712000006-n1.htm
8月7日午前8時半。尖閣諸島(沖縄県石垣市)・魚釣島から1キロほど離れた海を、1隻の日本漁船が航行していた。晴天に恵まれ、穏やかな海だった。しかし、漁船の乗組員はこの時、恐怖すら感じていた。中国海警局の船「海警」が、この漁船を執拗に追っていたのだ。いうまでもなくここは日本の領海内だが、海警はそれを無視するかのように汽笛を鳴らし、漁船を威嚇し続けたここは中国が管轄する海域だ。拿捕するぞ」海警は中国語で理不尽な警告を発し、小型ボートを船から下ろして実力行使に踏み切るかのような行動もみせた。−漁船側が接触の危険を感じる5メートルほどの距離になったとき、助けが入った。海上保安庁の巡視船が猛スピードで、両船の間を割くように現れた。尖閣諸島を管轄する第11管区海上保安本部(11管、那覇)の宮古島海上保安署(沖縄県宮古島市)に所属する巡視船「のばる尖閣警備を念頭に平成23年4月に配備された高速船だ。のばるの身をていしての護衛に対し、海警は汽笛を4回鳴らした後、漁船への接近を中断した。左に大きく舵を切って、衝突を回避した。すぐに、近くをゴムボートで航行していた海上保安官が漁船に近づき、声をかけた。「命の危険がありますので、早めに撤収してください」

尖閣諸島国有化から11日で1年。領海侵入を繰り返す中国公船を監視する海保の活動を追った。

日本政府は昨年9月11日、尖閣諸島を民間の所有者から購入、国有化した。それ以降、周辺海域の様相は大きく変わった。中国公船の接続水域での航行は常態化し、領海侵入も8月31日までに59回に上った。ほぼ6日に1回という高い頻度だ。−「明らかに日本の領土である尖閣諸島の周辺の海域に、わが者顔で中国公船が航行している。憤りを感じずにはいられない」。警備に携わった経験のある海上保安官は本音を漏らす。海保によると、中国公船が日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国漁船への立ち入り検査をするような動きや、事前通告のない海洋調査とみられる航行も確認された。海保では中国側がこれらの活動を通じて尖閣の領有権を主張しているとみている。幹部は「国家の明確な意図を持って自らの主張を既成事実化しようとしている」と危ぶむ

尖閣を管轄する11管の大型巡視船は計7隻。常時5隻程度展開する中国公船に11管だけで対応するのは難しく、海保は全国の海上保安本部から巡視船を順次派遣し、「冷静に、理性的に警備に当たってきた」(幹部)。中国側の挑発には乗らず、巡視船は退去や調査中止を繰り返し呼びかけてきた。「尖閣周辺では、一つのミスが国際的な衝突に発展する。感情を極力抑え、無用な衝突を避ける努力をしてきた」。警備に携わる海保幹部は話す。−だれもがストレスを抱えている」。現場を知る海上保安官は本音を漏らす。過酷な任務を支えるのは、海上保安官の「士気」だ。こうした中、8月1日付で海上保安大学校出身の佐藤雄二長官(59)が就任国土交通省のキャリア官僚の指定席だった長官ポストに、初めて“制服組”が就いた。海保幹部は「現場派がトップと聞き、血がわくほど士気が上がった」と話す。佐藤長官は尖閣での指揮経験もあり、現場の苦労を最もよく知る幹部の一人だ。前線での警備だけでなく、給油や飲食物の手配、停泊場所の確保といった作業に携わる海上保安官の努力も知っている。「最前線だけが厳しいのではない。後方支援も含め、一丸となって危機に立ち向かう」。佐藤長官は、海保の団結力で難局に立ち向かう決意だ。


尖閣諸島 東シナ海南西部に位置し、魚釣島や大正島、久場島などから成る島嶼群。沖縄県石垣市に属する。日本政府は明治28(1895)年に沖縄県への編入を閣議決定し、実業家に無償貸与した。戦前はかつお節工場などがあったが、昭和15年ごろに無人島に。魚釣島、北小島、南小島の3島は長く民間人が所有、国が賃借契約を結ぶ形で管理してきたが、平成24年9月11日に国有化された

第11管区海上保安本部 全国に11ある管区海上保安本部のうち、沖縄周辺の海域を管轄し、那覇市に本部を置く。昭和47年の沖縄返還に伴って発足した。本部の配下には、尖閣警備の前線基地となっている石垣のほか、中城(なかぐすく)、那覇の計3つの海上保安部があり、さらに宮古島、名護の2つの海上保安署がある。那覇海上保安部は、本部の尖閣警備業務の負担軽減などのため、今年5月にできた


togyo2009 at 00:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 政治経済NEWS 

〈メタンハイドレートの夢を力に「資源大国日本」へ〉下

メタンハイドレート開発は、「オール」ジャパンより「コア」ジャパンで メタンハイドレートの夢を力に「資源大国日本」へ 第3回 山岡淳一郎=取材/文
http://president.jp/articles/-/10644
現実味を帯びる商業化、その壁は
MH21(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム)が3月に東部南海トラフ第二渥美海丘で行なった海洋産出試験は、一日平均2万m3という予想以上のガス生産量を記録し、エネルギー産業界を驚かせた。試験自体は水深1000メートルの海底のさらに300m下の生産坑井に砂が侵入したために6日間で打ち切られたが、メタンハイドレートからガスを採り出す技術は実用化へぐっと近づいた。今後、2018年までに「商業化の実現に向けた技術整備」が行われる。ひょっとすると2020年東京五輪の聖火台の炎はメタンハイドレートのガスで維持されるかもしれない。では、向こう5年間で商業化の前提となる大量、長期安定的なガス産出技術が確立されたとしよう。そこから商業化に向けて、どのような「壁」があるのだろうか。

ポイントは、洋上の生産設備と開発体制だ。まず生産設備については、ハイドレート由来のガスも既存の天然ガスも主成分はメタンなので、従来の海底油田・ガス田の開発技術が応用できる。現在、世界の海洋における石油、ガスの生産設備には次のようなものがある。海底資源を開発するには、生産施設を洋上に設置し、安定稼働させねばならない。水深が浅いところでは海底に固定させた構造物で石油、ガスを採掘しているが、水深100メートルを超えると、海底に設備を建造する費用が膨大になるので浮体式の構造物が使われる。固定式の構造物は水深300メートルが限界だといわれる。

浮体を海上でどう安定させるか
浮体式構造物の係留システムは、台風などの荒天でも安全を保てる高いレベルが求められる。海底資源を洋上に送るパイプは、曲がりやすく、かつ高圧に耐えられる特殊素材が用いられる。これらを正確に、安全に設置する作業船団も必要となる。浮体式構造物なかで最もポピュラーなのが「FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)」だ。巨大な台船に海底から上がってきた原油から不純物や水、ガスを分離するプラントが載っている。プラントで余分なものが取り除かれた原油は、船腹のタンクに貯蔵され、定期的に輸送タンカーに積み出される。分離されたガスは、海底パイプラインで陸へ送られたり、FPSOのボイラーやガスタービンの燃料に使われたりしている。世界で約160基のFPSOが稼働中だという。たとえば、MODEC(三井海洋開発)は、ブラジルのペトロブラス社が保有するリオデジャネイロ沖300キロの「Tupi」鉱区で、FPSOのエンジニアリングから設計、機器購入、建造、据付までの一括工事を担当。2010年から日量10万バレルの原油を生産し、15年間に及ぶチャーターサービスを展開している。

深海のガスをどう掘り続けるか
世界全体を眺めてみると大水深開発は石油が主体で、天然ガスは停滞気味だ。−背景には陸上のシェールガス開発の加速、リ―マンショック前にバレル150ドル近くまで上昇した原油価格の下落などがあるというが、理由はそれだけだろうか。大水深ガス田の開発遅滞は、メタンハイドレートの商業化にとって由々しき問題と映るのだが……。MODECの海洋資源開発をけん引する島村好秀常務は、ガス開発の遅れをこう語る。「水深2500メートルを超える海域でも石油開発は進んでいます。が、確かに海底のガス開発は石油開発のスピードと比べると遅れている。経済状況の変化もさりながら、遅れているのは、出てきたガスをどう処理し、いかにして陸へ輸送するかという難題が横たわっているからです。ガスはそのままでは船上に溜められません。パイプラインで陸上に送るか、液化して送るか、コスト計算も難しくてなかなか結論が出ないのです。メタンハイドレートの開発も同じ課題に突き当たりますよ」陸から離れた深海底にパイプラインを敷設してガスを陸へ送るには莫大な費用がかかる。一方、洋上でガスを液化する「FLNG(浮体式液化天然ガス生産設備)」は技術的に確立しているものの、気体を液体にし、陸に運んでふたたび気体に変えて送るとなれば、エネルギー効率は著しく落ちる。輸送の形態は、気体がいいのか、液体がいいのか。大水深開発のオペレーターたちは頭を悩ませている。

−日本の渥美半島、志摩半島沖50キロの第二渥美海丘で産出したメタンハイドレートのガスは、どのように輸送すればいいのだろうか。島村氏は「メタンをメタノールに変えて液化するようなGTL (gas to liquids)や、NGH(Natural Gas Hydrate)でもう一度ハイドレートにして輸送する方法もある」と指摘する。MH21は、産出したガスの処理、輸送方法を、まだ明らかにしていない。−関係者の間からは「パイプライン説」が聞こえてくる。対岸には陸上パイプラインが走っており、つなぎさえすればガスは利用できる。東部南海トラフには日本の天然ガス消費量の11年分が眠っている。それを「担保」にすれば巨額の敷設費も捻出できる、との見立てだ。不確定要素は多いが、技術的に超えなければならないハードルは見えている。

「オールジャパン」のこだわりが計画の遅れを招く?
問題は、開発の頭となるオペレーター、その下につくエンジニアニング会社、掘削会社、海洋構造物建設会社、輸送オペレーターなどの体制をどう組むか、であろう。一般的に考えればトップに海洋石油・天然ガス開発のオペレーター実績がある石油会社が座り、エンジニアリング会社、掘削、海洋構造物関連会社などと連携しつつ、陸上パイプラインを保有するガス会社も含め、川上から川下まで一体的に開発を進める絵が浮かぶ。「オールジャパンで挑戦しよう」と掛け声も響いてくる。ところが、だ。イメージと現実には恐ろしいほどのギャップがあった。

じつは、これまで述べてきた海洋資源開発の分野で、日本は韓国や中国、シンガポールに大きく水をあけられている。後塵を拝せないほど距離が開いているのだ。第16回パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」に提出された資料によれば、海洋構造物の建造シェアは韓国が約4割、シンガポール、中国がそれぞれ14%、ブラジル9%ときて、日本はわずか1%。過去10年間、日本のメーカーは1基も海底の構造物を建造していない。造船技術があっても本格的な海洋構造物は造れない。大水深での生産設備の係留や設置工事の実績もない。そもそもこれまでは日本周辺には海洋開発の案件がなかったのである

四半世紀前、MODECは、そんな日本に見切りをつけ、海外で石油メジャーなどの下に飛び込んだ。ときには徹底的にシゴかれて、浮体式構造物の建造、操業で独自のポジションを獲得した。その海洋開発の最前線に立つ島村氏は「オールジャパンにこだわったらガラパゴス化するばかり」と警鐘を鳴らす。「日本は海洋開発で世界に負けている部分があります。まず敗北を認め、その部分について海外に謙虚に学ばねばなりません。オールジャパンにこだわって、政府資金に頼りきり、うちわだけでメタンハイドレートを開発しようとしたら失敗するでしょう。技術は孤立し、外で通用しなくなる。海外にはいろんな海洋開発関連企業があります。大事なのは、開発プロジェクトの中核に日本側が座り、足りない部分は海外企業と連携すること。排外主義は退歩につながります」プロジェクトの中核、つまり「コア」を日本企業が押さえ、海外企業を組み合わせて開発をすすめる。オールジャパンではなく、「コアジャパン」。そんな発想に立てるか否か。海洋開発と謙虚に向き合う意識改革ができるかどうかが、今後の商業化の鍵といえそうだ。


メタンハイドレート開発により、ガス化学の産業革命が始まる メタンハイドレートの夢を力に「資源大国日本」へ 第4回 PRESIDENT Online特別企画 山岡淳一郎=取材/文
http://president.jp/articles/-/10757
エネルギー化の、その先へ
JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)は、7〜8月にかけて、今後のメタンハイドレート開発を左右する極めて重要な民間委託業務の公募をした。その委託業務とは「第2回メタンハイドレート海洋産出試験時産出ガス有効利用の検討」である。今年3月の第1回海洋産出試験で画期的な成果を収めたMH21(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム)は、第2回海洋産出試験(2014年度以降)で商業化に向けた技術基盤整備の見通しを立てようとしている。次の海洋産出試験は、まさに乾坤一擲、日本の運命をかけた大勝負となる。そこに向けて、MH21をけん引するJOGMECは、産出したガスの「有効利用の検討」を民間に委ねたのだ。

具体的な委託業務の内容は、次のようなものだった。「……産出するガスを有効利用するためのシステムを定め、その概念設計を行う。ガスを有効利用するためのシステムについては、第2回海洋産出試験において産出時に使用する海上施設上または当該海上施設近傍の洋上に設置するものとし、以下を対象とする。1.CNG(圧縮天然ガス)製造・運搬システム 2.発電システム 3.LNG(液化ガス)製造・運搬システム」(委託業務仕様書より)

ここからメタンハイドレート開発が、単にガスを生産するだけでなく、具体的な利用方法を射程に入れていることがおわかりいただけるだろう。陸地とガス産出海域の距離(50キロ)からすれば、実際に海底のメタンハイドレートからガス生産が始まればパイプラインで陸へ送ることが有力な選択肢となる。しかしながら、産出試験のために莫大な投資をしてインフラを建設するわけにはいかない。そこで洋上の施設でメタンガスからCNGやLNGを製造して陸に運ぶ。あるいは、ガスを使って洋上発電し、利用できることを実証しようというのだ。現実にCNG車が道路を走り、LNGが陸のガスパイプラインに送られたら、メタンハイドレートのイメージは劇的に変わるだろう。使えるエネルギー資源としての存在感は飛躍的に高まる。日本のエネルギー資源のカードにスペードのエースが加わる。

ライバル同士がタッグを組んだ取り組み
9月12日、JOGMECは公募結果を発表した。採択されたのは、エネルギー系エンジニアリング会社の双璧、日揮と千代田化工建設の「共同提案」だった。両社は、ともに横浜市西区の「みなとみらい」に本社を置いている。海外の石油・天然ガスはもちろん、エネルギー資源開発の最前線を切り拓いてきたエンジニアリング会社は、メタンハイドレート開発の向こうにどんな産業像を描いているのか。

日揮の研究開発部門を統括する執行役員・保田隆テクノロジーイノベーションセンター本部長(CTO)にインタビューをした。
【山岡】メタンガスをCNGやLNGにして使う発想は、利用の可能性を拡げますね。千代田化工建設と共同で応募した意図とはどのようなものだったのでしょうか。
【保田】メタンハイドレートの開発は長期にわたるものであり、エンジニアリング会社が連携して進めていくべきだと考えました。商業生産に入ったときには、メタンハイドレートを発電燃料ととらえるだけでは、おもしろくない。シェールガス革命のような二次的、三次的な産業発展につなげるにはケミカルや輸送燃料としての可能性を引き出さなくてはなりません。次々とシャットダウンしている石油化学プラントに代わるガス化学産業の開花が求められる。それはとても難しい。難しいからこそ、手始めに千代田化工建設さんと企業の垣根を超えて、一緒にやってみよう、と。洋上でのCNG化やLNG化の技術は確立されており、十分対応できますが、われわれはその先を見ています。可能なら、エネルギー系だけでなく、化学会社、自動車会社などとも大同団結して、技術開発ができれば、と夢見ています。現在、一般社団法人国家ビジョン研究会の「MHプロジェクト委員会」に多くの企業が参集しています。うちもそのメンバーですが、この委員会などが枠組みづくりの基点になるといいですね。
【山岡】JOGMECの委託業務の「概念設計」はいつごろまでにできるのでしょうか。
【保田】これから正式な契約を結んで着手しますが、平成25年度の事業ですので、年度を超えることはないでしょう。
【山岡】メタンを使ったガス化学の勃興は、大変な産業革命を起こすのではないかと期待が膨らみます。現在、北米ではシェールガス革命で、エタンガスからのエチレン製造が加速しています。ただ、エタン分子は炭素原子2個を水素原子6個が囲む(C2H6)構造で、エタンガスを細いチューブのなかに高速で流し、外側で火を燃やせば水素原子2個がとれてエチレンになる。しかし、メタン分子は炭素原子1個を水素原子4個が囲む(CH4)構造ですから、同じことをしても炭素と水素ができるだけ。いわゆるC1化学と呼ばれる別の体系で化合物を合成しなくてはなりませんね。このハードルが非常に高いと聞いています。

C1化学、採算までの高いハードル
【保田】まさにそこ、C1化学を実用レベルにイノベーションできるかどうかが、最大のポイントです。私自身、マレーシアやカタールで、石油メジャーと一緒にGTL(gas to liquids)のプラントの設計、建設に
深く関与しました。メタンからディーゼルやナフサなどをつくったわけですが、その過程でLPG(液化石油ガス)などが採れるので採算性が上向きました。ただ、石油系の燃料よりは、オレフィン系のエチレンやプロビレン(合成樹脂や繊維などの原料)、ブタジエン(合成ゴムの素材)などといった高付加価値の化学品を目ざしたほうがいい。技術的にはメタンからメタノールを経由した形が一般的で、プロピレンを生産する技術をわれわれも持っています。C1からカップリングして、エチレンにするとか、あるいはベンゼンにするとか、ハードルは高いけれど難しい技術がないわけではない。問題は、採算性なんです。
【山岡】やはり、そこですか。現在の天然ガス輸入価格の16ドル/MBtuくらいまでメタンハイドレートのガス価格が下っても、ケミカルに使うのは難しいですか。
【保田】ええ。困難ですね。アメリカのシェールガスは4ドル/MBtuでメタノールやGTLの生産も考えられていますが、私のイメージでは、それでもぎりぎりの採算だと思う。カタールの1ドル/MBtuの世界でGTLの基本設計をしましたが、原料費だけで10ドル/bblかかりました。おそらくシェールを使った場合も40ドル/bblくらいの原価がかかっていると推察されます。GTLでは潤滑油などの副産物が採れるから、それに期待しているのでしょう。あるいはシェールガスからLPGを採って、そこで追加販売の利益を確保する。そんな図を描いていると思います。
【山岡】なるほど。メタンハイドレードを、シェールのようなゲームチェンジャーにするには、採算性の壁を突破しなくてはならない。官民一体となった「メタンハイドレート特区」のような構想も必要かもしれませんね。
【保田】そういう大きな構想を国が示してくれれば、間違いなく、民間の開発機運は高まります。現在、海洋産出試験が行われている「第二渥美海丘海域」に近いところに特区を定め、集中的に化学プラントを集めるとか。国家プロジェクトとしての心意気が必要です。

メタンハイドレート版「固定価格買取制度」も
【山岡】これまでJOGMECや産業技術総合研究所が蓄積してきた技術、たとえば深海底の地層からのコアサンプラーなどの技術の民間転用なども考えていいのでは?
【保田】関連技術の水平展開ですね。エンジニアリング会社としてSubseaの設備や全体システムの最適化には興味がありますし、エネルギー事業者の目で、メタンハイドレートの掘削、生産、輸送、加工の技術を眺めたら、新しい可能性が見つかるかもしれません。先日、国家ビジョン研究会の委員会で、ちょっと話題に上ったのが、メタンハイドレート版の固定買い取り制度です。
【山岡】再生可能エネルギーに導入された「FIT」ですね。
【保田】まだ先の話でしょうが、日本に自前のエネルギーを定着させるには、そういう優遇策も必要ではないかと思います。
【山岡】いずれにしても、日本のエネルギー政策にメタンハイドレートというカードが加われば、外交、安全保障、産業政策すべてに自立的な軸ができるでしょう。
【保田】夢は力になります。モノづくりの新しい地平を拓くためにも、メタンハイドレート開発は、大同団結でスタートしたほうがいいでしょう。


togyo2009 at 00:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 世界の中の日本の今