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December 26, 2016

日本の景気刺激策・アベノミクスの現在〈OurWorldJAPAN〉より

2016.10.17【Our World JAPAN】アベノミクス第二弾は成功できるか

http://www.sankei.com/politics/news/161017/plt1610170026-n1.html

安倍首相の名を冠したアベノミクスだが、ー期待値と実績との間に乖離が存在しー、残念ながらー4年前に首相が思い描いた効果を生み出していない。ー2012年に安倍晋三首相が発表した大胆な経済政策は、財政刺激金融緩和構造改革という3本の矢に基づくものであったが、 20年間続いてきた景気低迷消費者物価の下落から日本を救うことはできなかったようだ。国際通貨基金(IMF)によると世界規模で貿易が減速するなかで進行する円高が輸出への痛手となって日本経済の勢いが失われてきており、デフレのリスクが迫っている。今年の成長率は0.3%、来年は0.1% (過去3年間で生産年齢人口が300万人減少したことを考慮すれば、決して悪い数値ではない) と見込まれているが、インフレ率は目標の2%に遠く及ばない人口の減少や高齢化いった不安要素も重なり、日本 (実際のところ世界も)経済 の先行きが懸念される事態となっている。


ー今年7月ー安倍首相はーこれまで実現できなかったー消費向上、賃金と物価の上昇を目指し、莫大な財政出動 (国内総生産(GDP)の6%に相当する28兆円)に裏打ちされた意欲的な新経済政策「アベノミクス第二弾」を発表した。言い換えると、首相は停滞する内需の拡大を模索しており、この取り組みには大胆な政策の正当性を信じる改革重視の政府と民間企業の双方を必要とする。大手飲料・食品メーカー、サントリーの新浪剛史社長は「日本が経験した『失われた20年』によって、日本のビジネスリーダーのあいだには多くの懐疑論が生まれ、今では国内ではなく海外に投資を行うようになっている。そのため、政府による投資の回帰に向けた取り組みが必要となっている」と語る。ー安倍首相は意欲的でスキルの高い政治手腕が、日本の閉塞感を打破する変革につながると頑なに信じている。同社長は 「企業は投資を行う引き金が必要。そして、その引き金は政府が最初に引くべきだ」との見解を示した。


IMFによると、日本のデフレ問題は本物で、日本銀行はインフレターゲットの枠組みを採用し、そのなかで2%目標からのインフレ予測の乖離に対して、金融政策によって手を打つ必要がある。しかしながら、日本は他の国とは異なり、コアインフレの数値にエネルギー価格が含まれていることを考慮に入れなければならない。エネルギー価格を除外すれば、驚くべきことにコア消費者物価は、イギリス、フランス、ドイツが下落したのに対して、アベノミクスの開始から実際にはわずかに上昇している。このようなことから、他国が高齢化、低成長、減らない借金に直面しながら内需を復活させるために何をすべきかという点で、日本は依然として 世界の手本となる立場にある


日本銀行はインフレ率上昇と経済状況打開の試みにおいて、極めて積極的な役割を果たしている。金利はわずか0.1%に抑えられているばかりでなく、用意している実弾はそれだけにとどまらない。最近、日銀の黒田東彦総裁は、日本の10年国債を約7870億ドル分購入することを発表した。日銀の方策が絶望的と非難の声が上がるなか、黒田総裁の決断と12年に欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁が発し、市場に高揚感を引き起こした「 whateve it takes (何としても)」という声明とを対比しているアナリストも存在する。同総裁の決断は、物価下落と決別するため、日銀が必要とされる限り国の決意に見合った規模で金融拡大を進める準備があることを意味する。黒田総裁の発言で、日銀の金融政策が弾切れになり、念願としているインフレ追求が頓挫のではという市場の不安は一掃された。ー 同総裁は「現状の枠組み内でもさらなる緩和に向けた余地は残っているし、これとは別の新しい考え方も選択肢として残しておくべきだ」と語っている。このような緩和基調の金融政策を維持・進展させていくうえでの最大のリスクのひとつが、銀行の利益や個人年金スキームといった貯蓄型金融商品の利回りが痛手を被ることだ。金利のさらなる引き下げという見通しによって不安感がさらに煽られるが、黒田総裁は「どのような政策にもマイナス面がある。それを分かったうえで、日本経済全体が緩和を必要としているのであれば、継続を躊躇すべきではない」と述べ、リスクを認識したうえで、国を最優先すると主張している。低金利の状況にもかかわらず、日本の金融業界は堅調が続いているようだ。大手金融機関であるみずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長は「我が国では低金利の状況が長く続いており、融資ビジネスの利益率が低下しているが、融資・投資銀行ビジネスを含め金融業界全体は海外事業の好業績やプラス効果で、かなり好調を維持してきた」と述べるなど、業界がこの困難を乗り切ることができると確信している。


経済てこ入れの取り組みは、物価引き上げという短期的目標を達成できても、さらにその上を行かなくてはならないIMFによると、日本はさらに意欲的な構造改革を実施、具体的には女性、高齢者、外国人専門家の労働市場への参画を促進する必要がある。欧米の観測筋にとっては、このような課題は簡単に克服できると思えるかもしれないが、実際に解決するためには日本に深く根差した社会通念に立ち向かわなくてはならない。変革は簡単ではないだろう。


働く女性の問題への取り組みはとりわけ重要だ。日本は昨年4月、大企業に女性の雇用および管理職への登用に関する目標を公式に設定することを義務付けた法律の施行を開始した。この新法では、従業員300人を超えるすべての企業が女性社員の人数を公表し、目標を達成するための行動計画を策定しなければならない。しかし、「ウーマノミクス」が安倍政権の経済復興における取り組みの柱になったものの、日本企業の多くのリーダーや従業員はこれを受け入れられずにいる。この傾向は、長きにわたって事実上女性がいなかった上位の管理職において特に顕著である。


もうひとつの重要な改革はイノベーションにある。日本は長年の間、最先端をいく魅力的な技術の代名詞的存在であり、その製品は世界を席巻した。その名声の一部が20年間の景気低迷や国際的な競争の激化で損なわれ、一定の自己反省の動きもみられてきた。しかし、現状を危機とみる考えが大勢を占める一方で、機会と捉える見方も生まれている。


安倍首相は明らかに後者に属しており、問題を抱えた日本の人口構成にひるむことなく、それをロボティクスやワイヤレスセンサー、人工知能などの分野におけるイノベーションのきっかけとして、日本の優位性に変えることができると考えている安倍首相は、ロイター通信のイベントの席上、「日本の人口構成についてまったく心配していない。たしかに高齢化しており、人口も減少しているかもしれまない。しかし、それで有利なこともある。生産性向上への熱意を持ち続けることができるからだ。逆説的に言えば、日本の人口構成は重荷ではなく恵みなのだ」と語っている。多くの人が間違いなく安倍首相の発言に異論を唱えるだろう。しかし、少なくとも彼の言葉には臆病な指導者が羨むような、やればできるという意志が込められている。さらに、首相の考えは、何十年間も日本経済の特徴となってきた技術革新に向けられている。技術革新を国内外で拡大し、国家再生の基盤とするためには、イノベーションを通じてかつての力を取り戻し、優れた国際的なマーケティングを通じてブランドを再び輝かせればいいだけだ。


日本が繁栄を取り戻すには、改革を支持する層の後押しが大いに必要だが、型破りな金融政策を実行する以上のことをして社会通念を打破し、技術革新を助長する必要がある。また日本には、素晴らしい成果を誇れる国にあってしかるべき何かを必要としている。それは総力を結集して物事に当たる意欲だ。言い換えれば、国が展開する意欲的な改革と首相の誇りに満ちた激励に、同じ考えを持った民間部門が同調することが欠かせない。300年の歴史を持つ醤油メーカーのキッコーマンは、政府の政策を支えるうえで企業が果たすことのできる役割を熟知している。同社の茂木友三郎名誉会長は「 私たちは民間企業だが、社会においては公共の法人だと認識しており、常に良き企業市民であろうとしています利益を追求するばかりでなく、顧客、消費者、従業員、仕入先のみならず、社会全体に貢献するために存在している」と語った。


こうした公共と民間の協調体制が日本における持続可能な成長の推進に欠かせないが、国として海外も視野に入れなければならない。実際に国際貿易は、5月に伊勢志摩国立公園で開催されたサミットにおいて、世界の指導者が署名したG7宣言の柱のひとつであった。署名した指導者たちは、市場の門戸を開放し、あらゆる形の保護主義貿易と対峙すると誓った。また、現在、批准待ちとなっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など、地域貿易協定を通じた自由化促進に対するコミットメントを再確認した。


自動車産業を代表例として、日本企業は関税引き下げの恩恵で海外での事業拡大がより容易になることが見込まれるなど、日本はTPPから多くのものを得る立場にあるTPP強硬に反対しているのは、農産物の関税が引き下げられることで海外の安価な輸入品との競争が不可避になると危惧している日本の農家などであると推測される。TPPの経済的なメリット、デメリットにかかわらず、後者は商業的な利益を超越した外交上のある種の同盟関係を象徴している。はっきり言えることは、TPPの発効はアジアの国々とアメリカとのあいだの距離を縮め、アジア太平洋地域における中国の経済、軍事、領土問題の発言力にくさびを打ち込む役割を果たすということだ。安倍首相が望む日本の復興を実現するには、孤立や新旧の同盟国との緊張関係を避けなければならない。TPPは、その経済的性質以上に、大きな地政学的な役割を担うことが可能な枠組みだといえよう。政府は、日本とアメリカの関係に活気を取り戻すことにも注力している。ー安倍首相はロイター通信に対し「日本と米国は、TPPに関してそれぞれ早急に国内の承認を得なければならない。成功か失敗かで、世界的な自由貿易システムの方向性や、アジア太平洋地域における戦略環境が変わってきます。日本は努力を惜しみません。そして、米国も同様であることを期待している」と語った。


ー共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は、米国による日本に対する軍事援助について、公の場で疑問を投げかけてきた。このようなメッセージで 両国関係に傷がつくようなことがあってはならない。どの国も優位になり過ぎない適切なバランスの取れた地域において、相互依存や相互利益について両国が認識を共有すべきだ。しかし、トランプ氏の発言によって、日本政府が従来の同盟関係への過剰な依存を避け、世界全体を視野に新たな協力関係を模索するきっかけとなる可能性がある。将来的に日本の海外政策が変わったとしても、改革を経てより強くなり、国際化も進んだ経済によって、日本は20年前を境に失い始めた強い影響力を取り戻していくことだろう。


2016.10.17【Our World JAPAN】日本の課題 成長モデルの刷新

http://www.sankei.com/politics/news/161017/plt1610170042-n1.html

日出ずる国、日本は多くの課題が立ちはだかるなか、国の再生に取り組んでいる。取り組みを率いるのは、現在の難局にあっても日本経済の底力と潜在力を証明できると信じている一人のリーダーだ。2011年に発生した福島第一原子力発電所事故までの20年にわたる景気低迷に苦しむ世界3位の経済大国の姿は、内情を知らない観察者の目には、かろうじて息をつないでいる状態に映るかもしれない。しかし、安倍晋三首相は漠然とした野望を抱いているわけではなく、国のために明確な計画を持ち、経済の復活と世界秩序における役割の強化、そして外交、軍事面で新たな積極姿勢を打ち立てることを目指している。その目標実現に向けた基礎工事の一部は、すでに完了している。2012年に現在の地位の座について以降、安倍首相は日本経済再生の道を示す政策に自身の名を冠してきた。いまやすっかり有名になった「アベノミクス」の根幹をなすのが、10兆3000億円規模の景気刺激策に支えられた3本の矢−−大胆な金融政策(金融緩和)機動的な財政政策(財政出動)民間投資を喚起する成長戦略(構造改革)−−だこの政策により、日本の失業率はここ20年で最低水準(3.2%)となり、国内企業は過去最高水準の利益を確保、国内総生産(GDP)の前年比成長率(名目)も過去20年で最長となるプラス成長を達成した。依然として震災のトラウマは残るものの、国内では明るさを取り戻す兆しがみえはじめている。


新たに芽生えた楽観主義が、今年7月の参議院選挙における自由民主党と公明党の連立与党の地すべり的な大勝利の一因になったのは間違いないだろう。この勝利により、安倍首相は衆参両院で3分の2という多数の支持を得て政府はより野心的な経済改革を次々に打ち出していくための政策実行力を手中におさめた。有権者の支持に自信を深めた安倍首相は、長い日本の経済低迷期には聞かれなかった強気の発言をしている。自身の自民党総裁への再選後、首相は「さらに強固な政治的基盤を得た私たちは、より積極的に経済政策と外交政策を推進できるし、また推進していかねばならない。それが今回の参院選で示された民意に応える方法だ」と宣言した


ただし、この楽観主義をしぼませてしまう恐れのある脅威も少なからず存在する。そのうち最も深刻なのは、日本経済の復活を妨げつづけてきた慢性的な病ともいえるデフレーションだ。7月の消費者物価指数は5ヵ月連続でマイナスとなり、前年同月比の下落幅は3年4カ月ぶりの大きなものとなった。物価上昇率は依然として目標の2%を大きく下回っており、日本の財政金融政策に見直しが必要なことを示している。国際通貨基金(IMF)と世界銀行は、2016年の日本の経済成長率が0.5%にとどまると予測している。日本経済の不況からの復活がまだ遠いことを示す数字だ。事実、日本の2015年の名目GDPは20年前とほぼ同水準で、米国が134%拡大したのとは対照的だった。これまでも投資家たちが指摘してきたように、日本が景気回復を果たすには、消費と内需が牽引する形でデフレを矯正し、経済の足場を固める必要がある。野村証券の木下智夫チーフ・マーケット・エコノミストは「日本経済の不調の主要因は個人消費個人消費の復活が絶対に必要だ」と強調した。


今こそ消費の拡大という明確な目的に向かって景気刺激策を打ち出すアベノミクス2.0を発動するときだ。安倍首相は日本経済の復活が不安定な外的要因ではなく国内で生じる勢いにかかっていることを知っており、7月には「英国は国民投票で欧州連合(EU)からの離脱派が過半数を占め、新興経済国はデフレの兆しがみえている。日本は内需拡大を加速させなくてはならない」と述べた。連立与党は、アベノミクスの新しい政策を推し進めるために必要なだけの十分な議席数を確保しており、すでにその力を行使している。7月には政府がGDPの6%に相当する28兆円規模の大型経済対策を閣議決定し、安倍首相は新幹線を含む輸送分野と観光分野のインフラ整備に大規模な投資を行うと宣言したうえで、震災で被災した地域の復興加速も約束した。しかし、これらの刺激策は、市場に配慮した改革と同時に実行していかなくてはならない。日本経済団体連合会の榊原定征会長は「デフレ脱却と経済活性化が最優先事項このふたつを実現するためには、政府が個人消費と投資の拡大、規制緩和の推進を図ることが最も重要だ」と強調した。安倍首相はすでに、中小企業の資金調達を容易にするほか、外国人労働者の流入を加速させる、企業の雇用や解雇手続きを簡素化するといった内容の構造改革を検討している。また、政府としてもいまだに日本社会の特徴とされる古い思想と対決し、ー進展の遅れている女性の労働市場への参加を推進していく構えをみせている。現在のところ、こうした政策が長期的に日本経済を活性化できるかどうかは未知数だ。しかし、積極的に実行されてこれまでの改革と補い合う相乗効果が得られれば、いよいよ日本も集中治療室から永遠に離れられかもしれないし、すでにそうした兆しもみえはじめている。日本の景気刺激策にもとづいた経済再生の処方箋は、他の先進国にとってもよい考察の材料になるはずだ。


IMFが日本政府に対して改革の手綱をゆるめないよう警告し、実行困難な提言を突きつけているものの、日本が力強さを取り戻して再浮上する兆候は現れている。賃上げの推進正規と非正規の労働者間の格差縮小財政出動や金融緩和政策労働力の供給加速や生産性向上などは、これまで放置されてきた宿題のごく一部だ。IMFの筆頭事務次長デビッド・リプトンの言葉を借りれば、要するにアベノミクスは「倍賭け」しなくてはならない。


経済の再生は、日本が抱いているほかの野心をも解き放つことになるとみられている。安倍政権の日本が米軍への過剰な依存を是正し、自立した戦略地政学上の役割を担ってアジア太平洋地域で中国の対抗馬となることを目指しているのは、秘密でも何でもない。日本国憲法は国際紛争を解決する手段としての武力行使を禁じているが、時が経つにつれ、この制限が国の動きを縛る拘束着とみなされるようになってきた安倍首相は、その拘束着を取り払うつもりだ。平和憲法を見直し、圧倒的多数を握る議会の力を利用して軍の役割を自衛に限定した9条を改正すべく、議論を呼びかけている憲法改正には国民投票による承認という高いハードルが存在するとはいえ、現在、日本国内では9条を神聖視する考え方に疑問が投じられるようになった。中国政府は、この動きをアジア地域における領土主権に関する自国の主張に対する最大のライバル国の反応であるとみているが、その見解は正しいだろう。中国には自国の太平洋における勝利を妨害する力が日本には備わっているという不安が根強くあり、より大胆になった日本の行動が中国の動揺を誘っている。



togyo2009 at 19:37│Comments(0)TrackBack(0) 進め!安倍内閣 

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