第190回国会にて消費者契約法と特定商取引法の改正が決議されました(平成28年5月25日)。
この決議後の平成28年6月3日に公布され、消費者契約法は平成29年6月3日、特定商取引法は平成29年12月1日に施行されます。(施行日以前に締結された契約には改正事項は適用されません)。


このうち特定商取引法の改正事項を本記事にまとめます。

なお、現行の両法の内容と改正事項については当職が執筆した「消費者保護と法律〜消費者契約法と特定商取引法〜(平成29年12月改正の情報も解説)」の文書をリンク先にて販売しております。

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特定商取引法の改正を行う背景として、高度情報化と高齢化の進展が著しいわが国で、消費者トラブルも複雑になっており従来の法令の枠組みでは解決できないことが増えています。特に法令の隙間を狙った悪質業者に対する実効性ある施策が求められており、行政による法執行の強化が大きな特徴になっています。

今回の法改正では、以下の事項が主な改正点となります。

訪問販売
・指定権利から特定権利への変更(2条4項)
・契約に関する事項で消費者の判断に影響を与えるものが事実不告知の行政処分対象
(7条2項3項)
・不実告知と事実不告知の取消権の時効期間延長(9条の3)
・アポイントメント・セールス(訪問販売)の適用範囲拡大

通信販売
・承諾をしていない者に対するファクシミリ広告の提供の禁止等(12条の5)

電話勧誘販売
・電話勧誘販売への過量販売解除権導入(24条の2)

特定継続的役務提供
・美容医療契約の特定継続的役務提供への追加について

法執行
・業務停止期間の延長
・行政による業務停止命令の範囲が拡大
・立ち入り検査を拒んだ場合の罰則(71条)
・禁止行為への違反や行政指導に従わない場合の罰則(73条)


これらの改正事項について、以下にもう少し詳しく解説します。


※筆者が執筆した特定商取引法に関する解説書(PDFマニュアル)です



※特定商取引法(旧訪問販売法)の成立から改正の流れと概要については当ブログの下記記事をご参照ください。

特定商取引法の改正履歴と平成29年改正への流れ|遠山桂ブログ(2015年02月10日)




<訪問販売>


指定権利から特定権利への変更(2条4項)
「指定権利」は「特定権利」に改称されます。(以降、全条文において共通)。
改正前は権利の販売については指定権利として定められた3つの権利しか適用対象になりませんでした。その隙間を狙って社債や外国通貨などの権利販売が増えて消費者被害が多発したため、権利販売についても適用対象を広げました。具体的には以下の3つ権利が「特定権利」として特定商取引法の適用対象とされます。
〇楡澆鰺用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるもの
⊆匣弔修梁召龍眩債権
3式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの

契約に関する事項で消費者の判断に影響を与えるものが事実不告知の行政処分対象
(7条2項3項)
「契約に関する事項であって、消費者の判断に影響を与えるもの」について事実不告知の適用対象となり、該当する事実があれば行政処分の対象になります。

業務停止期間の延長(8条)
違反に対する罰則としての業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。
また、違反をした組織だけでは無く個人(業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者)に対しても禁止命令の効力が及びます。これは訪問販売以外の取引類型についても同様です。

行政による業務停止命令の範囲が拡大(8条の2)
改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。

不実告知と事実不告知の取消権の時効期間延長(9条の3)
「不実告知」と「事実不告知」の取消について、取消権の時効期間は6ヶ月から1年へ延長されます。
また、この取消をした場合には、消費者は現存利益に関してのみ返還をすればよいとされます。(消費者が商品を使用していた場合、現状渡しで返品すればよいという扱いです。サービスや特定権利の場合は、未履行分については事業者が返金しなくてはなりません。)


アポイントメント・セールス(訪問販売)の適用範囲拡大について
改正条文ではアポイントメント・セールスの適用範囲拡大には触れられておりません。
しかし、消費者委員会が平成27年11月に公表した「特定商取引法専門調査会報告書」では、対面で再度来訪を要請し、当初から不意打ち性が連続している状態で来訪した消費者に勧誘等を行う場合はアポイント・セールスの規制が及ぶようにするとされています。
また、SNS・電子広告といった来訪要請手段による不意打ち的な勧誘についてもアポイント規制が及ぶようにするともされています。
これらについては後日に公表される通達にて解釈指針が示される可能性があります。


<通信販売>



承諾をしていない者に対するファクシミリ広告の提供の禁止等(12条の5)
事業者から消費者に対する通信販売ファクシミリ広告が原則として禁止されます。
ただし、次の場合にはファクシミリ広告が認められます。
(1)消費者がファクシミリ広告の要請をした場合
(2)契約の申込や締結をした消費者に対して、契約の内容を案内する場合
(3)省令で定める内容に基づく場合
この例外規定に基づいてファクシミリ広告をした場合でも、消費者から送信拒否の連絡があった場合には以後の送信は禁止となります。(その後に再度消費者から要請があれば送信可)。
また、消費者からファクシミリ広告の要請があった場合には、事業者はその記録を保存しなくてはなりません。
消費者の要請に基づいてファクシミリ広告をする場合には、11条に規定される通信販売の表示義務事項を広告に掲載しなくてはなりません。ファクシミリ広告を拒否する場合の連絡方法についても掲載する必要があります。

業務停止期間の延長と業務停止命令の範囲が拡大(15条・15条の2)
違反事業者に対する業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。
通信販売(ファクシミリ広告も含む)において、事業者が特定商取引法の通信販売規定に違反したときは業務停止等の処分対象になりますが、改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。

<電話勧誘販売>



業務停止期間の延長と業務停止命令の範囲が拡大(22条・23条・23条の2)
電話勧誘販売において、事業者が特定商取引法の電話勧誘販売規定に違反したときは業務停止等の処分対象になりますが、改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。
改正前の業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。

電話勧誘販売への過量販売解除権導入(24条の2)
改正前は訪問販売のみに認められていた過量販売解除権が電話勧誘販売にも導入されます。過量販売解除権とは、消費者が通常必要とする分量、回数、期間を著しく越える契約をした場合は、その勧誘をした事業者がその過量の事実を知っていたなら契約を取り消すことができるというものです。

<連鎖販売取引>



業務停止期間の延長と業務停止命令の範囲が拡大(38条・39条・39条の2)
連鎖販売取引において、事業者が特定商取引法の連鎖販売取引規定に違反したときは業務停止等の処分対象になりますが、改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。
改正前の業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。

<特定継続的役務提供>



美容医療契約の特定継続的役務提供への追加について
特定商取引法の改正条文には「美容医療契約」を特定継続的役務提供に追加指定し規制する件について触れられていません(41条)。同法条文には記載されていませんが、政令・施行規則(平成29年6月30日公表)により美容医療サービスが特定継続的役務に追加指定されることが示されました。

美容医療の誇大広告禁止と特定継続的役務指定|遠山桂ブログ(2017年06月30日)

業務停止期間の延長と業務停止命令の範囲が拡大(46条・47条・47条の2)
特定継続的役務提供において、事業者が特定商取引法の特定継続的役務提供規定に違反したときは業務停止等の処分対象になりますが、改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。
改正前の業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。


<業務提供誘引販売取引>



業務停止期間の延長と業務停止命令の範囲が拡大(56条・57条・57条の2)
業務提供誘引販売取引において、事業者が特定商取引法の業務提供誘引販売取引規定に違反したときは業務停止等の処分対象になりますが、改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。
改正前の業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。

<訪問購入>



業務停止期間の延長と業務停止命令の範囲が拡大(58条の12・58条の13・58条の13の2)
訪問購入において、事業者が特定商取引法の訪問購入規定に違反したときは業務停止等の処分対象になりますが、改正前は違反事業者への業務停止処分だけであったものが、改正後は代表者個人や社員個人に対しても同様事業への関わりが禁止されます。また、業務停止期間中は別法人にて同様事業をすることも禁止されます。これにより業務停止期間中に違反者は別法人で同様事業をすることができなくなります。
具体的には、命令(業務停止処分)がされた日より遡って60日以内に、違反事業に関わった個人にも命令の効力が及びます。
改正前の業務停止期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されます。

<立ち入り検査や罰則など(法執行)>



立ち入り検査(66条)
行政庁による販売事業者の事務所への立ち入り検査では、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは従業員その他の関係者に質問することができます。

公示送達(66条の5)
違反事業者の住所が不明な場合や外国にあって連絡できない場合には、裁判所の公示送達制度を利用して送達をしたものとみなして処分の執行ができるようになります。
国内の公示送達の期間は2週間、海外の場合は6週間とされます。

立ち入り検査を拒んだ場合の罰則(71条)
66条1項の立ち入り検査の報告をしない、もしくは虚偽の報告をした場合、もしくは検査を拒んだ場合などでは、6ヶ月以下の懲役または100以下の罰金またはこれの併科となります。

禁止行為への違反や行政指導に従わない場合の罰則(73条)
禁止行為への違反者には1億円以下の罰金刑の対象となります。(行政指導に従わない場合は3億円以下の罰金刑となります)。


以上が主な改正点になります。
対象となる事業者さんは契約書や規約の整備、コンプライアンスの徹底などの対応を進めて下さい。


特定商取引法の改正点と現行法の解説については、筆者が執筆した下記リンク先ページをご参照下さい。


特定商取引法(平成29年)改正と現行法の解説書


販売事業者、消費者行政担当者、実務家の皆様にお買い求め頂ければ幸いです。

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