インターネットでは意図的な虚偽の情報(フェイクニュース)が流布されたり、消費者の誤認を誘う不当表示の広告が氾濫している実態があります。
そのような情報を表示するサイト運営者の主目的は、人々の好奇心を刺激することでサイトの閲覧数を伸ばしアフィリエイト広告の収入を上げることです。
こうしたフェイクニュースが大衆の誤認を誘発して問題を引き起こすなら、インターネットの仕組みやアフィリエイトシステムの改善が必要になるのではないでしょうか。

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本記事の目次
フェイクニュースが大統領選に影響したり事件を引き起こす
国内でも生命健康やヘイト記事のフェイクニュースが氾濫
上場企業のDeNAがデマ情報を拡散して収益を上げた結果
営利目的では無く自己顕示欲のためにネット炎上を悪用する層も
フェイクニュースや不当表示に対応する法律
アフィリエイトのホワイトとブラック
新興市場の不当行為には規制が必要
フェイクニュースの検証と処罰
適正なアフィリエイトビジネスの振興を
ネットリテラシー向上のための啓発・教育


アフィリエイトと不当表示の問題点については当ブログの過去記事でも何度も触れていますが、そのアフィリエイトシステムの仕組みは次のようなものです。

アフィリエイトとは、商品の広告をしたい販売店(広告主)と広告報酬が欲しいブロガー等のサイト運営者(アフィリエイター)を広告代理店(ASP:アフィリエイト・サービス・プロバイダー)が仲介するシステムで、広告主はASPに広告手数料を支払い、ASPはアフィリエイターに広告報酬を支払って、アフィリエイターのサイトに広告を表示するものです。
このシステムの概略は下図を参照ください。
アフィリエイト
アフィリエイト収入の実態と情報商材の不当表示|遠山桂ブログ(2013年12月18日)



このアフィリエイトシステムはインターネットを介して広告主とサイト運営者をつなぐ仕組みであり、個人のサイト運営者がサイト制作の労力をマネタイズ化できる画期的なものです。

広告主には新たな広告の場が創出され、ネット利用者には自己の関心が高い分野の情報について広告を通して知ることができるというメリットがあります。
本来は広告主とサイト運営者とネット利用者とASPの四者すべてにメリットがあるという素晴らしいビジネスモデルなのです。

しかし、その素晴らしいシステムの盲点を突いて不当な手法で暴利を得ようとする輩が登場するなら、一定の規制やルールというのが必要になるのではないかという話になります。

そのアフィリエイト収入を目的とした不当行為にはフェイクニュースの問題がクローズアップされています。

NHKでもフェイクニュースの問題が採り上げられています。

フェイクニュース特集 “トランプの時代” 真実はどこへ|クローズアップ現在+(2017年2月6日放送)

フェイクニュース特集 あなたは被害者?加害者?|クローズアップ現在+(2017年2月7日放送)


本記事ではこのフェイクニュースが引き起こす問題や不当表示の有害性について掘り下げ、その対策についても考察します。


フェイクニュースが大統領選に影響したり事件を引き起こす



クローズアップ現代+にも採り上げられているように2016年のアメリカ大統領選挙ではネットでフェイクニュースが飛び交いました。

“ローマ法王がトランプ大統領を支持”

“クリントン氏が児童売春組織に関与している”


これらは全くのデマであり典型的なフェイクニュースですが、これを信じた男が児童買春の拠点とされたレストランを襲撃するという事件も起きました。

ドイツではベルリンの連邦首相府付次官の社会民主党(SPD)議員が難民統合税の導入を主張したというフェイクニュースが流れて拡散したことが報道されています。

こうしたフェイクニュースはSNSを通じて瞬時に拡散し、真実の情報であると誤認され人々の判断力に影響を与えることもあります。
虚偽情報をもとに国政選挙の判断をすることになったり、全く罪の無い善良な事業者に疑惑の目が向けられるという事態は民主国家で許されるものではありません。


国内でも生命健康やヘイト記事のフェイクニュースが氾濫



翻って日本国内でのフェイクニュース騒動はどうでしょうか。

人気アイドルグループ「私立恵比寿中学」のメンバー、松野莉奈さん(18)が2017年2月8日に急死したことに関連してツイッターで次のようなデマが拡散しました。

“東京大学の男子学生が後追い自殺をした”

“死因はインフルエンザ脳症であり、インフルエンザのときに解熱剤を飲むとインフルエンザ脳症になる”


これらは事実ではないことが確認されており、解熱剤とインフルエンザ脳症の問題についてはNHKが専門家のコメントにより否定する報道をしました。

また、2017年1月には次のようなヘイト記事が拡散しました。

“韓国、ソウル市日本人女児強姦事件に判決 一転無罪へ”

これはBuzzFeed Newsの取材により全てが虚偽情報であることが確認されていますが、フェイスブックとツイッターで18,000件以上もシェアされました。

このフェイクニュースの発信源は「大韓民国民間報道」というサイトですが、BuzzFeed Newsの取材にサイト運営者は「ヘイト記事は拡散しやすいのでアフィリエイト広告収入を目的にデマ記事を書いた」という趣旨の回答をしています。

ちなみにこのフェイクニュースの件ではサイト運営経費で1万4千円を使い、アフィリエイト収入は5千円程度なので完全に赤字だったそうです。
これだけ拡散された記事でもアフィリエイトでは収益化できず、人々のヘイト感情を煽ったうえでネット情報への不審感を植えつけるという社会的なマイナス効果しか生じていません。

フェイクニュースは有害性が強く、誰も得しないと断言できそうです。


上場企業のDeNAがデマ情報を拡散して収益を上げた結果



アフィリエイト広告を目的としてデマ情報を拡散するのは小銭を稼ぐことに飢えた個人や零細サイト事業者というイメージがありますが、実は上場企業でも大きな失態をしています。

このブログでも何度か採り上げていますがDeNAのキュレーションサイト(Welk等)はデマ情報や他サイトからのパクりが多く、医薬品医療機器法・景品表示法・著作権法などに抵触する疑義があるということでネット炎上し、2016年12月に全閉鎖するという事件がありました。

DeNAサイト炎上に見るパクリ記事量産の仕組みにライターは絶句【著者はAI?】|遠山桂ブログ(2016年12月5日)

なぜ大企業のDeNAが信憑性の薄い情報や他人の著作物を無断転用して拡散するようなマネをしたのかが気になりますが、やはりアフィリエイト広告やタイアップ広告などの広告収入が目的だったようです。

DeNAの2015年度連結業績では、キュレーション事業は「新規事業・その他」に該当し、その分野の売上は前年の31億円から57億円に増やし84%の増収になっています。
(ただし、立ち上げたばかりの事業で投資段階であるため47億円の営業赤字です)。
DeNAのキュレーション事業はこれから投資額を回収しようという段階で社会的バッシングを浴びて事業閉鎖に追い込まれたということです。

DeNAほどの規模で人々の興味を惹きつけるデマ情報を次々と垂れ流せば、膨大なアクセスを呼び込んで広告収入を上げることは可能ですが、相応の資金と仕組みと人海戦術が必要になります。
しかし、サイトに掲載する情報に違法性があればその存続は許容されません。

フェイクニュースの広告ビジネスについては、ラクに儲かる性質では無く結構なイバラの道だというのが証明されたのではないでしょうか。


営利目的では無く自己顕示欲のためにネット炎上を悪用する層も



広告収入を目的としてフェイクニュースを発信するのは動機としてわかりやすいものです。
そうした営利目的を動機とした発信者は、フェイクニュースが手間の割に儲からないとわかれば発信を止めるでしょう。
また、フェイクニュースへの規制が厳しくなれば、それもコストパフォーマンスの悪化につながるため撤退をすることでしょう。

しかし、営利目的では無く注目を浴びることに快感を覚えたり、自己の思想信条に基づいてフェイクニュースを発信するケースについては対応が厄介になります。

例えば、未成年者や精神的に未熟な目立ちたがり屋がSNS等でフェイクニュースを発信することで多くの「いいね」を得る経験をして、それが楽しくなってデマ情報の拡散を繰り返すという事例は想像しやすいでしょう。

また、極端な排外思想の持ち主が世論操作を目論んで外国人犯罪に関するフェイクニュースを連発する事例もありえるでしょう。

これらは趣味趣向や政治信条に基づく行動であるため、常人には理解できない程度の労力をかけて巧妙なウソを構築する可能性もあります。

または最初からネット炎上を狙って粗いデマ情報を拡散して悦に入る困った性質の変人もいることでしょう。
こういうタイプはネット上でいくら叩かれても当人の自己顕示欲が満たされるばかりで抑制作用が働きません。

インターネットは誰もが自由・平等に情報の検索(受信)が出来るというのが明確なメリットですが、発信についても同じように分け隔て無く出来てしまいます。
もちろん誰もが自由に情報発信できることもインターネットの利点ではありますが、社会的に有害な情報に関してはフィルターをかける必要性も生じているのではないでしょうか。

そうしたフィルターは「誰が」「どのような基準で」適用するかというのはインターネット民主制の根幹に関わる問題なので慎重な検討が必要なのは言うまでもありません。


フェイクニュースや不当表示に対応する法律



それでは社会的に有害なフェイクニュースを発信した者にはどのような法令による規制や罰則が適用されるのでしょうか。

まず、フェイクニュースによって特定の個人や事業者に損害を与えた場合には、名誉毀損罪(刑法230条)や偽計業務妨害罪(刑法233条)に問われる可能性があります。
同時に民事上の損害も生じるなら民法の不法行為規定(民法709条・710条)に基づく損害賠償責任も問われることでしょう。

インターネットで匿名による情報発信であったとしても、プロバイダ責任制限法の手続に沿って発信者の情報開示請求を行えば、発信者を特定できるケースは多いです。

また、フェイクニュースの記事が生命健康に関する内容であった場合には医薬品医療機器法や健康増進法の適用対象になります。
景品表示法の適用対象は「自己の供給する商品または役務の取引」に限定されているため、自己で販売はしないアフィリエイトシステムや営利目的では無い記事には同法の規制が及びませんが、医薬品医療機器法や健康増進法の適用対象は「何人も」とされているため生命健康に関するデマ情報は規制対象になります。
(アフィリエイト運営者にも誇大広告の責任を認めた判例はあります。東京地裁平成20年10月16日判決では、FX取引の誇大広告の責任について販売者とアフィリエイト・サイトの両者に認めています。)

アフィリエイトシステムでも、記事を掲載するアフィリエイターには景品表示法の適用は難しくなっていますが、広告主やASP(仲介業者)には同法の適用があるため、広告主やASPがコンプライアンスの取り組みをしっかりと行えばアフィリエイターによる不当表示も予防できるはずです。

不当な情報を掲載するアフィリエイターに対しては、生命健康に関する情報であれば医薬品医療機器法や健康増進法に基づいた行政処分が可能ですが、それ以外の一般商材の不当情報については景品表示法では直接の規制が及びません。
そのためASPや広告主に責任追及をすることになるのですが、このあたりは景品表示法もネット広告問題の実態を踏まえアフィリエイターに直接適用できる手当てを検討すべき状況かと思います。

内閣府の消費者委員会(消費者契約法専門委員会)では不当なネット広告についての取消権導入の議論がされていますが、不当な記事を流布するアフィリエイターに対する規制に関しても検討が必要と感じます。

ネット通販広告に取消権は導入されるか?|消費者契約法専門調査会の審議再開|遠山桂ブログ(2017年1月10日)

アフィリエイトのホワイトとブラック



フェイクニュースや不当表示の問題が多発するアフィリエイトシステムについて厳しい指摘をしていますが、筆者はアフィリエイトそのものを非難するつもりはありません。

アフィリエイトシステムは、ネットで記事を公開する著作者と広告主をつないで両者にメリットをもたらす素晴しい仕組みであり、記事の閲覧者も関心のある広告を見て欲しかった買い物をできるという利点があります。
おまけにこのシステムを提供するASPも手数料収入があるということで四方得の理想的なビジネスモデルだと思います。
筆者個人もアフィリエイト広告を利用しており、少ないながらも広告の収益はあります。(小遣いレベルですが・・・)。

多くのアフィリエイターと呼ばれるサイト運営者は、閲覧者の関心に応えるための情報を集め編集して記事にする作業を繰り返しています。
その公表される記事に不当・不法なところが無ければ全く問題はありません。

そうした適正にサイト運営をするアフィリエイターはホワイトビジネスと言えるでしょう。
ホワイトなアフィリエイトは更に市場規模を拡大していく勢いです。

その一方で人の注目を集めるためにはウソも誇大表現もアリと考える仁義なきアフィリエイターも存在します。
フェイクニュースを連投する輩もこのグループに属するわけです。これはブラックビジネスになります。

ブラックな手法でアフィリエイトを行うアウトサイダーは、自らが違法行為をしている自覚が無い者、違法行為の自覚があっても摘発されなければ良いと考えている者など、いろいろなタイプがいることでしょう。

ホワイトビジネスの遂行をするグループにとっては、アフィリエイトの信用を損なうブラックビジネスの存在はいい迷惑なはずです。
そろそろ本腰を入れてアフィリエイトシステムからブラックのグループを排除する取り組みが必要ではないでしょうか。


新興市場の不当行為には規制が必要



アフィリエイトシステムの発祥は1996年のアマゾンのアソシエイトプログラムとされていますから既に20年以上の歴史があります。
急成長したネット広告システムというイメージがありますが、ネットの世界では古くから存在するおなじみの仕組みと言えるでしょう。

世の中に登場したばかりのシステムなら、不当行為があった場合も対応が後手に回るのは仕方ありませんが、20年以上の歴史があるのであればそれなりの法整備もあってしかるべきでしょう。

どのようなビジネスでも創生期はルールが未整備で、やったもの勝ちの競争になる傾向はあります。
しかし、目に余る不当行為で暴利を貪る者の存在は、消費者被害を引き起こして法規制される道を辿るものです。

アフィリエイト広告というビジネスモデルも、世の中に登場してから20年以上経過しているわけですから、その市場規模を鑑みてもそろそろ本格的な法整備があっても良い気はします。

また、行政による法規制だけではなく、ビジネスに関わる当事者の自己規制も重要になります。
ASPやニュースメディア、検索エンジンなど、ネット広告に関わる主役もコンプライアンスや妥当性を実現するための仕組みづくりに余念がありません。


フェイクニュースの検証と処罰



前述のクローズアップ現代+では、フェイクニュースへの対策としてアメリカの大手メディアがSNS記事の真偽を検証して判定する仕組みが紹介されていました。
国内では「インフルエンザ脳症」のデマ情報をNHKニュースが専門家のコメントにて否定するという対応をしました。

SNSで拡散するデマ情報を既存メディアが適正な取材をもって消火するという事件は今後も起きることでしょう。

ネット広告の不当表示についても、ネット企業の自主的な規制が始まっています。
フェイスブック広告では、閲覧者が不当と感じた広告を運営者に通報できる仕組みを運用し、多数の通報がある広告は排除される仕組みになっています。同様の技術はヤフーやラインでも採用しています。

グーグルも検索品質の向上図るために、価値の低い情報を多量投稿するサイトにはペナルティとして検索順位を引き下げる改善を行っています。
フェイクニュースと判定されるような記事ばかりを投稿するサイトは検索エンジンに表示されなくなる可能性が高くなるでしょう。

こうしたネット企業の取り組みはフェイクニュースの抑制に効果を発揮するでしょうが、悪質事例にはやはり厳格な法適用と罰則が必要です。

フェイクニュースや不当広告を流したら、アフィリエイトシステムから締め出され、法律によって厳罰に処せられるというのが周知されるようになれば、誰もそのようなリスクの高いことはしなくなるはずです。


適正なアフィリエイトビジネスの振興を



繰り返しになりますが筆者はアフィリエイトシステム自体を非難しているのではありません。
むしろインターネットの恩恵を享受できる理想的な広告システムだと考えています。

ただ、現状のアフィリエイト広告には売りたいがための不当表示やフェイクニュースが混ざっているので、その部分は適正化する取り組みが必要と思うわけです。

その取り組みというのはASP、検索エンジン、SNS企業が自主的に整備している不当性が高い情報の排除システムの高度化であったり、景品表示法や特定商取引法にアフィリエイトシステムの定義規定を設けて適用対象とすることです。

アフィリエイターも表示に関する法令について学び、ASPはその支援をすることも必要でしょう。

こうした取り組みが消費者の信用を高め、更に電子商取引市場を活性化させていく要素になるはずです。


ネットリテラシー向上のための啓発・教育



ネット利用者の視点では、ネット上のサイトやSNSには広告が溢れています。
中には広告とは判別し難い広告も多く見かけます。
広告自体が悪いわけではありませんが、取材記事なのか広告なのか一見で区別がつかない表示のありようは問題があります。

こうしたネット広告の掲載基準についてもネット企業が自主規制の努力をしていますが、情報を受け取る側の消費者のネットリテラシー向上も図らねばなりません。
インターネット市場というのはまだまだ拡大を続けているので、それを利用する消費者もネット取引の法令やルールを知る必要があります。
そのようなネットリテラシーに関する啓発情報も当ブログでは採り上げていきます。

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